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山陰地方の山奥。
人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
●協心戮力
「集まったか……では、説明を始める」
ケルベロス達の姿を認めた雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は、腕を解き、語り出す。
黄金装甲のローカスト事件の解決によって、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことに成功した――結果、判明したのは。
アルミニウム生命体は『オウガメタル』という名前の種族で、自分達を武器として使ってくれる者を求めている事。
現在、オウガメタルを支配しているローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由にオウガメタルを使い潰すような使い方をしている――特に黄金装甲化は、オウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為である事。
ゆえに、オウガメタルはケルベロス達に助けを求めているという事。
「オウガメタル達はローカストの本星からゲートを通じて脱出し、地球に逃れてきたようだ……しかし最重要拠点であるゲートには、当然ローカストの軍勢がいる。このまま捨て置けば、奴らによってオウガメタル達は一体残らず殲滅されてしまうだろう」
よって、オウガメタルの救助を行う事となった――目を細めつつ、辰砂は淡々と続ける。
「場所は山陰地方の山奥――そこまでヘリオンで向かい、彼らの救助とローカストの撃破を行う。この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えられるのみならず、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能となる……見込みだ」
ともすれば、ローカスト達にとっても其処は最大の防衛線であるとも言える。
厳しい戦いになるだろう、彼は断言した。
オウガメタルを追うローカストの構成だが、兵隊蟻ローカストが働き蟻ローカスト数体を率いて探索にあたり、発見次第、殲滅している。
兵隊蟻ローカストの戦闘力はかなり高く、ゲートを守るという役割からか、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無い。
働き蟻ローカストは戦闘は本職ではないが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っている――ただ、働き蟻は兵隊蟻ローカストが撃破され状況が不利だと思えば、逃げ出す可能性があるようだ。
そのことも頭に入れて策を立てておくといい、と辰砂は告げる。
「さて、現場への到着は夜半過ぎになるが、逃走するオウガメタルは銀色の光を発光信号のように光らせるらしい。それを目標に降下してもらうことになるが、多少の誤差はある。真上に降下はできまい――そうだな、大体百メートル前後ほど、戦闘地点までは地上を移動してもらうことになるだろう。さりとて貴様らならば、合流は難しくない」
そこまで語り、彼は一度言葉を切ると、金の瞳でケルベロス達をゆっくりと一瞥した。
「この戦いは利のみならず。搾取される者の心情は、貴様らも理解できるのではないか。敵は甘くは無いが……最良の結果が得られるよう」
参加者 | |
---|---|
鬼屋敷・ハクア(雪やこんこ・e00632) |
ガイスト・リントヴルム(宵藍・e00822) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
暁・歌夜(活かす眼と殺す意志・e08548) |
リュコス・リルネフ(銀雷狼・e11009) |
アリシア・マクリントック(奇跡の狼少女・e14688) |
九音・マルガ(不可逆の落水・e17326) |
千里・雉華(鋼の精神ーメタルメンタルー・e21087) |
●救い求める光
ヘリポートを発ってから、どれほど時間が過ぎただろうか。すっかり辺りは闇に覆われ、見下ろす先もただただ暗い森が続いている。
未だ天上のケルベロス達は目を凝らし、救援の印を探していた。
(「アルミニウム生命体……いや、オウガメタルか。助けを求められた以上、見捨てるわけには行かないっすね。全力をもって、救出します」)
裡で呟きながら、九音・マルガ(不可逆の落水・e17326)は銀色の瞳でまっすぐに闇を見据える。
