海眺に響く咆哮

作者:幾夜緋琉

●海眺に響く咆哮
「皆さん、集合して頂き、ありがとうございます」
 セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に深く頭を下げると、時間を惜しむかの如く、早々に説明を始める。
「緊急で集まっていただいたのはほかでもありません。デウスエクスの大軍勢が、鎌倉に出現したのは、みなさんも知っていると思います。その後、出現したデウスエクス達は、鎌倉周辺を瞬く間に制圧……鎌倉を完全に制圧したデウスエクスが、日本全土を今後蹂躙しかねません」
「そして、この大侵攻に呼応するかの如く、各地に封印されていたドラゴン等が動き出し始めている様なのです。皆さんには、このドラゴンを倒してきて頂きたいのです」
「ドラゴンの全長は10m程度で、通常であれば、勝ち目はありません。しかし、今はグラビティ・チェインの枯渇により、様々な機能制約を受けており、今ならまだ、勝ち目はあります」
「ドラゴンはグラビティ・チェインの枯渇を補う様、町を破壊しながら人の多い方へと歩き、人を殺戮しています。先日のドラゴンの出現は、この前兆だったのかもしれません」
「幸い、この前兆に対処出来ましたので、既に多くのドラゴンは撃破されています。数は決して多くはありませんが……急ぎ、現場に向かい、ドラゴンを撃破してきて頂きたいと思います」
 そして、セリカは詳しい作戦概要の説明を続けて行く。
「ドラゴンは、千葉県、九十九里浜に現れた様です。そして九十九里浜から鎌倉の方へと現在向かっています。それを皆さんには、阻止して頂きたいと思います」
「ドラゴンは海岸線に居る海水浴客に加え、九十九里浜の市街地に住む方々を殺戮し、グラビティ・チェインを補充しています。なので、一般市民達の避難誘導と共に、ドラゴンを迎撃して頂きたいのです」
「尚、作戦が終わった後は、ヘリオンに乗って、すぐに鎌倉へと向かいます。鎌倉での戦いには十分間に合いますので、その点はご安心ください」
 そして、続けてセリカは、敵の戦闘能力についての説明を続ける。
「今回相手にするドラゴンは、背中に氷の塊の様なモノがついていて、どうやら氷のドラゴンブレスを吐く事が可能な様です。絶対零度の氷のドラゴンブレスは、下手に喰らえばその氷に捕らわれかねません」
「また、その尻尾を振るい、近くに居る相手をまとめて薙ぎ払うドラゴンテイル、爪を超高速で貫くドラゴンクローの攻撃手段があります」
「一撃一撃が強力な相手ですし……ドラゴンテイルで市民、街の方々纏めて薙ぎ払われる可能性があります。市民達の避難をしっかり行うよう、改めてお願いします。街自信は破壊されてもヒールで治せますので、ご安心ください」
 そして、最後にセリカは。
「ドラゴン……強力な相手であるのは間違い有りません。ですが……皆さんなら、きっと勝利を収められる、と信じています。どうか、宜しくお願いしますね」
 と、頭を下げた。


参加者
青葉・幽(ロットアウト・e00321)
小日向・コブシ(陰る太陽・e00425)
明石・光也(石は友達な巫術士・e02170)
逢魔・琢磨(孤高の放浪者・e03944)
芦屋・雲雀(百折不撓・e06991)
神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)
立花・彩月(戦場は写さないカメラ女子・e07441)
パティ・ポップ(溝鼠行進曲・e11320)

