老舗店に現れる月華衆の少女

作者:なちゅい

●老舗高級懐石店を狙って……
 深夜、京都府某所。
 そこには2人の女性の姿があった。1人はスーツを着た、一見キャリアウーマン風の女性。古き木造の家々が連なる古都において、その女性はやや浮いて見える。
 もう1人は、螺旋の模様の仮面を被った少女。機能性を重視した忍び装束を纏っており、ポニーテールが目を引く。
 こちらはこの街並みに合っている気がしないでもないが、忍者という出で立ち、そして、渦巻きのような仮面という異様な姿を確認すれば、似つかわしくない姿であると実感してしまうだろう。
「あなたへの命令は、地球での活動資金の強奪、或いは、ケルベロスの戦闘能力の解析です」
 スーツの女性……夕霧さやかが螺旋の少女へと指示を出す。その外見から螺旋忍軍であることは推察できる。……ということは、この女性、さやかもまた、それに属する者、かつ、それだけの地位がある者なのだろう。
 そして、少女。彼女は月華衆の一員。その所属メンバーは性別、体格が似通っており、ほとんど同じ思考を行うよう教育を施されている。
「あなたが死んだとしても、情報は収集できますから、心置きなく死んできてください。勿論、活動資金を強奪して戻ってきてもよろしくってよ」
 指示を出すさやかの言葉に、少女は無言でこくりと頷いた。
 程無くして――。
 命令を受けた少女は、とある老舗高級懐石店を狙う。
 政界のお偉いさんや、有名人もよく来店するといわれる店。その大きな敷地の中を少女は駆けて行く。
 下調べは事前に済ませていたのだろう。屋敷内部に降り立つ少女は、迷うことなく店の事務所へと忍び込む。警備のシステムなど、彼女にとってはないに等しい。
 事務所の金庫の前にやってきた少女は、その錠をあっさりと破り、収められていた売上金を奪い去る。さすがは高級店。その売上金はかなりのものだ。
 掴んだ札束を風呂敷で包んだ彼女は、何事もなかったかのように店の外へと飛び出していく。店の警戒は万全だったはずなのだが、少女は悠然とその場を去ってしまったのだった。
 
 ヘリポートへとやってきたケルベロス達は、リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)から説明を受けていた。
「月華衆の少女が現れる予知があったよ」
 その螺旋忍軍所属の少女が現れるのは、京都府の老舗高級懐石店だ。
「大きな敷地にあるお店でね。著名人もよく来店しているって話だね」
 それだけに、警備システムなども店側は張り巡らしており、番犬や警備員も詰めていたはずなのだが……。月華衆の少女に対しては全く意味を成さなかったらしい。
「少女は敷地内を駆け抜け、屋敷へと侵入。事務所へと直行の後、売上金を奪って逃走するようだね。どうやら、螺旋忍軍の活動資金にするものと思われるよ」
 『月華衆』というのは、螺旋忍軍の一派だ。小柄で素早く、隠密行動が得意なようである。
 その敵、月華衆は月下美人の紋様が掘り込まれた螺旋手裏剣を持ってはいるが、そのグラビティを使用することはなく、特殊な忍術を利用する。
「自分が行動をする直前に使用された、ケルベロスのグラビティの一つをコピーして使用する忍術だね」
 これ以外の攻撃方法は無いようなので、戦い方によっては、相手の次の攻撃方法を特定するような戦い方もできるだろう。
 また、理由はわからないが、月華衆は『その戦闘で自分がまだ使用していないグラビティ』の使用を優先するので、その点も踏まえて作戦を立てれば、有利に戦えるだろう。
 説明を終えたリーゼリットはううんと唸りこむ。
「月華衆による強盗事件は幾度か起こっているけれど、不可思議な点も多いんだよ。この作戦を命じる黒幕がいるはずなのだけれど……」
 スーツの女性と月華衆が一緒にいたという目撃証言も、一般人から上がっている。この女性が黒幕の可能性が高いが、はっきりと断定も出来ない状況だ。
「まずは、この事件を未然に防いでおきたいね。皆の活躍、期待しているよ」
 そう告げたリーゼリットは、ケルベロスへとはにかんでみせたのだった。