「あ。あの光じゃないかな」
鬼屋敷・ハクア(雪やこんこ・e00632)の細い指が示す先に、確か銀色の光を見つけた千里・雉華(鋼の精神ーメタルメンタルー・e21087)は、用意していた心温計を点灯させる。
「無線の調子は大丈夫でスかね? ……では、下で合流しまシょう」
「了解なのです。行くですよ、プライド・ワン」
彼女の問いにこくりと首肯し、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は相棒のライドキャリバーをひと撫で、真っ先に降下する。
「アリシア、あたらしい、なかま、たすける!」
がうっと気合いをいれたアリシア・マクリントック(奇跡の狼少女・e14688)は胸の内を拙くも言葉にし、彼女に続く。
「さあ、キミの友達を助けに行こう! キミも力を貸してね!」
必ず助けるとリュコス・リルネフ(銀雷狼・e11009)は、既に共にあるオウガメタルへ約束するように強く宣言する。そんな彼女へ、暁・歌夜(活かす眼と殺す意志・e08548)が優しい視線を送る。
また後で、と二人は短く言葉を交わし、降下する。
「いざ」
短く合図し、陣笠を押さえながらガイスト・リントヴルム(宵藍・e00822)が降下すれば、残された雉華は眼鏡の奥、鋭い視線を森に向けてひとりごつ。
「必ず助けまス――意地を通す為に」
降下の時間はさほどでもなく、最短を全速力で駆ければ、たった十数秒の距離。
強い光を目印に地上を駆けている最中、我等はケルベロスである――と名乗るガイストの声が無線から届く。続いて、マルガからの通信に、真理が応じている。どうやら空中で跳躍することで着地位置を少し調整した班が、先にオウガメタルの元に辿り着いたようだ。
山中、光源のない闇は深く――居並ぶ木々の向こう、明滅する銀色の光はとても鮮やかだった。
もっとも、それは追跡者であるローカスト達にも彼らの居場所を報せてしまっているとも言える。今の所、極めて近くにその存在を感じることはないが、急がねばならない。
草木が自然と避けて道を作る――先を駆ける真理と、リュコスの力だ。楽しんでいる場合ではないものの、それは何処か神秘的な風景であった。
「オウガメタルの光、きらきら綺麗。……はやく安心させてあげなきゃね」
ドラゴンくんに囁きかけ、ハクアは四つ足で走るアリシアと、二人を追った。
●解放者と追跡者
オウガメタルは銀色の不定型な生物だった。大きさは幼児程度はあるだろうか。ゆるりと身体を伸ばして動く様はスライムにも似ている。
先にケルベロスであるとガイストが告げているためか、光を発することを止め、じっとこちらの様子を窺っているようだった。
「もう大丈夫! ボク達が来た! 虐げられる時間はもう終わり! 今からはボクらが共に戦う時間だ!」
以前仲間にしているオウガメタルを見せながら、リュコスは彼らにそう語りかけた。
「ボク達みんなが付いてる! きっと上手く行くよ!」
「私たちがしっかり守ります。安心してください」
リュコスの力強い言葉――歌夜と二人目配せし、頷きあう。
「私達は、あなた達を仲間として受け入れられるです」
するりと自ら装備する攻性植物の姿を見せながら真理が穏やかに告げれば、ハクアは優しく微笑んだ。
「キミたちの光のおかげでわたしたちは此処に来れた。助けに来たよ!」
「其方等の想い、確りと我等に届いておる。供に戦う意思ある者は、我等と供に。戦えぬ者は我等の後ろへ下がっておれ。必ずや其方等を守ろう」
厳かに、ガイストが請け負う。
彼の言葉に小さく頷いたハクアは、オウガメタルの前にアイテムポケットを広げた。
「傷を負っているのならわたしの元に隠れていて。大丈夫、キミたちはわたしが絶対に守るから」
ケルベロス達の言葉に、オウガメタルは一度ふるりと揺れた。
すると、ざわざわと心に直接伝わるものがある――それは感謝と、共に戦うという意思。
これが彼らの言葉なのかとケルベロス達は僅かに驚きつつ、ひとまず安堵する。
「ようこそ地球へ。ちょいとお力借りてもよろしいでシょうか。お返しはアタシの重力で如何で?」
最後に手を伸ばした雉華の元に、オウガメタルの一部が分離してくっついた。彼らは複数体がひとつの個体として動いていたようで、残った部分はするするとハクアのポケットの中へ。
それでも収まりきらなかったオウガメタルの一部は、ケルベロス達の背後に匿われた。
「ボクらはアナタたちの味方っすから、安心してください。っす」
言葉をかけながらも、かさり、と後ろで音がしたのを、マルガは聞き逃さなかった。そして何より、アリシアが獣のような姿勢で、威嚇の声を上げている。
「アナタたちを無碍にしてきたいあいつらァ、ノしちゃいますから――ね」
