魂のお掃除魚はスイスイと

作者:stera

●緊急依頼!
「大変なことになったっスよ!」
 かなり慌てた様子の黒瀬・ダンテ。
 それもそのはずだ、デウスエクスの大軍勢が鎌倉に出現し、鎌倉周辺を瞬く間に制圧、このままでは日本全土を蹂躙してしまうかもしれない。
 戦う準備をして欲しいという……。
 それとは別に、もう一つ、重要な依頼があるという。
「それに合わせて、鎌倉市郊外で、死神が徘徊し始めてるみたいなんっスよ。鎌倉を取り戻すためにケルベロスが動けば、勝ち負けに関係なく、多くのデウスエクスが死ぬことになる……死神は、その死体を回収しようと集まってきているみたいっスね」
 鎌倉のデウスエクスを撃破して、鎌倉を取り戻したとしても、多くのデウスエクスの死体が死神に奪われてしまっては、意味が無い。
「ここにいるケルベロスの皆さんには、鎌倉周辺に潜伏する死神を探し出し、撃破或いは撤退させて欲しいんっス。よろしく頼みます」 

 ダンテが言うには、深海魚型の下級の死神が、鎌倉市の郊外に出現し潜伏しているらしく、潜伏した死神の位置を、ある程度割り出す事ができたので、可能な限り撃破して欲しいそうだ。
 死神は噛み付き・怨霊弾といった攻撃に加え、泳ぎまわることで回復もするらしい。
 しかし、鎌倉市はすでに敵地となっている為、負傷者が多くなった場合、作戦途中でも鎌倉市の外に撤退する必要があるという。
「負傷者が多くなりすぎて、鎌倉市内からの撤退に失敗してしまうと、今後の作戦に支障が出てしまうかもしれないんで、その辺りが難しいところっスね」
 続いて、ダンテは敵について分かっていることを詳しく話しだす。
 深海魚型の下級の死神は、1箇所に3~5体程度が固まって潜伏しているという。
「みなさんに行ってもらいたい場所は、この休校になった小学校っス。少し前に廃校になったんスけど、ここの3箇所に分かれて合計12体の死神が潜伏してるっス。体育館・職員室・プールの3ヶ所っスね」
「鎌倉は既に敵地っス……死神の戦闘力を侮る事はできないし、状況もかなり厳しいっス。でも!」
 ダンテは、ケルベロスの仲間達をシッカリと見て、確信したように断言する。
「ケルベロスの皆さんなら、必ず死神の陰謀を阻止する事が出来る。俺はそう信じてるっス! 全員で協力して、必ず生きて帰ってきてください」


参加者
ルトゥナ・プリマヴェーラ(陽憐花・e00057)
広井・世界(井の中のイタチ世界を廻る・e00603)
アルトゥーロ・リゲルトーラス(エスコルピオン・e00937)
神崎・修一郎(地球人の刀剣士・e01225)
ソルシエ・マオ(夢渡りの妖精・e01336)
セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755)
タクティ・ハーロット(碧の悪戯龍・e06699)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)

■リプレイ

●潜伏する死神
 大混乱の鎌倉市内。
 それとは別に、郊外にあるこの廃校にも敵の手が伸びていた。
「まさかケルベロスウォーが発動されるなんてな」
 校舎を前に、セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755)が言った。
「ここでの戦い、遂に始まった鎌倉戦の前哨戦のようなもの……ここで失敗するわけにはいかない」
 神崎・修一郎(地球人の刀剣士・e01225)は言う。
「懲りもせず死神魚が湧いて出やがったとは。ケルベロスとデウスエクス、どちらが死のうとその死体を回収しようっていう魂胆が気に入らねぇな」
 アルトゥーロ・リゲルトーラス(エスコルピオン・e00937)はそう言って帽子をかぶり直す。
「ホント、セコい考えだぜ!」
 広井・世界(井の中のイタチ世界を廻る・e00603)も同調するように言う。
「戦いに死は避けられないものだけど、黙って見ていられないわ。それから此処には奪う命はないってこと、教えてあげないとね」
 穏やかな品のある口調でそう話す、ルトゥナ・プリマヴェーラ(陽憐花・e00057)。
「鎌倉を取り戻すために、死神の思い通りにはさせません!」
 決意を新たに、イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)はそう言って斬霊刀を握る。
「確認だぜ。死神をプール、体育館、職員室の順で撃破していきたいと思うんだぜ。これでいいか? だぜ」
 タクティ・ハーロット(碧の悪戯龍・e06699)の言葉に仲間達は頷く。
「食べれるお魚さんだったら良かったんですけどネ~」
 ソルシエ・マオ(夢渡りの妖精・e01336)が、ぼやくように言った。
「しょうがないので、サ、早くお魚さん狩り頑張りまショウ!」

