オウガメタル救出~目視することのできる絆

作者:荒雲ニンザ

 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。

 言之葉・万寿(オラトリオのヘリオライダー・en0207)が静かに会釈して話し始める。
「黄金装甲のローカスト事件を解決したケルベロス達は、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができました」
 彼らが絆を結んだ結果、アルミニウム生命体は『オウガメタル』という名前の種族で、自分達を武器として使ってくれる者を求めていると分かった。
「現在、オウガメタルを支配しているローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由に、オウガメタルを使い潰すような使い方をしております。特に、黄金装甲化は、オウガメタルを絶滅させる可能性すらある、まことに残虐な行為! その結果、紆余曲折を経て、オウガメタルはケルベロスに助けを求めて参られました」
 不憫な境遇のオウガメタルに同情を感じ、万寿は目頭を熱くさせる。
「さて、そして今、オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、オウガメタルの窮地を感じ取ったところでございます。オウガメタル達は、ケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星から、ゲートを通じて脱出、地球に逃れてきたようなのです……!」
 しかし、最重要拠点であるゲートには、当然ローカストの軍勢がおり、このままでは、そのローカスト達によって、オウガメタル達は遠からず一体残らず殲滅されてしまうだろう。

 オウガメタル達が、ローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥になる。
「皆様には、ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救助とローカストの撃破をお願いしたいのです。この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えるだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能になるかもしれませぬ」
 だが、ゲートの位置に関わる事から、ローカスト達の攻撃も熾烈になるだろう。
「厳しい戦いになると承知して、あえてお願い致しますが、何卒、何卒お頼み申し上げます」

 ローカスト達は、兵隊蟻ローカスト1体が働き蟻ローカスト数体を率いた群れで、山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っているようだ。
 ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎで、逃走するオウガメタルは、銀色の光を発光信号のように光らせるので、それを目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事ができるだろう。
 降下には誤差がある為、すぐそばに降下できるわけでは無いが、百メートル以内の場所には降下できると思うので、合流は難しくない筈だ。
「追っ手である兵隊蟻ローカストの戦闘力はかなり高く、ゲートを守るという役割からか、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無いでしょう。働きアリローカストは、戦闘は本職ではないようですが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っております。ただ、働きアリについては、兵隊蟻ローカストが撃破され状況が不利だと思えば、逃げ出す可能性もあるようです」
 年のせいか、涙もろいヘリオライダーは瞳を潤ませて頭を下げる。
「ケルベロスを頼って逃れてきたオウガメタルを、むざむざ全滅させる事はできませぬ。どうか皆様がより多くの絆を結び、無事にご帰還されることを、この万寿、心から願っております」


参加者
天津・千薙(天地薙・e00415)
浅川・恭介(ジザニオン・e01367)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
深山・遼(結び目・e05007)
ヒメ・シェナンドアー(稜姫刀閃・e12330)
天姫・夕輝(紫水桃華・e22445)
マーシャ・メルクロフ(銀世界・e26659)
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)

