九曜白虎

作者:犬塚ひなこ

●星と白虎
 春の夜空には幾つもの星が瞬いていた。
 穏やかさに満ちた空の下、今宵も静かなひとときが巡っていくはず――だったのだが、騒がしくも感じられる声が突如として平穏を破る。
「さあさあ、我ら『マサクゥルサーカス団』のオンステージだ!」
 その声の主はシルクハットを被った蛾めいた姿をした死神。通称、団長。浮遊する怪魚を連れた彼は広い野原をぐるりと見遣ってから口許を緩めた。
「それでは君達、後は頼んだよ。君達が新入りを連れて来たら、パーティを始めよう!」
 そういって去った団長の言葉に呼応し、怪魚達は宙を泳ぎ廻る。
 すると魚達が通った軌跡が蒼白い光の尾を引き、辺りに魔法陣が形成されていった。其処に呼び起こされたのは白い毛並みを持つ虎のウェアライダー。おそらく、かつて第二次侵略期以前に暴れ回っていた白虎の魂がサルベージされたのだろう。
 死神の力によって変異強化されたウェアライダーは夜空を仰ぎ、大きく吼える。
 まわりの空気を振動させた咆哮はまるで星にまで届きそうなほど、響き渡っていった。
 
●春星のもとで
 過去、第二次侵略期に地球を襲っていたウェアライダーが蘇った。
 それは蛾のような姿をした死神の仕業だと話し、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は集ったケルベロス達を見渡す。
「昔に死んでしまったデウスエクスをサルベージする作戦。その指揮をとっているのが団長と名乗る死神みたいです!」
 彼は配下である魚型の死神を放って変異強化とサルベージを行わせ、死んだデウスエクスを死神の勢力に取り込もうとしている。敵はこうすることで戦力を増やそうとしているのかもしれない。しかし、これを見逃すことは出来ないとねむは語った。
「みんなにはサルベージされた白虎のウェアライダーさんを倒しに行って欲しいんです。敵が現れる場所は、この場所です」
 ねむは地図を取り出して出現ポイントについて説明した。現場まではヘリオンで送ると約束したねむは、周囲に人気がないことが不幸中の幸いだと話す。
 ケルベロスが現場に到着した時点で、その場にいるのは変異強化されたウェアライダーが一体と死神怪魚が二体となる。指揮を執っているという蛾めいた死神は既に去っているので対面することは叶わない。
「白虎さんはとても強いので気を付けてください。傍にいる怪魚のほうも白虎さんを助けるように動くみたいなので要注意ですっ!」
 ウェアライダーはケルベロス全員でかかってやっと互角の強さだ。如何にして怪魚と同時に敵を相手取っていくかが勝敗の分かれ目となる。
 だが、皆ならば必ず勝って戻ってきてくれるはず。
 ねむは瞳に確かな信頼の色を宿し、仲間達をまっすぐに見つめた。
「一度死んでしまったデウスエクスを復活させて、もっと悪いことをさせようとする死神は許せません。だから、ねむはみんなが止めてくれることを信じてます!」
 ぐっと掌を握って力説したねむはケルベロスに期待を寄せる。
 星空の下に呼び起こされた白き虎をふたたび安らかな眠りにつかせる為にも――今、皆の力が必要なときだ。


参加者
鬼部・銀司(ヤーマの眼・e01002)
深山・遼(結び目・e05007)
ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)
勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)
深景・撫子(晶花・e13966)
ミカ・ミソギ(未祓・e24420)
天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)

