剣満ちて……

作者:刑部

 香川県高松市。
 香川県の中心部であるオフィスが集うこの地の昼下がり、時計は13時前を指しており、昼休みを終えたサラリーマンや、手に大きめの財布を持った揃いの制服を着たOL達が、自分のオフィスへと戻ろうとする頃。
 交差点の中央に突如大きな5本の牙が突き立った。
 何が起こったか分からず足を止めた人々の前で、その牙は上下に刃を持つ剣を握る白銀の鎧を纏った竜牙兵へと姿を変える。
「ワレらをゾウオしキョゼツするがイイ。キサマらにヒトシク『シ』を与えよう」
 言うや否や5体の竜牙兵が手近に居たサラリーマン達に斬り掛ると、事態を飲み込めたOL達から黄色い悲鳴が上がり、人々が逃げ惑う。
「ワレらクルセイダーズ。このサツリクをツルギにチカって、スターブレイカーサマに」
 その白銀の鎧を返り血で染めた竜牙兵の咆哮が、ビルの窓を震わせるのだった。

「竜十字島のドラゴンの勢力が、新たな動きを見せ始めたで」
 杠・千尋(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0044)が、集うケルベロス達を前に口を開く。
「今回事件を起こすんは、『十字騎士団クルセイダーズ』っちゅー精鋭の竜牙兵みたいで、ぎょーさんの人間を虐殺し、憎悪と拒絶を振りまこうとしとるみたいや」
 身振り手振りを加え説明を始める千尋。
「このままやと、人間がぎょーさん殺されて、ドラゴン達はグラビティ・チェインは元より、人の憎悪と拒絶を手に入れて一石三鳥っちゅー超お得状態になりよる」
 と肩をすくめる千尋。
「ヘリオンかっとばすさかい、みんなには被害が出る前に竜牙兵の凶行を阻止したってや。奴っこさんらが出て来る前に避難勧告をすると、奴っこさんらは他の場所に出てしまいよるから、事件を阻止出来んようになって被害が拡大してしまいよる。
 竜牙兵が出て来て、みんながヘリオンから降りて戦場に到着した後やったら、警察による避難誘導を始められるさかい、一般人の避難はそっちに任せて、なるべく早う竜牙兵をぶちのめしたってや」
 と、ケルベロス達の到着後に、警察による避難の準備が出来ている事を伝える千尋。

「現れる竜牙兵は5体。全員が白銀の鎧を着て、柄の両側が刃となった剣で攻撃してきよる。
 みんなが現場に着いたら、奴っこさんらは、こっちの排除を再優先として行動してくるみたいで、一般人を攻撃する事はなくなる様や。
 竜牙兵は劣勢になって敗北濃厚になっても、戦意を失う事無く戦いを挑んでくるみたいやから、最後まで気を抜かんと十分注意しいや」
 ケルベロス達の目を見て千尋が念を押す。

「十字騎士団クルセイダーズの目的は、グラビティ・チェインの確保は元より、人々の憎悪と拒絶を集める事や。
 大きな被害が出てまうと、周囲の人々の不安が煽られて、ドラゴン達の思惑通り、恐怖と憎悪とが高まってしまいよる。それを阻止する為にも、最小限の被害で、奴っこさんらを倒さなあかんで」
「人々の不安を取り除く為、私も尽力致しましょう」
 そう言った千尋は、斬霊刀に手を掛け決意を口にする桐生・冬馬(レプリカントの刀剣士・en0019) らケルベロス達を見て、満足そうに頷いたのだった。


参加者
アシュヴィン・シュトゥルムフート(月夜に嗤う鬼・e00535)
アイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717)
夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)
灰野・余白(空白・e02087)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
瀬戸口・灰(泰然自若の菩提樹・e04992)
深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)

