宿縁邂逅~狙う宝はケルベロス

作者:雪見進


 静かな街の影で、ケルベロスの情報を集めるダモクレスがいた。そのダモクレスの名は『冒険家』ゴールド・チェイス。通常のダモクレスの能力に加え、工作・諜報能力にも優れている。現在はケルベロスの解析と利用を目的として、鎧装やミミックに興味を持ち、一人のケルベロスを狙っていた。
 その者の名はガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)。しかし、用意周到な性格故、機会を伺っていた。
 そんなゴールド・チェイスに一人のデウスエクスが提案を申し出ていた。
「はじめまして、それがし、螺旋忍軍、アダムス男爵と申すものです」
「……」
 名乗るアダムス男爵に視線だけ向け、自分は名乗る様子は見せない。
「我々デウスエクスは、それぞれ、味方同士というわけではありません。しかし、共通の敵は存在いたします」
 しかし、その視線を肯定と受け止めたのか、饒舌に語り始めるアダム男爵。
「そう、その邪魔者とはケルベロスです。地球侵攻の邪魔者であるケルベロスを殺害或いは捕縛する事ができれば、地球での戦いを有利に運ぶ事が出来るでしょう」
 ここで『捕縛』という言葉に、一瞬だけ反応するゴールド・チェイス。
「ケルベロスの力は脅威です。しかし、1体1体の戦力は決して高くない」
「……」
 その言葉に沈黙で答える。ゴールド・チェイスが今まで手を出さなかったのも、そこに問題があったからだ。
「つまり、敵が1体である時に襲撃すれば、勝利は容易となるでしょう。手筈は既に整えさせていただきました。是非、ゴールド・チェイス様の御助力をお願いいたします」
「……」
 その言葉に再び沈黙で答え、そして闇に消えるゴールド・チェイスだった……。


「……なんだろうねぇ」
 突然、周囲から人気が無くなる。そして嫌な気配を感じながら……普段と変わらない様子のガロンド。かつて、ダンジョンで宝を守っていた過去がある彼にとっては、突如襲われる経験もある。だから油断があった訳ではない。
「貴様の全てを貰い受ける……」
 しかし、突如現れたダモクレスの攻撃を避ける事は出来なかった。周囲に浮遊する謎の機械、それはゴールド・チェイスの使役する小型ロボット。それがガロンドを包囲し、そしてレーザー光でガロンドの頭や四肢をロックオンする。
「これは不味いねぇ」
 次の瞬間、小型ロボットはガロンドへ攻撃を仕掛けるのだった……。


「が、ガロンドさんが、宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知されました」
 震える声を無理に抑えながら、チヒロは説明をしていた。それほど驚くのも無理は無い。今までにケルベロスが襲われる事は無かったのだから。
「い、急いで連絡を取ろうとしたのですが、連絡をつけることは出来ませんでした」
 一瞬声に詰まる。それは自分の無力さを嘆いているようでもあった。
「一刻の猶予もありません。ガロンドさんが無事なうちに、なんとか救援に向かってください」
 そう言ってから、ガロンドを狙うデウスエクス、『冒険家』ゴールド・チェイスの詳しい説明に移るのだった。

「ガロンドさんを襲撃したデウスエクスは、『冒険家』ゴールド・チェイス。ダモクレスです」
 工作・諜報能力を持つダモクレス。小型配下を従えケルベロスの解析を行っているらしいのだ。小型配下は工作・諜報だけでなく、戦闘も可能。周囲に展開し、ゴールド・チェイスを守ったり、目標に突撃させ爆発させたりする。
 もちろん、それだけでなく本人も剣を操り攻撃してくる。
「ガロンドさんの状態は正直分かりません。一刻も早く現場に向かい救出して下さい。そして、ケルベロスを襲撃しても無駄だという事を敵に分からせてあげて下さい」
 そう言って、祈るように後を託すのだった。


