空飛豚の欲望に塗れ

作者:幾夜緋琉

●空飛豚の欲望に塗れ
『ハハハ。さー今日も上手く行ったぞ! 出でよ、量産型オークよ!!』
 おどろおどろしい煙が立ち上る中……藍色マントを翻し、手を前に掲げるのは、マッドドラグナー・ラグ博士。
 そして煙の中から姿を現わすのは、背中に翼のような物を生やした豚顔のオーク。
 グフフフフ、と下品な笑い声を上げ、その翼をピクピクと蠢かせるオークは……醜悪な事、この上ない。
 しかし、その翼に受ける風を実験した限り、飛び上がることが出来ない……と知ると。
「ムムム……量産型とは言え、実験ではこれ以上の性能を引き出すのは難しい様だなァ。うむ、これ以上の性能を得るには……そうだ、新たな因子の取り込みが必要不可欠だな!」
 と言うと共に、飛行オーク達に命じる。
「お前達。いいか、人間の女を襲い、新たな子孫を産み出すのだ!」
 それにぶひぃ、と鼻息荒くするオーク達。
 そして、ラグ博士は。
「ハハハハ! 新たな子孫を産み出し、それを実験体にする事により、飛行オークは更なる進化を遂げる! さぁ、欲望のままに向かうのだ!!」
 と、オーク達に対し、更に笑い声を上げるのであった。
 
 そして、東京都世田谷区、二子玉川。
 高級デパートや、高級住宅地が立ち並び、何処かおしゃれな街。
 そんな二子玉川のショッピングセンターにある、おしゃれな雰囲気のオープンテラスカフェでは、セレブな女性達が昼下がりのシエスタを楽しんで居る。
 会話に上がるのは、余り意味の無い事ばかり……でも、紅茶を飲みながら、多摩川を眺め、ママ友達と交わす会話は、どこか幸せ。
 ……それを狙う、飛行オーク。
『ヒヒヒ……』
 下品な笑みを浮かべると、ショッピングセンター最上階に突如出現すると、そこから滑空するオーク達。
 突然のオーク達の出現に、シエスタを楽しむママ達は気づかない……そして、オークが頭上から飛びかかると共に。
『ツカマエタ……!!』
 と、徒党を組んでママ達の服を強引に脱がそうとし始めるのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まって頂き感謝ッス! 早速ッスけど、説明を始めさせて貰うッスね!」
 と、黒瀬・ダンテは集まったケルベロス達に、早速説明を始める。
「今回の依頼ッスけど、竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を始めた様で、その中の、オークの品種改良を行っているドラグナー、マッドドラグナー・ラグ博士が産み出した飛行オーク、という飛行型オークの討伐をお願いしたいッス」
「まぁ飛行と言えども、これは高い場所から滑空し、目的の場所に上手く移動するだけの能力ッス。自由に飛行するという事は出来ない様なんッスよ。でも、高所から滑空しながら襲撃目標である女性を見つけだし、その場所に直接降下するという攻撃方法は、かなり効率的で脅威ッスよ」
「つまり、皆には飛行オークに襲撃される女性達を護り、飛行オークを撃破してきて欲しい、という事になるッス!」
 そしてダンテは、続けてオーク達の出没箇所と、状況を説明する。
「この飛行オークの出没するのは、二子玉川ッス。どうやらデパートのおしゃれなカフェにいる奥様達を狙って、ショッピングセンター屋上から滑空して襲いかかる様ッス!」
「注意しなきゃいけないのは、飛行型オークは滑空しながら襲撃箇所を探すので、カフェの人達を先に逃がすと、違う場所へ降下してしまうッス。つまり、避難誘導出来るのは、ほんの数秒前から、という事になるッス」
「このオーク達の好みは、熟女……いや、ママさんの様で、そういった人を好んで襲撃、攻撃する様ッス。該当者の方は、要注意ッスよ」
「尚、オークの数は8匹で、飛行型とは言えども戦闘能力は普通のオークと全く変らないッス。触手で拘束し、集団で一人を集中攻撃し、なぶりものにする様ッス」
 そこまで言うと、最後にダンテは。
「何にせよ、このままだと安心してカフェで休憩も出来なくなってしまうッスよ。どうかケルベロスの皆さんの力で、しっかりと仕留めて欲しいッス! 宜しく頼むッスよ!」
 と、気合いを入れて皆を送り出すのであった。


