JKはクレープがお好き♪ オークはJKがお好き♪

作者:陸野蛍

●博士は空を飛ばせる夢を見る
「ムムムー。わしの技術があればもっと凄いオークが出来る筈なのにー!」
 とある研究室で声を荒げ、薬品をぶちまけるのは、 マッドドラグナー・ラグ博士。
 ドラゴンの為……いや、自分の為にフリーダムにデウスエクスの研究を続ける男である。
 彼の側には、彼の実験の成果である、飛空オークが数体佇んでいる。
「ムムムー! 量産型とはイエ、実験ではこれ以上の性能は出せないカー。これ以上の性能を得るには……ムムム。新たな因子の取り込みが不可欠だな!」
 そう結論付けると、ラグ博士は派手に白衣を翻し、オーク達に命令する。
「お前達が産ませた子孫を実験体にすることで、飛空オークは更なる進化を遂げるだろう! 女に子を宿し、わしの研究の糧にするんじゃー! 行って来い!」
 その言葉に、オーク達は一斉に喜色の声を上げるのだった。

●オークは女子高生とムフフな夢を見る
「やっぱり、ここのクレープ、サイッコー♪」
「美味しいよねー、ここのキャラメルストロベリースペシャル♪」
「この味、癖になっちゃうよねー♪」
 晴天の中、公園で営業中のクレープ屋の周りでは、大勢の女子高生達が甘いクレープに口を付け、幸せそうな表情をしていた。
 近くに女子高が二校ある為、このクレープ屋は女子高生達の憩いの場となっていた。
 そんな幸せな放課後に、災厄は空から降りて来た。
「オンナオンナオンナー! オッパイオシリ! イイコトー!」
 飛空オーク達は、それぞれに欲望を口走りながら、女子高生達を触手で絡め取っていく。
「キャー! イヤー! 助けてー!」
「アーン! ヤダー! アアン……」
 平和だったはずの公園が女子高生の悲鳴とオーク達の喜ぶ声で満たされた。

●少年ヘリオライダーは美味しいクレープの夢を見る
「みんな、クレープは好きか? 俺は大好きだ!」
 ケルベロス達を前にして、大淀・雄大(オラトリオのヘリオライダー・en0056)はいきなりそんなことを言い出す。
「雄大様、それでは、皆様に全くお話が通じませんわ」
 隣に立つ、レーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)が雄大をいさめる様に言う。
「あっ、そうだよな。ごめん、ごめん。みんな! お仕事だ!」
 雄大が気を取り直す様に強めの口調で言う。
「ある公園に美味しいクレープのお店があるんだけど、そこにお客として集まる女子高生達が飛空オーク達に襲われる未来が見えた。みんなには、ここに急行してもらって、オークを撃破し、女子高生達を守ってもらいたい」
 飛空オークは、竜十字島のドラゴン勢力の一人、マッドドラグナー・ラグ博士の研究で生まれた空を滑空するオークで、女性を空から急襲するオークだ。
 屋外での急襲能力は、他のオークに比べてかなり高いと言えるだろう。
 幸いと言ってもいいのは、飛空オークが出来るのはあくまで滑空であり、飛行ではない為、地上に降りてしまえば普通のオークと大差がない事だろう。
「現れる飛空オークは7体。それに対してクレープ屋周辺に居る女子高生達は15人程だ。飛空オーク達は高所から急襲先を決めるから、事前に女子高生達を避難させてしまうと、他の地点に目的地を変えてしまうから、女子高生達は怖い思いをすると思うけど、避難はオークが降下する直前もしくは降下してからにしてくれ」
 全く別の所が襲われてしまい、防ぐことすら出来ないよりはいいという判断である。
「それとな、この場に女の子が増えるのはいいんだけど、男性陣はオークが現れるまで、なるべく身を潜めていて欲しい。今回の飛空オークは、とにかく男が嫌いなんだよ。特に、イケメン。そう言ったタイプが近くに居ると、襲って来ない可能性が出て来るから」
 降下後は、イケメンは完全に敵と認識して、より一層猛って襲ってくるだろう。
「飛空オークの攻撃方法は、触手を使っての攻撃だけどいくつかパターンがあるから、上手く対処してくれ」
 強力なデウスエクスではないが、7体と言う数と女子高生を避難護衛しての戦闘となると、難しいものになるだろう。
「万が一にも、女子高生がオークに蹂躙されるなんて事があっちゃいけない。頼むぜ、みんな!」
 雄大が力強く言う。
「ところでだ、みんな。ここのクレープ屋ってさ、凄い美味い『キャラメルストロベリースペシャル』って言うクレープがあるらしいんだ。戦闘が終わったら食べて来るのもいいんじゃないかな?」
 雄大が表情を笑顔に切り替えて話し始める。
「そんでもって、お持ち帰りも出来るらしいから、お土産で買って帰るのもいいんじゃないかな? お土産にクレープ貰えたらみんな嬉しいと思うんだよな、俺! と言う訳だから、頑張って来てくれな♪」
 何かの期待を込めた瞳でケルベロス達に言うと、雄大は跳ねる様にヘリオン操縦室に向かった。


