●壱
山陰地方の山奥。
人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
●弐
マシェリス・モールアンジュ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0157)は集まったケルベロス達を見回すと、静かに説明を始めた。
「黄金装甲のローカスト事件を解決したケルベロス達は、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができたよ。
絆を結んだ結果、アルミニウム生命体は、本当は『オウガメタル』という名前の種族で、自分達を武器として使ってくれる者を求めている事。
現在、オウガメタルを支配しているローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由に、オウガメタルを使い潰すような使い方をしている事。
特に黄金装甲化は、オウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為である事」
一呼吸置き、マシェリスは顔に緊張した様子を浮かべる。
「以上のことを知ることができて、オウガメタルに助けを求められたんだよ」
それでね、と付け加え説明を続けていく。
「オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、オウガメタルの窮地を感じ取ったんだ。
オウガメタル達は、ケルベロスに助けを求めようと、ローカストの本星から、ゲートを通じて脱出、地球に逃れてきたみたい。
でも、最重要拠点であるゲートには、当然ローカストの軍勢がいて、そのローカスト達によって、オウガメタル達は遠からず一体残らず殲滅されちゃうかも知れないんだ」
頁をめくる音だけが響く。マシェリスはちらりと資料に目配せしてから改めて続きを話す。
「オウガメタル達が、ローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥。
ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救助とローカストの撃破をお願い。
この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えるだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能になるかも。
しかし、ゲートの位置に関わる事から、ローカスト達の攻撃も熾烈になるよ。
厳しい戦いになると思うけど、皆ならできるって信じてる!」
マシェリスは次の頁をめくり、説明を続けていく。
「ローカスト達は、兵隊蟻ローカスト1体が働き蟻ローカスト二体を率いた群れで、山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っているみたい。
ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎで、逃走するオウガメタルは、銀色の光を発光信号のように光らせるので、それを目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事ができるよ。
降下には誤差があるから、すぐそばに降下できるわけでは無いけど、百メートル以内の場所には降下できると思うから、合流は難しくないはず。
追っ手である兵隊蟻ローカストの戦闘力はかなり高く、ゲートを守るという役割からか、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無いみたい。働きアリローカストは、戦闘は本職ではないが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持ってるよ。
ただ、働きアリについては、兵隊蟻ローカストが撃破され状況が不利だと思えば、逃げ出す可能性があるから注意してね」
持っていた資料を閉じ、マシェリスはケルベロス達を見回した。
「ケルベロスを頼って逃げてきたオウガメタルを全滅させるわけにはいかないよね。絆という縁を結んだケルベロス達のためにも、なんとか助けてあげて!」
参加者 | |
---|---|
英・陽彩(華雫・e00239) |
花凪・颯音(欺花の竜医・e00599) |
カロン・カロン(フォーリング・e00628) |
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479) |
英・揺漓(褪紅め絲游・e08789) |
天目・宗玄(一目連・e18326) |
繰原・マリア(糸繰り人形・e21255) |
