晴れ時々オーク

作者:天枷由良

●舞い降りる触手豚
「ムァー! 量産型とはいえども! 実験でこれ以上の性能は出せぇーん!!」
 頭を掻き毟り、息荒く。
 自らが生み出した飛行オークの前で、マッドドラグナー・ラグ博士は散々身悶えした後、ビシィ! と指を突き出した。
「これ以上の性能を得るにはァ……新たな、そう新たな因子が必要だァ!」
 オークの頭をべしべしと叩きつけ、ラグ博士は更に叫ぶ。
「分かるかァ!? 女だ、お前らが人間の女たちを襲いィ! その女たちが生んだ子を更なる実験体とするのだァ!」
「……オンナ!?」
 それまで黙りこくっていたオークたちが、ラグ博士の言葉の一点だけを切り取って目を輝かせる。
「オンナ、オソッテイイノカ!?」
「あぁ、どんどん襲え! さァ行けェ!」
 オークたちは実験体云々には全く興味のない様子で、女性を襲える嬉しさだけを抱えて出撃していった。

「あー! 何でこんな暑いのー!?」
 女子高生たちが公園のベンチに座り、スカートでバタバタと仰ぐ。
 はしたないからやめろだの、汗をかきすぎてシャツが透けてるだのと、かしましい声を上げる彼女たちの元に、降りてくる5つの影。
「オンナダァー!」
「ブヒャヒャ! ……グェ!!」
 興奮のあまり腹から墜落したオークたちは、すぐに起き上がって触手を蠢かせた。
 そして悲鳴を上げた一人をつまみ上げ、制服の上から身体を撫で回し、じっとりと湿った首筋を嗅ぐ。
「ブヒョー! オンナノニオイダァ!」
「やーだーキーモーイ!!」
 その声すらも興奮材料にして、オークたちは女子高生を弄び続けた。

「オークが、空を飛んでやってくるのよ」
 ミィル・ケントニス(ウェアライダーのヘリオライダー・en0134)は、自分でも何を言っているのか、という顔でケルベロスたちに告げた。
「……えーっとね、竜十字島のドラゴン勢力に、オークの品種改良を行っているマッドドラグナー・ラグ博士と呼ばれるドラグナーが居るようなの。そのラグ博士が作った飛行型のオークが、今回事件を起こす敵、というわけ」
 飛行といっても高い場所から滑空してくるだけで、地表から飛び立つことは出来ないようだ。
「でも、高い所から襲撃目標の女性を見つけ出して、直接降下してくるという手法は脅威よ。……だって、急に空から触手を生やした豚人間が降ってくるのよ?」
 身震いしながら、ミィルはケルベロスたちにオークの撃破を頼み込む。
 現れる飛行オークの数は5体。
「飛行型ではあるけれど、戦闘能力自体は通常のオークと大差ないわ。地上に降りたらただの触手豚よ」
 そのオークたちが現れる場所は、とある公園だ。
「ベンチに座ってだべっている女子高生たちを襲うつもりみたい。事前に避難して貰いたいところだけど、そうするとオークの狙いが予知から変わってしまうわ」
 男性ケルベロスが近づき、身だしなみを整えたりお淑やかになってしまうのも危険だという。
「オークが降下するまで、男性陣には隠れていて貰うのがいいかしらね。いざとなったら女性ケルベロスが女子高生風にして引き付ければいいかもしれないけれど……」
 何処でオークの好みから外れるか分からない。
 無理はしない方が良いだろう。
「襲撃時刻には結構気温も上がってるみたいだけれど、女性の大敵オーク退治、よろしく頼むわよ!」
 熱のこもった一言で、ミィルは説明を終えた。


参加者
ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)
ガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)
大原・大地(飛空オークの参加者にご武運を・e12427)
霧崎・天音(昇火・e18738)
常磐・まどか(白の残照・e24486)
フィニス・トリスティティア(悲しみの終わり・e26374)

