ゲヘヘヘヘ、お楽しみの時間だぜ!

作者:キジトラ

「ドン・ピッグよ、慈愛龍の名において命じる。お前とお前の軍団をもって、人間どもに憎悪と拒絶とを与えるのだ」
 ギルポーク・ジューシィの言葉に、葉巻をくわえたオーク――ドン・ピッグは紫煙をくゆらせて、口元に卑しい笑みを浮かべる。
「俺っちの隠れ家さえ用意してくれりゃ、あとは、ウチの若い奴が次々女を連れ込んできて、憎悪だろうか拒絶だろうが稼ぎ放題だぜ」
「やはり、自分では戦わぬか。だが、その用心深さが、お前の取り柄だろう。良かろう、魔空回廊で、お前を安全な隠れ家に導こう」
「おぅ、頼むぜ、旦那」
 ドン・ピッグは再び口を卑しく歪めると、魔空回廊へと向かった。

 女性は道に迷っていた。
 手にしているスマホが表示しているのは地図アプリだ。もう片方の手には東京の都市地図が開かれている。視線は見比べるために、右へ、左へと移ろい……。
「ええと……たぶん、ここが今いるところだから……」
 周りを見ても裏路地であることが見て取れるだけ。
 人通りも無く、道を聞くこともできそうにない……。
「……とりあえず、大通りに出ないと」
「迷っているんなら案内してやろうか、ゲヘヘヘヘ」
「えっ……」
 声に反応して女性が振り返った先には、豚顔の人間……いや、オークが立っていた。
「きゃああああああ!」
「ゲヘヘヘヘヘ、エローイことしてやるぜ」
「ほらほら、こっちにもいるぜ」
「たっぷり可愛がってやるぜ、グフフフフフ」
「オンナオンナ! イヤッホー!!」
「うぉおおおお、辛抱たまらん!」
 いつの間にか周りはオークたちに取り囲まれている。逃げ場は見当たらず、女性は怯えて後ずさり、後ろの壁に背が当たった。
「逃げ場はねえ。さあ、俺たちとお楽しみと行こうぜ!」
「い、いやああああああ!」

「竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を始めたようですの」
 テッサ・バーグソン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0130)はそのひとつを予知したと集まったケルベロスたちに告げてから事件の説明を始める。
「今回事件を起こすのは、オークを操るドラグナーであるギルポーク・ジューシィの配下のオークの群れのようですの」
 オークの群れを率いるのは、ドン・ピッグというオークだ。
 非常に用心深く、配下を使って女性を攫わせている。
「女性が狙われるのは東京の路地裏で、私が予知した女性もそこで襲われますの」
 おそらく、存在が消えても怪しまれないような弱者を狙って犯行を行っているのだろう。
「襲われた女性はその場で配下たちによって暴行された後、秘密のアジトに連れ込まれるようですの。許せませんの。当然、これを阻止して頂くのですが……」
 ひとつ気をつけなければいけない点がある。
 オークが女性に接触する前に、ケルベロスたちが女性に接触すると、オークたちは別の対象を狙ってしまう。そのため、現場に突入するのはオークと女性が接触した直後でなければならない。
「女性には怖い思いをさせてしまいますが、こんな女性の敵を放置しておけませんの。悪事を働く前に撃破してくださいの」
 同じ女性として許せないのか、テッサの声に憤慨が篭る。
「オークたちは全部で5体ですの。戦闘能力はそう高くありませんが……注意すべきは戦闘能力よりも逃げ足の速さの方ですの」
 オークたちは相手が少しでも手強いと見れば、直ぐに逃走を始める。
 おまけに5体すべてがメディックのポジションについて、継戦能力も高い。
「おそらく普通に戦ってしまうと、オークたちは皆様を手強いと感じて直ぐに逃げようとしてしまいますの。ですが、自分たちよりも弱く見えるものに関しては調子に乗って強気で来るようですので――」
 つまり、苦戦している演技をしながら戦闘を続けてオークたちを一気に仕留めてしまえばいいという訳だ。上手く演技さえすれば、誰かが倒れるまで形勢不利になっていてことにも気付かないだろう。
「使うグラビティについてはメモに書いておきましたので後で目を通してくださいの」
 言って、テッサはケルベロスにそのメモを手渡す。
「説明は以上ですの。オークたちの非道は許すことができませんの。皆様の力で女性を救っきてくださいの」