北・神太郎(大地の光の戦士・e21526) |
●壱
夜の帳が落ちた山中に、一点の光が現れる。
それは何かから逃げるように離れ、走り、そして輝く。それが何かは説明がなくとも理解できた。目的のものであることも。
ヘリオンからそれを確認したケルベロス達は、光の傍へと着地する。
問題なく行われた直後、いち早く灯りを掲げる英・陽彩(華雫・e00239)。そしてカロン・カロン(フォーリング・e00628)はハンズフリーのライトを腰に装着し、頼りある光はぼうと辺りを照らす。
森の暗さは思った以上。月明りは届かず、当てになるものはケルベロス達の持ち込んだライトだけだった。
これからさっきの光の主を探さなければならない。骨が折れそうだ。
英・揺漓(褪紅め絲游・e08789)は隠された森の小路を使用する。木立はぐにゅりと、まるでケルベロス達の行き先を避けるように歪んだ。自然の摂理を無視したそれは、何より、今すぐ助けなければならない相手、オウガメタルに一刻も早く辿り着くキーになる。
同じく隠された森の小路を使用した繰原・マリア(糸繰り人形・e21255)は、歪み切った森の先を見通して気を引き締める。
「油断せず行きましょう。新たな友を守るために」
ハンズフリーのライトで、木立の先を照らす天目・宗玄(一目連・e18326)は先頭に立って仲間たちの足元を照らす。
(「助けを求められ断るわけにもいくまい。こちらの手助けもしてくれるというなら猶更な」)
木立が避けてくれるとはいえ、足元はぬかるみ、木々の根っこや落ち葉などで歩きにくいものになっていた。
「助けを求めてくる奴らを見捨てるような事はできないよな。オウガメタル、俺達で救出してやろう!」
ヘリオンから降りる前に確認した光の元へ急ぐように、努めて明るく北・神太郎(大地の光の戦士・e21526)は宗玄の後に続く。
目指すは先ほどの光の主。
歪んだ木々に目印としてチョークで印をつけているのは花凪・颯音(欺花の竜医・e00599)。暗視ゴーグルで視界は良好。
急ぐ足並みは揃い、骨が折れそうなオウガメタルの探索はケルベロス達の完全な準備によって確実なものになっていた。
ガサガサと木々を分ける音がする。それを聞いた霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)は、歪んだ木々の先に微かな光を見つけた。
「皆、見ろ!」
一斉にケルベロス達の視線がそちらに向く。
上空からみた光の点。暗闇に包まれた山中に不釣り合いなそれは、まさしく追いかけていたオウガメタル。
その直後、さらに木立を踏む何かの気配。
「……!」
陽彩は息を呑む。オウガメタルの傍にいるということは、追手だ。オウガメタルを滅ぼさんとする、ローカストの見えない影。
各々武器を構え、一刻も早くオウガメタルと合流すべく足を速めた。
「あれでしょうか」
マリアの声で、光の主が暗闇の中に浮かび上がる。鈍色に光るアルミニウムのスライム状の何かが、暗闇の中で光を放ち蠢いていた。点滅して光るそれは上空で目にした、一点の光と同じ光だった。
それがオウガメタルの命がけのSOSだと事前に知らされていなければ、気づけないものだ。
「大丈夫? 私たちに敵対の意志はないわ……。と言うよりも助けに来た、が正しいかな」
「オウガメタルちゃん? 大丈夫、お迎えよ」
陽彩が優しく語り掛け、カロンが手を差し伸べる。オウガメタルらしきスライムは、一瞬躊躇した後、一層強く発光した。
それはまるで、「助けて」と叫んでいるように。
直後、木々をかき分ける音と、木々の間から三体のローカストが突然に現れた。追手が現れたことで、スライム状のものがオウガメタルであるという確信がケルベロス達の心に芽生える。
すでに臨戦態勢であったケルベロス達は、素早く隊形を整えた。
カロンはオウガメタルに振り返り、安心させるようにウィンクする。
「ふふ、ありんこ追い払うまでちょーっと待っててね」
「俺達に任せ、休んでいるといい」
攻撃手として、一歩仲間の中でも突出する宗玄は背中で語る。
「今は俺たちに任せときな! 先に地球に来た仲間たちと会わせてやっからよ!」
神太郎の力強い言葉に応えるように、オウガメタルは発光を止めた。安心したというような、静かな答えだった。
●弐
敵のローカストは三体。
一歩、ケルベロス達の前に立ちはだかったのは、他の二体と比べ明らかな意志を感じる風体だった。
「我は『アリア騎士・ヴォルト』」
短く名乗りあげた兵隊蟻、ヴォルトは、長く節だった腕を振り上げる。戦闘開始の合図。
「邪魔立てするならば、容赦はしない」
「それはこっちの台詞だよ。オウガメタルは助けさせてもらう!」
颯音の言葉に傍らに立っていたボクスドラゴンのロゼも「きゅ!」と勇ましく鳴く。
最初に動いたのは、カロン。軽やかにダンスのように舞い、電光石火の蹴りをヴォルトに向かって放つ。