■リプレイ


「ワレらをゾウオしキョゼツするがイイ。キサマらにヒトシク『シ』を与えよう」
 5本の巨大な牙から姿を変えた白銀の鎧を纏う竜牙兵が、胸の前に双刃の剣を掲げて口を開く。……が、その眼前に『何か』が落ちて来て大きな音と共に砂煙を上げる。
「竜牙兵の精鋭部隊だそうで……クルセイダーかくるくるぱーか知らねぇけど、好き勝手やらせて堪るかよ」
 2丁のリボルバー銃のトリガーガードに左右それぞれの指を引っ掻け、くるくると回しながら砂煙の中から現れ、片方の銃を頭に添え、もう片方の銃口を竜牙兵に向けたのは夜乃崎・也太(ガンズアンドフェイク・e01418)。
「拒絶と憎悪を集める……ねぇ。そう思われるのは結構、しかし思い通りにはさせません、早々に消えていただきましょう」
「次から次へと湧いて出て……何匹来ようと無駄だってこと、骨の髄にまでわからせてあげるよっ♪」
 その也太の後ろから、畳んだ狼耳を立てつつ現れた深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)に、箱から飛び出したボクスドラゴンの『紅蓮』と、自分達が舞い上げた砂埃を払う様に白翼を羽ばたかせたリディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)。
「ケルベロ……」
「さぁ、お前らの剣を折りに来てやったぞ。憎悪も拒絶も欠片たりとも渡してやるかよ」
「そう、あなた達の相手は私たちケルベロスですよ!」
 竜牙兵の上げる誰何の声を遮る様に啖呵を切った瀬戸口・灰(泰然自若の菩提樹・e04992)が撒いた紙が、わらわらと人の形をとり、ウイングキャットの『夜朱』が、首に巻いた縞模様のマフラーを揺らして羽ばたき、砂埃を払って悪しき力に耐える力を味方に与える中、人差し指を突き付け遮られた竜牙兵の問に答えたウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)が、御業の変じた鎧を纏う。
 そのウィッカ達に気をとられた竜牙兵に、横合いから飛んで来た麻雀の点棒の様な手裏剣。ギリギリのところで弾かれ、それは乾いた音を立てて地面に転がる。
「くかかか、なかなかやるやないか。さあ場は整ったで、後は卓を立て毟るだけ毟り取るだけやのう」
 その手裏剣を投じた灰野・余白(空白・e02087)が笑うと、それに合わせて灰色の髪が揺れる。
 その間に周辺から次々とサイレンが鳴り響き、四方から現れたパトカーが一般人に避難を呼び掛ける中、
「ナラバ、クズドモのキボウでアルキサマラからセンメツスル!」
 先頭の竜牙兵が剣を振り下ろすと、竜牙兵達の足元に天秤座の図形が光り、3体の雄牛のオーラが突っ込んで来る。
「いいとも、お前達の相手はオレ達だ」
 気咬弾を放ってその雄牛の一体を掻き消したアシュヴィン・シュトゥルムフート(月夜に嗤う鬼・e00535)が、長い銀髪を棚引かせて距離を詰めて跳躍する。
「何度来ても、どんな手を使おうとも、幾度でも私たちが守ってみせる――誰も、死なせない」
 耳元から聞こえた声に考えるよりも速く刃を振るった竜牙兵だったが、それより速く一撃を叩き込んだ声の主……気配に殺気、存在までも消して近づいたアイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717)は、帽子を押さえて飛びずさってゆき、その隙を突く形でアシュヴィンの蹴りが炸裂する。
「さぁ、人々は無事逃げ遂せました。後は元凶たるあなた達を屠るのみ」
 鍔鳴を起こして鞘から刃を抜いた桐生・冬馬(レプリカントの刀剣士・en0019)が地面を蹴る中、離れゆき小さくなるサイレンの音と対照的に、剣戟の音はここからその激しさを増してゆく。


