イ・ラプセルの連累

作者:犬塚ひなこ

●ティルナノーグより来たる
 薄暗い森の中には浮遊する魚が泳ぎまわっていた。
 淡い光を放つ怪魚達を従えるのはシスターめいた姿をしたひとりの死神。森の奥に歩を進めた彼女は目を瞑り、其処に宿る『縁』を感じ取る。
「この場所でケルベロスとビルシャナ……いえ、ミユが戦いという縁を結んでいたのですね。ケルベロスに殺される瞬間、この子は何を思っていたのかしら」
 呟いた彼女の名は因縁を喰らうネクロム。
 この森は嘗て、ビルシャナと化した少女・ミユがケルベロスに倒された場所。
「折角だから貴方達、彼女を回収してくださらない?」
 何だか素敵なことになりそうですもの、と告げたネクロムは死神怪魚に後を任せてその場から姿を消す。すると蒼白く発光した怪魚達はサルベージを行いはじめた。
 そして、昏い森の中に影が現れる。
「あ、あ……アア……エイ、ジ……コウ、ヘイ……?」
 抑揚のない声で誰かの名前を呼んだそれはビルシャナの姿をしたミユだ。だが、其処に少女だった頃の意思はない。今の彼女はただ記憶の残滓から単語を拾い上げ、口にしているに過ぎない獣そのものだった――。
 
●至福の島には程遠く
 以前、恋に破れビルシャナの力を求めた少女が居た。
 その名は常若・ミユ。彼女は未だ人に戻れる可能性が僅かにあったのだが、ケルベロス達による説得の声や思いを聞き入れることなくビルシャナとして死してしまった。
「……そのミユが死神にサルベージされたみたいなんだ」
 アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)は当たって欲しくないと願った予見が当たったと語り、ヘリオライダーによって予知された未来を語る。
 ミユをサルベージさせたのは女性型の死神。
 どうやら、彼女はアギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)の宿敵である、『因縁を喰らうネクロム』という個体らしい。
 これまで怪魚型死神にケルベロスによって殺されたデウスエクスの残滓を集めてサルベージし、戦力として持ち帰るよう命じていたのは、どうやらネクロムで間違いないようだ。
「ネクロムのサルベージ作戦を防ぐ為でもあるけれど、オレは一度は倒したミユを放ってはおけない。皆、手伝ってくれるか?」
 アレックスは星降の名を冠する天秤の剣にそっと触れ、仲間に協力を願った。
 
 敵はサルベージされ変異強化したビルシャナが一体。
 そして、彼女の配下となった三体の死神怪魚だ。ビルシャナは理性を失っており、言葉を交わすことは出来ない。
「今回は説得は要らないから敵を倒すことだけ考えればいいよ。戦ってもう一度倒すことが、オレ達が彼女にしてやれることだと思う」
 アレックスは複雑な気持ちを押し込めながら仲間達へと語った。
 ミユはビルシャナとしての力を振るい、死神怪魚達は怨霊の弾を放ち、噛みつくことで襲い掛かって来る。怪魚達の力はケルベロス二人分程度だが、ミユは強化されているので以前より手強い相手となっているだろう。
「それから、森は元々誰も近付かない場所だから人払いも不要みたいだね。余計な事もないから思う存分戦える、かな」
 今回はつまり、純粋な戦闘力が試される。
 気は抜けないと己を律したアレックスは剣の柄を強く握り締めた。いつもは明るい彼も今ばかりは救えなかった少女を想い、少しだけ俯いている。
 ――私が死ぬ。これが一番良い結末なの。
 そう語って死した少女の命が再び弄ばれるなどあってはいけない。アレックスは深紅の瞳に真剣さを宿し、以前の森の景色を思い返した。
「ミユはもう死んだんだ。オレはもう一度、そのことに向き合わなきゃいけない」
 死したデウスエクスを――否、ひとりの少女を復活させ、更なる悪事を働かせようとする死神の策略は許せない。アレックスは仲間達を信頼の宿る眼差しで見つめた後、行こう、と静かに告げた。