参加者
七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)
秋草・零斗(螺旋執事・e00439)
ヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)
槙野・清登(惰眠ライダー・e03074)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)
ツェツィーリア・リングヴィ(アイスメイデン・e23770)
セーレ・シール(旋律は空を舞う・e27274)

■リプレイ

●螺旋の少女の出現に備えて
 ケルベロス達の姿は、京都府のとある老舗懐石にあった。
「写し取りては返すが月の華。なれど、所詮は水面に映りし走馬看花の鏡像華、……で御座いますか」
「器用なことをする敵だね……逆に不器用なのかもしれないけれど」
 ツェツィーリア・リングヴィ(アイスメイデン・e23770)が口にしたのは、相手の能力を真似すると言う月華衆の少女のこと……まさに今回の相手のことだ。ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)もその能力に感嘆するが、同時に、それしか出来ない少女の欠点も指摘する。
「例えデウスエクスであろうと、シニョリーナが使い捨てというのは気にくわんな」
 イタリアンマフィアのヴィンチェンツォ・ドール(ダブルファング・e01128)はその作戦に理解は示すが、使い捨てる対象がシニョリーナ……乙女というのが鼻持ちならない様子だ。
「敵の本命は情報収集……ということは、こうして戦う時点で敵の目的は果たせているのですね」
 ケルベロスがやってくることも、敵は織り込み済みなのだろうと、ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)は考える
「しかし、強盗を見過ごすことも出来ません。なるべく攻撃手段を絞って撃破しましょう!」
 ケルベロス達はソラネの主張に同意しつつも、作戦の為の準備を進める。
 予め、営業時間内に足を運んでいた一行。
「なるべく開けた場所がいいですね」
 ソラネはアイズフォンで店舗の内装、そして、周辺の地理について把握の上、戦いやすい場所をピックアップする。
 また、ソラネは店舗スタッフに避難を促すことも考えたが、七奈・七海(旅団管理猫にゃにゃみ・e00308)、槙野・清登(惰眠ライダー・e03074)の案もあり、相手を欺く為にもいつも通り振舞うよう店主へと依頼することにした。
「今夜、盗難の危険がある。一番危険な事務所は自分達が警護するので、近づかないでほしいんだ」
 戦いが始まれば、店にはできれば近寄らないでほしいと七海が付け加える。
「必ず、店の人達は守る。安心して協力を頼みたい」
 それまで飄々とした口調で語っていた清登が、突然真剣に店主へと語りかけた。ケルベロスの依頼ということもあったが、その依頼に店主は好感を抱いて、快く了承してくれた。
 そんな中、店員が運ぶ懐石の匂いを嗅ぎつけた、セーレ・シール(旋律は空を舞う・e27274)。
(「懐石料理……食べたい……」)
 彼女は美味しそうな料理に視線を走らせ、口元を思わず緩めてしまうのだった。