「さて……あの人達を守る為にも、お手並み拝見ですねっ♪」
 こいつらは必ず倒すから安心してと呼び掛けた男性が、サイレンに促されながらも返してくれた笑顔を思い出し、リディアはケルベロスチェインを展開し味方の守りを固める。
「そう簡単に全てが思い通りになると思うな?」
 そのリディアの鎖が展開するより速く距離を詰めたルティエが、アイリの一撃を見舞われた竜牙兵に狼爪を叩き込み、その藍色の瞳で睨み上げると、
「ホザケゲロウ!」
 狼爪を叩き込まれた竜牙兵は、痛がる素振りも見せずルティエ目掛けてその頭を狙って刃を振り下ろす。素早く左右の手に構えたナイフの刃を交差させ、その振り下ろしを受けようとするルティエだったが、
「横がお留守だよ。1つの事柄に集中してしまうタイプだな」
 それより速く割って入ったアシュヴィンが触れた掌から、竜牙兵に螺旋の力が放たれ、竜牙兵は舌打ちしつつ距離をとる。それを追う様に前のめりで突っ掛る灰と也太だったが、天秤のオーラがその行く手を阻む様に襲掛ってきた。
「なかなかに連携のとれた動き……だが、こちらも負けていられません、アシュヴィンさん」
「まったく……人使いが荒い……な、っと」
 ルティエの声に視線だけ向けて意図を察したアシュヴィンは、斬り結んでいた相手を無理やり押し返し、押された事で空いた射線からその後ろに居る……一気に距離を詰めて来るルティエを迎え撃とうとする竜牙兵に、気咬弾を撃ち放つ。
「……ムゥ」
 味方の影から放たれた気咬弾をもろに食らい、気が逸れたところへルティエの拳を叩き込まれた竜牙兵が唸る。しかし、アシュヴィン押された前衛の竜牙兵は、直ぐに体勢を立て直し、
「コザイクをシオッテ!」
 刃を巧みに操り、気咬弾を放ったアシュヴィンに十文字の裂傷を刻む。
「むー、私達も負けてないんだよ紅蓮ちゃんもお願い」
 しかし、リディが直ぐに鎖を飛ばしてアシュヴィンを護り、更に紅蓮が属性をインストールし回復を図る。

「ムッ……」
 地に天秤を描き自身の前で奮戦する仲間達を援護していた竜牙兵は、赤いツイテールを棚引かせてその前衛を回り込んで来るケルベロスを見て、天秤を描くのを止め剣を構える。
「回復を止められただけでもこちらの勝ち。さらに傷を負わせれば更に勝ちです」
 そのウィッカの手から、ブラックスライムが竜牙兵を呑み込まんと広がる。
「コザカシ!」
 食らい付かれながらも刃を振るってブラックスライムを裂く竜牙兵。
 闇に包まれた視界が裂け、輝く光が視界を覆う。……それは余白のアームドフォートから一斉に放たれた主砲の光。衝撃と爆音が竜牙兵の頭を揺らす。
「トんだか? ……チッ、裏ドラが乗ればトビまでいけたろうに」
 なんとか堪えた竜牙兵を見た余白が残念そうに漏らし、その細い灰色の瞳を更に細める視線の先、ルティエと冬馬がここを先途と攻撃を繰り出す。
 それを見てもう1体の天秤の剣を持つ竜牙兵が割って入ろうとするも、
「おっと、そうはさせないよ。俺の弾丸は誰かを守るた為に!」 
 也太が弾丸をばら撒いてその動きを牽制しつつ、距離を詰めて立ち塞がると、連続攻撃を喰らった方の竜牙兵に攻撃を集中するケルベロス達。
「だから行かせないと言ったよな?」
 金色の双眸を闇色に染めた也太。その視線に魅入られる様に動きを鈍化させた竜牙兵に、零距離射撃を打ち込むと、牡牛の剣を持つ者達も、仲間を護らんと踵を返すが、アシュヴィンを中心にその動きを押し留める。
「さぁ、流れは全部押え込まれた。あんたに海底のツモはないで、さぁ、ぶち抜けッ!」
 仲間に続いた余白が気合いと共に突き出した左腕に、白と黒の闘気が螺旋を纏い、竜牙兵の白銀の鎧を打ち砕いて突き入れられる。
「グ……ボ……」
 くぐもった嗚咽が漏れ、その腕が引き抜かれる中、
「黒の禁呪を宿せし刃。呪いを刻まれし者の運命はただ滅びのみ。疾く黄泉路を下るのです」
 描いた五芒星の魔法陣を貫く様に繰り出されたウィッカの刃。
 その魔術文字を刻んだ切っ先が、余白の穿った鎧の穴に突き入れられると、竜牙兵の体がビクンと跳ね上がり、鎧の穴と言う穴から血を吹き出し、自らの血溜まりの中へ膝から崩れ落ちた。

