
マッドドラグナー・ラグ博士に曰く。
「ダメだ! 実験ではダメだ! やはりオークにはオークたるやり方をしてもらわねば!」
「オォーッ!」
ハイテンションに命じる相手は彼の作品、おぞましい触手を飛膜へと進化させた飛空オーク。
「女を襲え! 仲間を増やせ! 強きオーク、強き女の因子を取り込んだ子こそ更なる進化への礎となるッ!」
「ヒャッハァァー!」
子孫が実験体になることなど何も問題はない。
強さ、繁栄、肉欲。飛空オークたちは最上の欲望を満たす使命に狂乱じみた喝采で飛び出した。
「今年の流行はコレ! 水着はこちらで決まり!」
「へぇ、4WAYにビスチェに……」
アパレル業界の季節は早い。
まだゴールデウイークと思うなかれ。夏の新作をデビューさせるには、夏までに売り込まねばならない。流行を作るのは機先を制したものなのだ。
「いいわね、露出も控えめで」
「健康的肉体美、って感じ!」
かくして春の日差しの下、今日も都内では華やかな水着のファッションショーが開かれる。野外ステージには舞台にを彩るアイドルたちに、流行の最先端を自負する乙女たち。
そしてそれを狙うオーク。
「なんだ、貴様ら!」
「ウミ! ミズギ! オンナ!」
突如、文字通り『降ってきた』飛空オークたちに腰を抜かしたスタッフが殴り飛ばされる。
「新た、ナ……因子!」
「ちょっ、なんなのよ、それぇ!?」
意味不明な事態に叫ぶモデルたちへ、答えはこうだとオークは飛膜をおっぴろげて触手を伸ばす。陸のオークが空を得たなら、新たな因子は水……オークたちとしてはそういう理屈なのだろうか。
「ミズギ! オンナ!」
「フトモモッ!」
「ムネェッ!」
はた迷惑な事だが、今年の新作は襲撃者らの目にもかなうものだったらしい。
「竜十字島のドラゴン勢力が新たな活動を始めたようだ。空から降ってきたオークが水着を狙っている」
この時点で相当に意味不明だが、リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は生真面目に説明を始めた。
「得られた情報によると事件の発端はオークの品種改良を行っているマッドドラグナー・ラグ博士という人物……デウスエクスの仕業らしい。彼は飛空オークという新種のオークを作り出した」
飛空とはつくが実際には触手間に生えた飛膜による滑空であり、自由に空を飛べるわけではない。だが高所から目標地点を確認して行う空挺降下の威力は、ケルベロスたちもよく知った通りのものだ。
「今回のオークたちは、都内の野外ステージで開催される水着のファッションショーを狙っている。飛空オークらを殲滅し、会場の人々を守ってほしい」
降下してくる飛空オークの数は八体。特に指揮官などの区別はなく、降下後の戦闘力は一般的なオークの群れと変わりないという。
ただ、厄介なのは戦場と敵の降下地点だ。
「敵は滑空しながら襲撃場所を探してくる、大規模な避難誘導や戦闘準備を行えば違う場所へと逃れてしまうだろうし、時間もない」
ステージを底としたすりばち状の会場に、数百人の観客。急いでも主催者側への接触がせいぜいだろう。
「飛空オークらが降下地点に選ぶのは恐らく中央のステージだ。彼らは……健康的な、肉体美の、水着女性が目当てらしい……個人の好みは更に細かく分かれるようだが、正直よくわからん」
気恥ずかしそうに言葉に詰まりながらも、リリエは誘導や分断に利用できるかもしれないと話す。
「情報だと飛空オークたちは好みにかなりうるさいらしい。男性の肉体美や厚着はお気に召さないようだが、趣味に強くあった相手がいればフォローできるだろうな」
なお、いわゆる男の娘は『水着』という属性上、厳しいだろうとつけ加える。性別にもうるさいのだ、オークたちは。
「幸い、まだ飛空オークたちの戦力は普通のオークと変わりない。数は多いが、初動を制すれば問題なく始末できるはずだ」
ゆえに、今のうちにここで潰しておこうとリリエは力を込める。
「聞いた話だが、アパレル業界は季節に先掛けて準備するんだそうだ。我々もならいたいな、ケルベロス」
似合わぬ軽口だが、目は割と笑っていなかった。
参加者 | |
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![]() カナタ・キルシュタイン(此身一迅之刀・e00288) |
![]() ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584) |