 夜――。
 ケルベロス達は事務所に詰め、敵の出現を待つ。
 七海は些細な情報をも伸ばすまいと、MP3プレイヤーを起動させて録音する。セーレは仲間達と共にそわそわしつつ、物陰に潜んでいた。
「さて、こちらの作戦。上手く働いてくれるか」
 ヴィンチェンツォはルーンアックスを手にする。普段はリボルバー銃を愛用する彼だが、作戦の為に別の武器を所持して依頼に望む。たまには別の武器を手にするのも悪くないと彼は感じていた。
 そこへ忍び込んでくる小さな影。下調べはしていたのか、それはまっすぐ事務所へとやってきた。だが、それは思わぬ殺気を感じ、飛びのく。
「デウスエクス・スパイラスは盗みを働くほど財政に困っているのかい?」
 ゆらりと姿を現したのは、巨大な斧を引きずるウェインだ。ヴィンチェンツォとは違い、普段使わない武器を携える彼の表情はひどく不満げだ。
 一方の影。予知の通り、現れたのは月下美人の紋様が掘り込まれた螺旋手裏剣を背中に抱えた、忍衣装の少女だ。その顔には螺旋の仮面。月華衆の少女に違いない。
 8人のケルベロスと数体のサーヴァント、それに敵。交戦するには事務所は手狭だ。
 また、戦いのドサクサに紛れて敵に金を奪われる危険もある。そう感じた秋草・零斗(螺旋執事・e00439)は少女を捕まえ、力任せに窓を蹴破って外へと飛び出す。
 それによって壁が破壊され、零斗は敵を建物外へと押し出す形となる。大きな音を立てて店の人達の合図にと考えていたウェインにとっても好都合だ。若干残っていたスタッフもこれで避難してくれることだろう。
 その後、敵を追い込むようにとケルベロスは移動していくが、ケルベロスの戦力調査も任務としている少女は逃げることなく立ち向かってくる。
 その場は予め考えていた場所ではなかったが、それでも館背面に当たる広い場所。戦うにはさほど被害が広がらぬ場所には違いないだろう。あくまでも、店は巻き込まれただけ。できるだけ店に被害を及ぼしたくはない。
「まったく、強盗に入るのが任務とは、貴方の主は金欠なのですかね?」
 零斗はライドキャリバー、カタナを呼び寄せ、少女に告げる。
 清登も同じく、相棒のライドキャリバー、『雷火』に指示を出しつつ、少女を逃がさじとその退路を断つように位置取っていた。
「きっと彼女の背後には、もっと強力な敵がいるのでしょう……」
 姿を現すソラネも、ケルベロスカードから武具を取り出す。
「しかし、まずは目の前のことに集中します。行きましょう、ギルティラ!」
 自身の武具の煌めきを返事として受け取った彼女もまた、敵へと立ち向かう。
 対する螺旋の少女は動かず、ただじっとケルベロス達を注視していた……。

●ただ真似するだけの少女に
 動くことのない少女に対し、ケルベロス達は早速仕掛けていく。
「こうして戦っている間にも、私達のことは背後に伝わっているのですか?」
 ソラネが問うが、敵は答える素振りを見せない。
 相手は、小柄で素早い敵。ソラネはしっかりと敵を見据え、レプリカントとしての胸部武装を展開し、エネルギー光線を発射する。
(「さて、どうやって雇い主に情報を伝えるのか」)
 零斗もまた、それは気になるところ。
「時よ、汝の理を今だけ侵す。その力を身に纏て逆巻く事を許し給え。顕現せよ! 理喰らいの剣よ!!」
 まずは様子見と強化を合わせ、零斗は自身と同じく前に立つ仲間達の武具へと力を与える。それは、時間を巻き戻し、グラビティ・チェインすらもなかったことにする不可視の力だ。
 セーレは逆に守る力を仲間達へと与える。寡黙ではあるが、軽やかに光の翼で跳び回る彼女。楽しそうに笛の音を鳴らしつつ、指輪の力を発動させて光の盾を仲間の周囲に展開していく。
 その間に、ライドキャリバーのカタナが炎を纏って少女へと突撃する。カタナは零斗の指示に従い、仲間のカバーに全力を注ぐよう身構えていた。
 少女は動きを見せない。ヴィンチェンツォはそれを気にかけつつ思う。
(「なに、やることはいつもと変わらない、殺るかどうかだ」)
 ともあれ、狙いが金だろうが情報だろうが、敵として潰すのみ。ヴィンチェンツォは両刃の斧を掲げ、少女の両肩を狙って刃を振り下ろす。
 少女の身体深くに刻まれた傷。さらに、ウェインもまた重い斧を携えつつ少女へ告げる。
(「レプリカントの機能もコピーできるのかな……」)
 相手は螺旋忍軍。さすがに他の種族の真似は……。ウェインの脳裏にそんな疑問が浮かぶが、甘んじてグラビティを真似されることもない。
「その機能は少し興味があるけれど――ここで君は終わりだよ」
 斧を持つ手と逆側の掌を広げ、ウェインは竜の幻影を放って少女の身体を焼き払う。
 軽やかにステップを刻み、舞い踊るツェツィーリア。彼女はブレードライフル『ハティ』の銃身下部へとルーンアクスの斧刃を装着しており、そこに宿した破壊のルーンの力を解き放つ。
 それによって力を得た七海。コート袖のベルトを外し、両手両脚を猫のそれへと変貌させた七海はピョンピョンと跳躍しつつ、大声で吼える。
「報いを! 報いを! 尊厳を冒せし者に相応しき報いを!! 尊厳を剥ぎとり晒してやれ!!!」
 彼女は凶暴な咆哮によって、相手の心魂を守る鎧を、肉体を、力ずくで剥ぎ取らんとする。声には呪いの力が篭められていたのだ。
 相棒のライドキャリバーが燃え上がりながら突撃するのに合わせ、清登は銀鎖のストラップを操り、破壊力に変えてそれを少女に叩き込む。
 すると、ようやく動き出した少女は……。
「報いを! 報いを! 尊厳を冒せし者に相応しき報いを!! 尊厳を剥ぎとり晒してやれ!!!」
 初めて発せられる少女の声……いや、それは七海の声真似をしていて。それを受け止める清登は猿真似をする少女の姿に、表情を歪めていた。
 一方、真似された七海。彼女は首を振って少女に告げる。
「意思も狂気も足りません――使いこなしたくば、もっと強烈な自我を持ちなさい」
 彼女は、そのグラビティに何か物足りなさを感じたのだろう。意思をむき出しにした方が魅力的だとアドバイスすらしながら、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろし、敵の服を破り捨てていた。