「蟻駆除って初めてなのぅ。加減間違ったらごめんなさいね?」
──しかし、攻撃が当たる直前にヴォルトを庇うように守ったのは配下のローカスト。これで敵のポジションはひとつ判明した。
「あらあら」
戦闘中はまるで楽しいとばかりに、カロンは肩をすくめて仲間たちに目配せをする。視線を受けた宗玄は静かに頷き、ヴォルトを庇ったローカストに狙いを定める。
作戦通りに動かんと、カロン以外の仲間はローカストたちを囲むように円陣を展開していった。
「どれ、一ついかせてもらおう」
雷を帯びた斬霊刀で神速の突きを放つ。ダメージを受けていたローカストはまともに喰らい、ふらついた。そこへ続けて裁一の、重力を伴う流星の煌めきが如く蹴りが放たれる。当たりは強い。
「蟻は蟻らしく砂糖とかに群がってればいいんです」
未だ倒れない配下ローカストに対し、皮肉をひとつ。聞いているか聞こえていても理解できているかは不明だが。
もう一体の配下ローカストに対し、神太郎は足止めに動く。
「お前の相手は俺だぜ!」
装着したアームドフォートからの主砲の一斉発射。痺れを伴う攻撃、神太郎のポジションによって、足止めはほぼ完璧に行われる。味方同士の連携は功を奏し、後は一体一体確実に倒していけば勝利も見えてくるはず。
「一ツ日之熾/二ツ仏舎利/三ツ御霊屋/四ツ夜之月/五ツいつ来て/六ツに群れて/七ツに啼いて/音無く忍ぶは七ツ影!」
仲間に対する不浄の耐性。螺旋の力を自らのものにして仲間に分け与える、マリアの技。前衛に立つ仲間の力となった。
「皆に力を!」
紙兵の力を鎧に変化させ、攻撃手である宗玄に破剣の力を付与する陽彩。戦闘で己を表現するが、今は堪え味方の回復と守護に全力を尽くす。これもまた陽彩の戦い方。
ヴォルトが動く。アルミ注入、対象を石化させる高価のあるそれを、クラッシャーの代わりに甘んじてディフェンダーである、颯音が受ける。
「さすがに攻撃が重いね……!」
直後に反撃に転じる。スナイパーである裁一の背後にカラフルな爆発を発生させる。それは攻撃の力となり、裁一の力を高めた。
「サンキュー!」
ぐっとサムズアップする裁一にニッと笑みを返し、ローカストたちに厳しい視線を向けた。
颯音の家族、ロゼが攻撃に混じる。鋭い葉のブレスを配下ローカストに吐き出す。葉っぱが突き刺さるが、それを気にした様子もない配下ローカストは傍にいるカロンに襲いかかった。
そこへ間に入り庇うのはマリアのミミック、骸。攻撃を受けた骸も、すぐさま攻撃する。バカっと箱の口を開いて、エクトプラズムで具現化した武器を配下ローカストに振り下ろす。
体力の減った颯音へ揺漓が回復行動をとる。オウガメタルから敵の視線を隠すようにして立った揺漓。魔術切開とショック打撃による緊急手術。颯音の石化はメディック特有のキュアによって解かれる。
やはりヴォルトの攻撃も強力だったため、万全の態勢とまでは癒されない。
(「もどかしい」)
役割とは言え、自分の前で皆が傷付く事を黙ってみているしかできないことに。でもそれ以上に辛いのは激しいポジションにいる皆。それがわかっているから、もどかしい。
「皆、堪えてくれ……!」
少しでも皆が全力で戦えるように、メディックたちが支えるのも大事な役割。
めぐって一巡、再び攻撃に転じるカロン。
「まずは一体、やらせてもらうわよぉ」
体以上もあるガトリングガンを持ち、思い切り連射。蜂の巣にせんと配下ローカストを文字通り、蜂の巣にしていく。
いつも通り、しかしいつもより気合を入れて。ケルベロス達の猛攻に配下ローカストは一体倒れる。
後は作戦通り。狙いは兵隊蟻ローカスト、ヴォルトへ。
逃がさない円陣だけは崩さず、ケルベロス達の攻撃は更に激しいものになっていく。守るものがいる。倒れるわけにはいかない。
しかしそれはローカストたちも同じだった。倒れるわけにはいかない。
必ずオウガメタルを滅しなければならない。
「三千世界、何処であろうと逃しはしない」
ゆらり、刀を持つ宗玄の体が揺れる。観察眼と経験による未来予測。壱を零にする神速の踏み込みから繰り出される不可避で強力な一撃。どこに逃げようと追いすがり、敵を必ず捉える。必中の一撃。
地獄の炎と非才の身で年月をかけて練り上げた荒く無骨な剣技。努力という一言では片付けられない、しかしそれ以外の言葉が当てはまるだろうか。
力を得た裁一の攻撃。縛霊手でもってヴォルトに殴りかかる。直後、霊力で編み上げられた綱が対象を縛る。
「潰れてくださいね~」
ゆったりとした言葉とは裏腹の力強い攻撃。しかしまだ、ヴォルトは倒れない。
ヴォルトは宗玄へと狙いを定める。放つのは節ばった細い腕から放たれる、凶悪な一撃。受ければ一たまりもないだろう。
それを受けるのは、マリアのミミック骸。強力な一撃に、なすすべもなく骸は消える。
「骸!」
「かたじけない」
主人のマリアに礼を言う、一瞬。すぐさま戦闘へ意識を戻す。
