オウガメタル救出~爪鎧同仇

作者:雨屋鳥


 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。


「オウガメタル。その名称をご存じでしょうか」
 ダンド・エリオン(オラトリオのヘリオライダー・en0145)は集まった面々に向けて問いをかけた。
 ローカストに使役されていたアルミニウム生命体、その種族が自分達をそう呼んでいるのだ。
「黄金装甲のローカストの事件。その中で出動していただいたケルベロスの方々が、驚くことにオウガメタルと絆を結ぶことが出来ました」
 その中で名前の他に、種族が壊滅する危険のある黄金装甲化を強いていたりと、とても共生とは言えない関係であるということ、そしてケルベロスの助けを、そして、ケルベロスの助けになる事を望んでいることが判明した。
「そして、今。
 オウガメタルと絆を結んだケルベロスの方々は、彼らの危機を感じ取ったようです」
 彼らは、ローカストの本星からゲートを通じ地球へと逃亡してきている。戦力そして情報である彼らを追手のローカストから助け出す事。
 それが今回の任務だ。
「敵ローカストは、兵隊蟻ローカスト一体が働き蟻ローカスト数体を率いた小隊を数多く展開しています」
 山陰地方の山々を幅広く捜索し、逃げたオウガメタルを掃討しているとのことだ。
 オウガメタル達は、銀の光を救助信号のように放っている。
「それによって、ヘリオンからでも近くに降下出来ます。誤差はあるでしょうが、恐らく周囲百メートルに到着できる計算です」
 つまり、合流は難しくない。ただ、救難信号の光にはローカストも気づくだろう。迅速な合流が不可欠だ。
「ゲートの守護を担う兵隊蟻ローカストの戦闘能力は高く、逃げ出す事も無いでしょう」
 働き蟻ローカストは兵隊蟻ローカストには劣るがそれでも脅威だが、こちらは戦闘が本職ではないためか、兵隊蟻が撃破されれば逃げ出す事もあるかもしれない、とヘリオライダーは予測している。
「彼らは私たちと同じくローカストと敵対する仲間です」
 ダンドは断固とした言葉を紡ぐ。
「恐らく、逃亡の中で既に何体ものオウガメタルは討たれてしまっているでしょう。
 しかし、それでも諦めずに、危険を承知で助けを求める彼らを見殺しにするわけにはいきません」
 彼はそう締めくくった。


参加者
九六九六・七七式(フレンドリーレプリカント・e05886)
マチルダ・ベッカー(普通の女子大生・e09332)
ソル・ログナー(夜闇を断つ明星・e14612)
黒澤・瑠璃(彼岸花・e17421)
兎塚・月子(蜘蛛火・e19505)
御巫・花凛(煉獄華・e23171)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)

■リプレイ


 ステルスを解除したヘリオンから数人の人影が落ちていく。
 暗闇の森の中には、波間の星のように煌めく銀光がまばらに散っている。その光の近くへとパラシュートもなしに彼らは降下していった。
「作戦は迅速に、電撃戦だ。……行くぞ。」
 重力に導かれるまま深く沈みこむ腐葉土の大地に降り立った中の一人、ソル・ログナー(夜闇を断つ明星・e14612)が言い、それに頷いたカジミェシュ・タルノフスキー(機巧の翼・e17834)が甲冑を静かに鳴らし上空を見つめた。
 森の中からはオウガメタルの燐光は、木々に覆い隠され、見えなくなってしまっていた。だが、彼らは焦らない。
 カジミェシュの見上げた空でちかちかと光が点滅し、移動を始めた。と、同時に彼らはそれを追うように走り出す。九六九六・七七式(フレンドリーレプリカント・e05886)が不意に耳に手を当てる。女性の声が彼女の脳内で反響していた。
「見えてます。少し急ぎましょう」
「ん、オッケィネ」
 七七式は、通信の声にうなづくと暗視スコープを下ろして視界を確保する。
 その通信の相手、上空のマチルダ・ベッカー(普通の女子大生・e09332)は暗い森の中で光るそれに向かって一直前に飛んでいた。
「なかなか不思議ですねぇ」
 緩やかに言う彼女が下を見ると、仲間のケルベロス達が自らの後を追ってきている。本来であれば障害物の多い森の中からを上空のマチルダに追随するのは困難なはずだが、彼女の眼下では奇妙な光景が広がっていた。
「近いみたいよ」
 先頭を走るバジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)が空からの光の点滅パターンを読み取り、言う。
 奇妙な光景。彼女の進む先の植物が意志を持つかのように空間を開け道を作り上げているのだ。
 彼女が通り過ぎれば、森は元のように閉じていく。だが、仲間のケルベロス達は木々が閉じる前に開けた道を進む。
 数秒の疾走の後、彼らの目にもオウガメタルの放つ銀光が見えた。
「居タネ!」
 暗視スコープを装着していた七七式が、いち早くそれに気づき速度を上げた。
「間に合ったね」
「……っち」
 御巫・花凛(煉獄華・e23171)が半液体状で逃げていたオウガメタルを肉眼で捉えると同時に、周囲を警戒していた兎塚・月子(蜘蛛火・e19505)が舌打ちを放つ。
「くるぜ」
 彼女の瞳は、たとえ些細な光でも、陽光に照らされる空間と同様に視認することが出来る。
 十数メートル先、木々の間から走り寄るローカストの姿を彼女は捉えていた。
 その方角へと、ソルが振り払ったエアシューズから炎の弾丸を打ち出し、ローケストへと先制攻撃を仕掛けた。