参加者
クーリン・レンフォード(紫苑一輪・e01408)
霧島・カイト(演技砲兵と大食い子竜・e01725)
ミツキ・キサラギ(太陽少年・e02213)
御子神・宵一(御先稲荷・e02829)
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)
スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)
黒須・レイン(海賊船長見習い・e15710)
エルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)

■リプレイ


「……」
 激しい騒音の後、沈黙が走る。この場には、傷だらけのドラゴニアン、ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)とその相棒、アドウィクス。その周囲には多数の小型ロボットを配下として操作するガロンドの宿敵『冒険家』ゴールド・チェイスが対峙していた……。
「……」
 そんな中で痛みを堪えながら静かに……深くゆっくりと呼吸を整えるガロンド。それは、この危機的状況であっても希望を捨てていないからだ。しかし、現状でゴールド・チェイスを倒す方法もここから逃げる方法も無い。
 そんな彼に剣を構えゆっくりと近づくゴールド・チェイス。
「宝は貰っていく……死ね」
 『死の宣告』というよりは、『事実の確認』のような声で剣を振り上げる。その剣が高速で振動し切れ味を上げる。だが、その剣が止まる。
「……邪魔が入ったか」
 直感的に何かに気づいたゴールド・チェイスは一歩距離を取る。同時に響いたのは、希望の声だった。
「弟子よー! ガロンドよー! 師匠が来たぞー!」
 その声が誰だかゴールド・チェイスは知るはずもない。しかし、招かれざる客なのは間違いない。即座に配下に指示を出し、ガロンドに突撃させる。
「……クッ!」
 小型配下を囮にした斬撃に激しいダメージを負うガロンド。しかし、その目には希望が宿る。声の大きさからして、一分……いや、もっと近いだろう。それだけ耐えれば助けが来る。
「ガァァオオオォォ!!」
 それを理解したから、ガロンドも大きな声……いや、咆哮を上げて答え同時にポケットに手を入れ何かの機械を起動させる。
「……」
 その様子にゴールド・チェイスは小型配下に指示を出し、周囲にバリアを展開し長期戦の構えを取るのだった……。

「あっちだな! 絶対に助けてやる! 待ってろガロンド!」
「ガロさんがあぶない! 急がなきゃ!」
「友を護れずして何の為の剣か。ガロンドさんは必ず助けます……!」
 さきほど大きな声を出し師匠を名乗った黒須・レイン(海賊船長見習い・e15710)とエルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)、御子神・宵一(御先稲荷・e02829)がガロンドへの想いを口にしながら走り、他のケルベロスも後を追いかける。
「シグナルレーダーは……え?」
 スミコ・メンドーサ(グラビティ兵器技術研究所・e09975)は念には念を入れて探知装置を用意していたが、それはまともに動いていなかった。それがゴールド・チェイスの能力なのか、それともこの付近に誰も一般人が居ない事の結果なのかは分からない。
「まあ、そういう事もあるよね」
 今回は声による確認と電波による確認の二つの方法を用意していた。結果的には、声で確認出来たが、それが出来ない可能性もあった。スミコの行動は決して無駄ではない。
 ともかく今はガロンドの元へ一秒でも早く急ぐケルベロスたちだった。


