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ヘリオンの内部で千々和・尚樹(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0132)は集まったケルベロスたちを見回していた。
「お集まりいただきありがとうございます。これより『星霊戦隊アルカンシェル』の討伐作戦を行うことになりました」
『星霊戦隊アルカンシェル』の名前に集まったケルベロスたちはざわついた。
5人組のエインヘリアル『星霊戦隊アルカンシェル』はまとまって行動しており、それを倒すとなると容易ではない。
「今回の討伐作戦は5チームで行います」
複数のチームがそれぞれ離れた場所でアルカンシェル一人ひとりを相手に戦うことで撃破が可能になるだろう。
彼らが次に現れる場所は予知によって特定ができており、後は詳しい作戦だ。
「まず、各チームから一人ずつ……合計5人のケルベロスがこの場所に乗り込みます。そして戦闘を仕掛けてください」
もちろんそのままでは負けてしまうので戦闘を仕掛けた上で彼ら5人を挑発。
そして別々の方向に撤退すればこれまでの作戦で鬱憤が溜まっているアルカンシェル達は5方向に分かれて追撃をしてくるだろうという目論見だ。
「逃走した5人がそれぞれを上手く誘きだすことができれば、アルカンシェルを各個撃破することができるでしょう」
そこまでを説明し終え、尚樹は一度息を吐いた。
「ここからが重要なことになるのですが……聞いていてわかる通り、今回は囮作戦です」
誰か一人が囮役となり誘い出すこの戦法は危険も伴う。
「その囮役の方ですが……おそらく、戦闘には参加できないでしょう」
囮の役目はアルカンシェルの誘導。
敵の追撃を受けながら仲間たちの元へ誘い出さなければならない。
上手く分断するためにもこちらから攻撃を仕掛けたりする暇はない。
「そして挑発の仕方です。挑発の仕方は話し合っていただきたいのですが、全員が一斉に別々の方向に撤退したりしてしまうと怪しまれる可能性があります」
誘い出す相手によって挑発の仕方や撤退時の演技などが必要になってくるだろう。
激怒させて判断力を削いだり、相手の迂闊さを利用して釣りだして撤退するなど、対応策を考えなければならない。
「状況によっては複数人が連携して1人を追いかける可能性も出てくるでしょう」
その時は追手のかからなかったチームが救援に向かうこととなるが、各個撃破という作戦を主軸としている以上、どうしても誘い出す場所は離れている。
「恐らく、どれだけ急いでも最低5分はかかってしまいます」
それまで耐えきれればいいが、エインヘリアル2体を相手に7人でどれだけ戦えるか。
下手をすればこちらが各個撃破されてしまうだろう。
「皆さんにお願いしたいアルカンシェルはスターローズと呼ばれる女性のエインヘリアルです」
あの部隊の花ともいえる彼女は好戦的でいつも退屈そうに任務をこなしている姿が見受けられる。
「そのスターローズの武器ですがエアシューズを装備していて、そのグラビティを使ってくるようです」
その威力は受けてみないとわからないが、外見のように可愛らしい威力では決してないだろう。
「危険な任務ではありますがこの作戦が成功すれば、エインヘリアルの企みにも打撃を与えることができるでしょう」
どうかよろしくお願いいたします。
そう言って尚樹は頭を下げたのだった。
参加者 | |
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大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752) |
ベルカント・ロンド(リザレクター・e02171) |
メリチェル・エストレーヤ(黒き鳥籠より羽ばたく眠り姫・e02688) |
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943) |
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612) |
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713) |
クリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416) |
イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555) |
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アルカンシェルが現れたのはとある公園。
