灼熱のドラゴンを討て

作者:ほむらもやし

●事態は急を告げる
「緊急事態です。皆さん、落ち着いて聞いて下さい」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は厳しい表情で話を切り出すと、デウスエクスによる鎌倉への大侵攻に呼応して、日本各地に封印されていたドラゴンが動き出したと告げる。
「ドラゴンの全長は10m程度です。封印の解けた現時点では、グラビティ・チェインの枯渇により、様々な機能的制約を受けていますので、撃破は可能です」
 しかし、グラビティ・チェインを得るために、ドラゴンが動き出すまでの猶予は少なく、機を逃さないためには、今から現地に向かう必要がある。
「今にして思えば、先日のドラゴンの出現は、今回の予兆だったのかもしれません」
 だとすれば、先日のケルベロスたちの活躍により、復活した数多くのドラゴンの撃破に成功している為、その数は多くないと言えるほどに減少している。
 
「ドラゴンが出現するのは、佐賀県佐賀市にある県立病院の建設工事現場です。周囲は平地で水田が多く、クリークと呼ばれる用水路もあちこちにあります。建築物は木造家屋に混じって低層のビルが少しあるぐらいですが、交通の便はよく、街の中心部には一直線に伸びた国道で繋がっています」
 ドラゴンはグラビティ・チェイン収奪の目的を目的として、付近の家屋を壊した後、人々の姿を求めて、国道沿いに街の中心に向かうと予想される。だから、迎撃する場所を考えた上で撃滅して欲しいと続ける。
「それから佐賀での作戦終了後は、ヘリオンで速やかに鎌倉に向かって頂きます。厳しい戦いが続き、恐縮ですが、どうかよろしくお願いします」
 そして、スケジュールが厳しいことへの責任を感じてか、セリカは丁寧に頭を下げる。
 
「さて、復活直後のドラゴンはグラビティ・チェインの枯渇により、飛行することもできませんが、究極の戦闘種族とも言われる敵です。その戦闘力を軽く見てはいけません」
 能力が限定されているとは言っても、爪や牙による斬撃や巨体や尻尾から繰り出される打撃、また吐き出される灼熱の火焔ブレスの威力は、人々を殺りくし、街を破壊し尽くすには余りある。
「あと、ドラゴンが出現する県立病院の建設現場は基礎工事の準備が始まったばかりの状態ですので、ほぼ更地と考えて良いです。既に避難指示は発令され、一般の人々は避難済みです。国道や付近の路地を車両が通行する可能性もありませんから、戦いを有利にするためなら、周囲の建物は勿論、道路や橋などのインフラを活用しても問題はありません」
 家屋やビル、道路、橋などのインフラが破壊されてもヒールを使えば、なおすことが出来るので、街への被害は考慮せず、戦闘に勝つために全力を尽くすことが出来る。
「確かにドラゴンは強敵です。ですが、殺りくを未然に食い止めるだけではなく、心置きなく鎌倉での決戦を迎えるためにも、この戦いは重要です」
 危機的な状況が迫っている。これを対応するには、ケルベロスの力を以てするしかない。


参加者
アイリス・グランベール(烈風の戦姫・e00398)
ダダル・ダル(ウェアライダーの店長・e00561)
椏古鵺・笙月(銀晶麗烏・e00768)
睦沢・文香(ブレイクスルービート・e01161)
ヴァジュラ・ヴリトラハン(黒鉄の竜刃・e01638)
海鳴・竜樹(ダブルガトリング・e02914)
黒間・彼方(戦場の賑やかし役・e04286)
芳賀沼・我奴間(支離滅裂な探求者・e04330)