■リプレイ

●真夜中邂逅
 夜風が草木を撫で、星々は空の向こうで輝く。
 辺りを照らす明かりが風に合わせて揺らぎ、真夜中の草原に色を与えた。
「静かに星が瞬く良い夜ですのに……死神は無粋なことをしますわね」
 空を振り仰ぎ、深景・撫子(晶花・e13966)は小さな溜息を吐く。今夜、遥か過去に死を迎えて眠りについたはずの獣が呼び起こされる。
「サーカス団などと称し魂を弄ぶとはな。死神とは到底友になれる気がしない」
 深山・遼(結び目・e05007)は撫子の言葉に同意し、行く先を見据えた。其処にはゆらゆらと空を泳ぐ怪魚達が描く魔方陣が見える。
 ミカ・ミソギ(未祓・e24420)は件の白虎が既に蘇っていると察し、サーカス団を名乗る黒幕のことを思い起こした。
「その意味は鏖……だっけ? せめて遠隔操作して欲しいもんだよ」
「何を成そうという腹かは知らんが……、オレ達に察知された以上は悉く死ね」
 塵芥どもが、と鬼部・銀司(ヤーマの眼・e01002)は敵影を睨み付けた。そして、遼は用意していたライティングボールを数個、試しに投げてみる。
 ――グルルル。
 刹那、敵意の籠った唸り声が辺りに響き、ケルベロス達は身構えた。
 光によって相手が此方に気付いたのだと感じ、フリューゲル・ロスチャイルド(猛虎添翼・e14892)は縞々尻尾を逆立てる勢いで気を張る。
 白虎の毛並みは月と星明かりの下で煌々と輝いており、嫌でも目立っていた。
「わぁ、本当に白い虎のウェアライダーだ! でも、ご機嫌斜めみたいだね」
「眠っている魂を無理に呼び起こすなんて……」
 フリューゲルが敵からの殺意を肌で感じ取る最中、ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)は悲しげに双眸を細める。その間にも双方の距離は詰められていき、ケルベロス達はこの場で敵を迎え撃つことを選択した。
 勢門・彩子(悪鬼の血脈・e13084)は草原を駆け抜ける白虎の後ろに怪魚達が付いていることを確認する。
「確かに強そうだ。理性が無いのは本当残念だが……と、来るぞ」
 彩子が皆に呼びかけた次の瞬間、先手を取った白虎が地面を蹴り上げた。ライドキャリバーの夜影が仲間を守護する布陣に付き、天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)も盾になるべくと立ち塞がる。
「みんなを守るよ。絶対絶対、誰も倒れさせないように!」
 変異強化された白虎の爪が詩乃を抉り、激しい痛みが身体に巡る。だが、彼女の身は揺るがなかった。死んだあとまで誰かの思うままに動かされるのは哀れだ。それを倒すことでしか解放できないのは苦しかった。
 けれど、それが自分達にできることならば迷ったりなどしない。
 星の下で始まりを告げた戦いの中には、強い願いと意志が宿っていた。