●プール
 ケルベロスの仲間達が最初に向かったのは、校舎とは別の外にあるプールだった。
 グラウンド側から回りこみ、一気にプールサイドを目指す。
 ケルベロスの仲間達がプールサイドに姿を表したその時だった。
 ドン!
 ドドン!!
 先手を取ったのは死神の方だった。
 ケルベロスの仲間達が現れてすぐ、怨霊弾での容赦無い攻撃が彼らを襲う。
 今回敵の数が多いということで敵の合流や逃走には気をつけていたものの、隠れることなく正面からの突入する作戦は、プールという見晴らしのいい外での戦闘において、魂を狩るため索敵中の死神たちに、先にこちらの存在を気づかせ臨戦態勢を取らせる時間と余裕を与えてしまったようだ。
「危ない!!」
 とっさに、仲間達をかばうルトゥナ。
「悪りぃ、大丈夫かい?」
「今は護るのが私の仕事ですもの、これくらいどうってことはないわ」
 アルトゥーロが心配そうにそう尋ねると、ルトゥナはそう微笑みながら言葉を返す。 
「くっ…… 気づかれていたか」
 肩を押さえ、修一郎は現れた敵を睨みつける。
 こちらが動くより早く、待ち受ける形での攻撃。
「おっと、そっちに攻撃は通さないんだぜ? 残念でしただぜー」
 軽くそう言って仲間に向けられた攻撃を肩代わりしたタクティ。
 ディフェンダーの役割を担うルトゥナとタクティの二人が庇ってもなお、すべての攻撃を防げるわけはなく、仲間達にとっては苦しい出だしとなった。
 深海魚のような姿の死神。
 プールに出現した死神たちは4体、中空を、スイスイと泳ぎまわる。
 ただ、観賞魚が優雅に泳ぐ姿には程遠く、敵は死の海を泳ぐ死神、不気味な身体は逃れられない死の恐怖を具現するかのようにどす黒く、口には鋭利な歯が並んでいる。
「うう、幾らお魚の形をしていても、美味しそうには見えませんね……」
「あの泳ぐ姿……猫心をくすぐられますネっ!」
 イリスは顔をしかめるも、ソルシエは喜々としてそう答えた。
 イリスは、傷ついた仲間達のため回復を優先させオラトリオベールを使う。
 修一郎は、キズをものともせず、敵の懐に駆け込んでいく。
 滑りやすい足場をシッカリと踏みしめ繰り出す一撃。
 続けて、アルトゥーロのティヘラ・デレーチャとティヘラ・イスキエルダの銃口が火を噴いた。
「お待たせしまシタ、さぁ、世紀のビックリショーの開幕デス♪」
 ソルシエがニャンとまるで招き猫がするように手招くと瞬く間に死神たちの身体が炎に包まれる。
 弱っている1体に狙いを定める世界。
「死にたくなければ避けやがれ! シビれさせてやるよ!!」
 空中に突如稲妻がはしる。
 眩い稲妻は敵めがけ進み、死神は慌てて回避を試みるも、稲妻がその身体を撃ちぬくと同時に真っ二つに両断され息絶えた。
「俺の炎は敵を焼くだけじゃない。癒しの炎、見せてやるぜ!」 
(「スーパーケルベロスな俺は、前衛だけじゃなく後衛もできるマルチファイターなんだぜ。俺がいる限り、負傷で撤退なんて事にはさせないさ。全員支えきってやる!」)
 セラスの生み出した白い浄化の炎は、味方の盾となり傷ついていたルトゥナを包み込みその傷を癒やす。
 ブンとタクティの拳が唸る。
 魂を喰らう降魔の一撃が、死神の腹部に叩きこまれ、敵は力尽き倒れた。
「おやおや、もう終わりなのかだぜ?」
 本来のサキュバスとしての姿に戻ったルトゥナは光り輝く呪力をのせた斧を振り下ろす。
 修一郎は、敵の動きに集中しながらも、村正を正面に構えスッとその瞳を閉じる。
 瞑想し呼吸を整え……その心が研ぎ澄まされると同時に瞳を開く。
「一ノ太刀……紅葉!」
 一刀両断、死神は逃げるまもなく両断され力尽きた。
 残り1体、イリスは斬霊刀をまっすぐ構え、その切っ先から時空凍結弾を撃ち出した。
 間髪おかず、アルトゥーロの放ったヘッドショットが死神の眉間を撃ちぬいた。
「ここは制圧できたな。よし、次だ」
「さぁさぁ、ドンドンお魚狩り行きますヨ~♪」