■リプレイ

●炎天下で待つ
「オークの品種改良なんて、ろくなことしませんね!」
 ドラゴニアンの角羽尻尾を隠して女子高生に扮した――本人曰く、華麗忍法「オークなんかしっとりとしたセーラー服でアレしちゃうのです」の術、の最中にあるガラム・マサラ(弱虫くノ一・e08803)が言った。
 視線の先には、オークが狙いをつけている本物の女子高生たち。
 彼女らは公園に照りつける初夏の日差しへ、姦しい声を上げながら戯れを続けている。
「乙女の汗ばんだ肌、醸し出される色気……オークに蹂躙させるわけにはいきませんね」
 クノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)が、日差しに劣らぬ程度の熱い視線を女子高生たちに送りながら呟いた。
 ボタンを幾つか外して胸元まで露出した制服風のブラウスは、ところどころに薄っすらと汗が滲み、肌に張り付いている。
 チェック柄のスカートも短く丈を詰めているが、いくら脚を晒した所で、今日の陽気では体温調節の役目を果たしてくれそうにはない。
「こんな暑い日にオーク退治だなんて……ツイてないわ」
 げんなりとした様子で零し、フィニス・トリスティティア(悲しみの終わり・e26374)は空を見上げた。
 思わず羽織っているカーディガンを脱いでしまいたくなって、しかしフィニスは、逆に前立てを掴んで引き締める。
 暑いのも苦手だが、オークの前で素肌を晒し、触手の餌食となる方が耐えられない。
 首筋を汗が伝う感触がしても、フィニスはじっと我慢の子であった。
 だが、何事にも限度というものがある。
「暑い……気持ち悪い……」
「……ちょっと、大丈夫なの?」
 尋ねたフィニスの声も聞こえたか否か。
 既にグロッキー気味の霧崎・天音(昇火・e18738)は、虚ろな目でふらふらと歩く。
(「暑い……地獄があるせいで……余計に」)
 自身の右足に揺蕩う炎を見やると、地面にぽたぽたと汗が垂れて、黒い跡を作った。
 ただでさえ暑がりなのに、上も大火事、下も大火事。
 今日ほどブレイズキャリバーであることを後悔する日もない。
 そもそも、オークはレプリカントの自分に釣られてくれるのだろうか。
「セーラー服が似合っていて可愛い……などと言ってられませんね、これは」
 クノーヴレットがフォローしようとして、途中で天を仰いだ。
 天音が倒れてしまう前に、早いところオークたちが降ってこないものか。
 自らを手で扇ぎながら、クノーヴレットはぐるりと空を見回す。
 そんな彼女たちから少し離れた木陰で、葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)は日差しを避けつつ、ちびちびと冷えた缶ジュースを口にしていた。
 決して寛いでいる訳ではなく、仲間たちがオークの注意を引くことに失敗した時や、女子高生たちに襲いかかろうとした時、すぐに攻撃を仕掛けられるよう備えているのだ。あくまで役割分担である。
 一方。
「お腹が邪魔して隠れにくいなぁ」
「我慢して下さい。ほら、もっとしゃがんで」
 丸々と太った大原・大地(飛空オークの参加者にご武運を・e12427)を押し込んで、ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)と常磐・まどか(白の残照・e24486)は茂みに潜んでいた。
「近頃、オークたちの動きも活発化していますよね……気になる所ではあるのですが」
 女性ではあるが隠れて待機する側に回ったまどかは、ぽつりと呟いて思慮を巡らせる。
 元よりマイナス思考に陥りがちなせいか、そうしていると良くない想像ばかりしてしまって、それをティクリコティクや大地に悟られる前に、まどかは意識を目の前の出来事へと戻した。
 まずは、これから起きる事件を解決することが第一だ。
「囮になってくれる仲間だって女性だもん、嫌な思いは出来るだけさせたくないね」
 ティクリコティクも小型のリボルバー銃に手をかけて、いつでも飛び出せるように構えながらその時を待つ。
 大地も同じ方を向いて備えていたが、その心は全く別の方向へ。
 何せ、汗ばむ女学生を茂みから監視するというシチュエーションは、大地にとってこれっぽちも嬉しいものではないのだ。
 あれがもっと、ガッチリと肉付きの良い男性であったなら話は別なのだが。
「(もしかしてオークの方が健全なのかなぁ……)」
 悩めるドラゴニアンが悶々としだした時、空から欲望の叫びが響き渡った。