彼らの目的であるオーズの種を探してのことだろう。
時間帯はいつも通り、深夜であった。
天気は良いといっていいほうだろう。
多少の雲はあるものの、時折漏れる月の光が仄かに辺りを照らしている。
そしていつも通りオーズの種を探している5人組を今、5つの影が囲んでいた。
五つの影のうちの一人、イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555)は揃いのスマートグラスフォンから聞こえた合図の音に地を蹴った。
イリスの目的はローズのおびき寄せ。
連絡手段のスマートグラスフォンは囮だというのがばれないように音量も極力下げている。
ここからはお互いにやりとりもできないだろう。
後はどうにか目的の人物を仲間たちの元へと誘導するだけだ。
ざ、と土を踏みしめて、イリスが立ったのはアルカンシェル部隊のスターローズの前。
「私に何か用事?」
かなり高い位置から声が聞こえる。
彼女とてそこまで低いわけではないのだが、エインヘリアルはもともと体が大きな種族。
2メートルを超える場所からの声かけは威圧的だった。
しかしその圧をさらりと流し、イリスはローズに声をかけていた。
「ねぇ貴女、私と戦わない?」
「へぇ……」
すぃ、とローズの瞳が細められて暗闇の中で鋭い光を放つ。
「面白そう。いいわよね?」
誰に問いかけたのかはわからないが、ローズは答えを聞く前に行動を開始していた。
ローズの足が地を蹴りそれと同時に炎がまとわりつく。
迫ってきた脚にイリスは両手をクロスさせて衝撃に備える。
ご、という音が耳元を掠めたかと思うと身体は炎に包まれていた。
遅れて腕に重たい衝撃が走り、イリスの身体は数秒間宙に浮く。
「…………っ!」
何とか体勢を整えて地面に着地をし、イリスはローズに向かって力ある言葉を解き放った。
「黒き抱擁……貴方は耐えられるかしら?」
腕に巻かれていた攻性植物が槍の形を象りローズの身体に突き刺さるがあまり効いている様子はない。
舐めてかかれる相手ではないとは思っていたが、これほどとは。
対してこちらはブルーの前で共に突入したフローネが膝を折っている姿が見える。
助けに行きたいが目の前のローズに背を向けるのはそれこそ自殺行為に他ならない。
そんなイリスの心を知ってか知らずか、ローズは楽しそうな笑顔をこちらに向けていた。
「耐えきっちゃった。じゃあ次は私の番ね!」
ローズの蹴りが再びイリスを襲う。
「ぐっ……!」
ダメージは半減されているはずだが一撃一撃が重たい。
(「どうにか、ローズを連れ出さなければ……!」)
ここで一人でも意識を失えばこの作戦自体が失敗する。
意識を失わないことを第一に考え、イリスは自身の身体に呪紋を浮かばせたのだった。
●
「イリスさんとローズの姿が確認できました。あと2分ほどでこの広場に到着します」
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)の声に、広場に待機していた全員に緊張の色が走る。
「怪我をしているので無事に、とは言い難いですが……こちらにおびき寄せているようです」
彼女の言葉に連絡役のベルカント・ロンド(リザレクター・e02171)がスマートグラスフォンを確認するが他の班からの連絡は来ていない。
恐らく他のアルカンシェルも分断できているのだろう。
「どうにか連絡せずに終わらせたいですね」
他に連絡する場合はローズの撃破が難しいときだが、できればここで決着をつけておきたい。
そうでなければ囮役となってくれたイリスに申し訳が立たない。
「……無事でよかった……」
イリスの無事を聞き、イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)はほっと胸を撫で下ろしていた。
随時彼女と連絡を取るつもりではあったが、やはりおびき寄せながら敵にばれないように連絡を取るのは至難の業だったのだろう。
通話は繋がることなく不安を募らせていたのだ。
奇襲に関する連携を図るのは難しいが、今はただ彼女が無事にこちらにたどり着いてくれるのを祈るのみだ。
ぎゅ、と胸の前で手を握り、メリチェル・エストレーヤ(黒き鳥籠より羽ばたく眠り姫・e02688)は少しの間目を閉じる。
(「この好機、絶対に逃せません……」)
仲間が、そして囮となってくれた面々が作ってくれたこのチャンス。
あと少しで、ローズがここにやってくる。
腰に下げたランタンを確認し、クリスティーネ・コルネリウス(偉大な祖母の名を継ぐ者・e13416)は茂みの中で息を殺していた。
奇襲をするには悟られてはいけない。
たたた、と彼女の耳にも足音が聞こえ始める。
「…………よしっ」