■リプレイ

●コンタクト
 木にぶつかる様子もなく、とてつもないスピードで3匹の巨大蟻が滑り降りて行く。
 先頭を走る1体はアリア騎士のタカート。重装備に身体を包んだ強固な守りを得意とする、ゲートの守備を任された騎士団の一人だ。
 他2匹、戦闘力の低い働き蟻ローカストが、彼の後を追い掛ける。
 普段はゲート周辺の工事などに従事している働き蟻ローカストは、事の成り行きを余りあまり把握しておらず、片方の1匹は空腹からかイマイチやる気が感じられない。
 だがタカートは『自分達の敗北はゲートの失陥を意味しており、ローカストの滅亡に繋がる』という認識を持っており、その形相は凄まじいものがあった。
 遙か遠くに時たまちらつく光を追い、そして見失い、またそれを追い掛ける。随分の間その繰り返しをしてきたが、近くまで来ている感触はあった。
 そのずっと先、何もかも風景が闇に食らわれている中、銀色の光が樹木を避けながら流れていくラインが見える。
 ラインの正体は液体金属のようで、何体か固まりながら流れ、樹が目前に迫るとワッと分裂し、そしてまた近くに寄りそうように流れていく。
 彼らはオウガメタル。
 発光しているのは、ケルベロスに救難信号を送るためである。
 数分間隔で強く発光しながらの逃亡は、当然ながら追っ手にも届いており、このままでは何れローカストに追いつかれてしまうだろうとこは予測できた。
 真っ暗闇を逃げ惑う哀れな生命体は、知る星、知る者たちに使いつぶされ、見知らぬ星、見知らぬ土地で、その者たちに命を消されようとしている。
 時間がない。
 現場上空に到着したヘリオンから、深山・遼(結び目・e05007)が光の一つを見つけた。
「いた」
 その光を確認すると、一同は頷き、一人ずつ飛び降りる。
 落下途中、仲間が全員同じ場所に到着できるよう、一人ずつが手を取り合う。
 オラトリオの浅川・恭介(ジザニオン・e01367)、天姫・夕輝(紫水桃華・e22445)、ヴァルキュリアのダリル・チェスロック(傍観者・e28788)が、バランスよく他のメンバーの間に入り、落下を補助しつつ、飛行してその光へと一直線に向かった。
「夜影に乗せるのは荷が重そうね」
 遠目から様子を見ていた遼であったが、ライドキャリバーにオウガメタルを乗せて避難するのは無理だと判断する。
 周囲は闇だ。ライトは持参していたが、下降時、ローカストに発見されるのを避けたケルベロス達は、明かりをつけてはいない。
 落下周辺の木々が『隠された森の小路』により開かれる。
 無事、光源の数メートル先にケルベロス達が降り立つと、その光のラインは突然上へと伸び、近くの木の根元に巻き付くと身を寄せ合い、小刻みに全体を震わせた。
 驚かせたらしい。秀逸な隠密行動に、オウガメタルも、ケルベロスたちの存在に気がつかなかったようだ。
 地表近くで夕輝が灯したライトが周囲を明るくしている。
 生存率を上げるため、少人数、もしくは1体でバラバラに逃げているのだろう。この2体以外は周囲に見当たらない。
 他の面々もハンズフリーライトを灯し、オウガメタルの様子を探った。
 液体の金属。そこに意思が存在する。
 念のため、何が起きるか分からないと想定した天津・千薙(天地薙・e00415)が、割り込みヴォイスを使って彼らに話しかける。
「私たちはケルベロスです。あなた達を助けるために、ここに来ました」
 ヒメ・シェナンドアー(稜姫刀閃・e12330)も続く。
「大丈夫、ここ以外にも、多くのケルベロスが来ているわ」
 数名がケルベロスコートを羽織っていたが、ここにいるオウガメタルがそのコートの存在を知っているかどうかは定かでない。
 震えは止まっているものの、オウガメタルは木の幹に巻き付いたまま、内部で液体を流動させながらじっとしいている。
 相手には、目もなければ耳も口もない。意思が伝わっているのかが分からず、マーシャ・メルクロフ(銀世界・e26659)は大きなジェスチャーを試みた。
 時間が惜しい。ローカストがすぐそこまで迫ってきているのだから、悠長なことをしている場合ではないと、コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)は呼びかける。
「ワシらは地球の者だ! お前達の救難はしっかりと聞かせて頂いた! 今よりお前達に迫る脅威の迎撃にかかる!」
 ここでローカストを迎え撃つということだろう。ダリルが戦闘準備として、戦いやすいよう隠れた場所にライトを備え付けながら言った。
「あとは私達に任せて欲しい。信用してくれなくても良い。そこにいて下さい」
 周囲の木々が、何かの振動を受けておかしなざわめきを響かせている。彼は手を止めた。
「近いようですね……気をつけて」
 それからオウガメタルに視線を移す。
「聞くところ、あなた方オウガメタルは優秀な武器になるそうですね。共に闘いたいかは、そちらの意思にお任せします」
 コクマは忙しく動き回り、周辺の把握とオウガメタルを護れる陣形を確認している。
 場は刻々と緊張感が増していく。恭介とマーシャは目配せし、防具特徴のアイテムポケットをオウガメタルに見せた。
「僕たち、ここにあなたを入れて、保護してあげることができるんです」
「一時避難でもいいでござる。とにかく、入れそうなら、入って、守らせてほしいでござる」
 二人がじっと待っていると、1体が音も立てず滑るように幹から離れ、地面の上で楕円形を作った。
 それから鋭く形を崩すと、マーシャのアイテムポケットに飛び込む。
 意思が通じた! と一同内心で喜んだが、量が多すぎるようだ。はみ出た一部が外にこぼれ、適度なサイズの固まりを作っている。
 もう1体も同じく恭介のアイテムポケットに入り、余った液体を外に落とした。
 保護できているのか、できていないのか、思わず一同は唸ってしまう。
 そこで千薙が、こぼれているオウガメタルに話しかけた。
「道具として利用される辛さも、仲間を失う悲しさも、逃げることしか出来ない悔しさも、知っているから。だから、助けたいんです」
 ゆらゆらと、ゆっくり揺れ動くオウガメタルにそっと触れてから、付け加える。
「武器として、一緒に戦って頂けませんか……?」
 彼女はダモクレス時代の自分を脳裏に蘇らせる。忌まわしい過去を振り払うように彼女が身体をこわばらせると、恭介のアイテムポケットに入っていたオウガメタルが分割して飛び出し、彼女が触れている液体と1つになり、千薙の身体に巻き付いた。
 流動する金属はみるみる形を成し、瞬く間に千薙はオウガメタルを装備してそこに立っていた。
 一同がその光景に驚いている横、ダリルが微笑んだ。
「ありがとう。共に戦いましょう」
 風が大きく木を揺らしている。ローカストはすぐそこだ。
 装備、アイテムポケットに収納できた分、大分小さくなったオウガメタルは木陰に潜めることができるだろう。後方に置き、こちらの間合いに入れてガードしてやりつつ、戦況を崩さずに保てれば、十分守ってやれると判断する。
 ヒメは決意を更に強めるよう、皆に言った。
「今は共に。この夜を越えましょう」