参加者
イド・モノクローム(復讐の銃声は友への鎮魂歌・e03516)
シィ・ブラントネール(天使の二丁剣銃・e03575)
紫藤・大輔(繋がれていた鎧装騎兵・e03653)
アルルカン・ハーレクイン(道化騎士・e07000)
ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)
サミア・ジルマヴェール(リラネージュ・e25903)
天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)
レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)

■リプレイ

●死の続き
 この世は二律背反。
 生きることが正しいと言えないように死が最善であるとは言えない。
 薄暗い森の中、一度は死した少女の成れの果てが再び生を受けた。だが、それは仮初めのものであり、少女自身が望んだものではない。
「死んだほうが良かった。そう言いきれるような死に方だけはしたくないものです」
 かの少女、ミユの過去と現在を思ったイド・モノクローム(復讐の銃声は友への鎮魂歌・e03516)は軽く肩を落とす。
「死んでしまった者を蘇らせて戦わせ、利用する……外道が……」
 その隣では紫藤・大輔(繋がれていた鎧装騎兵・e03653)が拳を握り締め、少女を蘇らせた死神への憤りを抱いていた。
 対象がデウスエクスに堕ちていたとはいえ、その行為は許せるものではない。
 シィ・ブラントネール(天使の二丁剣銃・e03575)も地面を踏み締め、もうこの場所にはいないというシスター姿の死神を思う。
「安らかな眠りを邪魔するなんて許せないわ! 本人にお仕置きできないのは残念だけど、好き勝手させないんだから!」
「どうすることもできなくて、別れを望んだミユさんの想いを弄ぶなんて……」
 ユイ・オルテンシア(紫陽花の歌姫・e08163)も元となった事件について慮り、決意を固めた。そんな縁は断ち切り、安らかな眠りにつかせてあげたい。
 そう願うユイに頷きを返し、アルルカン・ハーレクイン(道化騎士・e07000)は己の思いを巡らせた。
 主人公の死により終わる物語のことを悲劇と呼ぶ。
「観劇や物語の中ならばともかく、現実で誰かの死により報われるものなんて存在するのでしょうかね」
 アルルカンとて思うことはあるが、今は歪んだ存在を滅することが先決だ。
 森の奥へと進む先、シィとイドは或る気配を感じて顔をあげた。そこには浮遊する怪魚とそれらを従えるビルシャナの姿がある。
 其処に生気は見られず、虚ろな目がケルベロス達を映した。
 あれがミユだと確認しあった仲間達はすぐに戦いが始まると察し、其々に身構える。
 レテ・ナイアド(善悪の彼岸・e26787)はウイングキャットのせんせいに目配せを送りながら、ビルシャナのミユに声をかけた。
「邪魔者のレッテルを、ご自分でご自身に貼られたんですか? ミユさん。それが一番良い結末だったかどうかは、僕には解りませんが……」
 そうであれと強く願ったあなたが今そこに立っているのは、不本意なはず。
 視線でそう告げたレテの思いは生ける屍と化したミユには届かない。だが、それでも構わなかった。
 サミア・ジルマヴェール(リラネージュ・e25903)は自分にとっての初陣であるこの戦いに思いを込め、ビルシャナを見つめる。
「死者の尊厳を守るのは生者のお役目。そうでしょう?」
 傍らのボクスドラゴン、リネットはサミアの思いを感じ取って翼を広げた。
「ア……アア……」
 虚ろな目をしたミユは意味のないうめき声をあげ、ケルベロスに敵意を向ける。
 その姿を見た天羽生・詩乃(夜明けに捧ぐ唄・e26722)は両手をそっと重ね、思いを言葉にした。
「私はあなたが死ぬことが、一番いい結末だったなんて思わない」
 苦しくて、痛くて、助けてって叫びたかっただけで、本当は消えてしまいたくも消してしまいたくもなかったはず。あなたを解き放って空に還してあげたい、と願った詩乃はサミアと共にビルシャナを見据えた。
 だって、それが――自分達が少女にしてやれる唯一の事なのだから。

