緑のビフレスト~プランター・バトル・シティ

作者:うえむら

●プランター・バトル・シティ
 兵庫県尼崎市。
 緑の光が空中で炸裂した時、この街に住む31人の運命は変わった。

「ひいい、ビフレストはやるから、もうカンベンしてくれぇ!」
「ワカりゃいんだ、ワカりゃ! てめえみたいなザコが強くなった所で、元から強いオレらに勝てるワケが無ぇだろうが!」
「なあ龍夫、この力に呼び名を付けないか? 攻性植物、すなわちプラントを使う者だから……プランター(植装者)というのはどうだ?」
「カッケエ! さすがはハカセ!」
「いやあの、プランターってそういう意味じゃ」

 グシャッ! 背後に控えていた大男ジャンボが、哀れな男の頭部を叩き潰す。
 そして、この街に住む30人の運命は動き出した。

 その面々は以下の通りである。

『プランター柊』。本名:桐生・龍夫、高校2年男。
「なんだコラやんのかオラ!」が口癖のリーゼントヤンキー。こいつだけ細片を2個持つ。ヒイラギと苺のプランターで、ヒイラギの刃を苺の蔓で伸ばし遠距離を斬る。
『プランターハカセ』。本名:田中・博士、高校2年男。
「全てお見通しですよ」が口癖の通ってる高校の中では賢い方のメガネ。スターチスのプランターで、直接戦闘よりも治癒力が自慢。
『プランターバイオレット』。本名:比良坂・充、中学3年男。
「僕は間違ってなんかいない!」が口癖の暗い欲望を持つ少年。ビフレストの光は彼のエゴに吸い寄せられた。葡萄のプランターで、植物銃から葡萄型の弾丸を放つ。
『プランター覇王』。本名:覇王・大河、中学1年男。
「俺はいつだって、デッドヒートだぜ!」が口癖の入学早々中学を制圧した喧嘩自慢の狼ウェアライダー。サボテンのプランターで、地面から棘を生やすルール無用の喧嘩が得意。
『プランターフック』。本名:鍵屋・細彦、高校3年男。
「誰にだって媚びてやるぜぇええ!」が口癖の強きに媚び弱気をくじく、ギョロ目の卑怯者。オナモミのプランターで、鈎状の武器で引っ掛けたり、ぶらさがったりする。
『プランターブラッド』。本名:鴻沼・浩司、高校2年男。
「そこをどけ、俺がブラッドだ!」が口癖の不良四天王のリーダー。力こそ全ての男で信奉者も多い。薔薇のプランターで、赤い全身甲冑から炎を噴き出して戦う。
『プランター鳥兜』。本名:真島・正弓、36歳男。
「ヤクザは殺してナンボだろうが!」が口癖のシャドウエルフの武闘派ヤクザ。仕事が減ってくすぶっていた。トリカブトのプランターで、液状コンクリートで足止めし、毒のドスで刺す。
『プランター彼岸華』。本名:ミカエル・ウニコ、大学1年男。
「その肌を裂けば華が咲く。君は美しい」が口癖の女性だけを狙う連続猟奇殺人鬼。息を飲むような美形。彼岸花のプランターで、自分や他人の血液を武器にできる。
『プランターラフレシア』。本名:吉永・希美、高校3年女。
「アタイとやろうたあ、いい度胸だ!」が口癖の大迫力の巨大スケバン女子。ラフレシアのプランターで、口から凄まじい息を放ち、そのまま喰らう。
『プランター蘇鉄』。本名:車・籐次、29歳男。
「ソイツも、イタダキだ!」が口癖の盗癖が強い前科者の犯罪者。ソテツのプランターで、体内に貯蔵した盗品を毒化して放つ
『プランターウィード』。本名:長尾・茉莉、中学2年女。
「脆い物は『壊し』たくならない?」が口癖の相手を壊すことにためらいがない狂気の美少女。セイタカアワダチソウのプランターで、植物鎧で全身を防御しながら、関節技で壊す。
『プランターハロウィン』。本名:莫耶・藤吾、32歳男。
「戦え戦え、青少年!」が口癖の人の破滅が何より好きな無精髭の不良中年。南瓜のプランターで、ハロウィンマスクを被り大きなフォークで戦う。
『プランターシュバリエ』。本名:城山・宏美、高校1年男。
「……………………」が口癖の名前と違い筋骨隆々の寡黙な男。不良四天王最強と噂される。百合のプランターで、見えない真空波で背後から敵の腱を切る。
『プランターシャドウ』。本名:山本・裕也、高校1年男。
「不愉快極まりない!」が口癖の世の中嫌いの美形お金持ち。黒百合のプランターで、超高速のフェンシングで戦う。
『プランターどんぐり』。本名:蒲生・勇次、高校1年年男。
「背を低くして、懐に飛び込む!」が口癖の低身長熱血ノックアウト強盗。どんぐりのプランターで、鋼鉄ドングリの両手でボクシングをする。
『プランターエレガンス』。本名:三木崎・真、24歳男。
「戦いはエレガントに、スマートにね?」が口癖のオラトリオ金髪パティシエ。ゲルセミウム・エレガンスのプランターで、翼で空を飛びつつ猛毒の液体を散布する。
『プランターアポカリプス』。本名:比良坂・満、28歳男。
「これだ、この力さえあれば……!」が口癖の比良坂・充より全てに勝る優秀な兄。だがケルベロスになれない事を苦悩していた。エンジェル・トランペットのプランターで、弓から放つ矢を受けた人間は自我を破壊される。
『プランター竜胆』。本名:霧崎・要女、高校1年女。
「文句があるなら、かかってきたら?」が口癖の人派ドラゴニアンセーラー服少女。リンドウのプランターで、光輪を放つ居合い斬りを得意とする。
『プランター我呪』。本名:老爺・武志、中学2年男。
「フォッフォッフォッ、儂に勝てると思うてか?」が口癖の付け髭ご立派系不良ドワーフ。ガジュマルのプランターで、攻性植物を触手のように伸ばし、絡め取ろうとする。
『プランターロータス』。本名:斑目・冬馬、26歳男。
「プランター(植装者)……いい呼び名じゃないか!」が口癖の変なファッションの美形科学者。普通の学者だったが、突然大量の悪事を思いつき始めている。蓮(はす)のプランターで、凍結剣で戦うほか、時間を与えると天上天下唯我独尊体に覚醒する。
『プランターテロル』。本名:半田・猟、36歳男。
「増殖する悪意は止められない……」が口癖の大阪に潜んでいた過激派。ミントのプランターで、増殖するミントを爆発させる。
『プランタージャンボ』。本名:富樫・巻男、高校2年男。
「オデはデカいから、ツヨいなあ!」が口癖の馬鹿マッチョ大男。セコイアのプランターで、全身を硬い樹皮で覆い突撃してくる。
『プランター河童』。本名:毛臼川・瓜彦、高校1年男。
「だれが河童だああああ!」が口癖の髪が薄いが故に暗黒面に堕ちた少年。きゅうりのプランターで、きゅうりを配下の攻性植物に変異させる。
『プランターテイマー』。本名:善上・桃太郎、高校3年男。
「気は悪どくて、力持ちじゃい!」が口癖の見た目爽やかマッチョの外道青年。不良四天王のひとり。桃のプランターで、植物で作った動物を戦わせる。
『プランターサラセニア』。本名:多良志・美穂、25歳女。
「こんなにしちゃって、イケナイ子ね♪」が口癖のサキュバス女教師。サラセニアのプランターで、全身から催淫効果のあるガスを放つ。
『プランター龍絶』。本名:谷口・六郎、48歳男。
「俺の保身の為に死んで貰う。悪く思うなよ!」が口癖の悪徳警官。不良達の抗争を利用してうまく稼いでいた。アオノリュウゼツランのプランターで、精製したテキーラで自らを強化し、敵を酩酊させる。
『プランター曼荼羅』。本名:白鳥・健太郎、高校3年男。
「みんなでハジケちゃえばいいじゃない!」が口癖の外見腕力財力知力全てを備えたオカマの美少年。マリファナのプランターで、ラスタ空間を作りサイケ攻撃を仕掛けてくる。
『プランターワスプ』。本名:樺岡・聡里、高校1年男。
「最後のひとりを倒せば俺の勝ちじゃね!?」が口癖の通ってる高校の中では狡猾な方の痩せた男。ハエトリソウのプランターで、超攻撃力特化のハエトリソウを放つ。本人は脆い。
『プランタージェネシス』。本名:安茂里・清春、高校3年男。
「俺はもう真人間になったんだ!」が口癖の不良四天王のひとりだが、今は己の悪行をすっかり忘れバイトに精を出す、人間の屑。コスモスのプランターで、心清き者だけが撃てる「聖なる光線」を放つ。
『プランタージャスティス』。本名:如月・終太郎、27歳男。
「正義を執行する!」が口癖の端正な顔立ちの狂ったサラリーマン。向日葵のプランターで、黄金の盾で攻撃を防ぎ、飛ばして攻撃する。

