山陰地方の山奥。
人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
●助け
「黄金装甲のローカスト事件を解決して、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができたのが、つい先日の話」
その事件で絆を結んだ結果、アルミニウム生命体は本当は『オウガメタル』という名の種族で、自分たちを武器として使ってくれる者を求めている事がわかったのだと夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)は言葉続けた。
「今、オウガメタルを支配しているローカストはグラビティ・チェインの枯渇を理由に……使い潰すような、そんな扱いをしているんだ」
特に、黄金装甲化はオウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為だ。
そういった事を知り、そしてオウガメタルより助けを求められたのだとイチは言う。
「で、本題はここから。オウガメタルと絆を結んだケルベロスさん達が、そのオウガメタルの窮地を感じとったんだ」
オウガメタル達はケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星からゲートを通じて脱出、地球に逃れてくる。
だが、最重要拠点でもあるゲートには当然ローカストの軍勢がいる。そのローカスト達によって、オウガメタル達は遠からず一体残らず殲滅されてしまうだろう。
「そうさせないために、皆には救出に向かってほしい」
オウガメタル達がローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥になる。
ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救助とローカストの撃破をという事だ。
「この作戦が成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えることもできるだろうし……それに」
ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能になるかもしれない。
そう、イチは続けた。
「ゲートの位置に関わるからローカストの攻撃も激しいものになると思う。厳しい戦いが、待ってる」
けど、それでも行ってほしいとイチは話を続ける。
ローカスト達は、兵隊アリローカスト1体が、働きアリローカスト数体を率いた群で、山地の広範囲を探索し逃走するオウガメタルの殲滅を行っている。
ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎ。逃走するオウガメタルは銀色の光を発光信号のように光らせるので、それを目標に降下すればオウガメタルの近くに降下する事ができるだろう。
「降下には誤差がでるだろうから、すぐそばにってわけではないんだよね。でも百メートル以内には降下できると思うから、合流は難しくないと思う」
追手である兵隊アリローカストの戦闘力はかなり高い。ゲートを守るという役割から、どんな不利な状況になっても逃げだすことは無い。
働きアリローカストは、戦闘は本職ではないが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っていると言う。
「けど、働きアリローカストは、兵隊アリローカストが撃破されて、状況が不利だと思えば逃げ出す可能性はあるかな」
どう対応するのかは、話し合って決めてほしいとイチは続けた。
「黄金装甲のローカストの事件から急展開なんだけど、ローカストと決着をつける好機かもしれない」
それにオウガメタルが頼ってきた――絆を結んだ仲間の為にもとイチはケルベロス達をヘリオンへと誘った。
参加者 | |
---|---|
藤守・つかさ(闇視者・e00546) |
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998) |
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232) |
喜多・きらら(単純きらきら物理姫・e03533) |
時浦・零冶(幻鬼刀雷・e03656) |
茶菓子・梅太(夢現・e03999) |
大原・大地(元守兵のチビデブ竜派男子・e12427) |
四葉・リーフ(天真爛漫・e22439) |
●接触
発行信号――眼下に時折輝く光がある。
それは助けを求めているしるしだ。
時浦・零冶(幻鬼刀雷・e03656)はその光に瞳細める。
「共生するデウスエクス……これも何かの縁か……」
零冶は眼鏡を外し、懐中時計と共にコートに捻じ込んだ。
その身に纏うのは黄金装甲のローカストと戦った時のケルベロスコートと斬霊刀。