参加者
フラジール・ハウライト(仮面屋・e00139)
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)
レーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)
皇・絶華(影月・e04491)
イストテーブル・ニカミ(悲哀怨恨三歩で忘れる鳥頭・e05215)
シャルローネ・オーテンロッゼ(訪れし暖かき季節・e21876)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
ベルカナ・ブラギドゥン(心詩の詠唱姫・e24612)

■リプレイ

●美味しいクレープ屋さん♪
「ほんと、美味しいですわ~♪」
 生クリームたっぷりのクレープを頬張りながらレーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)が幸せそうに笑みをこぼす。
「私のチョコチップナッツクレープも美味しいです♪」
 シャルローネ・オーテンロッゼ(訪れし暖かき季節・e21876)も可愛らしくクレープを口にしながら幸せそうだ。
「えーっと、オーク……が来る前から、食べてて……、大丈夫なのか……?」
 そう疑問を口にする、フラジール・ハウライト(仮面屋・e00139)の手にも既にクレープが握られていたりするのだが。
「女子高生に紛れての囮ってことだし、食べながらわいわいしてた方が、違和感ないんじゃないかな?」
 ヘリオン内でも、『クレープ♪ クレープ♪』と謎の歌を歌い続けていた、ベルカナ・ブラギドゥン(心詩の詠唱姫・e24612)がやっぱりクレープを口にしながら言う。
 ベルカナは、初めてのクレープと言うことで、どの味にするか随分悩んでおり、相棒のボクスドラゴン、ウィアドが箱の中から呆れていた程だ。
「終わった後に……、入らなくなる……」
「大丈夫ですよ、フラジールさん♪ 私、今日は3種類位は食べるつもりですので全然平気です♪」
 シャルローネに満面の笑顔で言われてしまえば、フラジールも無言でクレープを堪能するしかない……と言っても、フラジールも内心はクレープを楽しみに来ている訳で、女性陣全員が食べているのなら、気兼ね無く食べられると言うものなのだ。
 今回のフラジールの心の大半を占めているのは、クレープなのだから!
 レーンに至っては、本物の現役女子高生である。
 店の常連らしき、女子高生達と早速打ち解けている。
 それを、裏の林の樹木の上から口惜しそうに見ている者がいた。
 ちょっと大きめのリス……動物変身をした、イストテーブル・ニカミ(悲哀怨恨三歩で忘れる鳥頭・e05215)だ。
(「ぐぬぬ~。僕も早くクレープ食べたいよぉ~。けしからんオーク早く来るのだ! そしたらクレープなのにー!」)
 木の枝を揺する勢いでイストテーブルは身悶えしていた。
 その時だった。
 下品な笑い声と言葉が空から聞こえて来たのだ。
「オシリオッパイ! ジョシコーセー!」
 空から7体のオークが飛来して来たのだ。
 それを見て、すぐに手の中のクレープを一気に食す女性陣。
 甘いものを投げ出すなんて出来る訳が無いのだ!
「ジョシコーセーイイコトシヨー」
 女子高生達に迫りくる、オークの滑った触手……だが、彼女達を庇うように、物陰から出て来たのは、黒のゴシックドレスを纏ったミステリアスな女性と華やかながらもセクシーな衣装を纏った長身の美人である。
「お前達の相手は私達だ……」
 闇の精霊の様な儚さで言うのは、皇・絶華(影月・e04491)。
「俺のディートでその触手引き千切ってやるよ!」
 美しい顔でライドキャリバーに腰を落とす、ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)。
 どちらも、女子高生に勝るとも劣らない魅力的な上玉だ。
 オークが放っておく訳が無い!
「ビジンシタイエッチナコトー!」
 オーク達は挑発する様な二人に一気に襲いかかろうとする。
 ヴィットリオのファイアーボールがオーク達の中心で爆発すれば、絶華の雷を纏った突きが一匹のオークに深く刺さる。
 オーク達の注意が、二人に向いている隙に、櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が腰を抜かしている女子高生に手を貸す
「大丈夫か? お嬢さん? ここは危険だから一緒に避難しよう」
「……あなたは?」
 突然何も無い所から現れた千梨に戸惑い女子高生が聞く。
「心配しなくてもいい。俺は、ケルベロスだ。君達を守るから心配するな」
 飄々と答える千梨。
 女子高生がそう思うのは不思議もないのだ。
 千梨は隠密気流で隠れており、ぶっちゃけてしまえば、女子高生の側で息を潜めて隠れていたのだから。ケルベロスで無ければ不審者である。
「……でもあの人達は?」
 既に、シャルローネ、ベルカナ、フラジールも戦線に加わっており戦闘が激化していた。
「大丈夫だ。彼女達もケルベロスだから」
 それを聞くと他の女子高生達も安心した様に、千梨に連れられその場を逃げ出す。
 千里は一瞬、戦場を振り返ると心の中で呟いた。
(「イケメンが敵と言うのは共感せんでもないな。まあ、イケメンも大変そうだが……。気を付けろよ若人達」)