●炎天下に降る
「オンナダァー!」
「ブヒャヒャ! ……グェ!!」
 滑空する五体のオークが、触手を戦慄かせながら公園に着地――個体によっては墜落してきた。
「きゃっ――」
「キャー!!」
 女子高生たちが上げるはずだった悲鳴を、ガラムが大きな声で上書きする。
 それはオークたちの注目を集めると同時に、隠れていた三人と、四体のサーヴァントたちが飛び出す合図となった。
「今のうちに、逃げて下さい」
 クノーヴレットに促され、ばたばたと逃げ出していく女子高生たち。
「ブヒャァ! オンナァ!」
「ニガサナァイ!」
 獲物を逃すまいとオークたちも触手を伸ばすが、その間にミミックのシュピールやボクスドラゴンのマンダーが割り込んで――。
 ――びたん!
 それに続いた天音が、豪快にすっ転んだ。
 どうやら、足元にまで流れていた汗で足を滑らせたらしい。
「ブッ……ブヒャッヒャッヒャッ!!」
 さすがのオークたちも、これには大笑い。
 天音は表情こそ変えないが、心の内は燃え上がり、それは地獄の炎に還元されていく。
 ケルベロスの務めとはいえ、何故、触手を生やした豚野郎どもに笑われなければならないのか。
(「……もういや……ゆっくり休みたい……」)
 こうなったら一刻も早くオークを駆逐して、とっとと帰ってシャワーでも浴びよう。
 帰りの道すがらにあるなら、銭湯でもいいかもしれない。
 早くも戦いの後に思いを巡らせる天音が立ち上がった所で、オークたちは改めて触手を伸ばしてきた。
 このうえ慰みものになっては堪らないと、天音は触手を跳んで避ける。
 シュピールも触手の伸びる先に飛び込んで、代わりに受けたついでに具現化武装で殴りつけてやった。
 しかし、それでも残る触手の一組が、まずはクノーヴレットを捉える。
「やぁ……ん……」
 足を絡めとられ、宙吊りになったクノーヴレットは、身体のそこかしこに触手を這わされて――何故か恍惚とした表情を浮かべ、身を捩らせた。
「ぁはぁ……♪ もっと、してくださいな……♪」
「ブヒョー! タマンネェー!」
 相手が乗り気なら、これは合意の上の行為である。
 存分に欲望を発散させようとするオーク。
 体力を削られているのに、目を爛々と輝かせて胸を突き出し腰を振るクノーヴレット。
 白昼の公園には何とも相応しくない、不健全な光景が繰り広げられていく。
 仲間ばかりに良い思いはさせてられぬと、また一体のオークが触手を伸ばし、今度はガラムを捕まえた。
 更にもう一体は……なんと、逃げていった女子高生を追おうとしているではないか。
「……しょうがない、わね」
 フィニスは意を決して、カーディガンを脱ぎ捨てオークの進路上に立ちはだかった。
 目の前に現れた薄着の娘に、さすがのオークも意識を奪われる。
「そ、その汚いものを近づけたらどうなるか、分かってるんでしょうね!?」
 日頃は口数少ないフィニスも、近寄ってくるオークには耐えられない。
 強がってみせるが、しかしそれは、逆にオークの興奮を煽ったようだった。
「ブヒョー!」
「や、やっぱ無理! 助け――」
 思わずフィニスが身構えた瞬間。