「ここだぁ!」
 最初にガロンドとゴールド・チェイスとの間に入り込むのはスミコ。同時にサンダースナイパーを構え魔法光線を発射する。
「ゴールド・チェイスとはお前か!」
 さらに疾走しながら声を上げる宵一。同時に御業を使役し、炎弾を放つ。
「はろー、そしてさよなら」
 さらに連携攻撃は続く。クーリン・レンフォード(紫苑一輪・e01408)は距離を詰めると、至近距離で召喚するのはアカギツネのスピカ。
「スピカ、大切な人を助けるのを手伝ってね」
 召喚されたスピカはゴールド・チェイスに突撃するもぎりぎり避ける。
「Assault on my summons-!」
 しかし、それで終わらず避けられたスピカが後方で旋回し、背面からゴールド・チェイスに突撃した。
「……」
 連携で徐々にガロンドから距離を離されていくゴールド・チェイスは不快そうに沈黙するも、小型配下を操作して、ガロンドに狙いを定める。
「無事かガロンドォォ!」
 さらに続けて全力疾走しながら現れたミツキ・キサラギ(太陽少年・e02213)が大きく叫ぶ。同時にガロンドを囲む小型メカ群をロックオン。
「助けに来たぜぇぇ!」
 続ける叫び声と同時にガロンドを囲む小型配下をレーザーで撃ち抜く。
 爆発に紛れガロンドを守るように立ち、同時にバイザーを下げる霧島・カイト(演技砲兵と大食い子竜・e01725)と同じように立ちふさがるボクスドラゴンのたいやき。
「待たせたなガロンドよ!」
 そして、満を持して登場したレインが偉そうな言葉と同時に威嚇射撃を行う。
「……」
 そんなガロンドの窮地に登場したケルベロスたちに不気味な視線を向けるゴールド・チェイス。
「ガロさん、大丈夫?」
 そんな視線を無視し、ガロンドを安全な場所へ移動させ、エルザートの速攻の治療に加えて雷撃の強制駆動により傷を癒す。
「……助かったぜ」
 普段と違う口調は機嫌が悪い証拠だろうか。少々乱暴な言葉だが、それはある意味無事な証拠。
「うん、よかった」
 治療を終えて立ち上がるガロンド。そして、まだダメージの多いガロンドを後衛に下げ、さらに彼を守るように陣形を組むケルベロスたち。
「……」
 それを静かに見つめながら、ゴールド・チェイス自身も小型配下に指示を出し、自身を守る防壁を展開させる。
 ここからが本当の戦いのはじまりだ。


「想定外戦力確認、戦闘プラン修正……完了」
 ゴールド・チェイスは援護に現れたケルベロスたちを『冒険』の途中に現れた障害のように観察している。
「こいつだけには殺されるわけにはいかん」
 そんなゴールド・チェイスを睨み付けるガロンド。その視線は宿敵という以外にも、違う複雑な想いの込められた視線。
「……」
「……」
 そんなガロンドとゴールド・チェイスの視線が交錯する。
 しかし、お互いに今は何も語らず視線を逸らす。
「……皆、力を借りるぞ」
 そして気合いを入れるように声に出す。
「ああ、師匠にまかせるのだ!」
 そんなガロンドの言葉にとても偉そうな言葉で答える師匠レイン。
 同時にゴールド・チェイスがさらに小型配下を展開し、周囲に漂わせる。