●分裂した「緑のビフレスト」
「戦争が終わったばかりなのに申し訳ないっす。今回お集まり頂いたのは、戦争の最後に飛んでいった『七色の光』についてっす!」
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はそこで言葉を切り、皆の注目を待って続きを話し始めた。これは重要な内容なのかもしれないと、ケルベロスに緊張が走る。
「今回皆さんにお願いしたいのは、飛んでいった七色のうちのひとつ、『緑のビフレスト』についてっす!」
 やや焦りながら、ダンテは卓上に日本地図を広げる。
「兵庫県尼崎市。ここの上空で、緑のビフレストは更に31個の『細片』に分裂したっす。分裂した細片は、ひとかけらにつき1体づつ、攻性植物の残霊(ゴースト)に姿を変えたっす」
「都合31体の攻性植物の残霊は、それを拾った人と融合して『植物の全身甲冑を纏った戦士』のような外見になってるっす。でも元が残霊なので、それぞれの力はそれほど強くないっす。でも問題があって……」
「残霊は放置しておくと増えてしまう、というのがひとつ。もうひとつは、攻性植物の残霊を複数入手した人は、『その数に応じて強くなってしまう』という点っす!」
 ケルベロス達に衝撃が走る。つまりそれは、ひとりの人間が31個全てを集めると……。
「その時の強さがどれ程の物かは、まだ想像できないっす。でも現在の攻性植物の宿主達は、自ら望んで攻性植物を受け入れたような悪人揃い……もはや交渉は不可能なばかりか、彼等は今すぐにでも互いに殺し合いを始めそうな雰囲気っす!」
 さながら蠱毒の壺とでも言うべきか。殺し合いの果てにどのような怪物が生まれるのか、今は想像することもできない。

●同時に全員を倒せ!
「そこで今回の作戦っす。現在の攻性植物と融合した人……『プランター』の数は全部で30人っす。この30人に対してこちらも30人のケルベロスを送り出し、1対1のバトルで即座にカタをつけて欲しいんす!」
 つまり、参加するケルベロス全員が、それぞれに1人のプランターと『決闘』をするということになる。
「これが、プランター同士の争奪戦が始まる前に事件を解決する、最良の方法っす!
 プランターを倒したら、忘れずビフレストも破壊して欲しいっす。
 30人との決闘に勝利して31個のビフレストを全て破壊できれば、作戦は成功っす。
 それでは皆さん、よろしくお願いするっす!」


参加者
久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163)
亜麻宮・花火(パンドラボックス・e00170)
ディバイン・ディバイダー(ガンフォーオール・e00175)
天音・風花(空色雪月花・e00243)
西条・霧華(幻想のリナリア・e00311)
春華・桜花(シャドウエルフの降魔拳士・e00325)
三条・翼(地球人の刀剣士・e00373)
リシア・アルトカーシャ(オラトリオのウィッチドクター・e00500)
神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)
オルガ・ディアドロス(盾ノ復讐者・e00699)
ノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)
ニファ・ナクシャトラ(花実朽ちて・e00961)
ラッファ・ラーエル(降摩竜・e01241)
ラック・アメジック(オラトリオの魔想紋章士もどき・e01351)
夜月・双(風の刃・e01405)
コクヨウ・オールドフォート(グラシャラボラス・e02185)
虚南・セラ(ファントムトリガー・e02267)
月浪・光太郎(鍛え抜かれた不健康・e02318)
天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)
七種・酸塊(七色ファイター・e03205)
嵐城・タツマ(ジョウブレイカー・e03283)
テレサ・コール(至高なる白銀と呼ばれた少女・e04242)
儀竜・焔羅(咆撃要塞・e04660)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
佐々塚・ささな(やりたいほうだい・e07131)
竜造寺・マヤ(ウェアライダーの刀剣士・e10463)
音琴・ねごと(不可思議次元のアイドル・e12519)
黄落・憬(樂しからずして復た何如・e12592)
レクシナ・メヘン(睡朧・e13408)