■リプレイ

●龍の暴虐
 デウスエクスの大軍勢が、鎌倉へと近づきつつある……緊迫せし時。
 ケルベロス達が向かうは、千葉県は九十九里……そこに現れし巨大な体躯のドラゴン。
 いや、此処だけでは無い……様々な場所で、散発的に同じような事件が起こっているという。
「同時多発攻撃だなんて、小癪な真似をしてくれるわね。それにこの後鎌倉での戦いも控えているけど、温存しながら戦える相手でも無さそうね」
 唇をぐっと噛みしめる青葉・幽(ロットアウト・e00321)。
 ……その言葉に、神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)と、パティ・ポップ(溝鼠行進曲・e11320)が。
「なんというでちゅか。今回、各地に敵が大量発生していて、さらに鎌倉制圧だなんて、どうなってるんでちゅ?」
「そうっすねぇ……ドラゴンって、あのドラゴンっすよね? ……やっとドラゴンを相手に出来るんっすね……」
「そうでちゅ。まー、あちしたちはあちしたちで、目の前のドラゴンを何とかしないとだめでちゅわね? しょっぱなから、こんな巨大な相手でちゅか……でも、やるなら、やるしかないでち」
 と、その言葉に逢魔・琢磨(孤高の放浪者・e03944)、芦屋・雲雀(百折不撓・e06991)、立花・彩月(戦場は写さないカメラ女子・e07441)が。
「ドラゴン……誰かを傷つけるなら、何度だって立ちはだかってやる。それが誰かを護るって決めた俺の信念なんだ!!」
「そうだね。竜牙兵と戦った後に竜と戦えるなんてね♪ 弱っているとは言え、相手にとって不足なし。私の技が竜相手にどこまで通じるか試してやる!」
「そうね……このままでは、一般人の人達も殺されかねない。必ず、護り切ってあげましょう」
 そんな三人の高い意識に、明石・光也(石は友達な巫術士・e02170)と小日向・コブシ(陰る太陽・e00425)も。
「そうだな。ドラゴンには寝起き早々悪いけど、退治だねぇ」
「ここであのデカブツを仕留めます。が、まずは避難誘導ですね」
 真っ直ぐに、前を見つめる二人。
 目の前には、半ば混乱している、市民達の姿。
 そして、覚悟を決めるが如く甘酒を口にし、儀式を行う結里花……そして、一端目を閉じ、気合いを込める。
「……さぁ、いきましょう」
 結里花の言葉に琢磨が頷き。
「ええ。最前線は頼みます。俺達は後方で避難誘導を!」
「解りました! そちらも気をつけて、避難誘導宜しくお願いしますね」
 彩花が頷き、そして幽、コブシ、琢磨の三人は、一般市民達の避難誘導へと向かい、残るケルベロス達は、ドラゴンの下へと急行するのであった。