神太郎の攻撃がヴォルトに放たれる。両腕の地獄から放たれたリング状のエネルギーを高速回転させて放つ。
「切り裂け! ゼクシウム!」
容赦のないエネルギーの攻撃に、ヴォルトは確実に弱っていく。
残った配下ローカストが動く。動きを封じられているといっても、動ける一瞬を縫うように動いてきた。
狙われるのはやはり攻撃手のカロン。カロンの体力を削り、自らを回復させる攻撃。ヴォルトより軽い攻撃だが、しかし後ヴォルトの重い一撃を喰らってしまえば一たまりもない。
「やるわねぇん」
楽しそうに舞い、敵から距離をとる。
そこへ立ちはだかる、ディフェンダーの颯音。いつヴォルトの攻撃がきてもいいように、今度こそ守るために。
攻撃に転じるのはマリア。螺旋を込めた拳を、ヴォルトに打ち込む。触れるだけで対象を切り裂くほどの威力でもって。
「まだ、倒れませんか!」
ヴォルトからの答えはない。
陽彩が回復へ。癒すは先ほどダメージを負ったカロン。オーラから放たれる癒しは力強く、確かなものとなってカロンを包んでいく。
「ありがとねぇ」
「あともう少しよ! 頑張って!」
癒しと共に仲間を激励する。そう、あと少し。
激励に呼応し、颯音が動く。
「惑乱せよ」
竜鱗の錬薬。癒しの錬金術。特殊な術式でもって短縮された詠唱は、力の付与も同時に行われる。対象は先ほど攻撃を受けたカロン。これで万全まで癒された体力。
しかし次の手はヴォルトだった。が、強力な攻撃は訪れず、ヴォルトは自らを癒す。盾の加護を得た体は、さらに堅く。
「堅いわねぇ」
力を得たカロンの攻撃は強力に。明日から本気を出す意地と矜持。力となってヴォルトの足元から溶岩を噴出させる。
そこへ裁一の追撃。
武器から放たれる、物質の時間を凍結する弾丸を撃ち出した。
「これにて仕舞いにしよう」
最後の止めは宗玄。地獄の炎を纏った弾丸をヴォルトに撃ちこんだ。
ヴォルトは前のめりに倒れる。
起き上がらないところを見て、ケルベロス達は残った配下ローカストのために気づかれないようにそっと道を開ける。万全ではないが、余裕はある。
お互いに目配せし合い、配下ローカストの出方を待つ。
と、最後に残った配下ローカストはケルベロス達が開けた円陣の穴を抜け、背を向けて逃走する。
咄嗟に陽彩は、木々に隠れていたオウガメタルに、
「戻ってくるから、待っていて」
優しく話しかけると他のケルベロス達を追って木々の中へ消えていく。
目標はただ一つ。
●参
来た時とは違う道をライトで照らしながら走っていく。
お互いの走る音、息を聞きながら、先頭を走る配下ローカストを見失わないように走る、走る、走る。
そして何もない場所に、配下ローカストが消えていくのをケルベロスの先頭を走っていた颯音が目撃する。
突然、開けた場所に出た。
全員は顔を見合わせると頷く。
誰ともなく『そこ』を通り抜ける。違和感を覚えたそこを通り抜けると、さらに開けた場所にローカストの大要塞が姿を現したのだ。
「これは……」
揺漓が零す。
ローカストの大要塞では、先ほど戦ったローカストと同じ種類であろう蟻のローカストが動き回っているのが見える。
蟻のローカスト達は内側に向けてバリケードも築いているようで、それは新たなオウガメタルの脱出を阻止する準備をしているようにも見えた。
「撤退しましょう」
ここでこれ以上のことはできない。マリアが言うのに誰ともなく頷き合う。
追われ、疲弊したオウガメタルも保護しなければならない。ケルベロス達は来た道を戻らんと拠点に背を向けた。
山中に戻ってくる。
「何だあれ!」
神太郎が思わず、と言った様子で声を漏らした。
神太郎の指差す先は、先ほどの拠点のほうだった。
ゲートからローカストの軍勢が、次々と現れてきていた。数えきれないほど。先ほど倒した相手とは比べられないほど大勢の。
全員がその様子に息を呑む。
「次から次へと、どれだけ送り込むつもりなの?」
カロンが呟くのに呼応し、思い思いのことを口にする。
「オウガメタルの造反は、私達が思っているよりもローカストにとって大事件なのかもしれないね」
陽彩が頷く。
「あのゲートを破壊しなければ、このあたり一帯はあのローカストの軍勢に制圧されてしまう」
宗玄が唸る。ここのことを一刻も早く仲間たちに知らせなければ、ローカストの被害が増えるかもしれない。
「行こう」
颯音が誰に言うでもなく呟く。傍らにいたロゼが心配そうに家族を見上げていた。
無事に元いた場所に戻ってきたケルベロス達は、オウガメタルを保護すると仲間たちの元へ帰っていく。
一時的な勝利を喜びながら、そして新たな敵の予感を拭いきれないまま。
作者:狩井テオ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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