●少女の残骸
 戦いは一瞬のうちに始まり、敵が孔雀炎を巻き起こす。
 ビルシャナの動きに合わせ、周囲の怪魚達が此方に噛みつこうと向かってきた。とっさにレテが反応し、相棒猫に呼び掛ける。
「お願いしますよ、せんせい」
 するとウイングキャットは任せとけと言わんばかりに偉そうに胸を張り、怪魚の攻撃を受け止めに飛んだ。同じくリネットも仲間の防護に入り、布陣を整える。
 アルルカンがミユからの炎に耐える中、イドは魔道具を開いた。
「――狂った茶会へようこそ」
 歪んだ物語の一節が敵の思考に干渉し、集中力を乱す。
 排他的茶会の名を冠するそれは鋭い攻撃であると同時に、イドなりの死者への最後の労わりでもあった。
 その間に大輔が月光斬で怪魚に斬りかかり、ユイが前衛に守護星座の護りを宿してゆく。ユイは加護を星の歌に乗せながら、ビルシャナの反応を窺う。
(「もう、本当のミユさんの意識はないのでしょうか……?」)
 もし少しでも意識が残っているのならば、死んで気付いたことや残したいことが生まれたかもしれない。だが、ただ機械的にケルベロスを狙うミユに生前の意思のようなものは見られない。
 それは良かったのか、悪かったのか。
 シィは複雑な思いを押し込め、服の中で丸くなっていた金毛のピグミーマーモセットを呼び寄せる。それは即座にファミリアロッドの姿になり、シィは杖先を敵に向けた。
「行くわよ!」
 そして、シィは威勢良く愛らしい声と共に魔力を解き放つ。炎弾が怪魚達を貫き、激しい焔が森の中を赤く照らした。
 詩乃は胸部を変形展開させて死神怪魚を狙い打つ。
 鋭い光が敵を穿っていく最中、詩乃はミユに感じていた思いを口にした。
「もう戻れないってわかってしまったときに、消すのでなく、消えることを選んだのはあなたの強さ。あなたの想いの深さだって……私は、そう思うの」
 言葉が本人に届かないことは詩乃とて知っている。それでも、あふれる想いを伝えられずにはいられなかった。
 アルルカンは無反応なミユを見据え、天涯火を発動させる。
 死が救いであるかのような考え方には素直に賛同することも否定することも出来なかった。故に普段の戦闘時の凶暴さは為りを潜め、アルルカンは力を紡ぐ。
「――燃えつくばかり、枯れ尾花」
 発した言葉と共に狐火が現れ、倍々に増えるようにして青白い花が咲き乱れた。怒りを誘発する蒼焔が揺らぎ、ビルシャナはアルルカンに引き付けられる。
 サミアは今が好機だと感じ、怪魚への攻撃を強めようと決めた。
「生きている以上……いいえ。死しても尚、決して他人事ではないのだもの」
 両手の銃を構え、敵の元へと駆け出したサミアは舞うような動きで全方位射撃を繰り出す。たとえ少女が本来のミユではなくても、その身体を死神の策略に利用させはしないし、明け渡しもしない。
「わたくしで宜しければ、精一杯ミユさんのお力になりますわ」
 思いを言葉にしたサミアの一撃は死神怪魚を貫き、うち一体を地に落とした。
 ゆらゆらと空を泳ぐように舞う怪魚達は徐々に弱っている。されど、ビルシャナが放つ浄罪の鐘も仲間達に容赦ない衝撃を与えた。
「だいじょうぶです、皆さんを支えてみせますから」
 レテは気力を溜め、心的外傷を呼び起こされた仲間へと癒しを施す。せんせいもレテの補助に入り、清浄なる翼を広げて援護に入った。
 二人の息がとても合っていると感じながら、ユイも穏やかな唄を紡いでゆく。
「咲き誇れ 想いを胸に 満開に♪」
 静かな想いの詩は触れたものの生命力を活性化した。ユイは最後まで癒しに専念することを固く誓い、まっすぐに仲間達の背中を見つめ続ける。
 大輔も流星の蹴りを放ち、怪魚を弱らせていった。
 ビルシャナと怪魚の両方を相手取るが故に戦力を分散させる他ならず、戦いは自然と長引いている。しかし、リネットとせんせい、詩乃とアルルカン達が仲間を庇うことによって戦線は護られていた。そのうえ、癒しの手は十二分に足りている。
「このままのペースで戦い続ければ、きっと――」
 押し切れるとイドは感じ、ビルシャナの行動阻害に重きを置き続けた。翼から放たれる聖なる光は敵の罪を浮き彫りにし、痺れを増やしていく。
 されど、ビルシャナの攻撃を一手に受け続けているアルルカンの体力が徐々に危うくなりはじめた。
 サミアは逸早く状況を察し、早く怪魚を片付けなければいけないと気付く。
「一気に参りましょう。わたくし達は彼方の死神を相手取ります」
 仲間達に声をかけたサミアは、リネットを伴って右側の怪魚の方に向き直った。目にも止まらぬ速さで撃ち放たれた銃弾に合わせ、リネットが体当たりをくらわせる。
 その衝撃によって怪魚が地に落ち、残りは一体となった。
 サミアからの合図を受けた大輔は左側の死神に向かい、踏み込みと同時にグラビティで創り出した雷光を纏う。
「我が一撃は雷霆のごとく! 全てを突き崩すものなり!!」
 発生した磁力によって自らを加速させた大輔は最高速の平突きを放った。敵の身が揺らぎ、尾びれが破壊される。シィは仲間が作りあげた隙を見逃さず、時空すら凍結させる弾を生成した。
「ワタシの一撃で終わらせるわ。覚悟しなさい!」
 死神怪魚へと凛と言い放ったシィは力をひといきに解放する。刹那、最後の怪魚がゆらりと揺らぎ、ゆっくりと地に落ちて逝った。