 その後も、老舗店裏での戦いは続く。
「此れより放つは凍て付く光条、零下の光にて煌めき咲き誇るは氷結の華」
 片手にハティを携えて、朗々と謡うツェツィーリアはその砲身から凍てつく光線を撃ち放つ。
「動くが度に責め苛むは乱れ咲く凍結華。砕かれし護りにて容易く痛打を受けし状況で、どこまで耐えられて居て?」
 螺旋の少女はそれによって太腿を凍らせつつも、ケルベロスのグラビティを真似してくる。手裏剣をルーンアックスへと変形させ、こちらへと叩きつけてきた。
「サーカスで、団員でもやったほうがいいよ」
 それに驚く様子もなく、ウェインは起伏のない淡々とした言葉で告げ、巨大な斧での一撃を返す。
「ギルティラ」
 ソラネはさらに、自身の装備に呼びかけた。
 そのソラネの攻撃準備の最中、少女は手裏剣を変形させ、擬似的にレプリカントの砲口を再現してエネルギー光線を発射して見せた。
(「一体、どうなっているんだか……」)
 表情や態度には出さないが、ウェインもこれには驚いていたようだ。
「なんの拘りかは存じ上げませんが、次に使う技が分かっているのなら対応も取れます!」
 態勢が整ったソラネは、飛んできた光線を受け止め、自身へとドローンを展開することで傷を癒していたようだ。
 セーレもまた、真似されたグラビティを盾となって受けてくれる仲間達へと横笛を吹く。戦いの中でも、セーレは自身の音楽を奏でられる場があればと、嬉しそうに音を紡ぐ。
 静かな冬の銀世界。凍りつく寒さの中で身を寄せ合うペンギンを思わせるような旋律を持って、彼女は仲間へと力を与えていく。
 そのセーレの横では、ボクスドラゴンのハープが果敢に突撃と息での攻撃を繰り返してくれていた。
 前線では、なおも零斗が仕掛ける。敵を見つめているが、なかなか情報を主へと伝達する素振りを見せない相手にバスターライフルを突きつける。
「お金が欲しければ、真面目に働け、主にそう伝えて下さい……って無理ですね。貴方はここで倒される役割なのですから」
 彼は敵の体へと凍結光線を発射する。左腕を凍らせた少女は全身を燃え上がらせ、ケルベロスへと突撃を繰り出す。
 清登はそんな少女の姿に、怒りを覚えてしまう。少女ではなく、彼女の主に対して。
「どうせなら、俺達の心まで真似てみろ」
 操られるままの少女に、彼は憐憫すら覚えながらも声をかける。幾許か自我を与えられたらと思ったが。残念ながらそれは叶わず……。
「この一撃は一味違うぞ……!」
 清登はその場から消えたかに見えた。一見すれば、何が起こったか分からぬ一撃。極限にまで本気を高めることで、相手に衝撃を与えた清登はドヤ顔で決めポーズして見せた。
 少女は、なおも真似をする。手裏剣はバスターライフルに姿を変え、凍結光線を放ってきたのだ。
 仲間のカバーが間に合わず、それを受けたヴィンチェンツォだが。彼以上に少女の傷は深い。
「Addio」
 高々と飛び上がったヴィンチェンツォは、少女の身体を寸断せんと刃を振り下ろす。
「即座に真似るその解析力は見事。なれど、真にその性質を解する事は無きようで」
 ツェツィーリアは、悠然と敵に躍りかかる。その刃には、アルジズとハガラズのルーンを煌めかす。
「その本質を解して用いねば、ただの山彦となり下がりては虚空へと虚しく消えるが定め」
 ツェツィーリアは揶揄しながらも、敵に光り輝く刃を振り下ろした。
 それがトドメの一撃となって。少女は全身から煙を噴き出し、その場から蒸発するように消えてしまった。
「……その歴史までは、模倣できないみたいだね」
 すでに影も形も残らないその少女へ、ウェインはそう呼びかけたのだった。