■リプレイ

「変身だオラ!」「変身!」「変身!」「デッドヒート!」「変しぃぃん!」「変・身ッ!」「変身」「変身」「変身だ!」「ヘンシン!」「変・身♪」「ハハハハ、変身ッ!」「…………」「不愉快だが変身!」「変身……ッ!」「変身♪」「最終変身!」「かかってきたら?」「変身じゃ!」「天上天下、唯我独尊!」「変身……」「オデ、ヘンシン!」「変身するぞぉぉぉ!」「変身じゃい!」「変身ね♪」「あー、変身」「変ェェン身ィィン!」「変身、ククッ」「変・身ッ!」「正義を執行する!」
 プランター達が30人30様の変身で攻性植物を己の身に纏い、血みどろのバトルロイヤルが幕を開けようとしたまさにその時、ハイパーステルス能力により、ダンテのヘリオンが人知れず尼崎市上空へと到達した。
 ケルベロス達は、パスワード設定されたインターネットサイトで撃破情報を報告しあう事と、ビフレストの細片の確実な破壊を約束した後に、ひとり、またひとりと上空から降下してゆく。
 一度で全てを終わらせるため、ケルベロス達は30人同時決戦を開始した!

「変身、マスカレイダー・リベル!」
『オモカジイッパーイ! リベル! ヨーソロー!』
 腰に巻いた羅針ドライバー(ベルト)から電子音声を響かせつつ、海賊船船長の如き魔導装甲に身を包んだ天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)はヘリオンより降下、そのままプランター柊の眼前に着地した!
「うおっ、何だこいつ!」
「お前達のバトルロイヤルは、試合開始前にカタを付けさせて貰う!」
 矜棲は、苺の蔓による遠距離刃を跳弾射撃で尽く弾きつつ、サイコフォースで敵の体力を削っていく。
「てめえコラ正々堂々近づいてきやがれ!」
「いいのか? 近距離は、お前が苦手で」
 ベルトの操舵輪を更に回す矜棲。
「オレの得意な間合いだ。さあ、錨を上げるぜ!」
『オモカジイッパイイッパーイ! アンカーストライク! ヨーソロー!』
 グラビティの巨大な錨が柊に打ち込まれ、巻き上げられる勢いのままに、矜棲は敵の懐に飛び込んでゆく!
 飛び蹴り一閃! 矜棲の必殺アンカーストライクで、柊は粉砕されたのであった!

「おい龍夫、何があった! ケースB発生の場合は、ポイントAへ……」
「……合流はさせませんよ、ハカセさん」
 スマホで話しながらどこかに向かおうとするハカセの前に、ラック・アメジック(オラトリオの魔想紋章士もどき・e01351)と、彼女のテレビウム「ロジック」が立ちはだかる。
「テレビウムを連れているという事は……なるほど、プランターの事はもうケルベロスに補足されていたのか。流石だな」
 プランターハカセは、ラック達との戦いを始めたが、治癒力による支援を得意とするハカセに対し、気咬弾を着実に命中させてくるラックとは実に相性が悪かった。また、ロジックの放つテレビフラッシュにより、そもそも彼女を狙う事すら許されない。
『こいつで終わりにしちゃいましょう!』
 高らかな宣言と共に、ラックは空中に「ケルベロスの紋章」を描き出す。
 紋章より放たれた圧倒的な魔力の奔流に、元々想定していた小賢しい作戦ごと、ハカセは押し潰されてゆく。戦略・戦術の全てにおいて、ラックの圧倒的な読み勝ちであった。

「(完全に融合しているようだな。救出は無理か……)」
 心の中で呟きつつ、ディバイン・ディバイダー(ガンフォーオール・e00175)は目の前の少年……プランターバイオレットの前に立ちはだかる。
「ハハッ! 力を手に入れた僕に勝てるとでも……!」
 嘲笑いながら、鷹揚な動作で植物銃の銃口を向けようとするバイオレット。
 が、ディバインはそんな呑気な動きを許さなかった。電光石火の早撃ちにより、相手が銃を抜くよりも早く、先制の一撃を浴びせたのだ。
「悪いな。こちとら狂犬なんでな」
 ディバインの両目に「地獄の炎」が灯る。飄々とした動きでバイオレットの葡萄弾をかわし、時には弾きつつ、着実に己のグラビティを浴びせてゆく。力の差は歴然であった。
「なぜだ! 僕は、間違っていなかった筈なのに!」
「どうかな。少なくとも、銃の扱いが経験不足なのは間違いないぜ」
 ガラ空きの頭部にヘッドショットを決め、ディバインは頭部に縫い付けられていたビフレストごと、プランターバイオレットを粉砕したのであった。

「何だ? もう俺のパターンを読んだのか!?」
「幾ら不意打ちでも、同じグラビティばっかり繰り返してたら覚えちゃうよ」
 地面から不意打ち気味に生えるサボテンに、最初こそ戸惑った佐々塚・ささな(やりたいほうだい・e07131)だったが、戦いの基礎を知らぬプランター覇王の行動を読むのは容易だった。
「ケンカは逃げじゃなく意地ぶつけ合うモノ。だから、もっとデッドヒートだ!」
 既に覇王の懐に飛び込んだささなは、全身に虎縞を浮かび上がらせ、獣撃拳と降魔真拳を次々と叩き込んでゆく。ささなの優勢は明らかであった。
「クソッ、だが俺は諦めねぇ。昨日より今日、今日より明日。俺はもっと強くなってやる!」
「その考え方はボクも好きだよ。できるならもう一度、プランターの力抜きでやり合いたかったけど……」
 最後の一撃、ささなは手加減攻撃で覇王を仕留めたが、覇王の攻性植物は深く身体に食い込み、もはや除去不能であった。
 やむなく、ささなは覇王に『成長電流』を注ぎこみ、彼に安らかな死を捧げたのだった。