恐らくローカスト達はかなり驚いたに違いない――なにせ、いよいよオウガメタルを追い込んだと思って顔を出したところで待ち構えていたのは、鼻先まで迫る真理と、炎纏うプライド・ワンだったのだ。
既に大地に刻まれ輝くは、水瓶座。
ハクアはオウガメタルの前に立ち、青い瞳で確りと彼らを見据えている。
そして、彼女の指示に従って、ドラゴンくんがリュコスに属性を注入する。
最速、最短の距離より叩きつけられた真理の破鎧衝は、ローカストの肩を強か撃つ。強烈な不意打ちに身体のバランスを崩したそれへ、迫るは居抜いたガイストの斬霊刀。
「そのまま従っておっても何れは殲滅されるであろう――好機は今ぞ!」
一閃と同時、活を入れるようにかけた声は、ローカストが纏っているであろうオウガメタルへ向けたもの。
太刀風が翔龍となって正面から飲み込むと同時、彼は既に間合いを取り直し、構えている。
鋭い視線は変わらぬが、いぶかしげなその様子の理由は――ナイフを口にくわえたアリシアが、両腕で大地を叩くように飛び上がる。
一度木の幹を蹴って、回避しづらい位置から、旋刃脚を仕掛ける。
「アリシア、オウガメタル、たすける、したい、だから、てつだう、して、ほしい」
触れた時、彼女はそう伝えた。
強く地を蹴って、彼女もガイストの近くまで一足に戻ると、ぐるると喉で唸る。
――オウガメタルからの答えは無い。
「このままだとキミたちもいずれ……勇気ひとつ持つだけで良い。わたしたちと一緒に行こう」
ハクアが呼びかけても、先程オウガメタルより返ってきたような「声」はない。リュコスが首を左右に振った。
「強く支配されてるのかもね」
「それもまた致し方ないのでしょう」
魔法の木の葉を仲間へ纏わせながら、静かな声音でそっと囁くは歌夜。オウガメタルは武器として使役されることを望む――既に敵の元に武器として収まっているそれらは、ただの武器となっているのだろう。
せめて動きを阻害できればよかったが――真理は少し残念に思うものの、表情は変わらない。
ならば、ローカストを倒す事で解放しようと。歌夜に背を任せ、リュコスは思い切り地を蹴った。
「これは神の火。禁忌の火。恩恵と災禍を以て全てを燃やす炎也!!」
一直線に、ローカストの眼前まで駆け上がり、超分子振動を叩き込む――災厄招く炎神の焔。
内側より発火するほど熱を帯びたそれの耳朶を打つは、冷たい響きを帯びた声音。
「溺れろ」
雉華のコートの内側から、大量の瓦礫や廃棄物が現れ、押し流す――それは大蛇の如くローカストを飲み込むと、再びコートの中へ戻っていく。
瓦礫の大蛇が綺麗に消え失せたところに、「小さくてとても殺傷力がなさそうな銀色の鍵」を手にしたマルガが立っている。
「これは紛い物だよ?」
amalgam=The silver key――するりと静かに、相手の胸へと鍵を突き刺す。
ローカストが一体どんなまやかしを見るのか、それはマルガにすら解らない。しかしそれは「刺した相手自身がなりたくないものになっている」幻覚に苛まれながら、片膝をついた。
弱った一体を庇うように、もう一体のローカストが前に出て身構えた、その時。
「お前達、一体何をやっているのです!」
闇の中から叱咤するような声があった。
それは働き蟻達よりも一回り体格の良いローカスト。これが兵隊蟻であろう――それはケルベロスの姿を認めると、僅かに驚いたような声をあげた。そちらへ、雉華はコートに手を突っ込んだまま、視線を投げる。
「ども。アタシらオウガメタルさんに用事あんで蟲の方はとっとと帰って頂けまス?」
働き蟻を二体押しのけるように前に出た兵隊蟻は、ケルベロス達の背後に隠れるオウガメタルを鋭い視線で一瞥すると、覚悟を決めたように構えを取る。
「残念ですが、そういうわけにはいきませんね――我はアリア騎士ジスフォルミ……参る!」
「……最後の警告はしたぞ。命の重みを躰で知れ」
低い声音で雉華は言い放ち、ケルベロス達は次の攻撃へ向け、構え直した。
●決着
ジスフォルミの破壊音波がケルベロス達の全身に強い衝撃を与える。脳と身体が痺れ、瞬間的に身動きがとれない感覚。
すかさず、ハクアがケルベロスチェインで描いた魔法陣は雪結晶の形。失った加護を再び仲間や自身へと、ドラゴンくんと共に支援を重ねていく。
確実に相手を削るために後衛を厚くした彼らは――呪いの分散も狙ってのことだが――逆に、ひとたび動きを封じられてしまえば、大きく戦力を削ぐことになる。何より、ジスフォルミの一撃はほぼ確実にケルベロスの加護を削いでいく。
つまり、真っ先に中衛の働き蟻を倒すという判断も最良であった上、先手をとって素早く倒せたことで、戦場の流れはケルベロスが完全に掴んでいた。
高々と跳躍したローカストの跳び蹴りを凌ぎながら、リュコスはバスタービームを放って距離を取る。