■リプレイ

●目覚めの時
 天高く炎が立ち登り、閃光とともに衝撃波が来る。
「危ない、避けて下さい!」
 黒間・彼方(戦場の賑やかし役・e04286)の叫びに続いて、津波のように押し寄せる炎が地を撫でた。
「炎のほうは手を打ってみるでっす。でも、巨体からの質量攻撃はどうしようもないでっす」
「ありがとう、できれば此処で食い止めたいですね」
 焦げた臭いが鼻を突く、ダダル・ダル(ウェアライダーの店長・e00561)が発動した黄金の果実の聖なる光を受けながら、海鳴・竜樹(ダブルガトリング・e02914)は、ゴーグル越しにドラゴンの姿を見定め、ふたつのガトリングガンを乱射する。もうすぐ穂を出しそうな稲の無事を願いながら。
「この竜殺し、命を賭して挑ませて頂く!」
 竜樹の声に応えるように、ヴァジュラ・ヴリトラハン(黒鉄の竜刃・e01638)が叫びを上げる。ドラゴンの吐き出した炎によるダメージを受けた者もいない。状況を瞬時に判断して駆け出す。
「灼熱の竜よ。我が地獄の炎を味わうがよい!」
 焼け焦げた工事現場の地面を駆け抜け、おそらくは目覚めて間もないドラゴンとの距離を一挙に詰め、炎を纏わせた暴風龍ルドラ――と名付けた鉄塊剣を叩きつける。炎がぶつかり合い、そして爆ぜる。鉄塊剣が跳ね返る激しい衝撃は手に伝わってくるが、与えたダメージは期待していたものよりも、ずっと小さい。
(「思った通りの強敵です」)
 アイリス・グランベール(烈風の戦姫・e00398)の握る斬霊刀が霊気を帯びる。
 非物質化された刃が唸る、――必ず倒してみせる。強い決意と共に刃を振り抜けば、アイリスの闘争心に応じるようにドラゴンの鱗と刃の先端と衝突して、火花を散らしながら、一筋の傷を刻む。
 ドラゴンの姿を遠目に見定めて、椏古鵺・笙月(銀晶麗烏・e00768)は、微かな吐息で、呼吸を整える。
「かすみまぼろしげんえいなるゆうげんにしてゆうえん」
 穏やかに紡がれた詠唱と共に、龍香炉より出でるのは、たゆたう妖しき紫煙。
「……汝を彩るは妖しき雲霧『幽艶煙羅』甘美なる夢想に沈め」
 続く言葉に導かれ、放たれた微睡をもたらす甘美な香りがドラゴンの巨体を包む。そして笙月がその効果を確信した瞬間、巨翼の羽ばたきにより紫煙は霧散させられる。
「思惑通りには、ならないと言うわけですか」
「流石じゃ。やりおる。やりおる。真っ向勝負は、やはり、きついものがあるかもしれんのう」
 芳賀沼・我奴間(支離滅裂な探求者・e04330)が、ハートクエイクアローを無造作に放つ。それは未だ出現の余韻を残すドラゴンが薙いだ翼に、軽く払い落とされた。
 後に控える戦いのことを考えれば、無理は出来ない。だが、この戦いを取り零せば、後に起こるグラビティ・チェインの略奪によって引き起こされる虐殺や敵の集結に繋がってしまう。
 飛ぶには力が足りないと気づいたのか、ドラゴンは周囲を見渡すと、横倒しになった重機を踏みにじって、ゆっくりと歩き始める。向かおうとする方向は定かではないが、近距離からグラビティを放ったアイリスやヴァジュラの方に注意が向けられているように見える。
「まずはこの一戦、無事に勝ちましょう」
 睦沢・文香(ブレイクスルービート・e01161)は、自分に言い聞かせるように呟き、バイオレンスギターに手を掛けると、深呼吸と共に軽く弦を弾く、戦場には不似合いな澄んだ音色が響くかに思われた刹那、旋律は激しさを増し、立ち止まらず戦い続ける者達の為の歌となって響き渡る。