![]() アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610) |
![]() セレナ・スフィード(ケルベロス・e11574) |
![]() ティア・ラザフォード(シューティングスター・e21071) |
![]() 柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406) |
![]() 影渡・リナ(シャドウランナー・e22244) |
![]() 龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829) |
●ショー会場は晴れのちオーク、ところにより触手注意報
熱を増していく日差しに、アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)はうっとおしそうに帽子に手をやった。
「まだ来ねーのか、トカゲの作品共は……」
ぼやく姿はいつもの『Sternenkleid』に色を合わせたフリルビキニに蒼薔薇を飾った白帽子。露出よりラインの流行は、引き締まった四肢と程よい肉付きの精悍さを強調する。
『あ、これ可愛くてセクシーでいい感じ♪ アルメイアさんはこういうも似合いそうじゃない?』
と、ノリノリなカナタ・キルシュタイン(此身一迅之刀・e00288)に引っ張られて決めたが、なかなか悪くないセンスだったのだろう。
その選んだカナタ本人もまた飛び入りのイベント会場を歓声と快楽の波、本職たちの軽いやっかみを浴びている辺りからもよくわかる。
「本来ならこうして水着姿になるのも、わたしじゃなかったんだよね……」
そんな会場にウォークをこなして戻った影渡・リナ(シャドウランナー・e22244)は一つため息。
とはいえ、スタッフや出演者には話を通しているし、降ってくる触手に柔肌を晒したいという変わり者はいなかったわけで……ミルフィ・ホワイトラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・e01584)は気にしたら負けとショーの戦友に励ましかける。
「何にせよ、ショーを『成人向』にする訳にも参りませんからね」
「自由に空を動けるようになっては色々と面倒でもあるしな……完全に飛行能力を得る前にオーク共を始末せねば」
二人の少女に頷くセレナ・スフィード(ケルベロス・e11574)は健康美の眩しいローライズビキニ。彼女が見上げる空には……来た!
「いっそ滑空中に撃ち落としてやりたいところですけど」
客席を走りながらティア・ラザフォード(シューティングスター・e21071)はぼやく。マッドドラグナーだかラグ博士だか知らないが、改造する種族にオークを選んでる時点では完全に女性に対する嫌がらせなのだ、マッドサイエンティストめ。
「空を飛んでもオークはオーク、なんですよね。水着の何に魅せられたのかは知りませんが……」
ティアと共に客席に回った柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406)も嫌そうに、しかしそう先走る事もできないと感情を何とか抑え込む。どうせ大した理由などあるわけないのだろうが、ここで手を出せばオークは空を滑るまま逃げるだけだ。
デウスエクスの端くれたるオークたちにとって、飛膜は着地のためのものではない、選別までの滞空のため。『歪な影』だったデウスエクスは集まると一気に急降下を駆けた。
●空VS水(着)
「ミズギィィィィィーッ!」
「ば……化け物ぉ!?」
叫びと共に八つの巨体がステージを爆撃。デウスエクスの不死身性ゆえに可能な非現実的着地に会場は沈黙、次に理解した客席から悲鳴。それは瞬く間に会場へと伝染していく。
「ケルベロスです! オークは責任を持って撃退しますから、慌てずに避難を!」
恐慌の連鎖を何とか食い止めたのは霞の『割り込みヴォイス』だ。雑踏に負けないよく通る声が、助けを求める観客たちを誘導し、ティアの『キープアウトテープ』が空いた席への逆流を防いでいく。
「さ、こっちよ。ショーはの続きはまた後ね?」
「は、はぁーい……♪」
ステージ近辺の観客にはカナタが魅了の力を全開に導く。ファンを奥へと退避させつつ、手は出させないとオークに立ちふさがる少女の姿は、観客はもちろん襲うオークさえも魅了する。
「マ、マ、ままま待ツんダナ……!」
「おぅ待ってやるぜ、招かれざる豚共め。十字を切れ、介錯してやる!」