●体育館
 仲間達は、急ぎ体育館へ向かう。
 無傷というわけには行かなかったものの、まだ余力は残っている。
 アルトゥーロは言った。
「各個撃破できるのは、ありがたいな」
「誰かがやられてサルベージなんてされたら洒落にもならないんだぜ、憂いはできるだけ多く取り払っておくに限るんだぜ」
 タクティは、そう独特の口調で答えた。
 グランドを駆け抜け、仲間達は体育館の両扉を開け放ち、中へと入る。
 中には、先程よりも1体多い5体の死神が。
「神崎修一郎……参る!」
 その数にも、まったく怯むことなく前へ飛び出す修一郎。
 仲間達もそれに続き攻撃を繰り出す。
 死神が、大きく口をあけタクティに噛みついた。
 脱力感に襲われるが、腕でふりはらい引き剥がす。
 遮蔽物もなく見通しも足場もいい体育館は、戦いやすい場所ではあった。
 ただし、身を隠す場所も無いため、しだいに混戦の様を呈す。
(「ここは着実に、連携を取り数を減らそう」)
 アルトゥーロは銃を構える。
「『蠍』には毒がつきものさ!」
 Picadura de Escorpion(ピカデュラ・デ・エスコルピオン)、必殺の一撃が撃ち込まれる。
 ソルシエは、黄金の果実を使い、味方の耐性を強化させる。
 世界は、近づいてきた敵をレゾナンスグリードで捕縛した。
 尾びれをブラックスライムに掴まれ、まさに魚のようにビチビチと跳ねるように動く死神。
 イリスは、その動きを封じられた1体を見逃すことはなかった。
「光よ、彼の敵を縛り断ち斬る刃と為せ! 銀天剣・零の斬!!」
 降り注がれた光がイリスの翼と刀に集まる。
 燦々と輝く刃が敵の体を捉えると、跳ねるように動いていた敵の動きがピタリと止まり……翼からあふれた光は輝く数本の刃となり、敵の体に突き刺ささり倒した。
 休むことなく戦い続けるケルベロスの仲間達、上手く連携し互いに支え合うことで敵の数を減らしていく。
 竜殺剣ラグナブレイズを手に気合を入れ、叫ぶセラス。
「焼き魚にしてやるぜ! うらあ!」
 セラスは毒により弱っている一体をブレイズクラッシュで仕留めた。
「負けられねーよな。だって俺達は、ケルベロスなんだから!」
 パッとした笑顔で微笑みながらそう言ったセラス。
 ルトゥナが、バサリと背に生やしたコウモリの羽を羽ばたかせる。
「私の大切な、可愛い人達を護るために」
 サキュバスミストでの回復を試みる。
 5体の死神を相手に、ケルベロスの仲間達は攻防を繰り返し、なんとか最後の1体にまで敵を追い詰めた。
 残り1匹となった死神は、攻撃するかとおもいきや、開け放った体育館の両扉から、外へと逃げ出そうと泳ぎだす。
 その時、タクティのミミックがガブリと尻尾に噛みつき逃走の邪魔をする。
 世界のボクスドラゴン『ディア』も、ブレスを吐いて敵を足止めた。
 追撃する形で、ケルベロスの仲間達は最後の1体を次々と攻撃し、体育館からも死神の姿は消える。

●職員室
 ドドーン!
「あぁっ!」 
「ぐぅ!!」
 死神の放った怨霊弾が、炸裂した。
 それと同時にこれまでずっと仲間達を支えていたルトゥナとタクティの二人が弾き飛ばされる。
「あと何匹やるんでしタっけ? 若干飽きてきましタ~」
 グテっとした調子でソルシエが言った。
 『飽きた』という表現だったが……実際、プール・体育館の2箇所を正面から戦い落としたケルベロスの仲間達、もうすでに余力が残されていなかった。
「く、まだ、やれ、る……」
 セラスの回復を待たず、最前線で戦っていた修一郎もまた、敵に噛みつかれ膝を折る。
「くそ!」
 セラスは、悔しさに唇を噛んだ。
「……撤退、しましょう」
 イリスが、そう口にした。
 もう、すでに半数が戦える状態ではなくなっていた。
 敵の制圧下にある鎌倉で、この場所を担当するケルベロス全員が戦闘不能に陥れば、ここから撤退することは容易ではなくなる。
「鎌倉の開放作戦もあります。今ここで撤退できないような事になれば、それこそ大変なことになるでしょう」
「……態勢、立てなおそうぜ! 半分以上ぶったたいたんだ。一旦引いて次の作戦に備えようぜ。逃げるが勝ち、って言うじゃん?」
 世界は言った。
「悔しいけど、そうしよう。歩くことは出来そうか? 一人で無理なら肩貸すぜ?」
 セラスが言った。
 リロードしたリボルバーの銃を構え、アルトゥーロは敵を足止めるため引き金を引いた。
「今だ、走れ!!」
 こうして、ケルベロスの仲間達はあと一歩の所でやむなく戦場を後にする。
 魂を狩るため集まっていた死神も、その過半数の討伐に成功したことを考えると、完勝とはいえなくとも、作戦自体は成功したと言える。
 すべては、次に繋げるため……仲間達は、安全な場所へと撤退したのだった。

作者:stera 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。