「そういえば、師に教わった事がありましたね。グラビティは剛柔を織り交ぜ、撃ち分けろと……」
 テレサ・コール(至高なる白銀と呼ばれた少女・e04242)の攻撃は非常に強力であったが、いささか単調ではあった。プランターフックにも攻撃を読み切られる場面は多々あったが、しかし「フックでぶら下がった瞬間を狙う」という適切な戦術により、プランターフックをじりじりと追い詰めていった。
「勝てる気がしねぇぇぇ! とりあえず子分になってもいいですか?」
「媚びるの早すぎませんか? ……まぁ、手始めに足でも舐めてもらいましょうか」
 テレサはそのまま、足でフックをぐりぐりと踏みつける。
 ひとまず手加減攻撃でフックを仕留めたテレサだったが、結局、生きて警察に突き出す事は断念し、トドメを刺さざるを得なかった。
 アイズフォンで「プランターは救出不能」という他ケルベロスの報告を得たのも理由であるが、何よりフックこと鍵屋・細彦が未少年という隠れ蓑の元行った、数々の凶悪犯罪を知った事が、一番の理由であった。

「ドーモ、プランターブラッド=サン。ハナビ・アマミヤです」
「ジツでも使うのか? 巫山戯た奴だが、実力は確かなようだな……!」
 亜麻宮・花火(パンドラボックス・e00170)の唐突なアイサツに油断する事もなく、プランターブラッドは全身甲冑から炎を噴き上がらせる。
 そんな花火の戦いは、意外にも真正面からの正々堂々としたぶつかり合いになった。
 ブラッドの炎と花火の螺旋が、戦場の中央で炸裂した。炎の拳をかいくぐった花火が螺旋掌を決め、追撃の螺旋射ちをかわしたブラッドが薔薇の刃で切り裂く。舞い散ったふたりの血風が瞬時に炎や螺旋によって蒸発する。まさに死闘の様相であった。
「いい戦いだったよ。でも、弱点は見えた!」
 花火の四肢から、突如として赤黒いオーラが立ち上る。
『檀・尸・忍・毘・禅・般』! 一撃にて六度切り刻み、此岸そのものを彼岸に送る花火の秘伝忍術、すなわち『六度彼岸(ロクドヒガン)』である!
 それはブラッドの弱点であった魔術防御を六度斬り、死闘は花火が制することとなった。

「犬……オルトロスか!」
「先制攻撃に成功。ターゲットを始末します」
 レクシナ・メヘン(睡朧・e13408)が颯爽と登場し、流れるような動作で、オルトロス『スナッグル』の切り開いたプランター鳥兜の装甲の隙間に特殊火薬を塗布。次の瞬間、ローラーダッシュの摩擦により生じたグラインドファイアが、鳥兜を襲う!
「コンクリートで装甲を塞ぐ暇は、与えません」
 すでにレクシナは次の攻撃を完了していた。鳥兜に気づかれること無く発射されたリボルバーの弾丸が、複雑な跳弾の既に、鳥兜の頭部を的確に貫く。
「ゲハァツ! てめぇ、犬とふたりがかりとは卑怯だぞ!」
「シャドウエルフの同胞が、意外な事を言うのですね。卑怯など、殺し殺される仲には縁のない言葉ですよ」
 その時、布石を終えたスナッグルを下がらせ、自分も距離を取ったレクシナは、
『醜い生命、最期の刻にはせめて、魂燃やし焔華咲かせ』
の言葉と共に、小型徹甲弾『起帚弾(バーストコメット)』を放つ。
 鳥兜は見せ場も無く、粉々に爆砕されたのであった。

「血液が……凍らされている!?」
「あなたは血液を武器にするのでしたか。では、傷口を凍て付かせ焼き尽しましょう」
 戸惑うプランター彼岸華を前に、西条・霧華(幻想のリナリア・e00311)はブレイズクラッシュと達人の一撃で血液を蒸発・凍結し、彼岸華の攻撃手段を奪ってゆく。
「何と勿体無い。君はそれ程にも美しいのに、血の装束を拒むなんて」
「……そんな事の為に、女性を殺し続けていたのですか?」
 霧華は静かに眼鏡を外す。それは彼女が優しさと怒りに折り合いを付ける為の儀式であった。彼女は斬霊刀を納刀し、彼岸華へと歩み寄る。
「そ……」
 彼岸華が何かを言おうとした時には、全ては終わっていた。先の先の更に先……知覚の外より放たれる、霧華の暗殺剣が炸裂したのである。霧華の周囲が地獄化し、咲き乱れた異形の華が、崩れ落ちるプランター彼岸華を優しく包む。
 その花の名は「此岸華(シガンバナ)。天に祈りを、地に花を、嘆くあなたに安らぎを。人の世の理にて裁けぬあなた、せめてあの世で悔い改めますよう……」

「アタイとやろうたあ、いい度胸だ! ブハアアアア~」
「そのくさい息を吹きかけるのは、女性としてどうかと思いますよ!?」
 ふわふわとした優雅な雰囲気で相対していたも春華・桜花(シャドウエルフの降魔拳士・e00325)は、プランターラフレシアのくさい息攻撃をまともに浴びては、流石に反論が口に出る。
「……コホン。でも、彼女もザイフリートが引き起こした戦争の被害者。本当は何も悪くないのに……」
「ブハハハァ、確かにアンタの言う通り! じゃあ大人しくアタイの餌食に……」
「それとこれとは話が別!」
 ラフレシアの豪腕パンチをかわし、桜花の身体がふわりと浮かぶ。そのまま桜花は天井を逆さまに駆け抜け、スターゲイザーで敵の頭部に落下する!
 続いて聖なる左手でラフレシアを引き寄せ、闇の右手でセイクリッドダークネス! 吹き飛んだラフレシアに動きを合わせて、
「貴女の魂に取り憑いた穢れ…断ち切って進ぜます!」
 必殺の『魂魄断つ蒼穹之繊月』により、ラフレシアは重力より解き放たれ、死を迎えたのだった。