参加者
ヴェルサーチ・スミス(自虐的ナース・e02058)
牡丹屋・潤(カシミール・e04743)
ステイン・カツオ(御乱心アラフォードワーフ・e04948)
鳴門・潮流(渦潮忍者・e15900)
アンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379)
リヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)
山内・源三郎(姜子牙・e24606)
レヴィン・ペイルライダー(二挺拳ジャー・e25278)

■リプレイ


 オークたちの下卑た笑いが裏路地に木霊する。
 それに女性の悲鳴を上げると、いくつもの足音が響き始めた。
「な、何だ!?」
「女性を守るのが男だろ! 怖がらせるんじゃねぇよ!」
 振り向くと、レヴィン・ペイルライダー(二挺拳ジャー・e25278)が間近にいた。
「「げっ、ケルベロスだ!」」
 飛び上がりそうなほどに驚くオークたちを尻目に、レヴィンがさっとオークと女性の間に体を割り込ませ、ヴェルサーチ・スミス(自虐的ナース・e02058)が女性の手を掴む。
「こっちですよ」
「えっえっ……」
「待て、逃がさねぇぞ!」
 オークたちの手が伸びるも、引っ張られてよろけるように女性はオークの包囲を突破。すかさず、アンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379)が立ち塞がる。
「ここは通行止めだ。先に行きたいなら俺を……って、何を変な目で見てやがる!」
「それは無理ってもんだぜ」
「誘っているようにしか見えないなぁ、ゲヘヘ」
 オークたちはアンナの露出の高い服装に、女性を追うことも忘れてゲスい視線を送った。 
「……うるせえな、普段着だ。動きやすいんだ、エロい言うな」
 体を横に向けて手で隠そうとするも、むしろ扇情的に見えてオークたちは更に興奮。
(「こいつらなら一人の女性として見られるか?」)
 その様子を見て、ステイン・カツオ(御乱心アラフォードワーフ・e04948)は何があったのか、女性として見られるならオークが相手でもいいやという気になりかけている……大丈夫だろうか? まあそれはさておき、アンナとオークが睨みあっている(?)後ろでは女性の保護が続いている。
「もう大丈夫ですよ。迷子ですか?」
 ヴェルサーチの言葉を理解するのに時間が掛かったものの、女性はこくこくとうなずく。
「まだ怖い思いを抱いているでしょうし、目的地までご一緒したほうが良いですねぇ」
「それは僕が……んなっ!」
 避難誘導を務めようと、牡丹屋・潤(カシミール・e04743)が声を掛けようとして急に顔を赤くした。更には顔を逸らす。
「こ、これを……」
 次いで震える手で差し出したのは首に巻いてるストールだ。
 女性はそれで察したのか、衣服を確認して頬を朱に染める。オークに襲われたときか、先ほど包囲から逃げ出したときか、いずれにせよ女性の衣服が破れていた。
「……ありがとうございます」
「……い、いえ!」
「それよりも早く安全なところへ」
「わかりました。少しの間お願いします」
「承知した。ワシは演技には自信があるんじゃ、任せておけい!」
 潤が声を掛けると、山内・源三郎(姜子牙・e24606)が快活に応える。声が聞こえたオークが「演技?」と首を傾げるも、直ぐに女性が逃げていく姿に気を取られた。そして、女性の姿が見えなくなると及び腰になりながらケルベロスたちに視線を向ける。
(「どうやら逃げるべきか判断に迷っているようですね。敵わないと見切ったらすぐ逃げる姿勢は正しいのですが、だからこそやっかいです」)
 やはり一芝居打つしかないと、鳴門・潮流(渦潮忍者・e15900)が、隣のリヴァーレ・トレッツァー(通りすがりのおにいさん・e22026)に視線を送ると、
(「如何に相手が気持ちよく戦えるか。つまりは接待戦闘ってことだよな」)
(「……まあそうとも言えますね」)
(「接待と言えばおもてなし。つまりは日本の心。日本の心と言えば侘・寂。……って、俺日本人じゃねぇわ」)
(「………」)
(「まぁ、冗談は置いておいて、相手に逃げられたらアウト。しっかり演じ切るしかねぇな」)
(「それしかありませんね」)
 互いにうなずき合って、視線をオークたちに向ける。
 鬼が出るか、蛇が出るか。
 出方をうかがうオークたちに向けて、ケルベロスたちが動き出す。


