オウガメタル救出～脊梁北部、陰の山地で

■リプレイ

●接触
　山陰地方の山奥。オウガメタルを救出すべくケルベロス達はヘリオンから飛び降りた。
　オウガメタルが発する銀色の光を目標に降下し、その正確な位置を捜索する。
　上空から捜索するのはルヴィル・コールディ（ゼノアのサーヴァント・e00824）と神喰・杜々子（どらごにーと・e04490）の２名。翼を広げて上空から銀色の光を探す。
　残りのメンバーは上空からの指示を受けて現場へ向かう。砂星・イノリ（奉唱スピカ・e16912）と響命・司（霞蒼火・e23363）を先頭に、隠された森の小路を活かして森の中に歩きやすい小路を作って移動する。
　朔頼・小夜（東天紅に浮かぶ月・e01037）が顔を上げれば、そこに浮かぶ派淡い光を放つ月。しかし、その光は森の中にいる彼らを照らすにはあまりに弱すぎるため、ランプで明かりを灯している。
　アイズフォンで上空の仲間からの連絡を待つオーフェ・クフェロン（人類好きの人形・e02657）。その少し前方には小花衣・雅（星謐・e22451）、と黒谷・理（万象流転・e03175）。２人ともオウガメタルを庇う心構えはできており、上からの連絡を待つ。
　その時だった。上空から銀色の光を見つけたと連絡が入り、上空からの誘導で現場へと向かう。そこはあまり離れていないが、木々のせいで上からでないと見つけ辛い場所。
　ルヴィルと杜々子が降り立ち、他のメンバーが到着したのはほぼ同時。そして、兵隊蟻がオウガメタルへ接触し、攻撃を仕掛けようとするのもほぼ同時だった。
　だが、そこへ割って入るのは雅と理。兵隊蟻は寸でのところで攻撃を止めた。
「こんな真夜中にまで追いかけてくるなんてご苦労な事ね。でも、オウガメタルは私たちが守るから」
「お前らの事自体はそこまで嫌いじゃねーよ『仲間の為、同族の為』って、俺たちとさして変わらないしな。だが、俺達もこいつらも滅びるわけにはいかない」
　兵隊蟻達の注意が彼らに引き付けられている間に小夜とイノリ、そしてルヴィルはオウガメタルへ語りかける。
「大丈夫、わたしたち、はケルベロス」
「ボク達はキミ達の気持ちに応えたい。大丈夫だよ」
「あいつらに追われてんだよな？　助けに来たぞ！」
　ケルベロス達の意志を感じたオウガメタルは銀色の光をふっと消した。
　そして同じくケルベロスの決意を読みとった兵隊蟻はケルベロス達へ朗々と語りかける。
「我はアリア騎士ディバジェス。その者達を手助けするのであれば、狂愛母帝アリアの騎士の名の下に、まずは貴殿らを始末致す」
「邪魔をするな？　逆だぜ。テメエ等こそ邪魔するな」
　ディバジェスの言葉に司が返し、ウイングキャットのゆずにゃんが前列へと駆け出す。次いで皆も戦闘態勢を整え、オウガメタル救出戦が幕を開けた。