「蘇鉄は、育成を促進する為に、鉄釘を幹に打ち込むらしいな」
「お前の剣がその鉄釘だってのか? バカにしやがって!」
 ラッファ・ラーエル(降摩竜・e01241)の言葉に激怒したプランター蘇鉄が、猪突猛進に飛び込んでくる。まずは撃ち合いを想定していたラッファは一呼吸遅れたものの、蘇鉄が体内から取り出した盗品バタフライナイフの攻撃を、冷静にいなしてゆく。
 途中で受けた毒の傷も、上着をはだけて一声咆哮することで、体外へと摘出してみせた。得意技をラッファに封じられた形となる蘇鉄は、特に策も無く一度間合いを取った。
 そんな蘇鉄に、ラッファは容赦なくフレイムグリードを浴びせる。そもそも他に降魔真拳と血襖斬りを兼ね備え、中間距離を維持するラッファの異常な回復力の前に、蘇鉄は為す術を持ち合わせていなかった。
「一対一の立会いってのは良いもんよな。だがこれにて終幕となるわけだが」
 左手で2個の賽子を弄びつつ、ラッファは静かに腰を落とす。
 鉄塊剣、血襖斬り。蘇鉄の胴体は上下に分かたれる事となった。

「脆い物は『壊し』たくならない?」
「そうよね…『壊す』のは楽しいわよね」
 神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)は、彼女……プランターウィードに、どことなく自分に似たものを感じ取っていた。
 私の得た力が攻性植物だったなら、彼女がケルベロスに覚醒していたら。
 その思いが、焔をして、敵が有利な接近戦を迎え撃つ、という決断をさせたのだ。
 焔の攻撃を巧みにかわしたウィードは、カニばさみで焔をグラウンドに持ち込むと、流れるような動きで腕十字を決める。焔の腕が鈍い音を立ててへし折られる。
「痛く…ないっ!」
 躊躇なく腕を折ったのはウィードの誤算であった。腕を折られた以上、腕十字からこれ以上ダメージは受けない。焔はおもむろに立ち上がり、折れた腕でウィードを地面に叩きつける。そして残る腕で、全力の対戦車猟兵術(パンツァーイェーガー・クンスト)を叩き込む。
 ビフレストを破壊されたウィードは最期、焔に呟いた。
「あなたと私は同じじゃないわ。あなたは、私を受け入れてくれたもの」

「てっきり、一般人でも扇動してけしかけてくるものと思ってたぜ……」
 普通に戦いが始まった事に対し、嵐城・タツマ(ジョウブレイカー・e03283)が意外そうに呟く。それに対し、プランターハロウィンもまた意外そうに返す。
「一般人を口先だけでケルベロスに歯向かわせるって? そんなの無理に決まってるだろ。例えばお前、消火活動中の消防士を非難するよう世論を誘導できるか? 無理だろ?」
「その例えはよく分からんが、少しガッカリだな。それぐらいしてくんなきゃ……」
 スリルが足りねェじゃねぇか!
 そう叫んだタツマの無造作な一撃が、いきなりハロウィンの頭部にヒットする!
 南瓜頭の内側で、何かがグシャッと音を立てる。
 その後は、ただただ一方的な虐殺だった。タツマの凶暴性の前に、ハロウィンは一言も発すること無く、為す術もなくボロボロにされた。
「おっ、このカボチャ、ケルベロスハロウィンに使えるかもな」
 虐殺の跡地から血まみれのハロウィンマスクを拾い上げ、タツマは意気揚々と家路につくのだった。

「あっ、いた! こ、こんにちは~…?」
「……………………」
 タライダッシャー(スケボー)に乗った久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163)の挨拶を無視し、プランターシュバリエは航の背後から見えない真空波を放つ。航はその攻撃を鮮やかにかわし、両者の一騎打ちが始まった。しかし、相手は流石に不良四天王最強だからか、その戦いは長期戦の様相となった。魔人を降臨させた航も、蓄積した負傷に疲労を隠せない。
『光の紋章よ、古の盟約に従いその力を解放せよ。…降り注げ、流星!』
 航の必殺技エンブレムミーティアが炸裂するが、シュバリエは倒れなかった。
「ですよねー!範囲攻撃でトドメとか舐めプもいいとこですもんねー!
 ……でも。もう、動けないですよね?」
 そう、一撃一撃を確実に当てるシュバリエに対し、航は状態異常に専念していた。それが長期戦になったという事は、シュバリエよりも航の戦術が上回った、何よりの証明だったのだ。
 無難に地味なとどめの一撃を与え、航は着実にビフレストごとシュバリエを破壊するのだった。

「よい、しょっと!」
 プランターシャドウがフェンシングの構えで近づいてきた所を、天音・風花(空色雪月花・e00243)はバスターライフルで殴りつける。
「おのれ銃で殴るとは、不愉快極まりない!」
「不愉快だって? でも、『振り回す方が楽』なんだもん」
 そう言いながら、風花は変わりなく、アームドフォートとバスターライフルで、近接距離を保ったままシャドウを殴り続ける。
「んー、やっぱりこれがあると動きにくいなー」
 風花はアームドフォートの装甲を外して機動力をアップし、なおも打撃を継続する。
「(装備した銃はフェイクか? ならば、私の奥の手、黒百合射撃で一気に……)」
 距離を取るために、シャドウの攻撃が一瞬緩む。その隙を、風花は逃さなかった。
 満を持して放たれた、フォートレスキャノンの一撃!
 完全に虚を突かれたシャドウは胴体を貫かれ、そのまま倒れ伏した。
 着実にビフレストを破壊しつつ、風花は言葉を掛ける。
「『振り回す方が楽』とは言ったけど、撃てないとは言ってないよ♪」