 人々の喧騒が聞こえてきたところで、潤が足を止めた。
「この先を進んでもらえば、大通りに出られます。すいませんが、僕はこれで仲間のところに帰らなければなりません」
「えっ……いいえ、ありがとうございます」
 女性は戸惑いを見せたが、言われたことを理解して深く頭を下げた。
「その、気を付けてください」
「大丈夫ですよ。あんな奴らに負けはしません」
 応えて、裏路地を駆けていく少年。
 その背が見えなくなるまで女性は見送り続けた。

「なにぃ!? あいつら全弾かわしたぞ」
 信じられないとレヴィンがつぶやけば、オークたちの高笑いが響き渡った。
 わざと外したのだが、気付いた様子も無い。むしろ、気をよくして三下らしい高圧的な態度が見え始めている。
「オラオラ、ケルベロスだからっていい気なんじゃねえよ!」
 背中から生えた触手が大降りで迫ると、リヴァーレが大袈裟に防御姿勢を取って受け止める。横ではライドキャリバーも同じようにして耐えている。
「……くっ、やるじゃねえか」
 口元に笑みが浮かびそうになるのを抑えつつ、悔しがる振り。
 加えて先ほどの攻撃でブレイクが発生したのを見て、ステインが声を上げた。
「そんな!? 私の守護が破られた!?」
「何! せっかくのエンチャントが解除された!? こやつらやりおる!」
 源三郎も加わって、オークたちを持ち上げる。
 これが演技であるなど、これっぽっちも気付かずにオークたちは更に図に乗った。
「フワッハハハハハ、どうしたどうした? お前たちの力はそんなものかぁ?」
 先ほどまで及び腰だったのが嘘のようだ。
「皆さん耐えてください。どこかに突破口が……でも」
 薬液の雨を前衛の仲間に降らせながら、ヴェルサーチが呼び掛ける。仲間たちは防戦一方の演技をしつつ、苦し紛れに見せ掛けて反撃を繰り出している。
(「作戦とはいえ我慢だな。あ、そっか」)
 リヴァーレは演技の途中で、ふと気付いた。いや、決めたというべきだろう。
(「トドメを刺しに行くときそれまでのイライラを全部ぶつけちまおう。そうしよう」)
 そう思えば、高笑いを続けるオークたちにも腹が立たない……というわけでもなく。
「なんて弱っちいんだ。ほれほれ、何とか言ってみろよぉ」
(「……くそっ」)
 更に図に乗ったオークは触手で小突いて、リヴァーレを挑発。
 我慢しなくてはと思いつつも天狗になっていくオークには限界が無い。もう有、頂、天!
「これ以上、好き勝手にさせるか」
 潮流が崩天偃月刀による高速の回転斬撃でオークたちを薙ぎ払う。足止めを喰らったオークはこれに一瞬怯んだものの、咆哮を上げてこれを解除。
 すると、またしても源三郎が持ち上げる。
「バステが通じない……厄介なやつらじゃ!」
「くそっ……なんて強敵なんだ。こっちの手が通用しない……」
 レヴィンも同調して諦めたような演技を加える。
「俺たちに逆らったことを後悔するんだなぁ。さて、メインディッシュと行こうか」
 完全に見下して、オークたちは舌をなめずりながらアンナに目を向ける。
「こ、このぉ……」