参加者
樋口・琴(復讐誓う未亡人・e00905)
源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)
ラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)
氷鏡・緋桜(矛盾を背負いし緋き悪魔・e18103)
ネムル・ワミード(紅蓮眼の銀虎・e23329)
漣・颯(義姉を慕うヴァルキュリア・e24596)

■リプレイ

●二子玉
 東京都世田谷区は二子玉川。
 高級デパートや高級住宅街の並ぶ、とてもオシャレな町並みの町。
 ……でも、そんなオシャレな町並みに相応しくない、下品な行いをしようとしているオークの討伐依頼を聞いた、ケルベロス達。
「ったく……マジでオレの逆鱗に触れる行動をする奴らだな……」
「ええ……ママさん達に襲いかかる飛行オークですか……放ってはおけませんね……」
 ネムル・ワミード(紅蓮眼の銀虎・e23329)は、尻尾の毛を逆立て、樋口・琴(復讐誓う未亡人・e00905)も、静かな口調ながら、拳をぐっと握りしめて頷く。
 オークという、下賎な者の行為……空から落下傘の様に降下して、上空という不意を突いて、シエスタタイムを楽しんで居る女性達に襲いかかる。
「まー、何て言うか……男の欲望に忠実な奴らだよな」
 と、肩を竦める氷鏡・緋桜(矛盾を背負いし緋き悪魔・e18103)。
 それに漣・颯(義姉を慕うヴァルキュリア・e24596)とラピス・ウィンドフィールド(天蓋の綺羅星・e03720)、そして勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)が。
「そうですね……だからといって、その欲望を自制できればまだいいのですが……このオークは欲望に忠実に、それを行動に移しているのですね……」
「うん。本当男って奴は、って感じだよね」
「欲望に忠実だから、オークなんだ、とも言えなくも無さそうだがな。ま、何にせよ、こいつらはこてんぱんにぶちのめさねばならない。女性の敵は、な」
 と、そんな三人の言葉に、源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)と源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)の姉弟が。
「そうですね。今回は瑠璃も一緒だね、一緒に頑張ろうね!」
「あ、うん……」
 ……何だか言葉に詰まる瑠璃。その機微に気づいた那岐が。
「ん……瑠璃、どうしたの?」
 と視線を合わせて首を傾げると、それに瑠璃が。
「……僕、生みのお母さん、いないから……だから、僕のように、お母さんがいなくなって泣く子を増やしたくない。だから……今回のオークは絶対に、許せない……」
 と言葉は静かながらも、何処か強い意志を感じさせる口調で。
 それに那岐は。
「そうだよね……瑠璃の本当のお母さんは、もう亡くなったんだよね。うん……頑張ろうね!」
 肩を叩き、微笑む那岐、そして頷く瑠璃。
 そして……。
「それでは……囮作戦を開始しましょう。私……どうでしょうか?」
 と琴はくるりと廻る。
 いつも来ている喪服とは違い、ふわりとしたセレブ妻風のワンピース。
 ……それに彩子は。
「ん、いいと思う。いや、熟女の魅力ってのは凄いよな。私には真似出来ないぜ」
 と彩子が笑うと、琴は少し頬を染めつつ。
「ありがとうございます……まあ、オーク相手に囮になるのは、正直腸煮えくりかえる思いですが……ママさん達を守る為には、身を切る他ありませんから……他の皆さんも、宜しくお願い致しますね?」
「うん、了解だよ!」
 ラピスが拳を振り上げて頷き、そしてケルベロス達は二手に分かれ、二子玉川のショッピングセンターへと向かうのであった。