「……先を越されたか」
 炎の弾丸は夜闇の中、ローカストの体に爆ぜた。ローカストの小隊、その先頭を走っていた個体が言葉をこぼした。
「はやく、ここに」
 花凛が服装の唯一の収納スペースへとオウガメタルを誘導する。1立方メートルの物体までであれば入れる事の出来るそこへとオウガメタルは形を四角く変形させて潜り込んでいく。
 その瞬間、ケルベロスはオウガメタルに注がれていたローカストの敵意が、自分達へと移るのを肌で感じ取った。
「ま、その方がはっきりしてええかいな」
 ケルベロスとオウガメタルを殺す。ローカストの目的は明確だ。
 月子が幼げな顔に笑みを見せ空を仰ぐと、上空におぼろげな光の球体が現れる。遠近感を狂わせるような明滅にローカスト達は身構えるが。
「これ自体は痛いもんじゃあないで」
 安心させるように月子が言う。
「仲間の危機に、じっとしていていいの!? 貴方達も一緒に行きましょう! 支配する関係なんて、仲間でもなんでもないわ!」
 互いの距離をはかりながら戦闘の発端を探っていた両者の間に、幼い声が響いた。黒澤・瑠璃(彼岸花・e17421)がローカストの纏うオウガメタルへと離反を促す。
「これ以上無理やり従わせられることはないよ。手伝うから、頑張って」
「貴方たちも助けたいの。大丈夫、必ず守るわ」
 瑠璃の言葉に、花凛、バジルが続く。そこにカジミェシュが手を差し伸べた。
「ケルベロスは――地球は、君たちを歓迎するぞ!」
 その呼びかけに返る返答はなかった。ただ、兵隊蟻のローカストの持つオウガメタルが、何かを伝えるようにかすかに蠢いたように見えた。
 だが、支配から逃れる事は出来ないのか、その意志は伝わってこない。
「舐めるな人間っ!」
 指揮官は自らのオウガメタルが離反出来ない事に確信を得たのか、勇ましく声を放つ。と同時にかき鳴らされる異常な音圧が放たれる。
 強烈な音波は地面を掘り返し、木の根を裂いて被害をもたらしながらケルベロス達に襲い掛かった。
「お引き取り願おうっ!」
 爆ぜた土の雨に目もくれず、ソルが駆ける。木の幹を蹴り、宙で体を躍らせるように兵隊蟻の前に陣をとるローカストへと鋭い蹴りを放つ。だが、直前に腕へと銀の装甲を纏わせたローカストは撃ち落とされる蹴りの一撃に強靭な腕を打ち合わせ、その攻撃をかわし切っていた。
 振り上げられるのは反撃の腕。ソルへと落とされる銀の鎚に跳び込んだカジミェシュの振るった盾がその軌道を逸らす。痛みに痺れるはずの腕を頭上へと掲げ上げ曲刀の刃を光に照らす。
「我はカジミェシュ、汝らの敵なるぞ! さあ! この首獲らんと欲する勇士や誰ぞ!」
 名乗りを上げたカジミェシュに一瞬、意識の向いたローカストへと闇に突如現れた炎竜の幻影が兵隊蟻へと業火を吐いた。