「フェンネル、サフラン、ディル、コリアンダー、クミン、アニス、ジンジャー……全てのスパイスの力を此処に集結して、解き放つ!」
 ガラムが世界中のカレー力を集約、粉砕、拡散させて、熟成された芳醇な香りをオークたちへとばら撒いた。
 華麗忍法・粉塵爆破……その刺激的な一撃は、フィニスを狙っていた触手ばかりか、クノーヴレットと戯れていた触手も弱らせていく。
「おっといけない。ついつい食材として見てしまいました」
「食材……豚……焼豚……きっと美味しい……」
 ついに熱で思考がやられたか。
 うわ言のようにのたまいながら、天音が右足の地獄の炎を――汗と一緒に激しく撒き散らした。
 桜の花びらのような姿を取った炎は、スパイシーな香りのするオークたちへ触れるなり、その肉を引き裂き、抉り取り、傷と一緒に消えない恐怖を刻みこんでいく。
 個体によっては何やら心の傷まで掘り起こしたらしく、空へ向かって触手を振り回し始めたオークを、マンダーが体当たりで突き飛ばした。
 そこに猛然と突撃してきたのは、ボクスドラゴンのジンを伴った大地。
「似た体型が、人を傷つける所を見たくない!」
 大地は叫びながら、オークの触手を付け根から引き千切るように破鎧衝を見舞った。
 ジンもブレスを吹き付けて追撃してやると、いよいよ始まった戦いに胸躍らせる静夏が、オークへ向けて足を振り上げる。
「初夏の青空に、勝利の花火を打ち上げよう!」
 朗らかな笑みで言って、静夏は何度も宙返りをしながらオークを蹴り上げていく。
 その度に小さな花火のような爆発が起きて、それは最後に繰り出したアッパーカットが炸裂した瞬間、一際大きなものになった。
 少しばかり時期の早い打ち上げ花火と化したオークは、やがて地面へ墜落すると、それきり動かなくなる。
 仲間が殺られたことで気が萎えたか。
 残るオークはシュルシュルと触手を引いていったが、その一束を掴み上げたクノーヴレットが妖艶な笑みを浮かべて詰め寄ると、オークの顎を撫でさすり。
「……もう終わりですの? うふふ。でしたら、お礼を……♪」
 クノーヴレットは指先に魔力を篭め、オークの触手を撫でたり揉んだり擦ったりと刺激し始めた。
「ブヒッ……ブ、ブ……」
「さぁ、私のこの指で奏でて差し上げますから、素敵な声で歌ってくださいね……♪ 」
「ブッヒョー!!」
 緩急をつけられた動きに悶絶したオークは、程なくして息を荒くしながら粘性溶解液を噴出すると、全身を光の粒子に変えたまどかの突撃を喰らって、彼方に葬り去られる。
「あらぁ、随分とお早いんですのね。残念」
「……ほんっと、オークって気持ち悪い!」
 満足気なクノーヴレットとは対照的に、フィニスは蔑むような目を向けた。
 あまりにも気分が悪くなりそうなので、ウイングキャットのトゥードゥルスに清浄なる羽ばたきを起こしてもらいながら寂寞の調べを歌い上げていると、感覚を研ぎ澄ませていたティクリコティクが、女子高生たちの逃げていった方を塞ぎつつオークの一体を指差して声を上げる。
「次は……あいつです! あのオークを狙って下さい!」