●オークからの逃亡
「お姉さん達大丈夫? 今なら逃げれるから逃げよう。僕が守るから」
 クレープハウスの中で脅えきっていた女性二人にイストテーブルが微笑みかける。
「僕もケルベロスだから、ちゃんと逃がしてあげるよ。だから、あとで美味しいクレープ焼いてね♪」
 警戒心を解く為に無邪気に笑うイストテーブル。
 だが、若干あざとい気がするのは気のせいだろうか?
 何故か、リスの尻尾だけは出しっぱなしである。
 一方、レーンも女子高生達を連れ公園の外へ向かっていた。
「ここまで来れば大丈夫ですわ。すぐに、オーク達はわたくし達ケルベロスが倒しますから。また、ゆっくりお話しましょうね」
 お嬢様女子高の生徒にしか見えなかったレーンは、重武装モードとなって公園に向かいながら逆走していく。
 オークひしめく公園では、ケルベロス達が奮戦していた。
「今の私達は無敵です! クレープの……いえ、女子高生さん達の為にも、全力で行かせて頂きます!」
 叫ぶ、シャルローネの雷を纏ったグレイブテンペストがオークを貫く。
「ウィアド、千梨さんが戻って来るまで、みんなの回復よろしくね!」
 言いながらも、ベルカナは自らの身体を光の粒子に変えてオークに突撃する。
(「いやー! やっぱりオークは気持ち悪いよぉ! 早く終わらせたいよー!」)
 ダメージを与えながらもベルカナは心の中で悲鳴を上げている。
「イイオンナ! ナマアシヘソダシムッチムチー!」
「脚が……、ご所望か……、なら」
 言うとフラジールは突撃して来るオークに向かって、旋風を巻き起こしながら蹴りを入れる。
 メンバーが足りない状況でも、何とかオークと対等に戦えている、フラジールはそう思っていた。そんな時……戦場に絶叫が響いた。
「ギャー! 触手で腰をなぞるなー! 攻撃するなら真面目にやれー!」
 見れば、ヴィットリオのセクシーな腰にオークの触手が絡みつき、攻撃と言うより舐めまわす様に執拗になぞっていた。
「ヴィットリオさん! 今……」
「や、やめろっ! 私なんぞにこんなことしても楽しいわけないだろうがっ!」
 シャルローネがヴィットリオの助けに向かおうとすると、今度は絶華の叫びが聞こえて来る。
 ベルカナが、対峙して居るオーク越しに絶華を見れば、オークが触手を使い絶華のドレスを少しずつ裂き、色白の肌を露出させていた。
「ウーンエロチック」
 絶華の反応にオークもご満悦である。
 だが……。
「まて! 私は男だ! 騙されたな! …ってなんで止めない!?おかしいだろ! 貴様ら!?」
 絶華の言葉もオークには聞こえていないのか、絶華が更に涙目になり興奮したのか、触手の動きに焦らしが混ぜられる。
「そう言うことだ! 僕も男だ! こんな大きな女がいる訳ないだろ……って、聞け―!」
 ヴィットリオが相手にしているオークも、ヴィットリオが気に入ったのか更に高度な触手使いで、ヴィットリオを辱める。
「これは……、私達は……、オークをこの間に? ぬるぬるいやだし……」
 フラジールの言葉にベルカナとシャルローネは頷き、男2人は放っておき、オークの数を減らすことを優先する。
「うわー、いけめんはたいへんだー」
 戦場に戻って来た千梨は、明らかな棒読みで言うと、黒鎖の陣を敷く。
「キュアはしてやるから頑張れ―」
「うわー。これが地獄絵図ってやつかな? お姉さま方。オーク殲滅よろしくだよー」
 同じく戻って来た、イストテーブルが月の力を借りて(本当の)女性陣に破壊の力を上乗せする。
「わたくしもおりましてよ。原子レベルに撃ち砕く! 喰らいなさい超収束荷電粒子砲!!」
 戻って来るなり、レーンは己の最大出力のビームをオーク達に向けて放つ。
「やったかな?」
「いいえ、まだまだこれからですわ!」
 千梨の問いに即答するとレーンは一気に駆けた。