 七七式は自分の放った攻撃が漸く指揮官の体を蝕み始めたのを確認すると、仲間へと放たれる攻撃を庇うローカストへと槍を構えた。
 銀の刃が闇を走って血を散らす。月子へと放たれた爪の一撃を瑠璃が庇い、月子は痛む足を踏みしめる。
 視界を空間ごと揺らす音波の波が激しく遅いくる中、かき消された仮初の月を再び顕現させた彼女は惨殺ナイフを握り、盾となるローカストの傷を抉るように振るう。と同時にマチルダの召喚した氷の槍兵が襲い掛かった。
「お願いします」
 マチルダの声に行った騎兵の身を省みぬ突進はローカストへと激突し、激しく澄んだ音を響かせながら氷が霧散する。氷の兵隊を打ち砕いたローカストの懐へと忍び込んだ月子は、鋭く惨殺ナイフを閃かせ、その胸へと深く刃をつきたてた。彼女の肩から血が吹き上がる。
 月子の肩口へと、木々を縫うように接近してきた別のローカストの顎が深く食い込んだのだ。
「……っ」
 オウガメタルによって強化された顎は、月子の肉をいともたやすく食い破る。バジルがその傷口へと魔力による縫合を行い、応急処置を施す。
「っすまんねえ」
「あまり無茶はしないでね」
 バジルの言葉に、苦笑をこぼして月子は再び走る。
 状況は芳しいとは言えない。どの相手が特別厄介というわけでもない。
「嫌な感じだね……」
 じわじわと、足元が崩れていくような錯覚を振り払い花凛はバスタービームをローカストめがけ発射する。それと同様の焦りを瑠璃も覚えていた。
 戦闘開始時に描きだした星の加護はすでに破られ、ボクスドラゴンのラヴァをその保繕と向かわせている。敵と多く力を交える立ち位置にいる彼女は、自らの消耗が激しい事の実感を確かに持っていた。体中に刻まれ血を流す傷に、指先に寒気すら感じ始めている。
「……でもっ」
 彼女は、恐怖を振り絞って笑う。
 瑠璃の放った悪夢を生む黒色の魔力弾が、ローカストの一匹に直撃し、その銀に固めた体が揺らぐ。
 そこへ、カジミェシュが切り掛かる。応戦するローカストの爪をタワーシールドで押し返すと、体制の崩れたローカストに体重を乗せて盾ごと体当たりをかました。
「ソル!」
「応っ!」
 短い一言。互いに浮かぶのは信頼に満ちた笑み。
 仰け反ったローカストへと、ソルが黒槍を投げ放つ。食らった魂を槍の形に押し込めたそれは、高く空の最中で無数に分かたれ降り注いだ。
 腕を千切り、足を貫いて、腹を抉り取る。地面が針山のようになる攻撃。
 それでも、黒の雨の後、ローカストは立っていた。倒れれば、待つのは自分だけの死ではないと語るように。
 マチルダがバスターライフルの砲口をそれへと向け、助けようと思っていたオウガメタルに言う。
「……ごめんなさい」
 放ったエネルギー弾はオウガメタル諸共ローカストの体を食い破った。


 最後まで攻撃を庇い受けた仲間が倒された事に動揺したのか。一瞬の停滞がローカストを襲った。
「……我ガ名は、アリア騎士アゴグナンド」
 ローカストが言う。それはカジミェシュの名乗りに応えたものだったのか。
「逃しはせん」
「っ黒澤さん!」
 花凛が唐突に声を上げた。瑠璃がその声に反応するよりも早く。
「……ぁ」
 もう一体のローカストの爪が彼女の胸を貫いていた。消耗していた所へと突き立てられた生命力を吸い上げる爪に彼女は抗うことも出来ず意識を刈り取られていた。
「……くそっ」
 カジミェシュがソルへと回復の矢を打ち放つと同時、矢の如く線を描くように突き出された爪が彼を貫いて、その体内に石化の毒を流し込んでいく。
 咄嗟に剣を振るい、爪を打ち払い残る爪を引き抜くが、毒にか疲労にか、彼は膝をついてしまう。
「カジミェシュさん!」
 バジルが彼にヒールを施し、その損傷の深さに息をのんだ。彼のボクスドラゴンのボハテルも彼の回復の為に額の宝玉を輝かせている。
「……背中に、守るものがある」
 バジルの表情から彼女の言いたい事が読み取れたのだろう、彼は呟いて剣を杖代わりに立ち上がった。
 それを止める事は出来ない。前線が瓦解すれば、一体敵を屠った状態であっても敗北へと雪崩込む。それは更なる傷を招く事になる。
 彼女に出来るのは、ひたすらに支援であった。
 呼び覚まされた獄炎がローカスト、アゴグナンドへと突き刺さる。
「残ルハ、指揮官っ」
 激しく消耗した中であっても極めて冷静に、七七式は狙うべき標的へと攻撃を放っていた。
 敵の殲滅ではなく、オウガメタルの救出。その為に必要なのは指揮官であるアゴグナンドの撃滅。
「おい、聞こえてンのか。てめェら其れでいいのか!利用されたま――」
 放たれる空間が歪む程の音圧の壁に言葉は掻き消える。脳を揺さぶられながらもソルは、声を張り上げた。
「意地があンなら、飛び出して、こっちきやがれ!」
 叫び、炎を纏う蹴りを叩きこむが、容易く躱される。その声にやはり、オウガメタルは答えない。
 月子が地獄の炎弾をアゴグナンドへと打ち放つ。
 自らの消耗、仲間の消耗を鑑みて、少しでも余裕を持つための苦肉の策であった。
「でも、やるしかねえかんなあ」
 強力な相手から流れてくる生命力は少ないものだろう。それでも、ないに越したことはない。と、放った炎弾は迫るアゴグナンドの脇を通り過ぎ、地面へと着弾して炎を散らした。不発。それを悟った時には既に遅く。
 銀の大顎が開いて、彼女の腹部を大きく切り裂いた。