●思いと現実
 ドラゴンが繰り出した尻尾の打撃を、ヴァジュラは身体を回してかわし、跳んで間合いを取り直す。回避行動の一瞬、目に映ったのは、川のある方向へ誘導を試みる竜樹と彼方の姿。
「どうするつもりなのだ……?」
 竜樹はペインキラーを発動し全然痛くないことをアピールし、彼方は殲剣の理の効果に賭けてバイオレンスギターを掻き鳴らしている。いずれにも期待されたような、ドラゴンをおびき寄せる効果は認められず、ドラゴンは攻撃を仕掛けてくる前衛の動きに注意を払っており、むしろ広い場所で多人数と戦うのは分が悪いと感じているのか、建物の多い方向へと意識を向けているようにも見える。

 現状の策では、意図した通りにドラゴンを誘導することは難しい以上、攻撃の届く間合いを保ったまま少しずつ後退し移動するしかない。ドラゴンに攻撃の意思がある限り、着いてくるはずだ。この場合、鍵となるのは矢面に立つ前衛の動きであると言える。
「はあっ!!」
 ヴァジュラが巨大な鉄塊剣を鋭く振りぬく先、赤黒い壁のようなドラゴンの体表で火花が散る。飛び散る鱗の破片を身に受けながら、風を切る気配に斜め上を見やれば、自分に向かって振り下ろされたはずの爪の一撃を受けて吹き飛んでゆく文香の姿が見えた。
 瞬間、割り込むように飛び込んできた、アイリスが自身の限界を超える程に高めた風の魔法を斬霊刀に集め、
「吹き荒れよ、烈風」
 白銀の輝きと共に、渾身の力を込めたエリアス・マキシアを叩き込む。その気合いに圧されたのか、純粋に痛みを感じているのかは分からないが、ドラゴンは苦痛に似たうめきを上げて、身体を揺らす。
「どうか、お気になさらず」
「気にするなと言われてものう……」
 一方、我奴間は気遣いを向けながらも、けん制として捕食モードに変形させたブラックスライムを解き放つ。
「ドラゴンの動き、気をつけるでっす!」
 ドラゴンの意識が、痛打を受けつつも踏みとどまっている文香に向けられていることを察知し、ダダルが素早く声をあげる。文香も自らを癒やし、守りを固めながら、皆を守るためにも絶対に倒れないと心に誓う。
「出来れば、被害を少なく終わらせたいですね」
「ならば、少しでも、皆様が受けるダメージを減らせればと思います」
 笙月は取り出した、螺旋力を帯びた手裏剣を、鋭い手の振りで投げ放つ。螺旋の軌跡を描き飛翔したそれはドラゴンの巨大な顎に突き刺さり、瞬間悲鳴を上げる代わりに放たれた火焔がまき散らされる。
 炎をやり過ごそうと身構える。先程までならドラゴンの注意は前衛に集中していたが、8人全員を危険な敵と見なしたことにより、今やその意識は後衛や中衛にも向けられている。
「まったく、きゃつが完全体でなかったのが、幸いであったのう」
「この歌は特別な歌じゃない、だからこそみんなに僕に前へ進む勇気をくれるんだ!」
 我奴間の放った、ハートクエイクアローがドラゴンを貫く。続いて、彼方の奏でる行進曲が、複雑な形を生み出しながら、仲間には暖かな気配をもたらし、敵であるドラゴンには苛烈に食らいつく牙となって襲いかかる。