●男の尊厳を守る為に
 戦闘開始から5分。
 既に、4体のオークが倒されていた。
「僕の炎もあげるねー!」
 イストテーブルの地獄から作り出された炎がオークを焼いていく。
「残りは、あと二体だが……どうする?」
 千梨が言う二体とは、ヴィットリオと絶華が最初から相手にしている二体である。
 千梨がしっかり回復しているので、二人にダメージは殆ど無いのだが、オークの執拗な攻撃で服が破けたり、粘液で溶けたりしており、彼らの白磁の様な肌も粘液でいやらしく光っている。
 大事な部分は隠されているが、ここまでやって、本人達も男だと言っているのに、触手フル活用の攻撃を止めようとしない、このオーク達はどうしたものだろう……。
「どうするもこうするもないよ! 絶対こいつは僕が倒す!!」
「同意見だな。貴様ぁ……いい加減にしろぉおおお!!」
 遂にぶち切れた、ヴィットリオと絶華が叫ぶ。
「ディート!」
 ヴィットリオが叫ぶと相棒のディートが猛スピードでオークに向かって突撃する。
 そのディートの後部に脚をかけると、ヴィットリオは高く飛ぶ。
「僕に恥をかかせたんだ! 地獄へ行けー!」
 暴風を纏った強烈な右足でオークを高く蹴り上げてヴィットリオが叫ぶ。
「私の怒りその身に刻め! 我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門……「窮奇」……開門…!…ぐ…ガァアアア!!」
 絶華は古代の魔獣の力をその身に宿すと、瞬時に狂戦士と化し、三重臨界を魔獣の爪の様にオークへと何度も振り下ろす。
 絶華から魔獣が抜け落ちる頃には、オーク達はグラビティ・チェインを使い果たし消えていた。
「ふう。これで、ゆっくりクレープが食べれるね」
「そうだな。クレープは糖分が心配ではあるが」
 そう言い合う、ヴィットリオと絶華の顔にはある種の爽やかな笑みが浮かんでいた。