ふっと息を吐き出し、リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)は広場の入り口に視線を送る。
まだ姿は見えないが、静かな夜の公園に不釣り合いな足音が近づいてくるのがわかる。
二つの影が広場に走り込むのが見え、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)は静かに両足に力を込めたのだった。
広場の芝生に足を取られたイリスが体勢を崩して倒れ込む。
「そろそろ飽きてきたし、決着をつけましょ」
「……そうね。私もそう思っていたところ」
つまらないと言いたげなローズにイリスはゆっくりと顔を向け、彼女の視線を引き付けるようにゆっくりと言葉を発したその瞬間。
公園の茂みが揺れた。
「!?」
「私の勝ちよ、ローズ」
突如現れた増援にローズは図られたことを悟り奥歯をかみしめると、イリスの身体を渾身の力で蹴り上げた。
蹴られたイリスはその衝撃に抗うような力は残っておらず、仲間たちの声を遠くに聞きながら意識を手放したのだった。
宙を舞うその体をラプチャーが受け止めたのを確認し、ケルベロスたちは行動を開始していった。
「響け、玲瓏たる月の囁き」
ベルカントの魔力を秘めた歌声が辺りに響く中、イブがオーラの弾丸を、秋櫻がSJ7・DRAGON-CANNONの主砲をローズに向かって撃ち放つ。
「目標補足。戦闘モード起動。出力全開。行きます」
それを流星の煌きを宿した足でリディとクリスティーネ、そして彼女のオルトロス『オっさん』が追う。
「イリスちゃんに好き放題やってくれたねっ! お返しは安くないよっ!」
「後はお任せください!」
主砲とオルトロスの攻撃を避けたローズはしかし、オーラの弾丸と二人の蹴りは避けきれず、その体の動きを鈍らせた。
それを待っていたのはラプチャーだ。
「今でござる!」
バスターライフルにエネルギーを溜めると一気に撃ち放つ。
グラビティを中和する効果を持ったそれはローズの体を包み込み、彼女は小さく舌打ちをするのが聞こえた。
「手中に蠢く龍の力で、癒しを我が手に」
そこにメリチェルのビハインド『ノイエ』の放った攻撃は躱されてしまったが、それでもその間にメリチェルの描いた魔法陣が仲間の守備を上げていく。
「……やってくれるじゃない、ケルベロス。少しは楽しめそうね!」
エネルギー光線の光が消えたその後、ローズは自分の周りを取り囲んでいる面々を見回して好戦的な笑みを浮かべたのだった。
●
ぼう、と赤い炎が深夜の公園に灯る。
「っ……」
その炎を纏った影……イブはその熱さにたまらず息を漏らしていた。
おびき寄せからの奇襲は成功だった。
1ターン目は誰も攻撃を食らわず相手にダメージを与えることができたのは大きいだろう。
しかしそこからはさすがと言うべきか。
ローズの動きはかなり制限しているはずなのに、彼女の攻撃は鋭く重たい。
逃がさないようにとローズを包囲する陣形を選択したこと、これもいい作戦と言えただろう。
しかしその分、ディフェンダーが庇える範囲を狭めてしまったのは否めない。
ベルカントの必死の回復はあるものの、後衛を狙ってきたローズの攻撃でクリスティーネのオっさんとメリチェルのノイエはそれぞれの主人を攻撃から庇って姿を消している。
「……意外としぶといわね」
とんとんとつま先で地面を蹴っているローズは先ほどまでは笑みを浮かべていたものの、彼女には回復手段がない。
攻防を繰り返すうちにローズの身体には多数の傷が刻まれていた。
(「彼女はそろそろこちらの包囲を抜けようとしてくるはずでござる……」)
最初こそ余裕を見せていたローズも、今の表情は少し硬い。
これが敵でさえなければ戦いの後にデートに誘ったというのに本当に残念だ。
こめかみから流れてきた血を拭い、イブは再びガトリングガンを構えた。
「……負けられない」
言葉と共に弾丸が撃ち放たれる。
それに合わせてラプチャーとリディも竜の幻影を解き放つ。
炎に巻かれるローズに無数の弾丸が撃ちこまれているその隙にベルカントが怪我の具合を確認し、イブに緊急手術を施していく。
それを後押しするように唇に歌を乗せたのはメリチェル。
「幸福の時間の始まりよ。決して終わることのない永遠のトキの、ね。――ねぇ、微笑って?」
その歌の旋律に乗るように秋櫻は走る。
柔らかく透き通る歌声を切り裂くように繰り出した蹴りはしかしローズの両手に受け止められて、逆に足を掴まれそうになった秋櫻はローズの腕を軽く蹴って距離を取った。
体力が少し回復したのを確認し、クリスティーネは物質の時間を凍結する弾丸を作り出す。
「必ず、みんなで帰りましょう……!」
弾きだされた弾丸がローズの腕に命中し、彼女の顔が苦痛に歪んだ。
●