 地図で認められる橋までは、距離があり、策を実行するには、時間がかかると誰もが思っていた。
 だが……。
「こんな所にも、橋があったでっす」
 ダダルがあきれたような声を上げる。道路脇の家の先に脈絡もなく横に伸びるクリークがあり、まさに今そこに架かる橋を渡ろうとしていたことに気づいて驚く。
 佐賀では街中に忽然と水路があらわれるのは珍しくなく、そこを渡るための橋なども割と整備されている。ダダルが気づいたのも、地図には目立つ記載の無い、そうした交通インフラの一つである。
「なんとか、やってみます」
 竜樹は前線の皆に意思を伝えるように声を向け、注意していなければ通り過ぎてしまいそうな橋の上で2つのガトリングガンを構える。狙い定める先は攻撃がギリギリ届く間合いのドラゴンだ。
「弱点がないのなら! 抉って、作り出す!」
 乱射された無数の弾丸の爆ぜる煙が赤黒い巨体のそこかしこに立ちのぼる。
「皆さん、急いで下さい!」
 長さはおよそ5~6メートルしかない道路幅よりも短い小さな橋だ。ドラゴンが橋の上を通るほんの僅かな時間だけが、橋を壊す意味のあるタイミングだ。迷い無く判断し、彼方は声を張り上げる。
「命に貴賤が無いのなら、戦に前哨も在りはすまい」
 瞬間、ヴァジュラの振り上げた地獄の炎を纏った鉄塊剣がドラゴンの足下に叩きつけられる。大気が咆哮したかと錯覚するような衝撃音を轟かせて、橋は粉砕される。そして狙い通りに赤黒い巨体は黒い泥を跳ね上げて沈み込んだ。

「一気に行きますよ!」
 氷結の槍騎兵を発動、氷属性の騎士のエネルギー体を繰り出しながらダダルは叫ぶ。
 直後、冷気を帯びた騎士のエネルギー体が斬撃を放つと、熱を帯びていた筈のドラゴンの身体の表面にうっすらと白い霜が降りる。
「わしは欲す。世界の四方を守護する4体の帝よ。我が友よ。共にあの狂星を討ち滅ぼさんと!!」
 気合いに目尻と銀の髭を吊り上げ、宙高く飛び上がった我奴間が叫ぶ。
 朱雀、青龍、白虎、玄武――方角を司る4体の霊獣が、次々と現れてドラゴンを中心に取り囲むと、大気を揺さぶるような咆哮を上げる。だが、咆哮とともに繰り出された攻撃にもドラゴンは動じない。
「さすがじゃのう、じゃが、これならどうじゃ!」
 続けて放たれた我奴間の黒炎のブレスも、渾身の力を込めたにも関わらず、ダメージを与えるに留まった。
「まさに堅守じゃ、しんどいのお」
「ならば、こいつでどうだ!」
  正面に躍り出たヴァジュラが叫びと共に、空高く飛び上がる。
「我が一撃、古の蛇が如く、天より降りて地を穿つ」
 上昇から下降へ、放物線が頂点から急激な下降のカーブを描くのと同様に、ヴァジュラは持てる全ての力を暴風龍ルドラと名付けた鉄塊剣に集中させる。直後、命中させることしか考えていない、ヴァジュラ必殺の龍星弾がクリークに嵌まったままのドラゴンの脳天に命中する。
 瞬間、凄まじい衝撃波、続いて爆煙が視界を覆い、真っ黒の泥が飛び散る。
「……やったか?」
 手応えは確かにあった。身体の節々に痛みを覚えながら、ヴァジュラは立ち上がる。
 だが次の瞬間、大きな気配が跳び上がり、黒い泥を雨のように散らせながら着地し、振るわれた巨大な尻尾の一撃にヴァジュラは弾き飛ばされる。

●最期の意地
 僅かな時間ではあったが、橋を破壊し、ドラゴンをクリークに留め置くことには成功した。
 その僅かな時間に、予想外の集中攻撃を受けたドラゴンは、苦痛のためか、或いは策に堕ちた事実がプライドを傷つけたのか、理由は不明であるが、とにかく激しく荒ぶっている。まき散らされる火焔が家々を焼き、事態を打開しようと接近した竜樹は、揺れる巨体に弾き飛ばされた。彼方のメディカルレインに癒されて被害は最小に留まるが、荒れ狂う巨体は正に攻防一体に見える。
「ランページ・マシーン――暴走ロボットよ。そのエネルギーで彼の者を討て!」
 笙月の召喚した暴走ロボットのエネルギー体が、その身を炸裂弾の如く破壊の力へと変えた。だが、荒ぶる巨体は止まらず、吐き出される火焔が、風景を焼け野原に変えて行く。
「600年物のヴィンテージ禁術、強制起動でっす! こいつは、とってもブラックでっす!」
 ダダルは叫び、詠唱する。怪しげな音が耳の中でこだまして、身体の中にある、ドラゴン自身も気づいていなかった有害な要素が複製される。そして、複製増殖したそれらは内部からドラゴンを傷つけた。
 