「1体落ちました。このまま……くっ!」
 声を上げた冬馬だったが、次々と襲い掛かってくる雄牛のオーラに死経装を裂かれ凍った血を滲ませると、直ぐにリディが自身も含め後衛陣が被ったダメージの回復を図る。
 余白ら仲間達は、天秤の刃を持つもう一体に攻撃を集中しており、そうはさせじとその攻撃を妨害する3体は冬馬やウィッカら、後ろから回り込む様にして攻撃を狙うケルベロスに対し、牡牛のオーラを飛ばして対抗していた。
「あなたたちの親玉、スターブレイカー? 何度も私たちに防がれて、どう思ってるのかな?」
「ワレラがフガイナキバカリニ……」
 その攻撃を止めるべく、漆黒のコートの裾を翻したアイリの振るう宵桜の刃を、同じく雄牛の描かれた刃で受けた竜牙兵が、兜の奥から歯噛みする様な音を立てて応え、
「兵力の小出しは各個撃破の餌食だぜ? スターブレイカーだっけ? アンタらの大将も頭は良くないと見える」
「ワレラがアルジをグロウスルカ!」
 別の1体は灰が挑発し、天秤の剣を攻撃する仲間達から注意を逸らしつつ、激しい鍔迫り合いを演じている。
 竜牙兵達が刃を振るうと、灰の撒いた紙兵達が紙片に戻って散り、ケルベロス達にも出血を強い、夜朱もリーフの様なキャットリングをくるくる回しながら羽ばたいて、清浄の風を送り戦線を支えている。
「やらせは……しないのです」
 冬馬が繰り出した雷刃の突きが雄牛の描かれた刃に跳ね上げられる。と、そのまま円を描く様に体を翻し、もう一度斬撃を見舞うが、これもまた逆側の刃に留められ、乾いた金属音が響く。冬馬は押され気味ではあったがなんとか1体を押し留めていた。
「やるやる。しっかし、殴り合う相手に遠慮が無いのはやり易いってもんだぜ」
 弾かれ合って距離を取った灰も、ぺろりと口の端を舐めると、相手に仲間を援護する暇も与えずローラーシューズで一気に仕寄って蹴りを繰り出す。そんな中、
「隙あり! だよ」
 別の一体と斬り結んでいたアイリが、顔も向けぬまま後ろに向かって黒影弾を放った。
 それは完全な不意打ちとなり、あらぬ方向から穿たれた天秤の剣を持つ竜牙兵が片膝をつくと、仲間達に押し込まれてそのまま息絶える。
 竜牙兵は天秤の剣を持つ2体を失い、勝利の天秤は徐々にケルベロ側に傾きつつあった。