「離れてっ」
 花凛は倒れ込んだ月子からアゴグナンドを遠ざけるために術式を展開した。
 外敵の腹を裂き、そこへ石を詰める。童話を基にした術式は、それを現実へと具現化させる。
「……グ……っ」
 アゴグナンドの腹に裂傷が生まれ、その中へと岩石が生成され傷はふさがる。
 幻影にも似た異常にアゴグナンドは思わず距離を取っていた。花凛がその隙に月子へと駆け寄ると同時に、マチルダが氷の兵士を差し向けた。
 氷兵が体を散らすと同時に七七式が残虐な光を照り返す刃を閃かせアゴグナンドの傷を抉る。
 七七式は、この状況が続けば、相手に植え付けられた数多くのグラビティの楔の助けもあり、打破は遠くないと判断していた。
 その、背後で、鉄が裂けるいびつな音と共にカジミェシュがローカストの牙に血潮を吹かせながら、ついに倒れ伏したのだ。
「……っ」
 仕掛けなければ、勝てない。
「攻撃ヲ!」
 七七式は瞬時に判断を改める。
 防御を担っていた仲間は倒れ、前衛にて攻撃を行うソルの攻撃は、その大半が狙うべき相手に届かないものとなっている。彼が倒れれば、彼に集まっていた攻撃は後方から攻撃を放っていたケルベロス達に放たれる事となる。
 そして、半数以上の戦闘不能は、事前に決めていた撤退ラインだ。この状況から最もあり得るのは、殿を失った撤退。
「……づぁ!!」
 ソルが烈火の蹴りをアゴグナンドへと放つ。直前に放っていたものと同じ攻撃ではあったが、その身に刻まれた数多くの攻撃がその身を蝕んで、攻撃も回避すらも出来ぬ大きな隙を生じていた。そしてソルをバジルのヒールの光が包みこむ。
 七七式が竜の幻影を喚び煉獄を現界させ、マチルダはバスターライフルから光弾を打ち放つ。
 働き蟻のローカストが駆ける。石化の毒を生成する銀の爪がソルへと突き刺さるが、バジルの回復がその攻撃をしのぎ切るだけの体力を彼に残していた。
 そのローカストの攻撃とほぼ同時。花凛が魔法の光線を放ってアゴグナンドへと畳み掛ける。
 放たれた光は、アゴグナンドと名乗ったローカストの体を焼き、その外骨格を砕き割った。その体は、静かに揺れるとついに大地へと崩れ落ちた。


「気の狂う、同胞を……使い潰し、共に生きるべき、隣人の生き血を……啜ろうと」
 その体はまだ足掻いていた。そこには生きる執念がひたすらに込められている。
「……渇望した世界を、あの頃を取り戻す……ために」
 負けるわけにはいかない。と、続いたのだろうか。
 すでにもう一体のローカストは姿を消していた。
 救われたのは、相手かこちらか。数の差に慄いてか逃亡を選択したのは、あれが戦闘に職をおいている物ではないからだろう。
 例えば、目の前の兵士であったならば戦闘を継続していたはずだ。そうすれば、敗北を喫していたのは。
 もはや、戦う力も残っていないようなアリア騎士は、聞こえぬ声を徐々に小さく弱らせている。
「……?」
 気付いたのは意識を取り戻して間もない、瑠璃だった。
 アゴグナンドの砕けた四肢から銀色の半液体が滲み出て、ローカストの体を覆い始めたのだ。
 束縛の恨みを晴らそうとするのか。体を覆ったオウガメタルは、酷く弱々しい光を放ち始めた。
 余りに虚弱なヒールの光。それを見たケルベロスは理解した。
 逆らえずに従っているオウガメタルもいれば、いつかの共栄を信じてローカストと共にあろうとする個体もいる。
 呼び掛けに答えられなかったのか呼び掛けに答えなかったのか。それは最早明らかだった。
 ソルが剣を振り上げる。星の加護宿る剣は熱した蝋細工のような脆いオウガメタルの装甲を抵抗なく貫いて、彼らを、殺した。
 被害が大きい。数人意識を取り戻しても動けない仲間もいる。
 彼らは、偵察を諦めざるを得なかった。
 ローカストの逃げた方向へと視線を向けながらも、彼らはヘリオライダーの待っている筈の場所へと向かった。

作者:雨屋鳥 重傷:黒澤・瑠璃(彼岸花・e17421) 兎塚・月子(蜘蛛火・e19505) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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