包囲の中心で片手を軸に一回転したローズの足が、後衛の身体を薙いでいく。
「ぐっ……!」
うめき声を上げたのはベルカントを庇った秋櫻だ。
回復役である彼はこの依頼の要。ここで失うわけにはいかない。
庇われたベルカントはローズの向こう側で倒れていくクリスティーネを見て奥歯を噛みしめた。
だがここで嘆いている時間はない。
「……大丈夫ですよ……!」
倒れたクリスティーネや他のメンバー、なによりも自身に言い聞かせるようにベルカントはその言葉を発すると、秋櫻に緊急手術を施していった。
クリスティーネが倒れた分の穴はローズが通り抜けるにはまだ小さい。
彼女としてはこの包囲を抜けるために穴の横に居るラプチャーかリディを狙ってくるだろう。
ダメージを受けている分を考えれば次はリディになるだろうか。
「あと少し、ね」
「……させないよ」
笑いながら呟いたローズの耳にイブの歌声が届く。
回復をすべてベルカントに頼っている彼女もかなりの傷を負っているが自分の役目は攻撃と心得、淡々と、しかし切々と歌を紡ぐ。
「どうか、僕の好きだったきみのままでいて」
その歌声に重なるのはメリチェルの声。
前衛の回復も大事だが、後衛の3人も浅く無い傷を負っている。
別れの歌と始まりの歌とが重なる中、ラプチャーは動く。
ラプチャーは惨殺ナイフの刃を変形させてローズに肉薄すると、傷ついている太ももに遠慮なく刃を突き立て傷口を開く。
「いったぁい!」
「幸せを奪う敵は、逃がさない―――!」
そこに突き刺さるのはリディの放ったケルベロスチェイン。
深々と突き刺さったそれが抜けぬ間にと秋櫻が一気にローズとの距離を詰めていた。
「近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除。対象補足……貴方は私から逃れられません」
ぐん、と彼女の攻撃のスピードが上がり、ローズの身体に拳や蹴りがめり込んでいく。
その攻撃にぐらりとよろけるローズだったがまだ意識は保ったままで、傷ついた足を庇うように立つとリディに向かって駆けだした。
流星のきらめきを乗せた蹴りはしかしそれを読んでいたメリチェルに止められて目標を討つことはかなわず、ローズは悔しげな表情と共に小さくせき込み、血を吐いた。
「あと少しでござる! 一気に攻めるでござるよ!」
それを好機と読み取ったのラプチャーの声に、全員が一気に攻撃を仕掛けていく。
ベルカントのバスターライフルから放たれた凍結光線が傷ついている足の動きを止めれば、イブが放った気咬弾がローズのわき腹に食らいついた。
ラプチャーとメリチェルの召喚したドラゴンの幻影が炎を吐いてローズの長い髪をちりちりと焼く。
その場に膝を折ったローズはしかしまだケルベロスたちを睨み付けていた。
「まだ、よ……!!」
炎を纏いながら立ち上がろうとしたローズにリディと秋櫻が走る。
放たれた蹴りは彼女の胴体にめり込み……ゆっくりとローズの身体が地に倒れる。
彼女の身体に灯っていた炎が消えれば、辺りは静寂に包まれた。
「お、終わったのかな……?」
はぁはぁと荒い息を吐きながら問うリディに、頬に付いた血を拭いながらメリチェルが頷く。
「帰るまえに、少し治療を……」
そう言いかけたベルカントの声を遮ったのは仕掛けておいた設置定点カメラをチェックしていた秋櫻。
「誰か来るぞ。1人だ」
「1人……?」
彼女の声にイブが疑問の声を上げる。
仲間のケルベロスであれば連絡手段は持っているし、たとえ壊されていたとしても1人でやってくるということはあり得ない。
だとすれば答えは一つ。
「急いでこの場を離れるでござる!」
ラプチャーの声にケルベロスたちはイリスとクリスティーネを抱えて足音がする方と反対側の出口へと移動する。
「ローズ、どこだ!?」
何とか全員が広場から姿を隠せたその瞬間、聞こえてきたのはスタールージュの声であった。
あの様子だとこちらの思惑がばれてしまった可能性が高いが、それを確かめるために振り返っている暇などない。
見つかってしまえば、負傷者を抱えたこちらに勝てる要素などない。
「……! ローズ……っ、うおおおおおおお! 覚えておけよ、ケルベロスども!!」
ルージュの叫びを背後に聞きながら、ケルベロスたちは歩みを速めたのだった。
作者:りん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月3日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 26/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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