 とある路地裏。飛び込んできたプランターどんぐりの攻撃を、七種・酸塊(七色ファイター・e03205)は見事にかわしてのけた。
「タイミングが合わない……そうか、キミも背が小さいから!」
「まあ、そういうこった。いつものやり方は通用しないぜ!」
 どんぐりの直線攻撃に対し、酸塊は引きつけて打つセイクリッドダークネスで対抗する。
 どんぐりの攻撃は単純ながらも、ボクサーならではの動きを織り交ぜ、酸塊に肉薄する。遂にその鋼鉄パンチが、酸塊の胸元をかすめた。洋服の前が少しちぎれ飛ぶ。
「胸の差で外したか……」
「胸がどうしたって!?」
 酸塊が怒りのあまりおおぶりな攻撃を放ったのを見て、どんぐりはそれをステップでかわし背後へと回りこむ。完全などんぐりの読みがちだ。
「……と、思うよな?」
 次の瞬間、どんぐりに凄まじい衝撃が襲いかかる。酸塊が地面を踏みしめると同時に、恐るべき振動が戦場全体に奔ったのだ! 酸塊の必殺技『震脚』に囚われたどんぐりにトドメを刺し、酸塊は尼崎の街を立ち去るのだった。

「戦いはエレガントに、スマートにね?」
「そうだね、優雅に決闘を申し込もうか」
 やがてふたりはおもむろに空中へと飛び上がり、プランターエレガンスと黄落・憬(樂しからずして復た何如・e12592)の大空中戦は、極めて静かに始まった。
 ゲルセミウム・エレガンスは、植物最強の猛毒を持つと言われている可憐な花だ。
 憬はまずライトニングウォールで猛毒の猛威に対抗しつつ、雷刃突を放つ。エレガンスの装甲が少し削り取られた。
「その攻撃に何の意味が?」
「すぐに分かるよ。続けよう」
 憬の言葉はすぐに証明されることとなる。周囲に濃密な霧が立ち昇り、そして、
『―――まとめて討ち捨てよう』
 落葉の様に降り舞う波状斬撃を繰り出す、憬の必殺技『揺落盛衰(ヨウラクセイスイ)』が、僅かな装甲の傷を押し広げたのだ。
「しまった、これでは私にもゲルセミウムの毒が……!」
「へぇ、その技には欠点があったんだ。意外だね」
 勝敗は端的に、静かに決した。再び大地を踏みしめたのは、空中戦を制した憬のみであった。

 油断していたのは、こちらの方だったか……。
 月浪・光太郎(鍛え抜かれた不健康・e02318)は、若干の後悔を感じていた。
 敵は弱い。その見立てに間違いは無かった。だが、「弱さの質」を見誤っていた。
 残霊を纏った「紛い物のアホ」の中にも、恐怖や怒りに屈しない者がいる可能性も、少し考慮に入れるべきだった。よりによって、このプランターアポカリプスという男だけが、30人の中で数少ない、そうした例外だったとは。
 戦いの決着自体はすぐについた。アポカリプスは光太郎の挑発には乗らなかったが、それで光太郎が遅れを取ることは無かった。敵の矢は結局、ただの一発も命中しなかった。
 しかし、アポカリプスは死の瞬間にこう言った。
「矢を受けた人間は自我を破壊される。今頃、矢を受けた人間達は皆自我を破壊され、デウスエクスを滅ぼす怪物と化し、我が遺志を継いでくれるだろう」
 その言葉を聞いた時にはもう遅かった。矢の着地地点と思われる場所を全てめぐったが、そこにはもう何も残っていなかったのだ。

「俺は三条翼だ。一対一の勝負と行こうぜ」
「分かりやすいね。嫌いじゃないよ!」
 三条・翼(地球人の刀剣士・e00373)のグラビティブレイクと、プランター竜胆の光輪居合い斬りが交錯する。ふたりの使うグラビティは、まるで鏡写しだ。期せずして、ほぼ同質・同じ強さの使い手が、一騎打ちを行うこととなったのだ。
 翼のアームフォートが火を吹き、竜胆はテイルスイングで応戦する。
 互いに得意を封じられ、互いの得意を封じ合う、苦しい戦いとなった。
 そんな膠着状態を破ったのは、
「なるほど、たいしたもんんだ」
 どこまでも呑気な、翼の態度であった。
 混乱に呑まれること無く、冴える一振りの剣の如く。
 深呼吸をひとつ。シャウトで全ての状態異常を吹き飛ばす。
 そして、麻痺により動けぬ竜胆に一言。
「居合が得意なのはお前だけじゃない。光輪を飛ばすなら、こちらは桜だ」
 抜刀一閃! 鮮やかなる桜花剣舞で、竜胆は一撃の元に斬り飛ばされた。
 舞い散る桜が戦場を覆い、またひとつ戦いが決着したのだった。

「触手だって!拗らせすぎだねぃ」
「フォッフォッフォッ、年長者といえど手加減はしませんぞ?」
 プランター我呪の触手が音琴・ねごと(不可思議次元のアイドル・e12519)に襲いかかる!
 あっさり触手に捕らわれたねごとだが、その程度で彼女のスマホさばきを止めることはできない。ねごとは悠々と『BBA知恵袋』のネット生放送を開始する。
『植物に縛られたときはどうしたらいいですか?』
 たちまちのうちに、山のような微妙コメントが集まってくる。お酢が有効とか、うちの姉は逆に縛り好きみたいですとか、お姉さんの詳細を希望しますとか、お姉さんの住所を教えてくださいとか、そういうの。
 なんやかんやで、ねごとは触手の拘束から脱出、素早い操作で適当なホームページを炎上させ、我呪を燃やし追い詰めてゆく。
「戦ってる気がせんぞお……!」
「そんな事言われても知らんのです」
 我呪は何のいいところもなく、ブスブスと黒焦げた塊になった。
「更生する気があるなら殺さないですよ?(殺さないとは言っていない)」

「ハハッ、どうした! 攻めが緩いんじゃないのか?」
「……好きに言ってろ」
 コクヨウ・オールドフォート(グラシャラボラス・e02185)は、プランターロータスの凍結剣を全身に浴びながらも、時折のシャウトを忘れず、丹念に攻撃を積み重ねる。
 不意にロータスが嗤った。次の瞬間、その肉体が『裏返り』、光り輝く高貴な姿が現れる。
「ハハハハ、これぞ『天上天下唯我独尊体』! 最早他のプランターなど不要。お前も一思いに……!」
 ここで、ロータスは思わず言葉を飲み込んだ。
 先程までクールだったコクヨウが、嗤っているのだ。
「そう来なくてはな。だが、動けるか……?」
「何だと……? クッ、動かない、まさか!」
「覚醒すると聞いて、気になっていたんだ。お前は『痛み』を知っているのか、とね。案の定、お前は己の状態異常にも気づかなかった。覚醒しようが、今のお前はただの木偶だ」
「う、うああああああ! そんな、そんな馬鹿な!」
「いい恐怖だ。その恐怖ごと全て喰らい尽くしてやろう。俺の、『絶影』で」