●二度目の死
 これで残るはビルシャナ――ミユのみとなる。
「……エイ、ジ……コウ、ヘイ……許さ、許し……あ、アア……」
 譫言のように誰かの名を呟くミユは、尚も容赦のない氷輪の舞を解き放ってきた。彼女が呼んだ名は生前の記憶から呼び起こされたもの。
 その言葉が本物ではないことを知っているからこそ、その声は切なく思えた。
 イドが氷の弾を放ち返し、詩乃は敵が放つ一撃を受け止める。そして、詩乃は自らのコアパーツに内蔵された対人治療用の兵装を起動した。
「胴部内蔵兵装起動、エネルギー充填完了、周囲環境クリアー。……コード・クルシス・クラスター、展開!」
 詩乃の声と同時に羽のように広がった治癒光波は周囲を眩く照らす。
 昏い森に光が満ちる中、アルルカンはナイフの切先をビルシャナに差し向けた。まだ引き起こした怒りは自分に向けられている。
「まだ余所見させる訳にはいきませんので…貴女のお相手は、この私が」
 振り下ろした刃で血を散らし、アルルカンは最後までこの役目を果たそうと決めた。受けた痛みはユイの癒歌が回復してくれている。
 大輔は癒しを仲間に任せ、自らはフォートレスキャノンで打って出た。
「叩き込むぜ」
「こっちからも行かせて貰うわ!」
 続いたシィも腰に下げた四本の刀のうち、一本を抜き放つ。雷刃の突きが敵に見舞われ、鋭い衝撃が敵の身に走った。
 戦いは巡り、其処から幾度もの攻防が繰り広げられてゆく。
 サミアはリネットが懸命に皆を守る様を瞳に映し、光の翼を大きくはためかせる。
「間も無く、終わりが訪れますわね」
 ヴァルキュリアとして、ケルベロスとして、敵の力が弱っていることに気が付いたサミアは仲間達に声をかけた。そして、光の粒子を纏って突撃したサミアの一撃はミユの身を揺らがせる。
「……皆さん、今です」
 ユイは後は畳み掛けて行くだけだと察し、仲間に呼びかけた。
 少女は行方を見失った想いに居場所は見つけられたのか。その答えは見つからなかったが、ユイは魔鎖を展開しながら穏やかな歌をうたいあげる。
 レテもせんせいと視線を交わし、自らも攻勢に移った。
「再びの眠りを齎しましょう」
 僕はヴァルキュリアですから、と己を律したレテはジュデッカの刃でミユを穿つ。その一閃は冷たく、それでいて真の意味での慈悲が込められていた。
 シィも時空の調停者たるオラトリオの力を具現化し、時空を超えた魔技を放つ。
「気付いて。もう終わってるんだよ」
 終わって良いんだよ、と告げたシィはミユの傍からさっと身を引き、仲間の攻撃射線を開けた。其処へアルルカンが飛び込み、刃の舞を放つ。
 掘り返された彼女に罪はなく、掛ける言葉なんてものも存在しない。
 再びの終わりの時を刻む為、ただ彼は無言でナイフを振るうのみ。詩乃もアルルカンに続き、銃口をビルシャナに向けた。
「私はあなたを助けたい」
 あなたの強さと優しさを、死神の黒い思惑なんかで汚させたりしない。
 それゆえに全力を振るうと決め、詩乃は最後の引鉄を引いた。そして、銃弾が放たれる音が鋭く響き渡り、イドは双眸を鋭く細める。
 彼女が偽者であれど、補われた紛い物であれど、戦うことしか出来ない自分達から送ることが出来るのは一時の休息。
「逝ってらっしゃいませお嬢様。次は、より良き生でありますように」
 どうか、君の最期が良き終わりでありますように。そんな思いが込められた干渉型兵装は不思議の国への扉を開いた。
 そうして、戦う力を失くしたビルシャナはその場に崩れ落ちる。
 その身体が幻のように消えて逝く様を青の瞳に映し込んだレテはそっと呟いた。
「看取りましょう、それが道理ならば」
 喩え物悲しい選択の末だとしても、これが最期の手向けになる。
 何の言葉も遺さず残骸として散った少女はいま――漸く、本当の死を迎えた。