「ボクより後ろに簡単に通れると思わないでよね!」
そして、彼女の背を庇うように立つ歌夜が、無数の剣を召喚する――それは、敵に向かうものではなく、仲間を守るように天に留まる。守護する破壊の天剣は、敵の攻撃を断ち、仲間の攻撃と合わせ加護を斬り裂くための剣だ。
アリシアのサイコフォースが、ジスフォルミの眼前で爆ぜる。
「流石に簡単には倒れないっすね」
淡々と狙いを定めながら、マルガはぽつり零す。
同時に、フォートレスキャノンの砲撃が、がら空きになった膝を穿つ――守りは堅く、装甲の表面が焦げたように煙るだけだった。
地を炎が舐めるように走る――雉華の横薙ぎの蹴りは、炎となってジスフォルミを包み込む。
「どうだ?」
眼鏡の向こうから鋭い視線で、射貫く。
四肢を炎に包まれながらも、それは両の脚でしっかりと立ち、ケルベロス達を睥睨している。その真横から、気咬弾を放ったのはガイスト。
だが、身を投げ出し、オーラの弾丸を受け止めたのは働き蟻であった。
「ふむ、面白い」
圧倒的な手数で一方的に攻め込むケルベロスに、たった二体で凌ぐローカスト――その状況に、彼は口の端に笑みを刻む。
銀色に輝く鎧で炎と傷を覆い消しながら、ジスフォルミは歯ぎしりする。
「同数の同胞さえあらば、このような無様な戦い……!」
「そいつはお生憎様っすね」
悔し紛れの言葉を、マルガはさらりと受け流す。
行け、と命じられた働き蟻が腕を銀色の鎌に変えて、斬りかかってくる。立ち塞がった真理がアームドフォートのサブアームに備えたシールドを自らの前に展開し、備える。
「誰かを傷つけるなんて許さないです……! 私が全部、守ってみせるですよ!」
覚悟の一喝、数度振り下ろされる刃を受け流しながらも、力比べのように押さえ込む。
出来た空間を斬り裂くは、二振りの斬霊刀が生み出した衝撃破。ガイストの一撃を追って、雉華の弾丸がジスフォルミの腕を貫通する。
小さく穿たれた穴、だがそれにどれほどの屈辱を感じたのか、歯ぎしりするローカストの眼前に、小さな光が煌めく。
飛びかかったアリシアが咥えたナイフ、そこに映る幻影は如何なるものか。それは一度体勢を立て直すべく、後退った。
もう幾度目になるだろう――守護星座を大地に刻み、ハクアは仲間達を鼓舞する。
「癒しをそして守護を。守らなきゃいけないものがたくさんあるの」
背後にいる自分たちを信じてくれた新しい仲間と、共に帰るため。
あと少し、頑張ってと言葉を紡ぐ。
彼女の光に守られたリュコスのバスタービームと、遠方からのフォートレスキャノンがそれぞれ弱り始めた四肢を捉える。
薄い銀色の装甲の下、黒い装甲に罅が走っているのを確認し、オルガは満足げに小さく頷く。
「おのれ――!」
叫び、食らいついてきたジスフォルミの牙を、歌夜は日本刀で撃ち落とす――同時、横合いから飛んできたローカストの襲撃を、今度はリュコスが凌ぎ。
姿勢を崩した相手へ、プライド・ワンのガトリングが追撃する。
「このまま畳みかけるです……!」
距離が空いたところへ、真理の腕から勢いよく伸び上がった顎を開く植物が、その肩に食らいつき、傷口から毒を注ぐ。
がうっと四つん這いのアリシアが咆えると、拘束されたそれの鼻先が突如爆ぜる。
「力、貸りるぜ」
雉華が声をかければ、身体に纏ったオウガメタルが、強く輝き出す。
彼女が手を前へと突き出すと、戦場の中央に巨大な黒太陽が具現化され――それは絶望を備えた黒光を照射し、ローカストの胴体を無慈悲に貫いた。
一瞬の虚に好機を見出し、陣笠を放りなげ、ガイストが駆った。
無言で咆えるは、剣風。太刀風から生み出された翔龍は裂けるほど顎を開き、食らいつく――そんな幻影は一瞬に立ち消え。
ガイストはゆっくりと斬霊刀を鞘に収める。小気味よい鍔鳴りが、静かに響いた。
散々に削られた黒い装甲の身体は袈裟斬りにずるりと滑り、ばらばらと崩れ落ちた。
仄かに銀色の光が周囲に散っていったように感じたのは、気のせいか。
「其方らの同胞は、我らに任せよ」
彼は瞑目し低く告げたのだった。
兵隊蟻の死を目にした働き蟻が逃げていくのを、ケルベロス達は追わなかった。
(「生きるために必死だということは知っていますが……」)
歌夜は彼らの行く末をふと思ったが――だからといって、憐れんだり加減することはない。
「では改めて――ようこそ、地球へ。歓迎しまス」
コートの汚れを軽く叩いてから、雉華が改めて挨拶すれば、オウガメタルは嬉しそうに身を震わせた――。
作者:黒塚婁 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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