●白き虎の爪
 響くは白虎の咆哮。視界に入るのは怪魚の怪しい揺らめき。
 銀司は死神達が動く前に地面を蹴り、光の剣を具現化した。差し向けた刃の切先は瞬時に敵に迫り、鋭い光が風を切る。
「刀勁……瞬迅ッ!」
 その一閃は怪魚を切り裂き、衝撃を与えた。だが、死神が放ち返した怨霊弾が銀司に向けられる。遼は即座に敵の動きに気付き、夜影に守護を願う。
 駆動音を響かせて駆けた夜影は銀司への攻撃を受け止めて守った。
 その間に遼は深山家に伝わる螺旋忍術を発動させる。
「助けを必要とする、包み込め……」
 黒猫ミトンを媒介として口寄せされた布が鮮やかに舞い、心地好い色や香りが周囲に広がった。仲間を包み込むのは癒しと破剣の力。
 更に撫子が雷壁を張り巡らせ、敵からの攻撃に備える。
「誰も倒れさせたりは致しません」
 前衛達に施された耐性はこれからの戦いに大切な加護だ。
 撫子からの援護を受けた彩子が死神相手に立ち回り、ミカも邪魔な怪魚を倒してしまおうと狙いを定める。
 誓いの心が溶岩に変え、ミカは敵の力を探った。
 仲間が死神を倒しに向かう間、虎を相手取るのはユイとフリューゲル、詩乃だ。
 ユイは現世に呼び起こされた白虎を瞳に映し、可哀想だと感じた。しかしすぐに佇まいを直したユイは優雅な仕草で以て敵に挨拶する。
「少しわたしと遊んでくださいね♪」
 次の瞬間、ユイが紡いだ祈りの詩が空の雲を散らし、境界から零れる光が銀閃となって降り注いだ。唯一、白虎に攻撃した彼女に注意が向くのは必然。
 しかし、踏み出したフリューゲルが白虎の前に飛び出す。
「無理矢理起こされて怒ってるのかな?」
 フリューゲルは獣耳をぴんと立てて敵の様子を窺った。敵に生気は無くとも、敵意は相変らずひしひしと感じる。ユイに向けられた一撃を受け止めるべく、フリューゲルはしっかりと地面を踏み締めた。
「負けないよ……!」
 激しい獣撃が少年を襲い、痛みが駆け巡る。されど少しも怯まず、フリューゲルは気力を保って自らを癒した。
 彼等が白虎を引き付ける様を横目に映し、彩子は敵の強さを実感する。
「強い実力は本当に尊敬できるからな。これだけ強ければ死神が使いたくなるのもわからないでもない」
 そう零した彩子だったが、だからといって死神の卑劣さを許した訳ではなかった。
 死神は白虎を守ろうとするらしいが、自分達の最優先は怪魚自身だ。片腕で軽々と鉄塊剣を振りあげた彩子は狙いをつけ、地獄の炎を敵に叩き付ける。
 続いて攻撃のタイミングを得た詩乃が駆け出し、摩擦で巻き起こした炎を纏った。
「フリューゲルさん、ユイさん、無理はしないでね!」
 虎を抑える二人に声をかけた詩乃は跳躍し、宙で回転を入れてから怪魚に蹴りを入れる。空中で揺らいだ敵の動きを見据え、ミカは水色の片翼を静かに広げた。
「さて、早めに片したいところだな」
 素早く地を蹴ったミカは光翼の出力を制御し、光粒子の刃を形成する。接敵と同時に身を翻したミカは敵とすれ違い様に刃で切り抜ける。宛ら輪舞を踊るかのような一閃は怪魚に大きな衝撃を与えた。
 銀司は今が好機だと感じ、阿修羅の名を冠する直刀の柄を握り締める。
「我が絶招……その身に刻むがいい! 地獄への片道切符だ……受け取れッ!!」
 鬼勁の名の元に地獄の炎と重力を織り交ぜ蒼い焔めいた氣が生まれた。左の掌打で直接相手に叩き込まれた氣は荒れ狂う龍となり、敵の身を破壊してゆく。
 それによって怪魚が倒れ、地に落ちた。
「先ずは一体ですわね」
 撫子は敵を屠った銀司に賞賛の眼差しを向け、残るもう一体を見つめる。
 此処までは上々だが気を抜いてはいけない。癒しを担い続ける覚悟を抱き、撫子は雷杖を握る手に力を込めた。
 遼は今一度、識布の加護を仲間に与えることで戦線を支える。
 夜影は遼の分まで攻撃に回り、激しいスピンで敵の足止めを行っていった。攻撃と支援を行う最中、遼の裡にふっと過去の出来事が蘇る。
「――、……」
 死神に良い思い出などなく、呼び起こされた白虎の境遇とて他人事には思えない。首を振った遼はすぐに思いを振り払い、言葉の代わりにしかと敵を見つめた。