●悪夢射し込む
 そして琴と、バックアップとして彩子の二人は、ショッピングセンターの中に在る、オープンカフェテラスへと向かう。
 多摩川を見下ろす事が出来る、景色の良い場所。
 そして平日の昼下がりという事で、何となく居る女性達も、お金を持っていそうな……所謂セレブ的な雰囲気を漂わせた人ばかり。
 そんなセレブ妻が沢山居る中に混じり、紅茶や珈琲とスイーツを食べながら、オークの出現を待つ琴と彩子。
「……いや、これは……あまり私に合った場所ではないな……」
 と小声で苦笑交じりに言う彩子に、琴も。
「そうですね……私も、正直熟女という迄の年齢には達していないと思うのですが……でも、だからと言って逃げるわけにも行きませんし……」
 と。
 ……まぁ、そんな会話をしつつ。
 そして二人の他のケルベロス達は、店の近く、オープンカフェではなく、内側とか、店の外とかで、琴と彩子の合図を待つ。
 そして……過ぎること、十数分。
 シエスタの微睡みの時を過ごしていて……もう、オークは来ないんじゃないか、ともちょっと思い始めた頃。
『……グフフフ……』
 と、そんな下品な笑い声が、遠くの方から聞こえる。
「……!」
 と、すぐ上空の方へと視線を向ける彩子……すると、ショッピングセンター屋上から飛び降り、その翼を凧のようにして、オープンカフェに向けて急降下してくるオークの姿を発見する。
「来たぞ! ケルベロスだ、ここは任せろ」
 と、アルティメットモードを併用しながら声を荒げる彩子、すぐさま琴が。
「皆さん、私はケルベロスです。急いで、このオープンカフェから退避を!」
 と、周りのセレブ達に声を掛ける。
 最初、何を言ってるの、と言う感じだが……誰かが上空を見ると、涎を垂らした飛行オークの姿を発見し。
『キャアアアアア!!』
 と、悲鳴を上げて、それに散りじりになりながら逃げ始める。
 ただ……機敏に逃げるという事も中々出来ない人も居て……みるみる内にオークはケルベロス達の元へと接近してくる。
「……っ!」
 と、咄嗟に琴は、逃げ遅れた人と、オークの間に立ち塞がる。
『ゲヘへ……!!』
 と、オークはそのまま、琴に次々と襲いかかる。服を引っ張られ、破かれ……破かれたところからは、肌が露わに。
「や……やめ……っ……やめなさいっ……」
 ……とは言え、その間に彩子が逃げ遅れた一般人達の手を引いて、其の場から逃げさせる。
 そして……オープンカフェの外に居た仲間達も、一般人の避難を終えて合流。
 ……オークに襲われている琴の姿を見て、即座にネムルがタックルを喰らわせ、オークを引き剥がす。
 更に、すぐにネムルは、琴に自分の上着を投げ掛けて。
「それを着ろ」
 と。琴はほんのり顔を紅くしつつも。
「あ、ありがとう……ございます……」
 と、上着をたぐり寄せる。
 そして、ケルベロス達も居並び、戦闘態勢を整えると。
「全く。ただでさえオークなんて存在そのものが迷惑なのに、二子玉マダムを襲おうなんて……マダムに代わってお仕置きですよ!」
 と指をずびしと突き立てて言うと、それにオークは。
『ジャマ……スルナァ……!!』
 男の欲望に一直線のオークの叫び。
 涎を垂れ流し、怒り狂うオークは正しく……外道。
 ……そんなオーク達に、あえて緋桜が。
「オーク共。俺は無闇に命を奪う趣味はないんだ。とっとと自分の国へ帰って二度と地球に来るな! それでも掛かってくるなら……命賭けろよ」
 と最後通牒を突きつける。
 が、勿論オークは帰る訳が無い。
『オンナ、オンナ……!!』
 と、何処か狂気めいた言葉を吐くと、ケルベロス達に攻撃を次々と仕掛けてくる。それに。
「仕方在りません……では、今、私に出来る事をやっていきましょうか……!」
 と頷く颯。
 対し、8匹居るオークは、二匹がまず、触手を伸ばして拘束攻撃。