助けを求める光、その一つをめがけケルベロス達はヘリオンより飛び降りる。
(「助けを求められて知らん顔するなら、ケルベロスになっちゃいない」)
その光をめがけて藤守・つかさ(闇視者・e00546)は一番に降下した。
その信号の方向と自分の位置は大まかな方角だが理解している。
四葉・リーフ(天真爛漫・e22439)は暗視ゴーグルをつけ、探索すべく辺りを見回した。傍らでウィングキャットのチビも羽ばたく。
周囲は木々に囲まれており視界は開けているわけではない。
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)も降りる時にみた方へ視線を。するとちかちかと光放つものが視界の端に。
「……あっちだ」
「いざという時はカトル」
わかっている、というようにオルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)の傍でぴょんと跳ねるミミックのカトル。
先を進むのは大原・大地(元守兵のチビデブ竜派男子・e12427)だ。
目指す先へ向け、植物が避け進みやすくなる。
「くっ! 出っ張っている横腹が邪魔で走りにくいなあ。後日、少しダイエットするか……」
草木分かたれた道を進みながら大地は思わず零す。ボクスドラゴンのジンは大地に何か言ったかと言うように視線を向けた。どうやら呟きは一人だけのものだったらしい。
それぞれ進むに問題がないよう灯りを持つ。それは後に起こりうる戦いのためでもあった。
しばらく進むと、先ほどみた光のあたりのはず。するとがさがさと周囲から音がし足は止まる。
「……何か、いる……?」
内心、少し怖いなと思いつつもそれを出さぬようにしながら茶菓子・梅太(夢現・e03999)は呟く。呟きの後一瞬の沈黙。その瞬間、掌に乗るくらいのものがいくつも飛び出してきた。
突然の事に敵かと身構えるが、そうではない。
飛び出すと同時に寄り集まったものはオウガメタル、探していた相手だ。
オウガメタルは柔らかな銀色の身体を揺らし、出会えたことを喜ぶように動く。
「――……救援要請、確かに届いたぜ」
ヒコはその動きにふと笑み零し、つかさも間に合ったなと。
「頑張ったわね。もう大丈夫よ」
未来繋ぐ勇気ある選択に、守護の誓いをとオルテンシアは紡ぐ。
オウガメタルも安心したような様子。しかしびくりと身を震わせた。
それは追手が迫ってきた気配を感じたからだ。
離れた所から何かを探すような物音。だが、あちらはまだ気付いていない様子。
「職業柄、助けを求める声にゃ敏感でね。皆々救ってやる」
オウガメタルへと向け、ヒコは小声で紡ぐ。
「せっかく助けを求めてくれてるんだ、見捨てるなんてできるか」
喜多・きらら(単純きらきら物理姫・e03533)は頷いて、そっちだってこれ以上こき使われ続けるのも辛いだろ? と問う。
それに同意するように揺れるオウガメタル。
「ひとまず今は俺のコートの一部にでもなっておかないか」
零冶は共に戦うかと呼びかける。その声にオウガメタルは、そうしたいのだと言うようにぽてぽてと跳ねた。そして零冶の周囲をくるりと回って見せる。
零冶の周りを動くオウガメタル。しかし今は、どうやら零冶と一緒に戦えない様でもあった。
きららはそんな様子に、ローカストどもは我々が倒すと言い切り、手を差し伸べた。
「自由を手に入れて、一緒に行こうぜ!」
差し伸べた手に、しゅるりとオウガメタルは巻きつく。そして腕を伝い、きららの胴へとオウガメタルはとりついた。
オウガメタルも共に戦うと、その気持ちなのだ。
「オウガメタルさんもやる気だぜ!」
それなら一緒に戦おうときららは笑み、零冶は心強いなと零す。
「グラビティ・チェインを持っていくなら、戦闘に影響ない程度にな」
零冶のその口元には笑み。どんな形でも、共に戦えることは縁繋いだ者の一人として嬉しいものがある。
「お出ましね」
そう言って、オルテンシアは前へと出る。
「おとなしく守らせてよ?」
そしてオルテンシアは背越しにヒコに言葉向けた。ヒコは瞬いて、ふと笑い零す。その笑いにちらりと、視線向けて。
「あら、守らせてくれないの?」
「いんや、頼むぜ」
頼もしい限りだとヒコは言う。倒れたら転がしてでも連れ帰ってねという声に、そうなるつもりなんてないだろうと信あるからこその軽口。
けれどそれも少なくなる。
近づく敵との気配。やることはひとつだなとつかさは頷き、敵の方へと視線投げる。
「さぁさ、自由の為の反逆といこうぜ」
共に、自由になるためまずは追手を払うのみ。
●迫るもの
先手――近くに気配は感じつつも、はっきりと把握していない蟻のローカスト達。
「好き勝手させるかよ――我が手に来たれ、紅き雷光」
その兵隊を狙い、つかさは自らのグラビディを紅い雷へと変え、武器を介して放つ。
兵隊へと刺さるように雷が向かい、その足を止める。
「支配され搾取される今で満足か? 矜持を、誇りを、忘れちまったか?」
つかさが言葉を向けるのは、兵隊蟻が身に纏うオウガメタル。