●絆崩壊者
 遠くから、徐々に近づく騒音。振動。数秒後、その方角からローカスト3体が現れた。
 オウガメタルの逃げてきた方角から想定した読み通り、見事にこちらの攻撃範囲内に進んできてくれている。
 合図と共に開始された奇襲、まず1番手で攻撃を仕掛けたのがヒメだ。
 オウガメタルを庇える距離を保ち、ダメージを減らすためにヒールドローンを放って前衛に盾アップを付与。
 次に間髪入れず恭介が兵隊蟻目がけてアンチヒールをかけ、その余波を食らった働き蟻1匹にも付与がつく。
 彼のテレビウムである安田さんは凶器攻撃を兵隊蟻に放った。
 そこでローカストは驚いて足を止めるが、急に止めた身体がお互い同士でぶつかり合い、体勢を崩している。
 間髪入れずにコクマがスピニングドワーフで回転技を入れようとするが、体勢を崩したローカストの頭上を空ぶってしまう。
 遼が識布を用いて破剣を前列に付与。続いて彼女のライドキャリバー夜影がガトリング掃射で攻撃。
 千薙がオウガメタルの力を使い、惑星レギオンレイドを照らす『黒太陽』を具現化し、敵群に絶望の黒光を照射すると、兵隊蟻と働き蟻1体にそれが炸裂した。
 アリア騎士タカートは堪えたが、働き蟻が悲鳴を上げる。
「そ、その力は! 貴様……」
 続いて夕輝が紙兵散布を前衛にかけながら言う。
「お探しの、オウガメタル様ですわ!」
 マーシャが熾炎業炎砲にて後ろの敵働き蟻に炎付与を狙い、ダメージを与えた。
 そしてダリルが寂寞の調べを後列に。
 奇襲で序盤の準備がきれいに整った。
 アリア騎士タカートは、ここまでの攻撃を受けても全く動じていない。いかに強敵かが窺い知れる。
 マーシャがそっと分析する。
「働き蟻の雰囲気からポジションは前と中。兵隊蟻の方は、かなり堅そうでござるな」
 働き蟻はケルベロスを見て狼狽えていたが、タカートに活を入れられると慌てて武器を構えた。
「うぬら、ケルベロスか。よもや、オウガメタルが力を貸すとは。生きて帰す訳には参らぬぞ」
「負けませんわ」
 夕輝がフンと高く鼻を鳴らし、ダリルも皮肉を続ける。
「職場がブラックどころではないお話ですね。オウガメタル達が命繋げるよう、先ずは救出。それから、互いの未来の為に勝たせて頂きます」
「互いの未来?」
 タカートはギチギチと歯ぎしりのような音を鳴らす。
「我らローカストとて未来はある。繋ぐ! そのためには、うぬらの未来、絆なぞ、断ち切ってくれよう!」
 話しても埒があかないとし、恭介はその場を締める。
「さあ、追いかけっこは終わりにしましょう。今度は貴方達が狩られる番です」
「ほざけ!」
 ローカストたちの強烈な攻撃が始まった。
 タカートが巨大な槍を重心に置き、ローカストキックをコクマに仕掛ける。それをヒメが受け止めるべく前に出ると、キツイ一撃が入り込んだ。
「くっ……!」
 がっつりともっていかれた体力に、思わず本音が出る。
「アイツの攻撃だけは、何が何でもディフェンダーが受け止めないと、マズイわ……」
 後ろにいる恭介がヒメを案じて自分のサーヴァントに声をかける。
「安田さん、みんなをお願いね」
 それを受けた安田さんは、モニタに凜々しく男らしい表情を映し出す。
 続いて前に出ている兵隊蟻の攻撃が、減ったヒメに向けられる。しかしこれはヒメが回避した。
 中衛にいる働き蟻が続き、後衛に破壊音波を放ったが、4人ともこれを避けるとふと同じ事が脳裏に浮かんだ。
 働き蟻の能力はさほどでもない。戦いに慣れていないのだろうか、比較的命中率が低いと思われ、そこを突いてうまくかわせば対処ができる範囲だ。
 問題は兵隊蟻だ。おそらくクラッシャーかディフェンダー。どちらにせよ長期的な戦闘は避けられず、攻撃の傾向と与えるダメージの2点を様子みなくては危険だ。
 とにかく、敵の様子を見れば体力は莫大だ。減らさなくては。
 ケルベロス達は連続で攻撃に入る。