 そんな気合いの入るガロンドたちを見て、あえて一歩先に出るのはカイト。
「まあ、俺は軽い接点しか無いような奴かもしれないが……」
 そう言いながらゆっくり歩く。この場に駆けつけた者の中では彼が一番ガロンドとの接点が少ないのだろう。
「それでも、可能性があるなら助けない、って選択肢を取らないのは……可笑しいだろ?」
 それでも、深い関わりの無いガロンドを救う為にこの場に居るのだ。
「そうだな!」
 そんな言葉をとても偉そうに肯定するレイン。
「それが海賊ってもんだぞ!」
 その言葉がどう海賊と関係あるのか分からないが、レインにとってはとても重要なのかもしれない。
 そんな肯定の言葉を背に、さらにもう一歩進むカイト。
「やぁ、今日は……雨が降りそうだね」
 そのままゴールド・チェイスに世間話でもするようにちょっと不思議な言葉を口にする。
「雨など降らぬ……」
 そんな言葉に反応したゴールド・チェイス。用心深い彼にとって天気予報の確認を怠る事などありえない。しかし、そんな言葉を裏切るように、ゴールド・チェイスの頭上に、何かが降る。
「……戯言」
 それが雨でない事は理解したが、避けるまでには至らない。雨のように降るカイトの魔術に触れ、少々冷静さを失うゴールド・チェイス。
「ならば、全てを破壊する」
 作戦が失敗した以上、一度撤退する案もあるだろう。情報提供者の事を考えても義理立する意味は無い。しかし、ゴールド・チェイスは撤退する様子を見せない。ガロンドと……その相棒のミミック・アドウィクスを睨みながら再び配下を周囲に展開させる。
「そして、奪う」
 その判断はカイトの魔術の影響もあるだろうが、それだけとは思えない。ただ、確実なのはこの状況であってもゴールド・チェイスは目的を達成させる可能性があると考えている事だろう。
「これ以上、何も奪わせないよ!」
 そんな言葉を否定するようにヒールドローンを展開させ、ミツキたちを守るように展開させるエルザート。
「そうじゃ、もう何もやらんのだぞ!」
 さらにレインが紙兵を展開させ、防御を固める。
「また、私の大切なものを奪おうとするのはダモクレス、なのね……」
 クーリンは悲しそうに呟きながらも、ガロンドに軽く視線を向け、そしてガロンドの前に立つ。
「どうしても、ガロンドを連れてきたいっていうなら、私達を倒してからにしてはどうかな?」
「是が非でもそうさせて貰う」
 クーリンの言葉に答えると同時に剣を構えるが、それよりも早くクーリンが動く。
「キィ、あなたも大切な人を助けるの手伝ってね」
 同時にファミリアロッドから放つ一撃がゴールド・チェイスを貫く。
「任務継続可能……」
 ケルベロスたちの連続攻撃を受けても大きな反応を見せないゴールド・チェイス。
 高速振動剣でカイトを狙うが、その攻撃を仕掛ける動きに割り込み、剣撃をいなす宵一。
「……捉えました」
 そこから流れるような動きで斬撃を繰り出す。
「追撃するぞ!」
 そのしなやかな動きの中へ追撃を仕掛けるミツキ。
「チビに用は無い、消えろ」
 アームドフォートの狙いを定めた瞬間、突然にも思える挑発をするゴールド・チェイス。その単語はミツキのタブー。
「……」
 普段なら激怒するミツキだが、その感情を奥歯で嚙み殺す。今、挑発に乗って陣形を崩す事は出来ない。
「狙い穿つ!」
 そのまま全砲門展開し、ゴールド・チェイスを狙い一斉掃射。
「そこだね!」
 さらにスミコがイクシオンMX4(ガトリングガン)を掃射して、攻撃を重ねる。
 ガロンドを想う気持ちで重なったケルベロスたちに隙は無く、徐々にゴールド・チェイスを追い詰めて行くのだった……。


「翼の加護を……」
 エルザートが翼を羽ばたかせると、その周囲に紅と蒼の光の粒子が展開される。その光がスミコたちを包み込み傷を癒していく。
 その光を受けながら、陣形を整える。前衛のカイトたちはかなりのダメージを負っているが、ミツキや宵一が敵の動きと仲間の動きを良く観察しながら戦っている事もあり、戦闘を優位に進められている。
 さらに何よりも一瞬の油断が『知人』の『友達』の『敬愛の対象』の『弟子』の命を失わせるかもしれないのだ。その動きに万が一の油断も隙も無い。
「そのバリアを砕く」
「合わせます」
 ゴールド・チェイスの周囲に張り巡らされたバリアを狙いカイトと宵一の音速の拳が連続して放たれる。
「ここだ!」
 音速の拳で砕かれたバリアの隙間を狙いスミコのサンダースナイパーによる狙い撃ち。それが小型配下を巻き込み貫く。さらにそこへ放たれたのはクーリンの幻影龍。それがゴールド・チェイスの身体をより赤く燃え上がらせる。