「忘れていないなら抗え――抗って、勝てよ」
けれど、兵隊が纏う物に変化は見られない。抵抗はしているのかもしれない。だが抗いきるまでの力は、持ちえないという可能性もある。
それぞれが向ける言葉に対し、蟻達の支配するオウガメタルが反応する気配はない。
兵隊蟻はオウガメタルがすでにケルベロスと合流していることを察する。
それならば邪魔者を排するほうが先だ。引き連れてきた働き蟻を前へ先に向かわせる兵隊蟻。
「これで守る!」
先に動いてきた働き蟻へと大地は太陽の大盾を構えてみせる。
働き蟻から向けられたのは蹴り。一撃を代わりに受けた大地はそのまま、仲間を守るべく守りの力を後列の仲間へと向ける。
手にあるは星辰宿る剣。地に描かれる守護星座の光が、仲間達を守護する力となる。
それに合わせてジンも自らの属性を後列の仲間へ。
そしてもう一体の働き蟻はその身すり合わせ破壊音波を前列へ向けて発する。
その音波の響きから、仲間を守るべく前に立って受けたのはオルテンシア。その動きにカトルも合わせ一波防いでみせる。
催眠の音波の影響はない。オルテンシアは簒奪者の鎌を兵隊蟻へ向けて放つ。しかしそれを、働き蟻が弾くように受け止めた。
敵も簡単には、攻撃を通してくれない様子。
「――……往け、お前たち」
声零したヒコの掌から離れるもの。模した折紙に鈴音ひとつ、ふたつ。祝詞に呪式、魔を籠めれば本物相違無い獣達が出来上がる。従順でいて気まぐれな、眠れる神獣は遊ぶように無邪気に駆け抜ける。
「寄って集って追い詰めるよりもやる事が有る筈だぜ」
防ごうと動く働き蟻、だがその足元縫って神獣は兵隊蟻へと襲い掛かる。
「例えば――……防衛戦、とか、な」
攻撃を受けつつ、兵隊蟻もまた、破壊音を生み出す。その音は後列に向けての響き。
その音の響きを邪魔するように大地は庇いに入るがすべてを防ぐことはままならない。
斬霊刀に自らの力を乗せる。零冶の振り払う斬零刀での一閃は幻惑を齎す桜吹雪と共に放たれる。
そして、その幻惑に惑わされる働き蟻達。
その間にダメージ受けつつも破壊音の影響を交わした梅太はライトニングロッドで地を打つ。その動きはのんびり、マイペース。やる気はもちろん十分にある。しかしその表情はうとうと眠たげに無表情だ。
小さく爆ぜる雷に梅太は瞬く。それが広がり生じる壁は自身を含めた後列の仲間達を援護する。その雷の壁は異常耐性を高めるものだ。
「力を貸してくれるって? いいぜ、思いっきりな!」
きららは身に纏うオウガメタルからの力を感じていた。狙いは兵隊蟻ときららが意志を示せばオウガメタルは『黒太陽』を具現化する。
それは彼らの星たる惑星レギオンレイドを照らすもの。それが放つは絶望の黒。進むべき足も重くなる光。
「今回はちょっと余裕がなさそうだぞ……」
敵は強い。背筋震えるものをリーフは感じる。
だがここで引くわけにはいかないことも、知っている。
兵隊蟻を狙い、リーフは自らのオーラを放つ。敵に喰らいつくようなオーラだ。
そしてリーフのウィングキャットのチビは仲間達へと絶えず癒しの風を、清浄なる羽ばたきを送り続ける。
働き蟻達は幻惑に囚われつつ戦う。時折、お互いに攻撃をしあったりもする。
兵隊蟻は攻撃を受けはしたがオウガメタルをきららが纏っていると察し、隙あれば破壊音波を飛ばしてくる。
後列に向く攻撃。そこには癒し手もいる。
皆の回復を任されている梅太にもその影響は及ぶ。しかしその影響受けた場合、つかさが素早く気力飛ばし、手を貸し支えていた。
梅太もまた、それに応えるように皆を支え切っている。
決して威力が弱いわけではない、敵の攻撃。しかし敵の攻撃を回復の力が上回り、すぐさま屈するということはなかった。
戦いはお互い一歩も引かず、けれど少しずつケルベロス達が押し始める。
●攻防
つかさの稲妻帯びた突きを喰らった働き蟻は攻撃に移ろうとした瞬間身の痺れで動けなくなる。
一手奪う、奪われる。それは働き蟻だけでなく兵隊蟻にも起こる。
その攻撃の威力はケルベロスからの攻撃を受け、必ずではないが威力は削がれていく。
目の前に迫った働き蟻の動きが一瞬とどまる。その隙にヒコは兵隊蟻へ向け、番えた矢を放った。
その矢は迷いなく、兵隊蟻の身を穿つ一条。
ふわりと舞う桃色の霧。
快楽エネルギーを濃縮したそれを梅太は大地へと向ける。
大地は攻撃の肩代わりを何度かしており、それは守りに重きを置いてはいるが、変わらず続けば確実に身を削るものになる。
大地は回復するのを感じ、ありがとうと一声向けてまた敵へと向かいあう。
その声に小さく頷き梅太はきららへと声かけた。
「……だいじょうぶ?」
それはオウガメタルも含めて、攻撃の影響はないかと問う声。
きららは頷いて、梅太へと問題ないと示す。
オウガメタルもしっかりと守られている。目の前の敵へも確実にダメージは募っているのだ。
「――ベットは済んだ? それじゃ、答え合わせよ」
兵隊蟻に向かって、オルテンシアは白のカードを掲げる。
ねえ、神様っていると思う?