●それぞれのクレープ
 クレープハウスの女性店員の二人にも何事もなく、お礼にとケルベロス達にクレープをご馳走してくれると申し出てくれた。
 ちなみにだが、衣服をオークにボロボロにされたヴィットリオと絶華は既に別の服に着替えており、男装……いや、いつもの男性にしか見えない服装に戻っている。
「私は、フルーツパフェクレープお願いします」
「わたくしはキャラメルストロベリースペシャルの特盛りをお願いしますわ」
「私も……同じの。多分……おかわり……するね」
「えっと、えっと、私はチョコバナナストロベリークリームで!」
 女性陣のシャルローネ、レーン、フラジール、ベルカナが立て続けに注文すれば、店員達は笑顔でそれぞれにクレープを手渡してくれる。
「ウィアド! 半分こしよう♪」
 ベルカナがそう言えば、ウィアドも嬉しそうに、ベルカナがスプーンに乗せたストロベリークリームをパクリと食べて目を輝かせる。
「……あまいクレープおいしい。いくらでも食べられる……」
 フラジールがそう言いながら、もう一つと指を店員に見せれば、すぐにキャラメルの甘い香りが漂って来る。
「雄大様に、キャラメルストロベリースペシャルをお土産にしませんとね。おねだりしてましたものね」
 レーンがそう言えば、シャルローネもクレープから口を離し。
「そうですよね。雄大さんのお土産何がいいでしょうか? 今食べてる、フルーツパフェクレープが凄く美味しいから、私はこれにしましょう。私には、キャラメルストロベリースペシャルを追加でもう一つお願いします」
 穏やかに笑いながら言う。
 そんなシャルローネも甘い物には目が無いようで、他のクレープにもついつい目移りしてしまう。
 外で楽しむ女性陣とは別に、男性は厨房まで入っていた。
 男だけでクレープ屋というシチュエーションは普通ないので、折角の機会である。
「クレープと言えば、スイーツだと思っていたのだが、おかずクレープなんてあるのか。これは、一食……いや、持ち帰り含めて二食済ませられるな」
 おかずクレープの存在を知らなかった千梨は、当然普通のクレープも手にしているのだが、食費節約とツナやベーコンのボリュームのあるクレープとトマトやレタス、ポテトと言ったサラダクレープもお願いする。
「あ、それと人気の甘いやつをお土産で一つ頼めるかな?」
 同居人への手土産も出来て安心と、手にしたクレープにかぶりつく。
「とにかく甘いやつが食べた―い♪ そして焼きたーい♪」
 イストテーブルは、自分で食べるのは自分で挑戦したいと女性店員の指導のもとゆっくりと、クレープ生地を伸ばしていく。
 その上に枇杷、マンゴー、キウイと言ったクレープとあま~い生クリームと愛を巻いて、『特性クレープイストンスペシャル』の完成である。
「そう言えば、男女半々でグループデートになるかもって思ってたんだけどね~。完全に別れちゃったね。それに、女の子の方が多かっ……」
 そこまで行ってイストテーブルは言葉を止めた。
 恐ろしいプレッシャーを感じたのだ。
『これ以上言ったら殺られる』と。
「キャラメルストロベリースペシャルも滅茶苦茶美味しいけど、ヌテラってないかな? 僕の故郷だと割と人気なんだけど」
 ヴィットリオが店員に尋ねると、良くご存じですねと店員が冷蔵庫から茶色のペーストが入った瓶を取り出して来る。
 他のケルベロス達は皆、『?』マークを出したが、ヌテラとはヘーゼルナッツペーストをベースに砂糖、ココアなどを混ぜたチョコ風味の甘いスプレッドなのだ。
 ヨーロッパではジャムや生クリームより人気と言われる甘味なのだが日本ではあまり定着していない。
「やっぱり、美味しいな。ヌテラ布教の意味も込めて大淀君にお土産に持って行こう」
 そんな甘いクレープを用意するヴィットリオの横で、絶華が呟く。
「やはり、クレープは糖分が強いな。……私が開発した、カカオ1000%チョコクレープなら糖分と共に圧倒的なパワーが……よし」
 そんなことを言いながら、絶華は調理台に立つと、チョコと言うより何か黒いものを取り出すと、クレープに見える物を作って行く。
「これでいい。これは、雄大に提供しよう! いつもヘリオンの操縦で大変だろうし、これで集中力もブーストだ!」
 満足のいくクレープが出来、贈る相手も決まり、不敵に笑う絶華。
 こうして、ケルベロス達はそれぞれのクレープを堪能して、ヘリオンへと戻って行った。
 沢山の雄大へのお土産を持って……。
 きっと、あのヘリオライダーは、大喜びする事だろう。

 後日、あるクレープを食べた雄大が、呼吸困難に陥り死にかけたと言う噂が流れた。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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