 その一方、他のオーク達は、拘束したのを集中して攻撃。
 ……勿論、そのターゲットになるのは、彼らのターゲットに合ったのか、琴。
「っ……やめなさい……っ!」
 と、苦々しく言い放つが、オークが自重する事等あり得ない。
 そんなオーク共の攻撃に琴はシャウトで自己回復を行いつつ、どうにか堪える。
 そして……残る仲間達は、全員前衛という陣形を取る。
 颯が寂寞の調べで破剣を仲間達に付与すると、瑠璃はマインドシールドで琴を補助。
「さぁ! 喧嘩だ喧嘩! 派手に行くぜ!!」
「ああ、このブタども、いい加減にしろ!!」
 と、緋桜が降魔真拳で拳を叩きつけると、ハウリングで力一杯叫ぶネムル。
 更に彩子がデストロイブレイドで、襲いかかるオークを叩っ切り、那岐が斬霊斬、ラピスが『ラピス・シュトローム』で、それぞれ単体を集中攻撃。
 飛行オークと言えども、地上に降りてしまえばただのオーク。その翼を活用する事など出来ず、ただただ攻撃するしかできない。
 ケルベロス達の全員前衛という体勢は、オークの防御力を大きく上回っており……2ターンで、速攻一匹が潰れてしまう。
『……ナニィィ……!?』
 と驚愕の表情を浮かべるオーク。
 でも……逃げはしない。もう少しで、手に入れられるかもしれないから。
『ナブリゴロシ、ダ!!』
 と、やっぱり集中攻撃をする彼ら……その執着心は、酷い執着。
 そんなオークの魔の手をギリギリで交わしながら、渾身の熾炎業炎砲で触手を焼く琴。
 那岐が絶空斬、ラピスはグラビティブレイク、そして瑠璃がエレキブーストで、更にネムルの攻撃力を強化する。
 そして強化されたネムルが。
「お前らにくれてやるのに丁度良いだろ?」
 と、死天剣戟陣で強力な一撃を叩きつけて、もう一匹を倒す。
 そして颯が我流一刀一槍奥義・雪月花の強力な一閃を叩きつけると、日桜の指天殺、彩子の旋刃脚。
 そんなケルベロス達の猛攻の前に、流石にオークは堪えきれない。
 そして……数分の間に、みるみる内に減っていくオークの数。
 残るはオーク、ただ一匹。
『……!?』
 驚愕の表情のオーク。周りを見て……逃げる算段をしている様だが。
「……一匹たりとも逃しません」
 と、並々ならぬ怒りを孕みながら、オークに『復讐鬼の腕』で、破壊の一撃を叩きつける。
 そして……。
「俺は突き進む……俺の力で!」
「最後の花見お前達には勿体無い位だぜ」
 と緋桜の『最後の一撃』、ネムルの桜花剣舞が連続命中……そして彩子が。
「ったく、おまえらはとっとと死んどけ!」
 と言い放つと共に、頭上から放つデストロイブレイド。
 その一閃に、最後のオークは一刀両断にされ、全て殲滅されてしまうのであった。

●お洒落さと共に
 そして、オークを殲滅した後。
 ケルベロス達は安堵の溜息を吐きつつ、周りの状況を確認する。
「それにしても……ほんとオークって奴は」
 と、今迄逆立っていた尻尾の毛も段々と落ち着いてきたネムルが、溜息をつきながら言う。
 と、それにそうだね、と肩を竦めながら彩子も頷き。
「全くだ。色々とモノを壊してるし……まぁ、戦闘の結果ってのもあるけど」
「ああ。と……なら周辺を治したら、みんなでちょっと一服していかねえか? 仕事の後は休まねえとな?」
 にやりと微笑むと、彩子もそうだね、と頷き、そして他の仲間達も。
「うん、そうだね。せっかくこんな眺めの良いオープンテラスなんだし、ちょっと休んでいこうか!」
 とそれに同調。
 そして、壊したところをせっせと直し、一通り直した後は、オープンテラスで心安らかな一服を楽しむのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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