●消えゆく死神
 戦いは続き、尚もユイ達は白虎に立ち向かう。
 同じ虎のウェアライダーに出会えたことは嬉しかった。しかし、彼が自分の意志で動いてるわけではないことがフリューゲルにとっては不満だ。
「そんな風に好き勝手動かされるのを望んでるわけじゃないんでしょ。どうせ起きるなら、ちゃんと起きなよ!」
 呼び掛けても意味が無いと分かっていても、フリューゲルはそう語りかけずにはいられなかった。ユイを庇い、自分の傷を癒し続ける少年の瞳は真剣そのものだ。
「あなたがどんなに強くても怯みませんよ♪」
 ユイは星天の力を宿す十字撃を放ち、白虎の動きを制約していく。だが、強いと予測されていた白虎はユイの攻撃をものともしていない。
 満月の力と共に吼えた白虎は凶暴性を増し、瞳を光らせた。
 詩乃もフリューゲルだけに護りを任せてしまってはいけないと感じ、白虎の前に回り込む。いつでも身を挺する準備は万端だと自負し、詩乃は兵装を展開した。
「胴部内蔵兵装起動、エネルギー充填完了、周囲環境クリアー。……コード・クルシス・クラスター、展開!」
 羽のように広がったパーツから光波が放射され、眩く輝く。
 更に撫子による癒しの電撃が戦場を舞い、仲間の体力を支え続けていた。支援も癒しも充分ではあるが、白虎を三人に任せ続けていては何れ戦線が崩れるだろう。
「攻撃は皆様にお任せ致します。ゆえに全力でお願いしますわ」
 撫子は対死神の仲間達に呼びかけ、白虎組への癒しに気を配る。
 ああ、と頷いた彩子は二体目の怪魚を視界に捉えた。宙にふわふわと浮く死神はこちらを翻弄するように泳ぎ回り、白虎を癒す。
「うざったい奴だな。死者がいないと何もできないんだろう?」
 彩子は振り回した鉄塊剣で遠心力を生み出し、旋刃の蹴りで以て敵を穿った。武器を利用して立ち回る彩子の動きを見遣り、ミカも一閃を見舞いに向かう。
 稲妻の突きを放ったミカの一撃が巡り、銀司も攻勢に移った。
「奔れ雷勁ッ! その真芯を錐穿つ……ッ!」
 刹那、放たれたのは雷突の刃。神速の突きによって怪魚の鱗が剥がれ落ち、空に舞うようにして散った。
 続けて夜影が機銃を掃射して死神を撃ち、動きを制する。
 遼は次で怪魚が死すと感じ、己の掌の上に氷結の螺旋を生成した。鋭い眼差しで以て敵を見据えた遼は氷縛波を解き放ち、ひといきに死神を穿つ。
 地面に落ちた怪魚は暫し苦しげに暴れた後、戦う力を失って消失した。それを確認した遼は踵を返し、白虎を相手取る仲間の元へ向かう。
「待たせたな」
「大丈夫だよ。私達もまだ戦えるから……!」
 遼の声に笑顔を返し、詩乃は呼吸を整える。白虎の攻撃を一身に受けていた詩乃達の体力は危うかったが、撫子の回復支援によって最悪の事態は免れている。
 銀司とミカも白虎に向かい、ユイは此処からが本番だと己を律した。
 彩子は悲しきウェアライダーの姿を改めて見つめ、幾度の攻防を経ても尚、有り余る力に感心する。
「流石に大したものだな。だが、このままにはさせない」
「うん、がんばって今度はゆっくり寝ててもらわないとだね!」
 大きく頷いたフリューゲルが雷の調べを紡いだ。雷帝の名を抱く稲妻が戦場に降りそそぎ、周囲を目映く照らす。
 それはまるで、終わりのはじまりを告げる音色のようにも聴こえた。