「一体、何度花壇が台無しになったと思う?」
 今までニファ・ナクシャトラ(花実朽ちて・e00961)の植えた多くの花達が、ほんの少しの留守中に、爆発的なミントの繁殖力の前に死滅していった。ミントは嫌いではないが、植物のテロリストなのだ。
「そうか……それは悪いことをしたな」
 意外にも何故か謝罪したプランターテロルに、ニファは少し拍子抜けをする。
「い、いえ、今のは私の単なるとばっちりで……」
「地球の全ては誰かに『悪意』を残すシステムになっている。例外はお前達だけだ、ケルベロス」
「あなたはテロリストと聞いていましたが、私達に悪意は無いのですか?」
「悪徳政治家だろうがテロリストだろうが、皆、ケルベロスには敬意しかない」
「……元には、戻れないのですか?」
「そのようだ。仮に戻れたとしても、俺はこの悪意を逃したりはしない」
「分かりました。では私が、あなたの最期を看取ります」
「よろしく頼む」
 ……ややあって。
 爆発性を失い枯れ果てたミント達を背に、ニファは戦場を去るのであった。

「ふえぇ、とっても大きいのです」
「オデはデカいから、おマエよりツヨいなあ~」
「……結論が早すぎるです! 大きいからって強いとは限らない事を、ボクが証明してみせるです!」
 有無を言わせず殴りかかってきたプランタージャンボの拳を、リシア・アルトカーシャ(オラトリオのウィッチドクター・e00500)はブラックスライムでがっしりと受け止め、その拳にケイオスランサーを突き刺す。拳を受けたリシアのダメージは軽視できないが、これは小さいのに壊せないリシアの姿を見せるという意味で、非常に有意義な攻防だった。
 次にリシアは竜語魔法ドラゴニックミラージュを放ち、ジャンボよりも大きな存在を想起させる。
 その後、幾度かの真正面からの撃ち合いがあった。何度殴っても倒れないこの少女に、ジャンボは豊かなる大樹を連想したであろう。
 そして最後には、
『霊冥と導く破邪の煌きよ。我が声に耳を傾け賜え。穢れた魂を穿つ光なれ。』
 リシアの齎す『福音』の光をジャンボは受け入れ、消滅していったのであった。

「だれが河童だああああ!」
「被害妄想じみた口癖もやめろ。その囚われた考えが、自分自身を一番苦しめているんじゃないか?」
「今更言ってどうすんじゃああああ!」
「な、なるほど。ならば俺が、髪に囚われ、薄毛で暗黒面に堕ちたあんたを、髪から解放してやろう」
 夜月・双(風の刃・e01405)は、初手から全力の戦いを選んだ。
『月夜に吹き荒ぶ冷たき風よ……此処に具現し、彼の者を斬り刻め』
 必殺『風刃の三日月(フウジンノミカヅキ)』が、プランター河童を切り飛ばす。
 河童は不利と見て、配下のきゅうりに一般人を攫わせようと指示を出した。
 しかし、その考えを読んでいた双の放つ殺界形成により、その目論見は防がれた。
 配下の行動を一手番無駄にしたマイナスが災いし、双の早撃ちと竜語魔法、そして必殺技の前に、河童はあっさりとやられてしまった。
 決着の前に、双は試しに河童にヒールグラビティを掛けてみた。
 河童の傷は癒えたが、彼の毛根は回復せず。
「ケルベロスにも不可能はある、ということか……」

 プランターテイマーが狭い路地を通行しようとしたタイミングを見計らい、八崎・伶(放浪酒人・e06365)とボクスドラゴンの『焔』が、その逃走経路を塞ぐように立ちはだかった。
「実質2対2だな?」
「こっちが2じゃと? 桃太郎知らんのかい!」
 テイマーが地面に桃を投げると、犬・猿・キジをかたどった、3体の攻性植物が現れた。
「まあ、その予想が外れても、俺は別に困らんがな。何より……」
 伶の全身に、鋼の如きエネルギーが蓄積される。
「男相手なら、多少は気楽で助かるぜ!」
 言うやいなや、グラインドファイアで敵の一体、「猿」を葬り去る。
 そのまま乱戦となったが、命令で使役するテイマーに対し、心からの信頼で繋がりあった伶と焔の連携は完璧であった。
 伶が「犬」に惨殺ナイフを突き立てると同時に、焔のボクスファイアが犬にトドメを刺す。
 確実に一体一体を仕留めていく戦いかたの前に、テイマーは終始追いつめられ続けた。
 そして。
「外道は、許せねえな!」
 最後に残ったテイマーをコンビネーションで倒し、伶は使命を全うしたのであった。

「倒されたら分裂して散らばるとか…迷惑すぎるわね虹の城…」
「あら、そんな偶然があったから、私達は出会えたのではなくて?」
 頭を押さえるノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)に対し、プランターサラセニアはのんびりした口調で答える。
「そんな余裕でいられるのも、いまのうちよ?」
「あら、私は今まで散々いい思いをしたから、もう死ぬのも怖くないし、むしろイタいのは大好物。私はいわば『無敵』なの。拷問しようが殺そうが、私の余裕を崩すなんて、ム・リ・ム・リ♪」
 数分後。
「いやああ! こんな結末はいやああ!」
 戦場にサラセニアの絶叫が響き渡る。
 なんということでしょう、そこには、ノワルの必殺技『バルーン・キッス』によって膨らまされたサラセニアの姿があった。トラウマボールで生み出されたトラウマも、相乗効果を上げている。
「美しさを失う事だけは嫌なのおお!」
「そうだと思った。……こんなに太っちゃって、イケナイオバサンね?」
 こうしてサラセニアは、死ぬ程後悔して死んだのだった。