 我奴間の放ったハートクエイクアローが、ドラゴンの腕のひと振りで叩き消される。
「やはり、楽はさせてもらえんのお……」
 だが序盤と違って、攻撃は高い確率で命中するようになって来ており、ドラゴンが急速に消耗し始めたことも分かる。
「私は、まだやれる!」
 呟くように気合を一つ、アイリスは風の力を刃に篭めた。切っ先に極限まで収束した力が、ドラゴンの強靱な鱗と皮膚を突き破る。突き刺さった刃を袈裟懸けに振り下ろし、引き抜こうとした瞬間、壁の如き巨体に体当たられて、地面に叩きつけられる。
「最後まで、いっしょに頑張りましょう!」
 明るい声と共に、文香は気力溜めを発動する。溜め込まれた膨大なオーラが、アイリスに注がれると、途切れ掛けていた意識がハッキリしてきて、再び力がみなぎってくる。
「……っ! 文香、ありがとう」
 戦いはじめてから、かなりの時間が経過していた。
 ドラゴンもケルベロスたちも、双方共に傷だらけで、消耗の色は隠しようも無い。だがひとりひとりは小さな存在でも、互いに助け補い合う8人の姿は、どこか輝いて見える。
 直後、息を吸い込んだドラゴンが、勢いよく炎を吐き出す。
 後列を狙って放たれた炎を、流れるような身のこなしでかわし、笙月は間合いを広く取る動きを見せる。だが後に下がる動きの刹那に、目に映ったのは、ダダルと我奴間が、ジャマーとしての役割を徹底している姿。
「これなら、攻め続けられます」
 ならばと、動きを反転させ、急速にドラゴンに接近した、笙月はその巨大な肩に軽く掌をあてる。瞬間、掌に込められた螺旋がドラゴンの体内で暴れ回り、身体を覆う鱗が波打つように揺れる。
「ふぅ、まだ倒れぬのか」
 踏み込みと共に放った、何度目かのブラックスライムが、ドラゴンに食らいつき、ヴァジュラの竜爪撃がもはや傷だらけとなったドラゴンの皮膚を無慈悲に斬り裂く。
「あと一押しのはずです。みんなで勝ちましょう!」
「ラブ&ピース!」
 未来はバラ色であると主張する、文香のラブソングが響き渡り、竜樹の構えたガトリングガンが唸りを上げる。
「ドラゴンの脅威……止めてみせます!」
 音波と弾幕に続いて、各ポジションからの全力の攻撃が殺到する。あまりの猛攻にドラゴンは遂に情けなくなるような悲鳴を上げながらバランスを崩し横に倒れる。
(「もう、誰も傷つけさせない」)
 何かを叫ぼうとして開かれた顎を目がけて、アイリスは風の魔法を帯びた刃で斬り込んだ。
 瞬間、喉を斬り裂かれたドラゴンは電撃に打たれたように身体を震わせると、静かに瞼を閉じて、完全に動かなくなった。
 かくして戦いはケルベロスたちの勝利に終わった。
 倒れたドラゴンを見遣り、笙月は倒したこのドラゴンに恥じない、誇り高き自分でありたいと思う。一方でヴァジュラは自分にとって、最高と言える戦いが出来たかと自問していた。
 そして胸で十字を切るのは、竜樹。おやすみなさいと、手を合わせるのは、彼方。ダダルは複雑な眼差しを向ける。強敵に対する思いはそれぞれに、8人のケルベロスたちは次の戦いへと意識を切り替える。
「さあ、いざ鎌倉! ですね」
 声を上げた文香に、頷きで返しながら、アイリスは幼い日に立てた誓いを、胸の内で反芻する。
 決戦の時は、間もなくであった。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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