その問いに兵隊蟻は意味を解しているのかどうか、首を傾げた。けれどもう遅い。
そもそもが破綻した定理の上、勝負に駆けたは一切の現在。
兵隊蟻はその分の、ツケ払うべくその身に痛みと縛りを追う――その筈だったのだが、働き蟻が庇いそれを負う。
けれど、それは今まで何度も守りに入っていた働き蟻にとって最後の挙動。働き蟻は倒れ、崩れ落ちたのだ。
残るのは兵隊蟻と、働き蟻の一体ずつ。
大分終わりも見えてきた。その身のオウガメタルに我の黒も見せてやるぜと声かけた。
「我が力にて黒く染まれ、そして汝は何を見る?」
闇を凝縮した漆黒の波動。それが兵隊蟻を包み込み爆発する。その爆ぜて散る闇色の飛沫は、飛び立つ無数の黒揚羽の姿のようだ。
続けて、リーフの精神が極限まで高まった瞬間が訪れる。兵隊蟻の身の上で爆破がまた起こった。
「お前らなんかに負けないぞー!」
べっと舌だしてリーフは挑発する。
「お前の相手はこっちだ」
ずずっと前にでてくる働き蟻へ向かい、つかさは詰める。
その手にある惨殺ナイフの刃が禍々しく姿を変え敵の身を切り裂く。その傷は深く、働き蟻はよろめいた。
だがまだ動けるとばかりに攻撃仕掛ける。
唯ではやられまいと、その身の内にあるアルミを一点に集めた。その集めた先でもって、敵を穿つ攻撃。
ヒコへ向けられたその攻撃をオルテンシアが割って入り受けた。
その身はすでに満身創痍、続けて同じような攻撃受ければ倒れる危険性も出てくるだろう。
だがそれは、もう相手の頭たる兵隊蟻も同じだ。
「倒れないわ。たとえ伏しても」
なお不退転の意志を、この魂にて――オルテンシアは強かにまだここにあると言葉零す。
大丈夫かと心配しそうになる一瞬。だがその声を耳に捕らえ、ヒコもその心のありように負けていられないと、自分が成すべき事、狙う相手を見据える。この場でもっとも火力を持っているのは自身なのだから。
「蟻が各所に、此れだけの数だ。案外近いんだろ? ……ゲートの場所、さっさと吐いて貰おうか」
その身から放つオーラを食らいつかせながらヒコは問う。
兵隊蟻は手傷追いながら呻くのみだ。決して退くこともなく、またローカストの全てがある場所についても語りはしない。
「しぶといな……」
ジンがブレスを吐く。続けて大地はその杖を小動物の姿に戻し、魔力を籠めて放った。
その一撃に兵隊蟻は身を仰け反らす。
続けて襲い掛かる星の力持つオーラ。零冶の持つ星辰宿る剣より放たれた攻撃。
その身を凍りつかせる冷たさ。身を駆け上がるそれを兵隊蟻は為す術無く受けるしかない。
零冶はもう終わりだな、と紡ぐ。
その言葉通り、身を凍らせ兵隊蟻は崩れ落ちた。
●届いた手
兵隊蟻が倒れたのを目にし、残っていた働き蟻は戦うことをやめ、そそくさと森の暗がりへと消えていった。
「逃げていったみたいだぞー」
リーフはもう姿が見えないぞーと言いつつ、もう少し周囲を見回してみる。
けれど再びその姿を捕えることはなかった。
(「追ってみたいと、思ったけれど……無理そうね」)
ゲートのその向こうは、未踏の地。その景色に焦がれ魅入られそうになる。だがふと、傍らでぴょんと跳ねる従者に、ふいにこの場所に引き戻される。
それは一緒に行くと言っているようでもあり、またここに引き留めようとしているようでもある。
「今は、追えないな」
その心をまた、察してか。ヒコが零した言葉にそうねと、オルテンシアは頷いた
追う事も可能だが、今は助けを求めたものを守るほうが大事。
ヒコはもう危険はないと表情緩める。
戦い終わり、オウガメタルはきららより離れ、ふゆふゆと動く。
「お前もおつかれさん。それと、ようこそ地球へ……歓迎するよ」
つかさの言葉に身を揺らす。それはまるでありがとうと、言っているようだった。
「……ふるふる、してる」
梅太はちょんとオウガメタルに触れてみる。その感触はなかなか不思議なものだ。
けれど、まだ安心はできないと零冶は紡ぐ。
「そうですね……ここから離れたほうがよさそうだ」
大地は周囲の様子を伺う。
追ってきた敵は倒したがまだ他にも敵はいるはずだ。
助けたオウガメタルを伴い、ケルベロス達はこの場を後にした。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 5
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