「己の保身を気にするのならば、真面目に働けば良かったものを」
「それじゃオイシイ目が見られんだろう? 保身は大事だが、楽しく稼ぐのが一番大切なのさ」
 格好良く最低な事をのたまうプランター龍絶に、儀竜・焔羅(咆撃要塞・e04660)は溜息をつく。さっさと潰してしまったほうが良さそうだ。
 焔羅はライドキャリバー『ヴォルクス』から降り、ヴォルクスに前衛を守らせて、自分は大きく距離を取る。例え相手が警官でも、撃ち合いならば負ける気はしない。
「ああ、クソッ、厄介だなサーヴァントという奴は。なら、持ち主から!」
 キャリバースピンで纏わりついてくるヴォルクスに手を焼いた龍絶は、焔羅にテキーラの弾丸を放つ。しかし、焔羅は酩酊しなかった。
「……まさか、大酒飲みには効かねえのか?」
「運が悪かったな」
 敵の主攻撃を封じた以上、もはや勝敗は決した。
『地獄の業火はこの身に宿り、この地に顕現せし』
 焔羅の『全砲門一斉射(ヘルファイヤー)』を受け、龍絶は痕跡も残さず焼きつくされたのであった。

 普段のアルヴィン・ヴァイシュミット(愛及屋烏・e00227)は優雅そのもので、熱くなることも殆ど無い。プランター曼荼羅に対しても、彼は優雅かつ颯爽と言ってのけた。
「外見腕力財力知力全て持ってる美少年?僕の方が上さ!」
「何ですって! でも、うーん確かに美しい。なら結婚していただきたい!」
「男子じゃないか!」
「いいじゃないか!」
「いーやまだまだハジケが足りない! もっとハジケて!」
「ううっ(感涙)。サーイエッサー! ラスタサイケラスタサイケ!」
「むむっ、微妙に見切られないようにグラビティを織り交ぜてるな!」
「かしこいでしょ」
「かしこい。ならこちらも、時空凍結弾!熾炎業炎砲!禁縄禁縛呪!御霊殲滅砲!」
「念仏かな」
 おわかりだろうか。状態異常を踏まえたアルヴィンの高度な戦いを。
「僕もうすぐ勝つけど、仲良くしない?」
「あっ無理かな。この草抜けないし」
「……残念だ。君に黙祷を送るよ」
 そして曼荼羅は力尽き、アルヴィンはデウスエクスへの怒りを新たにするのだった。

「いやいや、いやいやどういうこと? バトルロイヤルは今どうなってるの?」
「……やはり、尼崎市全体を見渡せる高所に居ましたか」
「ヒィッ、ケルベロス!」
 最後のひとりになるのを待つというのがプランターワスプの戦法だと言うのなら、彼はどうやって自分が最後のひとりだと知るつもりなのか?
 考察の結果として、竜造寺・マヤ(ウェアライダーの刀剣士・e10463)は『ワスプの居場所』を推理し、それを的中させた。
 この時点で、マヤの勝利はほぼ決まったようなものであった。
 だが、彼女はまだ気を抜かない。
「(高い攻撃力を持つなら、当て難くするまで)」
 ワスプの重い攻撃に耐えつつも、獣撃拳と絶空斬によって着実に敵の動きを封じてゆく。
 だが……。
「あら?」
 どうやら布石の段階で、ワスプの体力に限界が来たらしい。
 ならば。
『わたしが放てる限界の一撃。その身に刻めッ!』
 潜在能力を限界ギリギリまで解放する『獣王武刃(ジュウオウムジン)』のトドメで、マヤはワスプを確実に撃墜したのだった。

「お前、いったい何者だ!?」
「己の悪行を償いもしないまま真人間を自称するような輩に、名乗る名は持ち合わせていませんので」
「新しい敵か!? 平穏な暮らしを乱そうというのなら、俺が戦うしか無いッ!」
「己の悪行を償いもせず、よくもそこまでぬけぬけと……」
 自分の過去を棚上げしたプランタージェネシスの物言いに、虚南・セラ(ファントムトリガー・e02267)の怒りは頂点に達した。
 手始めに、心清き者だけが撃てる光線とやらを、軽く弾いてみせる。
「心清き者とは、こんなものですか。」
 その後も攻防を続けるが、ジェネシスはその後も卑怯な攻撃ばかり。だが、本人には一欠片の悪気も邪気もない。
 ……これこそ、本当の悪なのかもしれない。
 嘆息と共に、セラは銃口を向ける。
『輝ける光の弾丸よ、我らが前に立ち塞がりし敵を撃ち貫け……セイクリッドオンスロート!』
 セラの『セイクリッドオンスロートⅡ』はジャスティスを貫き、瞬く間に消滅させた。
「……まぁ、私も人の事を言える程では無いのですけど」

 オルガ・ディアドロス(盾ノ復讐者・e00699)の読み通り、プランタージャスティスは尼崎市の事務所が集まる一角に現れた。
「正義を執行する!」
「お前の言う正義が何かは知らんが、あんた盾使いなんだってな? どちらが優れた使い手か、試したくなるじゃねぇか」
「力比べに興味は無い。私は正義を執行するまで」
「対話の無い正義に、どんな価値があるってんだ?」
 オルガは力強く『ディアドロスの大盾』を構える。
 彼の必殺技『絶対的な守護領域(エンペラーフィールド)』が発動し、広大な光の領域が彼を覆う。ジャスティスが怪訝な顔で問いかける。
「それは対人ではなく、対軍・対陣用の防衛能力ではないか?」
「当然だろ。お前も正義の味方なら、仲間を守る為に力を得たんじゃないのか?」
「正義とは私の執行する法(ロウ)である。他者は従う事で幸福を得られる」
「絶望的に平行線だな。心置きなく戦えるぜ!」
 ふたりの強者達の戦いは熾烈を極めたが、やがて勝利の天秤はオルガへと傾いた。
 トドメのバスターライフルを叩き込み、オルガは仲間達との合流地点へと引き返すのだった。

「皆さん、お疲れ様っス!」
 ダンテの待つ集合地点に、30人のケルベロスが集結した。
 ビフレストの細片は全て砕き、この困難な任務は見事に完遂された。
 人的被害も残敵も殆ど無く進められたのは、まさに僥倖と言うべきだろう。
 様々な罠を見破り打ち砕いたケルベロス達は、意気揚々と帰還を果たすのであった。
 

作者:うえむら 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月28日
難度:普通
参加:30人
結果:成功!
得票:格好よかった 17/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 38
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