●救助
　ディバジェスは体内のアルミニウム生命体を解放し、生体金属の鎧で自らの身体を包む。
　防御力を向上させたそれへ、ルヴィルとビハインドのエメラルディアは攻撃を仕掛ける。だが、それを庇うように割って入る働きアリＢ。ルヴィルの音速を超える拳とエメラルディアの念が籠った石を喰らう。
「熱く、燃え滾れ」
　雅が呼び出す炎纏いし蛇神。熾る蛇（ナハシュ）でディバジェスを火で覆い尽くそうとすれば、働きアリＡが庇って代わりに炎にまみれる。
　ウイングキャットのアステルも翼を広げて羽ばたき、前列の邪気を祓う。
　攻撃をかばった働きアリ達へと杜々子がドラゴンブレスを吐く。働きアリ達は炎の息に包まれ、焼かれる。
「戦女神……貴方の吐息を白き闇に……」
　小夜は戦女神を召喚した。その吐息は凍てつく氷の礫、戦女神の吐息（グンシンノトイキ）。彼女はディバジェスへと攻撃を加える。
　炎が消えた働きアリＡは前衛へ向けて腕からカマキリの刃さながらの鎌を展開すると斬りつけた。同時に体力を吸い取り、回復させる。
　働きアリＢはその最中にアルミニウム生命体を解放させて生体金属の鎧で自らを防護しつつ傷を癒す。
　攻撃の手が止むと理は爆破スイッチを押す。背後にカラフルな爆発を発生させて前衛の士気を高めて同時に体力を回復させた。
「出来る限りみなさんの負担を軽減できる様務めます。ですから、わたくし達の『仲間』を救いましょう！」
　オーフェは激励の言葉を皆へ伝えて治癒特化ドローン「ザニドローネ」を転送召喚すると、小夜の傷を治療する。
　勝手知ったる森の中。自然には慣れているイノリは木の反動を利用して威力を付けたスターゲイザーでディバジェスを狙うが、それを受けるのは働きアリＢ。
　同じく、ディバジェスを捕縛すべく司が鎖を伸ばした。しかし、それに巻きつかれたのは働きアリＡ。ともにディバジェスを護る。
　護られたディバジェスは生体金属の鎧で自身の守りをさらに強固なものとした。
　それへ向けてルヴィルは斬霊刀を振るう。非物質化した斬霊刀による斬撃はディバジェスへと放たれるが、働きアリＡが割って入ってそれを受ける。
　続けて雅がシャイニングレイを放つ。広げられた翼から放たれた聖なる光はディバジェスへと降り注ぐ。
「調子にのるな本気出すぞー！！」
　杜々子がぼわりと極光のドラゴンブレスを放った。光り輝く極低温のドラゴンブレスの範囲は狭いが、その分高威力。
　光と痺れる冷気に打たれたディバジェスを狩るべく小夜は鎌を構えて振り回た。桃と翡翠の淡い光を放つ軌跡を描く攻撃を代わりに攻撃を喰らったのは働きアリＢ。
　小夜は斬りつけると同時に生命力を奪い取って受けた傷を完全に癒す。
　庇いに入った際の細かなダメージが積み重なったことで働きアリＢは戦闘不能に陥り、地に伏せた。
　そんな小夜へと働きアリＡは高々と跳躍して蹴りを放った。まともに入った攻撃のせいで高まっていた士気が元に戻ってしまう。
「凡人発起し千日伏臥せしめれば、即ち人の箍を越えたる也。往くぞ――」
　臥験（フクゲン）。理は練り上げた降魔の力を拳に篭め、まっすぐな信念の一撃をディバジェスへと撃ち込んだ。
　硬化した鎧のおかげで派手に吹っ飛ぶとまではいかないものの、のけぞるディバジェス。
「衛生支援要請。指示、対象の治療」
　オーフェは治療特化型ドローンを呼び出した。そして受けたダメージを薬液などで手早く慎重に、そして確実に治療していく。
　のけぞったディバジェスへイノリはバスターライフルで狙いを定め、凍結光線を放った。直撃し、ディバジェスの腕が少し凍りつく。
　凍結箇所を斬り広げようと司がチェーンソー剣を振りかざすが、代わりに働きアリＡがそれとゆずにゃんが飛ばした輪っかを受けた。
　ディバジェスは働きアリＡへ防護を任せたまま、なおも自らの強化に勤しむ。
　ハウリングフィストを叩き込もうとルヴィルが拳を振るうが、それは働きアリＡによって阻止される。
　代わりに喰らった働きアリＡは瀕死の模様。あと一撃で倒せると判断した雅は熾る蛇で焼き尽くし、働きアリＡは灰と化した。
　残るは本命が１体。働きアリ達が攻撃を庇っている間に装甲を強化していたディバジェスのバッドステータスを与え増やしてケルベロス達は戦闘を続ける。