●炎天下に散る
 狙われたオークは、雄叫びを上げて己を奮い立たせた。
 それに気分だけでも追い立てられたか、残る二体のオークは静夏と天音を狙って、触手を突き刺すように伸ばす。
「うわっ! やめっ、やめてよ……んっ!」
 敢え無く絡め取られた静夏の全身を、触手はくまなく弄くり回していく。
(「やだっ……なにこれぇ……」)
 デウスエクスとの戦いにスリルを求める静夏であるが、これはなんというか、ちょっと違う。
 違うのだが、どうした事か。
 あまり上げたことの無いような艶めかしい声が、勝手に漏れ出てきてしまう。
「こんなのっ……あっ……こんなの知らないよぉ……」
「ブヒャッヒャ! イイヨーイイヨー!」
 すっかり気を良くして、オークは静夏を弄ぶ事に尽くし始めた。
 一方、暫く触手から逃れていた天音も、逃げ疲れたか捕まってしまう。
「ブヒョヒョ! シットリ、ネットリ、ビッチャビチャ!」
 汗だくの天音を引き込んでベロベロと舐めまわし、オークはご満悦の様子。
 対して天音の方は……もう色々とキャパシティを超えたのだろう。
 表情をほころばせて、力なく抵抗するのがやっと。
 オークたちの横暴は何処までも続くかのように思えて、それを叩き壊したのは怒る少年の銃撃。
「――その汚い触手を仕舞え、クソッタレのデウスエクス。お前らが触れていいのはこの星には何一つとして無ェんだ」
 先ほどまでの純真そうな声は何処へ消えたのか。
 ティクリコティクはオークを睨めつけて、リボルバー銃の引き金に指をかける。
「わかんねぇか? ならお勉強の時間だ。わかるまでその頭の中に.357マグナム弾をぶちこんでやる」
 次々とばら撒かれる鉛弾に、オークたちは竦み上がって静夏と天音を放り投げ、どたどたと逃げ出した。
 しかしその途中でガラムとマンダーのブレスに煽られると、一番遅れを取ったオークに大地が飛び蹴りを、ジンがタックルをかます。
 ゴロゴロと転がった先には、狐面を被ったまどか。
「壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌、玖、拾――」
 鈴の音を鳴らして荒々しく踊り出し、まどかは自らの「悲しみ」と「怒り」を捧げて、オークに降魔の一撃を叩きつける。
 鬼神の技とも呼ぶべきそれを喰らって、また一体、オークは力尽きた。
 残る二体にも、クノーヴレットのブラックスライムが喰らいつくさんと襲いかかっている。
「ほら、暑くてバテちゃうのはわかるけど、頑張って」
 羽ばたきを弱くしていたトゥードゥルスに言って、フィニスはべっとべとになった天音へ電気ショックを飛ばした。
 その刺激で跳ね起きた天音がオークに流星の如き蹴りを食らわせると、トゥードゥルスが豚の面を引っ掻き回して、最後は静夏が『たおす』と書かれた道路標識で思い切り脳天を叩きつける。
「……これから薄着の季節だけれど、あなたに夏はこないの」
 倒れたオークに言い捨てた静夏だったが、ふらりと力が抜けてへたり込んでしまう。
「無理しちゃ駄目ですよ。……いま治します」
 ティクリコティクはぎゅっと目を瞑って、満月に似たエネルギー球を静夏にぶつけた。
 その間に、最後の一体も散る間際。
 ガラムが足に炎を纏って蹴り上げ、宙に浮く火の玉となったオークに、大地が狙いを定める。
「当たれぇー!」
 投擲された太陽の大盾が直撃して、オークは幾つかの肉塊となって公園に降り注いだ。

 あちこち飛び散った豚の名残を薬液の雨で洗い流していたフィニスが、木陰で涼むトゥードゥルスを追っていく。
 共に公園の浄化作業を行っていた大地も、そこで一区切り付けて仲間たちにミモザキャンディを配りだした。
 不快な敵との戦いを終えた、僅かながらの労いらしい。
「飴……そうですね。オーク、いやポークを見てたらお腹が空きました。何処かにカレー屋さんはありませんかね?」
「ガラムさん、この状況で良くそんな気になれますね……」
 苦笑いを浮かべるティクリコティクの耳に、今度は悲痛な声が聞こえてくる。
「……カレー屋じゃなくて……銭湯、探して……」
 薬液では到底流しきれない汚れに包まれ、天音はそれだけ言ってぐったりと倒れこんだのだった。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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