 まずヒメがシャウトで自らを回復。
 恭介がルーンディバイド、安田さんが敵前列にテレビフラッシュを試みたが、これは外れてしまう。
 コクマは地裂撃、遼が破剣を後列、ライドキャリバーの夜影がデットヒートドライブと続く。そして千薙はバスタービーム、夕輝が紙兵散布を後衛に。
 マーシャのルナティックヒールがヒメを全回復させ、ダリルが黒き触手の招来で敵にダメージを与え、一通りケルベロスたちの攻撃は終わった。
 猛攻を受けていたタカートが静かに身体を伸ばす。
「大口を叩くだけの力はあるという訳か。よかろう」
 そして長い槍を立てて前に出し、地を叩く。
「我が名はアリア騎士タカート。アリアの騎士の名にかけて、決して逃げはせぬ。絆を守りたければ、私を殺して奪うがよい」
 働き蟻2匹はよいとして、タカートの攻撃に備えて回復をしっかりとしなくては、重なった攻撃でいつ倒れるか分からず、こちらは中々相手の体力を削れずにいる。
 しかし、ディフェンダーの厚みと、回復要員の量はバランスがよく、これにはタカートも目を見張った。
 長期に及ぶ攻防の末、先に倒れたのは前衛にいた働き蟻だった。
 アンチヒールにより回復が追いつかなくなった末、遼のスターゲイザーが止めを刺すに至る。
 兵隊蟻に集中できるようになったケルベロスは猛攻。
 こちらの命中は高く、バランスもよい。ただ、やはりじわじわとした戦いがいつまでも続いた。
 食らう時に一気に食らってしまう、ダメージの多いコクマが足下をふらつかせている。
 ここまで粘り強く戦う戦法。タカートはディフェンダーだと分かったが、こちらもそれ相応に守りは堅い。
 作戦として重ね続けていたバッドステータスが不利な状況を上塗りし、タカートはすでに攻撃が怪しくなっていた。
 それでも逃げることのないタカートが、槍を地について自らの身体を支える時が訪れた。
 コクマの月薙ぎがタカートの兜を真っ二つにすると、身体がズレる前にローカストの兵隊蟻は、最後の言葉を発する。
「アリア、様っ……」
 タカートが地に倒れると、残った働き蟻が後ずさりするのが見えた。
 コクマとサーヴァント達の体力が減っているままだが、誰一人失っていないバランスのよい戦闘、働き蟻1体を倒すには容易い。
 最後の1体は逃げ出したせいで反撃することも敵わず、恭介がファミリアシュートを部位狙いし、クリティカルを受け止めた逃亡者は、静かに土に横たわって起きることはなかった。
 さすがの長期戦にへたり込むケルベロスたち。
 言葉も発せない程の疲労感に包まれていたが、確認しなくてはならない。
 コクマが隠れているオウガメタルに声をかけた。
「おい……終わったぞ。無事か?」
「もう大丈夫ですよ」
 ダリルがそう言うと、木陰から、そしてアイテムポケット、千薙に装着された1体。オウガメタルは緩やかに集まると静かに揺れた。
 ゲートの位置を含めたローカストの情報を確認したかったが、これ以上無理はさせられない。
 千薙がオウガメタルたちに頭を下げ、協力してくれたことに感謝して言う。
「ゆっくり休んでください。あなた達の分も、なぎが背負っていきますから」
 その様子をしゃがみ込みながら見ていた遼であったが、心に刺さったトゲの痛みが少しだけ軽くなった気持ちがした。
 心のどこかでいつも命の儚さを実感し、日々を送っている彼女であったが、それはきっとここにいる全員も同じことだろう。
 救える命は救いたい。
 そうして集まった彼らが、傷つきながらの末に手に入れたものが、形のないものであって良かったと安堵した。
 しかし、その絆という存在は、確実に、彼らの目に見えているのだ。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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