「マダマダヨッ!」
 竜牙兵が吼えると3体から放たれた雄牛のオーラが前衛陣に突っ込み暴れ回る。
「くっ……やってくれるね」
「みゅう!」
 アイリを庇った也太は多重の打撃を受けて顔を顰め、羽を凍らされた夜朱が墜落し、くるっと体を回転させて着地すると一声鳴いて後退する。
「いくらやっても無駄です。戦えない人を狙って襲い掛る様な、名ばかりの騎士に私達は倒せないよっ!」
 胸元にhappiness prayerを揺らしたリディが、その白翼を大きく広げてオーロラの様な光で仲間達を包み回復を図ると、
「チッ……嫌な攻撃だな。あまりリディの手を煩わせるのもアレか。……舞い散れ」
 腕に張った氷がオーロラの光で溶けるのを見たアシュヴィンは、そのまま一気に踏み込み竜牙兵に連続の斬撃を見舞い桜の花弁を散らし、
「こいつに攻撃を集中だ」
 残る2体が繰り出す斬撃に晒されながらも、声を上げて跳び退くアシュヴィン。
 そのアシュヴィンに紅蓮が属性をインストールして回復を図る間に、也太と灰が残る2体を押え、余白とウィッカ、冬馬とルティエが次々とアシュヴィンが指示した竜牙兵に波状攻撃を仕掛ける。
「ザコどもの刃ナド……」
「誓う剣の軽い事よ……隙だらけだよ、あなた」
 それらの攻撃を巧みな剣捌きで捌く竜牙兵の耳元から声。反射的に振り返った竜牙兵の兜の隙間からアイリの刃が突き入れられ、
「ガッ……」
 竜牙兵は短い断末魔を上げて仰向けに倒れる。
 念の為なのか、倒れた竜牙兵を更に引っ掻く夜朱を置いて、踵を返して灰と斬り結ぶ竜牙兵に踊り掛るケルベロス達。
「え? そっち? 俺、ちょー押されてるんだけど……」
 仲間を助ける為に攻勢を強める竜牙兵。その縦横無尽に振るわれる刃を捌きながら上げた也太の泣き言を背に、
「さぁ、抗えぬ流れが来たぞ」
「ワレラフタイテンナリ!」
 雄牛の刻まれた刃をガントレットで受けた灰が口角を上げるも、竜牙兵は動揺せず、灰に向かって刃を振うと、突っ込んで来たアシュヴィンとアイリをあしらって跳び退く。
「ここまで劣勢になっても退かないとか、ドラゴンの牙製だと頭まで戦闘脳にでもなるのか?」
 紅蓮のヒールを受けながらごちた灰も、遅れてはならじと地面を蹴る。
「勝ち逃げも負け逃げも許さへん。オケラや、身ぐるみ全部置いてってもらうのじゃ」
「死を与えるのはお前らじゃなく、私達ケルベロスだ……サヨウナラ」
 その灰と共に左右から挟み込む形で余白とルティエ。
「欠片も残さず、砕けちまいな」
 灰が怒涛の如く繰り出す攻撃に、竜牙兵の白銀の鎧がひしゃげ、余白の繰り出した一気通貫の貫手を肩口に喰らった竜牙兵が、その刃を取り落す。そこに叩き込まれたルティエの紫月【黒椿】の一閃。
「ヌ……グ……」
 一閃は鮮やかに竜牙兵の命脈を断ち斬り、前のめりに倒れるそれを放置し、皆は最後の一体へと殺到する。
「……諦めなさい」
「コザカシイィ!」
 横から斬り掛った冬馬に対し、也太を押し退け強烈な斬撃を見舞って気を吐く竜牙兵。
 冬馬にリディと紅蓮が回復を飛ばす間に、
「ケルベロスの連携が上であることを見せてあげましょう」
 ツインテールを躍らせたウィッカが円舞曲を踊る様に体を回転させ、竜牙兵の体を刃で穿つ。
「精鋭部隊の鼻っ柱! 俺のこの『拳』で思いっきりぶち折ってやるぜ!」
 そのウィッカの体が回転しながら横に逸れた所に、瞳を闇色に染めた也太。その言葉に竜牙兵が身構えるが、
「……なんちゃって♪」
 くるくると回して突き付けたのは拳では無く銃口。
 その銃口からありったけの弾丸が撃ち放たれ、竜牙兵は蜂の巣の様に空いた穴から血を噴き出して崩れ落ちる。
「ハッ、お堅そうな奴は単純でいいわ」
 風に流れる硝煙の中、也太はくるくると回した銃を流れる様な動きで、ホルダーへと収めると、仲間達も緊張感を持ったまま辺りを見回し、交差点にその屍を晒した5体の竜牙兵の姿を確認し、ケルベロス達は大きく息を吐いたのだった。

「たまにはこういうのもいいよねっ♪」
「まぁな。さて、帰って飯じゃ飯」
 壊れた箇所にヒールを掛けるケルベロス達に、避難勧告を解かれて戻ってくる人達が、拍手や歓声を送ってくれる。その様子に笑顔を見せるリディに、まんざらでもない様子で頭を掻く余白。
「会社の奴らも昼時だってのに災難だったよな。十字軍はあとどれだけいるのやら……」
 手を振るサラリーマンに手を上げ応じた灰は、次々と現れるこの竜牙兵に思いを馳せる。
 ともあれ、高松市に現れた十字騎士団クルセイダーズは、1人の犠牲者も出す事なくケルベロス達により討伐されたのだった。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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