予想以上の客席の動きに驚くオークを前に、アルメイアは颯爽と舞台に立つと帽子に手を駆けた洒落者の構えで啖呵を切った。切っても切らなくても殺すが、よそ見など許してやるものか。
「ファッションショーに乱入してくる悪い子たちはボクたちがこらしめてあげるよ!」
オーク相手は慣れたものと龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829)は窮屈な競泳水着の前ファスナーを挑発的に降ろして笑った。
「タニマ! シバル!」
「ハサマセル!」
大変ストレートな欲望を咆哮し、オーク触手が鈴華を突く。触手の間に皮膜を生やしても、触手の勢いと汚らわしさは大して変わらない勢いだ。
「きゃっ! ほーら、こっちこっちー♪」
かわしつつも後少しと期待を煽り、絡まれた時も慌てず身を寄せ自慢の脚線美をお見舞いする。豊満な体型に弾ける笑顔でオークを引き付け続ける彼女だが、もちろん誰しもうまく欲望を裁けるわけではない。
同時に、オークの中にも変態じみた達人はいる。
「ト、トッタァァーッ!」
「な……なっ!? こ、この瞬時に……しかもサイズもぴったりとは器用な奴め……」
セレナの『パーフェクトボディ』に彩られた肢体を触手がかすめた瞬間、ビキニの赤白ボーダー柄が一瞬にして布片と紐のマイクロビキニと化す。なんと無駄に器用なブレイクか。
「その手腕は感嘆するが……人に仇なす以上は消えてもらう! 覚悟!」
「セ……セレナさん、危ない!」
白銀の短剣を突き立てにいくが霞の悲鳴。そして、はらり。
「イィィィィィヤッハァァァー!」
気丈な乙女のハプニングに怒涛の叫びで触手が、もといオークが荒ぶった。
「このド腐れ共め、微塵に砕け散れ!」
迫るオークの頭にアルメイアのギター『Starlight Himmel』がバイオレンスにめり込むが、欲望の力は痛みさえ凌駕するのか。血に染まる蒼い星空を辱めるように触手が遡る。
「んげっ!? な、ちょ、ま……ひっ!?」
凛々しいミュージックファイターからこぼれた顔に士気は限界突破。脇から胸に、ビキニの裾へと触手が迫っていく。
「ん、ぅっ……! 触手が……絡み付いて……食い込んできますわ……ぁっ……」
更に奥では艶めかしいミルフィの声。ただでさえだいたんなホルターネックのビキニが危険な音をあげて敗れ、粘液に卑猥に染められていく。
それはまさにイベントがオークたちの暴力で理不尽に変えられていく様子にも似て……。
「そこまでですよ……いい加減にしなさい!」
危なくなってきた流れをナパームの雨が強引に吹き飛ばした。文字通り、物理的に。
「ぶひょぉぉぉぉぉーッ!?」
迅速な避難ですっかり忘れられた客席からの砲撃。完全に不意を打たれたオークたちが燃え上がりながら転がりまわる。
ステージから落ちていく飛兵オークをリナの斬霊刀が容赦なく貫いた。
「無礼なオークに……放つは雷槍!」
膨れた腹をぶち抜いた後に、あの世まで追い払う雷の幻影で追撃。逆光に照らされたリナの乱れた水着、粘液に輝く髪がシャドウエルフの少女への狼藉をものがたり、止めの苛烈さを際立たせる。
「乙女の柔肌を晒させたのです。相応の覚悟はして頂きます」
ケルベロスコートを捨てた霞も黒焦げの遺体を飛び越えステージへ。その手の中に煌々と輝く雷の杖と、淡い光の魔導書がひらめいた。
●飛空な豚の生きる(た)道
『来たれ、雷崖』
短い詠唱から打ち立てられる電光の壁が触手と乙女を強引に切り離す。
「今のうちに……きゃっ!?」
だがオークたちも易々と諦めはしない。回り込んできたオークは雷の盲点、すなわち霞へと触手を絡めつけたのだ。
空挺兵の運命は一度降りれば勝利か死かだ。華奢な少女の半身をパレオごと愛でて恍惚なオークも、敗北を許されぬ決死部隊のエリートなのか。
「何すんのよ、折角の水着を!」
「ブヒョォ!?」
失礼。やっぱりそんなことはないのかもしれない。流星の如きカナタの蹴りに吹っ飛ばされたオークは、待ち構えた鈴華の回し蹴りで綺麗に真っ二つ。
「綺麗に決まったねー♪」
「煩悩退散! 豚・即・斬! よ! さぁ次っ!」
答えるカナタ、剣士と拳士のコラボレーションが次々と触手を裂いていく。
ステージを襲うのは今やオークたちでなく、カナタの影から召喚された『この世ならざる世界』の影たち、そしてこうばしく触手を焼いていく鈴華の相棒『鈴々』である。
触手が振り払われた隙に紐と化した水着を何とかより直し、片膝でボクスドラゴンへと礼をする。
「助かったよ。まったく、危ない連中め……」
「ふふ、スリリングに堪能させていただきましたわ……オーク様たちも存分にでしょう?」