●死闘
　杜々子が極光のドラゴンブレスを吐き、小夜は戦女神を召喚し、理は降魔の力を拳に篭める。
　三者三様の強力な攻撃を喰らったディバジェスを追撃するイノリの蹴りと司の鎖。
　攻撃ラッシュでディバジェスが動きを止めている隙に小夜とアステル、そしてゆずにゃんは敵の攻撃に備えて皆の傷を癒した。
　ケルベロス達が飛び退くと、ディバジェスは羽を擦り合わせた。つんざくような音が前衛を襲う。催眠の要素もある不快な音だが、ウイングキャット達の清浄の翼重ね掛けのおかげもあって難を逃れることができた。だが、ダメージはそれなりに喰らっている。
　お返しと言わんばかりに雅は素早くディバジェスへと近付いて強烈な回し蹴りで薙ぎ払う。
　生体金属の鎧が少し剥がれたディバジェスをルヴィルとエメラルディアがすかさず攻撃する。ルヴィルが先端は赤いが徐々に黒味を帯びる尻尾を翻して斬霊斬を放ち、エメラルディアは水色の髪に映える白い羽を揺らして心霊現象を見せる。
　動きを止められたディバジェスを杜々子は竜爪撃で撃ち貫いた。またしても剥がされる生体金属の鎧。
　理はそこを目掛けるようにオーラの弾丸を放った。それはディバジェスに喰らい付き、ダメージを与える。
　この最中、体力の低さ故にかなりのダメージを喰らっていた小夜は裂帛の叫びで自らを鼓舞して体力を回復させた。
　同じくオーフェもウィッチオペレーションを利用して杜々子の体力を大きく癒す。
　狙い撃つように司は黒い鎖を伸ばす。精神操作で伸ばされたそれはディバジェスを締め上げて自由を奪う。
　それを目掛けて電光石火の蹴りを放つイノリ。激しく鋭い蹴りはディバジェスを痺れさせてなおかつダメージを与える。
　しかし、アリア騎士は全く怯まない。
　棘を突き刺そうとイノリを狙うが、それを庇うのは雅。アルミ化液を注入され、大ダメージを喰らうとともに注入箇所が石へと変わってしまう。
　すかさず雅はシャウトで貼りつく石を吹き飛ばして若干ではあるが体力も回復させる。同時にアステルも羽ばたいて前衛の邪気を祓う。
　ガードを崩すべくルヴィルはハウリングフィストで打ち砕く。音速を超える拳をもってしても吹き飛ばすことはできず、装甲を剥がしてダメージを与えるだけ。
　杜々子もまたディバジェスの防御を崩すために竜爪撃を放つ。爪を超硬化して貫き、鎧をまた一枚剥ぐ。
　脆くなったところへと小夜が達人の一撃で斬りつけ、そこを目掛けるように理が放つは気咬弾。
　さらにダメージを重ねるべくイノリが高く飛び上がって蹴りつける。彼女が飛び退けばすぐに司がハウリングフィストを打ち込んだ。
　ディバジェスへと攻撃が集中している間、オーフェは治癒特化ドローンを呼び出すと雅の石化状態を治療した。傷を完全に塞ぐことはできなかったものの、状態異常の治療には成功する。
　その時だった。ディバジェスは羽を擦り合わせて破壊音波を放つ。それは前衛へと向けて。
　音は皆の体力を削っていく。その最中、真っ先に脱落したのはゆずにゃん。くたりと力なく倒れ込む。
　当たり所が悪く大ダメージを受けた杜々子も戦闘不能に陥った。
　同じく小夜も一度は戦闘不能に陥り地に伏せるが、魂が肉体を凌駕して立ち上がる。
　前衛への激しい攻撃のために回復手段を持つ者はそれを利用して自分もしくは他者の傷を少しでも多く癒そうとする。
「光よ、来い」
　ルヴィルは炎の色にも似た赤い光――夕暮れのような一瞬の光を放ち、味方の傷を癒す。
「ボクも手伝うよ！」
　イノリはオーフェに声を掛けると歌を奏でる。未来を守ると信じる者の歌「TRUST」。それは魂に訴えかけ、歌を聞いた者達を癒す。
「まだ倒れるには早いぞ！」
　理もまた、気力溜めを使って回復させる。
「みなさんありがとうございます。オウガメタルを救出するためにここで負けるわけにはいきません！」
　オーフェもウィッチオペレーションで一番傷の具合が酷い小夜にウィッチオペレーションを掛けて大幅に負傷を回復させた。
「テメエ、やってくれたな」
　司は吐き捨てるようにそう言って鎖を伸ばし猟犬縛鎖で大分装甲の薄くなったディバジェスを締め上げた。

●終幕
　ディバジェスは鎖を引きちぎって拘束を脱し、狙うはまだ万全な状態ではない小夜。
　彼女を狙って突かれた棘は庇いに入ったルヴィルが受ける。アルミ化液を注入されるも幸いなことにダメージは致命傷には至ることはなかった。
　ディバジェスを蹴飛ばして距離を取ったルヴィルはシャウトで体力を回復させ、オーフェも治癒特化ドローンを飛ばして治癒と治療を行う。
　その最中も他の皆はディバジェスへと総攻撃を仕掛けている。
　雅がシャイニングレイで撃ち、理はオーラの弾丸を撃ち込み、イノリが飛び蹴りで蹴飛ばしたところを司がチェーンソーで斬り刻み、小夜は治療を受けつつ戦女神を召喚して攻撃をする。
　猛攻を受けたディバジェスは明らかに弱り切っていた。それは自身もわかっているだろう。もしかすれば一撃にも耐えきれないかもしれない。
　しかし、アリア騎士に降伏の文字はありえない。最後まで抵抗を試みる。
　最後の力を振り絞り、羽を擦り合わせた。不快音が戦場を包み込む。
　立て続けの攻撃に耐えきれなかった小夜がここで力尽きてしまった。
　他の皆は被害をここで食い止めようと必死に耐える。
「今のうちです！」
「みてえだな」
　イノリと司はうなずき合うとそれぞれ攻撃を放った。冷凍光線と黒い鎖が羽を擦り合わせていたディバジェスを包み込み、締め上げた。
　程なく、不快音が止まるとディバジェスは崩れ落ちる。それが全く動かなくなったことを確認し、ケルベロス達はこの戦闘の勝利を確信した。
　しかし満身創痍でまさに紙一重。出発前の最終確認を皆が注意深く行っていればもっと余裕を持って勝利を収めることができたかもしれないが、それでも今回の作戦が成功したことは事実であり。
　深い山の中。ケルベロス達は傷を癒しながら、オウガメタルを無事救出することができたという余韻に浸る事にした。

作者：香住あおい	重傷：朔頼・小夜（花は蒼空見上げ・e01037）  死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年6月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 4
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