「……」
 ほぼ全ての配下は倒され、満身創痍と言える状況。どう見ても想定外の敵増援や異常事態でも現れない限り、ケルベロスの勝利は揺るがない。
「……ふふふ、はははっははぁぁぁ!」
 それを理解したからか、突然笑い声を上げるゴールド・チェイス。そして、この場に駆けつけて来たケルベロスたちを全員指差し、醜悪とも言える笑みを浮かべる。
「まだあるじゃないか、ガロンドぉぉぉ!」
 何を言っているのか、殆んどの者が意味不明であろう。
(「強くなってから仲間を集って討つ計画だった」)
 しかし、ガロンドには意味が分かったのか、独白しつつクーリンとレインに一瞬だけ視線を向ける。
(「師匠とクーリンは巻き込みたくなかった」)
 そして、一瞬だけ目を伏せるガロンド。
(「皆何故集まって……?」)
 そんな言葉に内心の動きはあるも、表情を動かさない。
 そんなガロンドと頭部に何か衝撃が走る。
「大丈夫なのだ!」
 その衝撃はレインだった。そして、ただ『大丈夫』と言う。それは師弟関係だから余計な言葉が不要なのだろう。
「そうだな、大丈夫だ!」
 そう言ってアドウィクスを持ち上げる。
「……っ!」
 その瞬間、ゴールド・チェイスが動いた。低い姿勢から、剣ではなく手を伸ばし、踏み込んで来る。
「させねぇぜ!」
 そこへ割り込んだのはミツキ。ゴールド・チェイスの奇怪な行動に惑わされずしっかりと警戒していたのだ。
 アームドフォートの砲口からグラビティで構成された剣を形成。
「断絶剣『滅鬼度』!」
 そのままカウンター気味にゴールド・チェイスを貫く。
「……損傷大、戦闘継続困難」
 強烈な一撃だったはずなのに、その手はアドウィクスを奪うために伸ばされる。声と行動が矛盾している。それほどまでにアドウィクスを狙うのか。
「まだだぞっ!」
 そこへ放たれたのはレインのフックショット。これはガロンドから貰った絆。
「受け取れ! 私の想いを! 強さを!」
 強く込めた想いは、防御に展開されたバリアを砕き、配下を弾き、ゴールド・チェイスを貫く。
「……損傷甚大、戦闘継続不可能」
 そしてゴールド・チェイスは膝を付き……戦闘不能となった。


 ガロンドの足下には、仲間達の力によって戦闘不能となった宿敵の姿。ゴールド・チェイスはガロンドの故郷を、休息を、友人を、生き方を、奪った相手。
「宝箱の中身はとうに空だ!」
 そんな宿敵に向かい、ガロンドが叫ぶ。その言葉には喜怒哀楽が全て込められたような複雑すぎる想いの言葉。しかし、その言葉を聞いて、ゴールド・チェイスは静かに笑う。
「貴様の言葉を信じる者など誰も居ない。宝の番人が語る言葉など信じぬ。代わりに応えてやろう、宝箱の中身を……」
 戦闘不能のはずなのに、口だけ動かし語る言葉は虚言ですらなく呪いの言葉。
「中身は『希望』だ……そして、『希望』を求める者が開け、中身が空ならば、そこの中身が『絶望』となるのだ……中身は『冒険者』の数だけ『ある』のだよ」
 洞窟の奥に隠された宝箱。その中身に関わらず『希望』がある……そう語るゴールド・チェイス。
「それに……」
 さらに呪いの言葉を吐き続けようとするゴールド・チェイスを、ガロンドが静かに……終わらせる。
「はい」
 次の瞬間、ゴールド・チェイスの頭上から吊り天井が落下してくる。それはガロンドの『両親』から学んだ技をグラビティ攻撃としたもの。
 その両親との絆で呪いの言葉を……終わらせた。

「ガロさぁん!」
 ゴールド・チェイスが完全停止したのを確認すると同時にガロンドに抱きつくエルザート。
「おっ!」
 急に抱きつかれ思わず倒れるガロンド。加えてとても心配そうな顔をしているクーリン。そんな彼女らを横に相変わらず偉そうな様子のレイン。
「うむ、無事ならよかったのだ!」
 弟子の無事を確認し満足そうな笑みを浮かべる。
「皆ありがとう」
 そんな皆に、短く感謝するガロンド。宿敵を倒した彼の胸中には語れない複雑な想いがあるのは、誰の目にも明らかだった。
 だから今はただ、ガロンドの無事を喜ぶケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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