 後ずさりしながら、アンナが上着に入っていたお菓子を投げつけるも、そんな苦し紛れなど避ける必要も無いとオークたちが思った次の瞬間、
「「ぎゃわあああ!」」
 気を通し、鋭い刃にまで昇華されたそれの直撃を受けてオークたちが苦悶した。思わぬ反撃に涙目になっているが、その目に映ったのは変わらず怯えているアンナ。
「くそっ、よくもやってくれたな。滅茶苦茶にしてやらぁ!」
 一斉に伸びる触手。
 十重二十重にも映る触手の濁流が逃げようとする華奢な体を捉え、助けに入ったビハインドも纏めて一緒に捕縛した。
「くそっ、ビハインドまで……あー、ふ、ふざけんな、触手なんかにぜってぇ……う、うあ、待て、本当に気持ち悪……っ」
 肌を這う嫌な感触に、アンナが身をよじらせる。
 その反応に気を良くしたオークたちは更に触手を操り、彼女を締め上げていく。苦痛に漏れ出る声も痛みを逃そうと体をくねらせる仕草もどこか扇情的で、それを自覚して頬も朱に染まっていく……。
(「本当なら真っ先に釵でかっさばいてミミガーにしてやりたいんですが、短腹起こすのは私のキャラじゃあないですし、……なにより逃がせば被害は増えますからね。悪いんですが、必ず助けますのでご勘弁を」)
 ヴェルサーチは心の中で謝罪しながら、いい気になっているオークたちに射撃を加えていく。それは他の仲間たちも同様で……いや、待てステインがお楽しみ中のオークに対して怒りを向けている。
「ビハインドまで捕まっているというのに、ドワーフでは、ドワーフではいかんのか……?」(ビハインドはかばったからです)
 もうこれは女性としての沽券に関わる問題だと、最後の手段として防具特徴ダイナマイトモードを使用。そして、苦し紛れの結果は――何も変わらない!
「……エイティーンでサキュバスばりのムッチムチなボデェが手に入ると思ったが、別にそんなことはなかったぜ」
 がくりと膝が崩れ落ちる。分かっていた。分かっていたが、それでもやらなくてはならなかったのだ。察して欲しい。
「この身を弄ばれる心配はないのならそれはいいことです。……しかし! 私だって女なんです! オークごときに女性として見られないのは、なんか悔しかったぞ!!」
 叫びと共に戦場にばら撒いた「見えない地雷」を一斉に起爆。
「「あんぎゃああああ!」」
 爆風と衝撃にオークたちがアンナを離すと、ちょうどそこに潤が帰ってきた。
「遅くなりました。これから戦闘に参加します!」
「「げげっ!?」」
 増援を見て、オークたちが浮き足立つ。咆哮を上げて態勢を立て直しながら、素早く逃げの算段を始める。それを察して、ヴェルサーチが声を上げる。
「敵を阻むだけで精いっぱいです! 何か手はないんですか!?」
 今までブラックスライムを解き放ったりして順調にオークたちの動きを阻害していたのだが、悲痛そうに見えるせいかオークたちは気付きもしない。
「なにぃ!? うわぁあああ!」
 更に駄目押しとばかりに、レヴィンが攻撃を受けて派手に吹っ飛ばされた振りをすると、
「こいつらやっぱ大したことないぜ!」
 先ほどまでの逃げ腰は露と消え、オークたちの高笑いが再び響き出した。
 ……やっぱり馬鹿である。