●凶星は散る
 ――誰かの命と魂と、心を守る。
 ケルベロスの力はそのためにあるもの。巡りゆく戦いの中、詩乃は強く思う。何度も攻防が重ねられ、その度に仲間や自分の体力が削られた。
 しかし、こちらだって確実に白虎の戦う力を奪っているはずだ。
「待っててね、今、助けるからね」
 死神の思い通りになんてさせないと意志を固め、詩乃は腕を振り下ろす。詩乃の一撃に合わせて彩子が精神を極限まで集中させ、爆発を起こした。
「今だ、頼む」
 彩子は仲間に目配せを送り、白虎の動きに出来た隙を報せる。それを受けた銀司は刃を差し向け、絶空の斬撃を見舞いに駆けた。
「貴様の痕、悉くを斬り開くッ!! 我が眼から……逃れる術無しッ!」
 銀司の刀閃が敵の傷を広げ、痛みを与える。更にその一撃はそれまで受けていた炎や足止めの力を増幅させ、白虎を苦しめていった。
 フリューゲルは良い調子だと頷き、ヘリオライトの曲を紡いでいく。
 ――君の未来へ届くように、強く光を放てたら。
「これは、光の意志と希望の歌……。ねえ、キミの意志はどこにあるの? 本当に、そのままでいいの?」
 問いかけたフリューゲルの眼差しは真っ直ぐに白虎を射抜いていた。だが、其処に答えが返ってくることはない。
 ミカは首を振り、白虎の意志は既に途絶えているのだと語った。
「……幾度でも巡り廻る」
 光粒子を制御し、その身に纏ったミカは魔力刃で敵を切り刻みに駆ける。光が巡ろうとも、かの命の輪廻は此処で終わり。そう告げるような一閃が放たれた。
 白虎の咆哮が響き渡り、ユイは双眸を緩める。
「もう、終わりにしましょう♪」
 あなたの力はわたしたちが覚え、受け継ぐ。安らかなる永き眠りを、と歌いあげたユイは白虎がもう二度と呼び起こされないよう願った。
 祈りの詩が敵を包み込んでいく中、遼は夜影を走らせる。炎を纏い突撃するライドキャリバーに合わせ、遼は青味を帯びた黒き刃に手をかけた。
「気高き白虎の魂よ、鎮まれ。また、別の世で会えることを祈ろう」
 黝仁の名を持つ刃が一瞬で切り抜かれ、静かな声が白虎に向けられる。剣閃は白き毛並みを切り裂き、血が夜の底に滴った。
 撫子は今こそ攻勢に移る時だと思い至り、黒水晶の花を掌の上に作り出す。
 荒く息を吐く白虎の命も、仮初めとはいえど風前の灯火。
「どうかもう一度、おやすみなさいませ」
 別れを告げる言葉と共に深い闇が敵を包み込み、力を奪い取る。全てを覆い隠す漆黒は深い夜の中に滲み――その色は、戦いの終わりを告げた。

●星と夜空
 そして、白虎の命は凶星の厄となる前に潰える。
「星の流れに乗って天へ帰れ、二度と他者に利用されぬようにな」
 銀司は剣を収め、死体に背を向ける。それから振り返ることなく立ち去った仲間を見送り、フリューゲルは白虎が倒れた場所を見つめる。
「終わったんだね……」
「ああ。還った、ってところか」
 ミカも無表情のまま頷き、夜風が吹く草原を見回した。
 戦う力を失ったと同時に白虎は消え去り、その場には静けさが戻っていた。
 ユイは力を封じ込めた刀を抱き、仕事が終わったのだと実感する。遼は夜影の機体を軽く撫で、烈しい戦いを思い返した。
 あの白虎を何処に連れて行こうとしたのか。彩子は死神達の行動に思いを巡らせながら、戦いが終わった安堵に胸を撫で下ろす。
 詩乃は消えた白虎を思い、せめて冥福くらいは祈ってあげようと思い立った。
「どうか、安らかに」
 祈りを奉げた春の夜空には幾つもの星が瞬いている。
 守ったものはひとつの命と平穏な時間。穏やかさに満ちた星の下では今宵もきっと、普段と変わらぬ静かな夜が巡ってゆく。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年5月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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