●全てを壊す
 そして、ドラゴンの下へ。
 ドラゴンは海岸を上がり、海岸線の人達へ、襲いかかろうとしている。
 そんな一般人達に対し。
「皆さん、ケルベロスが来ましたよ! もう安心ですッ!! 今は俺達に従って、ドラゴンと反対側に逃げて下さい! 大丈夫、今他のケルベロスが足止めに向かってますからッ!!」
「そう、アタシらが時間を稼ぐ。今のうちに逃げなさい!」
 琢磨、幽が強い口調で、ケルベロスコートを翻しながら、割り込みヴォイスで市民達の避難誘導を開始。
『ケ、ケルベロスが来てくれたぞっ!!』
『助かった、に、逃げるぞー!!』
 と、市民達は混乱の中ではあるが、ケルベロスが来たことに対し、僅かに歓声のようなモノがあがり、大人しくその指示に従っていく。
 勿論、そんな一般人達が逃げるのを逃がさん、とばかりにドラゴンは、ウゴゴォォ、と咆哮を上げて威嚇。
 ……そんなドラゴンの前には、足止め班のケルベロス達が立ちふさがり。
「誘導は三人に任せて、我々は竜を抑えましょう。一頭目、確実に討滅します。神宮寺流戦巫女、結里花参ります!!」
 と威勢良く声を上げ、ドラゴンに戦線布告。
 その左右にずらりと雲雀、光也、パティが並び、半扇の形で対峙。
「さぁ……行くぞ! 咲き乱れ、紅に染まり、沈み逝け! 万紫千紅!!」
 と先陣切ったのは雲雀。
 鋭い刃となったブラックスライムと、両手の刃で切り刻み、怒りを呼び起こす。
 更に結里花が熾炎業炎砲を叩き込めば、彩月が絶空斬、光也は。
「影よ、彼のモノを呪縛する沼と成れ」
 と、影沼ノ呪縛で、ドラゴンの足止め。
 ……そしてそんな仲間達の攻撃の間に、すばしっこくドラゴンを抜け、後方に進んだパティは。
「ドラゴン、真後ろは見えなさそうでちゅから、真後ろからの攻撃を叩き込むでちゅ!」
 と、背中を駆け上がって、獣撃拳を叩き込む。
 そんなケルベロス達の攻撃に、高く咆哮を上げ、そしてドラゴンはその爪の一閃で攻撃。
 大きなモーションから繰り出される攻撃……下手に喰らえば、即重傷をも免れないだろうが、鋭くその動きを察知した雲雀が。
「来るぞ!」
 と叫び、その命中地点から身を翻し、躱す。
 ……一般人の避難誘導と並行しての、ドラゴンの足止め……ケルベロス達は二手に分かれて対応。
 一般人は幽、コブシ、琢磨の指示に従い、続々と避難していく。転んだり、足を挫いたりしてしまった人もいるが。
「大丈夫ですか? ほら……気をつけて下さいね」
 とコブシが手をさしのべ、ルナティックヒールで治療しつつ、直ぐ逃げるのを促していく。
 対するドラゴンは、足止めする残るケルベロス達の包囲網を打ち破ろうと、攻撃し続ける。
 それに、結里花、彩月の二人は主に回復、残る雲雀、光也、パティの三人が様々なバッドステータスを付与するようにして、ドラゴンの機動力、攻撃力を削ぐように動き回る。
 ……そして避難誘導し初めてから、5分程経過。
 やっと、海岸線にいた一般人達は一通り逃げおおせた事を確認すると。
「避難誘導完了、ドラゴン退治に加わりますよっとッ!」
 と、琢磨の言葉に頷き、避難誘導班もドラゴンの元へと急ぐ。
「避難完了しました。おれも戦列に加わります」
「さぁ、真打ち登場よ。目ン玉ひん剥いてよく見てなさい」
 コブシに続け、幽がドラゴンに向けて、強く強く、声を張り上げる。
 そんなケルベロス達に対して、ドラゴンは。
『グゥォオオオン!!』
 轟く咆哮を上げて、大きく息を吸い込む様な挙動。
 その挙動を鋭く察知した彩月が。
「皆さん、ドラゴンブレス、来ます!」
 叫び、警戒を促す。
 そして、次の瞬間……ドラゴンの氷のブレス。
 ケルベロスの目前を、一気に凍り付かせていく。
「っ……ふふふ、あはははは……!」
 そんな竜の攻撃に、笑う雲雀。そして真っ直ぐにドラゴンを見据えると。
「いいな、とてもいい! 私よりも強いという事は、お前を倒した時、私は今よりも強くなっているという事!! さぁ、私の糧となれ!!」
 と笑い、そして武器を構えて接近。
「避難も完了した事だ。もう何も心配する事は無い。今迄の分、存分に切り刻んでやる!」
 と言い放ち、身体を駆け上がり、ブレスにより開いた口へ血襖斬りの一撃を叩き込む。