 演技しながらの戦いもだいぶ長引いてきた。苦戦を演出するケルベロスたちはまだまだ余裕だが、オークの1体がよろめき始める。
「いててっ……いつの間にかダメージが溜まってやがる」
「本当だ」
「いつの間に……?」
 それを見た瞬間、前衛のケルベロスたちが顔を見合わせる。
 ちょうど向かってきた触手に被弾すれすれの回避をして、源三郎が大きく仰け反った。
「ぐえあー! やられた!」
 そのまま倒れこんでオーバーアクションで転がりながら痛がる演技を。
 横でも、潮流がわざと攻撃を受けて膝を付く。
「だめだ、手ごわ過ぎる……歯が立たない……」
 オークたちの出方をうかがい、ケルベロスたちの手が止まる。
 戦場に少し沈黙が流れ、
「グァハハハハハ、奴らは虫の息。このまま捻り潰してやるぜ!」
「そうだそうだ」
「イヤッフー!」
 追い詰めていると勘違いして再び、オークたちは調子に乗って散漫な攻撃を始める。
(「単純な連中で良かったぜ。でも、そっちは限界だよな?」)
 リヴァーレが魔力を秘めた瞳で凝視すると先ほどふらついたオークがバタリと倒れる。
 何が起こったのか一瞬分からずにオークたちは動きを止めた。
「遊びは終わり! ミンチの時間でございます」
 続いて、ステインの言葉と共に放った氷結の螺旋がもう1体のオークを仕留める。
 突然の攻勢にオークたちの理解が追いつかない。
「な、な、な?」
「複数がかりで弱い女性狙うのが趣味の豚野郎がてめえの保身だけ考えて行動してんじゃあねぇぞコラァ!! 泣かせた人の数だけ苦しませてやるから覚悟しとけや!」
 驚くオークたちに、もう手加減は不要とヴェルサーチが啖呵をきる。
「馬鹿な、俺たちを騙していたというのか!?」
「――殺す、微塵に殺す」
 そして、説明も不要とアンナが強烈な殺気を放ちながら近付いていく。
「「ひ、ひぃ……」」
 思わずオークたちは後ずさり、
「お助けーーーー!」
 遂には背を見せて一目散に逃げ出した。
 あっという間の逆転撃……いや、ようやく本来の形に戻った。さあ、お仕置きタイムだ!
「砕け散ってください」
「亡びの風を、その身に受けるがいい!」
 潤の操る魔力と呪術薬品が周辺の気温を問答無用で奪い取り、源三郎が召還した強烈な冷気を発生させるエアコンも戦場の温度を急激に下げていく。
 その相乗効果たるや、瞬く間に戦場のほとんどを氷で覆いつくす。
 異様な光景にオークたちが目を見張ったところへ、
「逃がさない」
 追い付いたアンナが利き腕を獣化して重く強烈な一撃を放つ。
 直撃を受けて吹き飛ばされたオークは起き上がる時間も惜しいと這いながら建物の陰へ。直後、近くで何かが当たったような音が響くと跳ね返った弾丸が胸に突き刺さった。
「ぐはぁぁ……」
「楽に死なせたくはなかったが、代わりにてめえらのボスはその三十倍を喰らわせてやるぜ!」
 倒したのを確認して、ヴェルサーチが他に目を遣ると残る2体にもケルベロスという死神が訪れようとしている。
「ようやく解禁だ。沈黙は同意の印……」
 リヴァーレが氷の杭を創り出し肉薄、それをパイルバンカーにセット。
「い、いやだぁあああ」
「だが、駄目だ。大人しく食らっとけ?」
 氷の先端が突き刺さって一拍の間を置き、炸裂音と共にオークの腹部を豪快に刺し貫く。
 そして最後の1体には、潮流が立ちはだかった。
「助けてくれぇ、悪気は無かったんだ。許してください。何でもしますから」
 涙目で手を合わせるオーク。
「言い訳ならもう少しマシなものを考えるんだな。もっとも貴様らにかける慈悲は無い」
 言って一足で間合いを詰める。走り込んだ勢いのまま渦潮を凝縮させた力を叩き付けると、オークは吹き飛ばされてそのまま動きを止めた。


「見事に路地が氷づけですねぇ。修復してないと帰れませんよ」
「すいません」
「少々やり過ぎてしまったかのう」
 ヴェルサーチの声に、張本人の、潤と、源三郎が応えながらヒールに入る。だが、2人とも少し雑念が入っているのか、ヒールをしながらもその動きは少し鈍い。
(「あの女性はまだ近くに居るでしょうか。お近付きになりたいところですが……」)
「ワシ、ケルベロスやめて俳優になろうかのう、大河ドラマとかに出たい……」
 方や心の中で、方や口に出して。
 それを聞いて、レヴィンが肩を竦める。
「やれやれだな。しかし、今回は弱いフリなんてしたけど、毎回そうはいかないよな。よし、帰って銃の特訓だ!」
「それより早くヒールしてください」
 気が緩んで漏れ出るおしゃべり。オークたちのお楽しみを無事に阻止して、ケルベロスたちのお楽しみの時間……いや、日常が始まろうとしていた。

作者:キジトラ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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