●遺されたモノと懐石
 煙に包まれるようにして消え去った少女。
「情報か、大事なものだが。彼女はよく働いた、さ」
 ヴィンチェンツォはその哀れなる少女に対し、煙草に火を点すことで弔いの線香代わりとし、黙祷を捧げた。敵組織の末端だが、相手はシニョリーナ……乙女なのだから。
(「全く好かんな、こいつ等は。定命であれば、散ることに疑問をもてたのか」)
 しかしながら、その考えには同意しかねるヴィンチェンツォである。
 敵が何か残さなかったかとMP3プレイヤーを再生させ、断末魔の瞳で視ようとする七海。しかしながら、デウスエクスの最後を視ることは適わず、音声も特にこれといった情報は得られなかった。
 だからこそ、零斗が拾った手裏剣……とりわけ、月下美人の紋様に興味を惹かれていたようだ。
「何か雇い主の手がかりになるといいのですが」
 零斗が手にする手裏剣は、月夜の光でその刃は鈍い光を反射させていた。

 その後、ケルベロス達は戦闘場所、及び壊れた事務所の壁へとヒールを施していく。
 それが済むと、戻ってきた店主の行為もあり、メンバー達は懐石を馳走になることにしていた。
 零斗も執事としての礼儀作法は完璧で、作法に乗っ取って食していた。ここで行儀よく食べていた七海ではあったが、先の戦いで部分獣化したことで服の手足部分が破れていたのが少しばかりいただけない。
「……手足の露出が多いのは、目を瞑ってください」
 しゅんとしていた七海。とはいえ、店主はお気になさらずと笑ってくれていた。
 やっと料理にありつけると、出された料理を黙々と食べていたセーレ。ひっそり手を当て、この世の幸せを噛みしめていたようだ。
 連綿を受け継がれてきたその深い味わいに、ツェツィーリアは感嘆する。
「皆さんと食べる懐石……実に美味しいですね」
 皆と食べることで、一層その味わいを深く感じる気がしていたソラネだ。
 ある程度料理を食べ終えたセーレはお礼にと、光の翼で宙を舞う。そして、横笛を鳴らし、希望の曲を奏でていた。
 その音色にうっとりする店のスタッフ達。彼らの作ってくれた料理に舌鼓を打ったツェツィーリアは、また個人で訪れたいからと店に予約を入れていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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