 更にコブシ、幽の二人も、両サイドよりドラゴンに近接。
「ビビる事は無いわ。デカいって事は、当てやすいって事よ!」
「さぁ、おれの攻撃、見切れますか?」
 幽がキャバリアランページ、そしてコブシは絶空斬をその身体に穿ち、剣を深く突き刺す。
 大きくその身体を震わせ、咆哮、そして……振り払おうとするドラゴン。
 幽、コブシ、雲雀が一端その一撃に振り解かれるが、でもすぐ光也、パティが。
「爬虫類ごときに、哺乳類が負けるわけにはいかないでち!!」
「意志よ、彼のモノを爆破せよ」
 ショックドライブに、サイコフォース。
 攻撃命中と共に、バッドステータスを蓄積。
 スナイパーについた琢磨はポジショニングを使いつつ、メディックの彩月、結里花は。
「ナウマグ・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!」
 と雷光活性陣の詠唱と共に回復、更に彩月が癒月桜吹雪で更にヒール。
 喰らったダメージを、しっかりと回復していく。
 ……次の刻、コブシは先ほど刺した刀を足場にし、ドラゴンの目へとジャンプ、月光斬の一撃を叩き込んで行く。
 そして幽も。
「規格外の相手なら、企画外の一撃がお似合いでしょ? リミッター……強制解除!」
 と全力のデモリッションオーバードライブを、脳天に叩き込む。
 流石に脳髄に突き刺された一撃は、
 渾身の一撃……ドラゴンが反撃のかぎ爪で攻撃してくるが、ヒットアンドアウェイでギリギリ躱す。
 そして入れ替わるように、光也、パティが続く。
「縄よ、彼のモノを縛り上げろ」
 と、光也が更に禁縄禁縛呪で縛り上げていくと、パティが御霊殲滅砲。
 ……と、その一撃が決まった瞬間。
『グゴォオオオ……!!』
 今迄とはちょっと違う、咆哮。
 その咆哮と共に、ドラゴンの動きは、一切の守りを捨てた、暴虐者となる。
 熾烈な攻撃が、ケルベロス達の体力を大きく奪い去る。
 が……その猛攻を、コブシ、雲雀はひたすら耐える。
 そして結里花、彩月が二人の戦線を確実に維持する様に回復し続けて行く。
 どうにか戦線を維持しつづけ……数分経過。
 ドラゴンの勢いが、次第に弱まりつつある瞬間。
「今だ、一気に仕掛けるぞ!」
 雲雀の号令一下。
「中々にタフですが……流石にそろそろ倒れて貰いましょう。決めます!」
 コブシの月光斬が、もう片方の目を貫くと……両目から血の雨を流し、苦しむドラゴン。
 大ぶりの攻撃は、もはや中々当たらない……そして。
「さぁ、これで最後だッ!! ここに居る仲間も、後ろに居る人達も、皆を護ると誓う! だから応えてくれ、銃爪<ヒキガネ>の力ッ!」
 琢磨の銃爪に未来を託してが、ドラゴンの口を穿ち貫き、その身体が後方へと倒れ込む。
 そして……。
「漆黒よ、彼のモノを喰らえ!」
 光也のレゾナンスソードが、ドラゴンを貫き……ドラゴンは断末魔の咆哮と共に、崩れ墜ちていった。

●次なる戦地へ
「やりましたね」
「……ふぅ、お疲れ様……と言いたい所だけど、今日はあんましモタモタしてられそうにないわね。鎌倉がヤバイらしいし、早く戻って食い止めないと」
 コブシと幽の言葉に。
「そうでちゅね。ヘリオンが迎えに来る前に、ヒールをかけるでちゅよ」
「そうっすね。ヒールドローンで町を直したら……次は鎌倉っすね。皆さん、気をつけて行くっすよ!」
 パティ、琢磨が頷く。
 怪我人や町にヒールドローンやルナティックヒールで回復し、町の人達を癒していく。
 一通り癒やし終わった頃には、ヘリオンの近づく音が聞こえてくる。
「皆さん、ヘリオンが来たっすよ! 急いで鎌倉に向かうっす!!」
 と、結里花が皆をせかすように、ヘリオンへと乗車させる。
 大きな音と共に、空へと飛び上がるヘリオン……窓から地上の光景を見下ろしながら、幽が。
「……それにしても、こんな上等かましてくれちゃって。一体、どう落とし前着けてやろうかしらね」
 唇を噛みしめながら呟く幽。
 そして灼滅者達は……鎌倉へと急ぐのである。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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