燃え上がるセレナのドラゴンフォースをミルフィが妖しい笑いで茶化す……いや、目は決して笑っていない。それはもう鈍感なオークたちでも感じられるほどに。
「それでは……そろそろお還りになる御時間ですわ。脚線美を見つつ、焼豚にでもなって下さいまし」
『Gear change Fire!』
「ヒッ」
弾ける柔肌に展開されるは砲火器兵装『アームドクロックワークス』、粘液を滴らせた足元には空機靴『ホワイトマーチラビット』三匹の兎に護られし白兎の騎士から奏でられる電子的処刑宣告に、身構えるオークは二匹、逃げるも二匹。
無謀というべきか、よく残ったというべきか。炎の針と化したミルフィの両脚を二組十六の触手が迎え撃つ。
「カズ、カツル!」
オークの頭でもわかる無謀な挑戦だが、欲望を奮起させて迎撃。その姿はある種男らしいが……やはり無謀であった。
「数と質は両の車輪だ、現実を知れ」
『【Rabbit Strike!】』
決死の勝利宣言に無慈悲な一閃。怒りを込めて錬成された白銀のハルバードが斧刃一閃、綺麗に刈り取ったところをミルフィの両脚が早回しの時計の如く連打。宣言通りに焼けたひき肉へと加工する。
「ふぅ……残りは」
「あ、あっち! そうはさせないよ!」
武装を『時炎動』より戻すミルフィにリナの声。恥も外聞もなく飛びのいた飛空オークたちの反撃をリナの呼び出した龍の幻影が封鎖する。
再び不意を打とうと後ずさるオークたちだが、残るは彼らだけとなっては問屋がそうはおろさない。
「逃がしません!」
「逃がさないよ!」
声を重ねたオラトリオとドラゴニアン、二人……いや、二人と『一匹』の翼が空へと駆ける。
高度を無駄なく運動エネルギーへと変える空中転回から『総合武装ユニット【グリフォン】』正面に可変ビームシールドを障壁展開したティア、そして必殺の体勢に移行した鈴華の背へとボクスドラゴン『鈴々』の属性が吹きつけられる。
「龍の力を纏い、紅い血を感じる!」
「加速術式開放! 障壁、全力展開!」
「ぶっ、ぶひぃぃぃぃっ!?」
ティアの声に二人の身体が加速する。逃げようにも正確な追尾、そして多少のズレなど問題にもならない必殺のコラボレーションが飛空オークをステージごとぶち抜いた。
●触手、一過して水着輝けり
舞台の袖、そっと機会をうかがう影を青い影が掴む。
「ねぼけてんじゃねぇぞ……おい! あのトカゲはラボでウキウキ観戦してんのか!?」
「ぶひっ……ひっ、ひょひょ……」
水着を半裸に裂かれながらもギターを構えたアルメイアの姿は、戦慄する色っぽさがあった。ごにょごにょと小声でも答えようとしたオークは頑張ったというべきか。いや。
「あぁ!? 聞こえねぇだろ……と!」
「ブヒェッ!?」
身体を近づけながら、アルメイアが無造作にギターを後ろへ振るった。背を狙う触手が引き千切れる。気を引かせて襲おうという浅知恵に、彼女はギターを斧へと顕現させて応えた。
「……ちっ。トカゲめ……!」
潰れたオークを一瞥し、帽子を直す。振り返ればショーの再開に向け、仲間たちが会場の修理を始めていた。
「ちょ、ちょっとやりすぎました……」
「しぶとい連中だからな、念入りにしておくに越したことはない」
隕石でも落ちたかという舞台のクレーターを申し訳なさそうに『オラトリオヴェール』で埋めるティアに、手伝うセレナが笑う。そもそもオークどもも散々にこさえてくれた大穴でもあるのだし、と。
「折角ですから、わたくし達も飛び入りで参加でもしましょうかしら……?」
「あ、いいね! でも、年齢制限はなしよ?」
悩ましげなミルフィの身体を冗談で受け流すカナタに人々のざわめき。新たなファンを獲得してしまった様子の二人に、傍でリナも笑いながら、しかしふと真顔に戻る。
「このオーク達も竜十字島と関係があるのかな?」
竜十字島――仲間たちの死力により判明したドラゴンたちの拠点は、未だ謎も多い。自分たちがデウスエクスを駆逐しようとするように、ドラゴンたちも侵略の作戦を進めつつあるのだろうか。
「それは、うーん……あ、でもさ」
「なに?」
うなりながら何か思いついた様子の鈴華にリナは耳を傾けるが。
「今度は空のオークってさ……そのうち宇宙から落ちてこないよね……?」
「え……それは」
あながち否定しづらい不安に今度はリナがうなる番だった。
作者:のずみりん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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