●死の先
 静けさを取り戻した森は薄暗いまま。
 敵を倒したとて気持ちが晴れることはない。そのことを示すように落ちた闇は深く、弄ばれた死者への思いも深く巡っていくようだった。
「…死の先なんて結局こんなものなのでしょう、きっと」
 アルルカンは誰に言うでもなく囁き、頭を振る。サミアはただありのままに事を受け止め、出来るだけのことをしたとそっと自負した。
 大輔も何も語らずに森を見つめ、暫しの沈黙が辺りを支配する。
 シィは彼女が今度こそ安らかに眠れるように祈り、イドも今だけは死せる彼女に黙祷を捧げようと瞳を閉じた。
 そんな中、ユイは葬送の歌をうたってゆく。
「――♪」
 来世があるのなら次は幸せに。そんな願いを込めた歌が森に響き渡る。
 レテは耳を澄ませ、死した少女を想った。きっと恋をするのは苦しい事なのだろう。
「僕もそうだったんですかね。ねえ――」
 消えた記憶の向こうに居るだろうひとへ独り言ち、レテはせんせいを撫でた。
 詩乃も葬送歌を聴き、追悼の思いを胸に巡らせる。彼女を本当の意味で救うことは出来なかったけれど、ケルベロスとしての使命は確かに果たすことが出来た。
 だから、願おう。
 今度は囚われることなく、空へ還れるように。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。