あらゆる危機から玉のお肌を守るべし

作者:ハル

●指令
 マッドドラグナー・ラグ博士は、手元にある資料に目を通しつつ、言った。 
「ムムム、量産型とはいえ、実験ではこれ以上の性能は出せないなァ。これ以上の性能を得るには、新たな因子の取り込みが不可欠だ」
 そのままラグ博士は、生み出したばかりのオークと資料を交互に食い入るように見つめ、頭を抱え叫ぶ。
「オーマイガ! オーマイガッ!! オーマイガッッ!!!」
 異様なハイテンションだが、それも長くは続かない。ラグ博士は動きと叫びを急にピタリと止めると、オークをクイッと指先で近づくよう指示を出した。
「ブ、ブブブ!」
 汚らしい鳴き声で近づくオーク達に向かって、ラグ博士は言う。
「フフフ、やはり私は天才だっ! 素晴らしい手を思いついたぞっ!! 人間の女を襲って新たな子孫を生み出せばいいのッだッ!!」
 そして、
「お前達が産ませた子孫を実験体にすることで、飛空オークは更なる進化を遂げるだろう! さぁ行けっ! 我が子達よ! 蹂躙の限りを尽くすのッだッ!!」
「ブブブ! ブブブブブッブ!!」
 オーク達はその命令を聞くと、女を襲うことができる歓喜に身を震わせ、歓喜の雄叫びを上げるのだった。

●悲鳴が響く波打ち際
 鹿児島県にある離島、屋久島。夕暮れの南海岸沿いには、干潮時にだけ姿を現す温泉があった。
「混浴だって聞いてたから、ちょっと怖かったけど、運良く今日は女の人しかいないみたいだね」
「でも、ちょっとだけ残念……かな?」
「ええーー! あははは! もう!」
 そこでは、何組かの若い女性客が、開放感に溢れた様子で温泉を楽しんでいた。水着の着用が不可のため、最初こそ拒んでいた子も、雰囲気に乗せられたのか、顔を少し染めながらも、温泉の気持ちよさに目を細めている。もちろん、周りに同性しかいないという安心感も手伝っているのだろうが、普段はあまり感じない肌を撫でる風に、ドキドキと心臓を高鳴らせていた。
 そこへ――――
「ブブブブブ!!」
 欲望丸出しの咆哮と共に、近くの宿泊施設から滑空してきたらしい飛行オークが飛んでくる。
「……い、いやぁ!」
 少女が叫ぶ。だが、逃げようにもタオルを巻いただけの姿だ。迷い、そして判断が遅れてしまう。
「い、いやあああああ!!」
 身体を絡め取るように巻き付く八本のオークの触手。少女達の誰もが、背筋がゾッとするような嫌悪感に襲われる。
「ブブブ! ブブブブ! ブーー!!」
 興奮も露わなオークに、湯上がりでピンク色に火照った少女達の玉の肌は、容赦なく舐られ、そして――――

●女の敵は空から降ってくる
「女の敵ですー!」
 普段は天真爛漫な笑みを欠かさない笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)が、怒りも露わに言った。
「竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を始めたようです!」
 ねむが予知したのは、オークの品種改良を行っているドラグナー、マッドドラグナー・ラグ博士が生み出した、飛空オークの起こした事件だ。
「飛行とはいっても、高い場所から滑空して目的の場所に移動するだけの能力で、自由に飛行する事はできないみたいです! だけどですね! 高い所から滑空しながら襲撃目標である女の子を見つけ出して、その場所に直接降下するというというすごく、すっごーく効率的で厄介な行動をとってきます!」
 無論、だからといって黙って見ている訳にはいかない。だからこそ、ケルベロス達は集められたのだ。
「何の罪もなくて、ただ楽しんでいる女の子達を……オークからみんなに守って、そして倒して欲しいんです!」
 オークの数は六体。
 数人で別れて戦っても、みんなで各個撃破の方策をとっても、苦戦するような相手ではない。また、飛ぶ際には高さが必要なので、逃げられる心配も低いだろう。
 ただ、気をつけるべき事もあった。
「飛空型オークは、滑空しながら襲撃場所を探すから、事前に避難活動をしてしまうと、予知と違う場所に降下してしまう事になって、事件の阻止が出来なくなっちゃうんです! だから、女の子達の避難は、オークが降下する直前から行うようにしてください!」
 また、避難を行わない場合でも、オークが好きそうな行動を女の子達が行わなかった場合なども、襲撃場所が変更になる可能性があるようだ。
「あと、イケメンのケルベロスくんが近くにいたりして、女の子達が恥ずかしがってお淑やかな雰囲気になっちゃうと、オークの好みじゃなくなっちゃうかもしれないんです!」
 そういった可能性が考えられる場合には、参加した女の子のケルベロスが、オークの注意を向けるような行動をとるといいかもしれない。オークは無防備な大胆さを好むようだ。
「女の子を襲って……それも生ませた子供を利用しようだなんて! 女の敵です-! 絶対に認められません!」
 ねむは、会議室の机はバンッと叩く。
「だから、オークにきつーい鉄槌を下してください! 殲滅でーす!!」


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
蒼天翼・舞刃(蒼き翼のバトジャン少女・e00965)
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)
折平・茜(群れない羊・e25654)

■リプレイ

●束の間の癒やし
 パシャリと、水音が跳ねた。春真っ盛りとはいえ、まだ風の冷たい日もある今日この頃。温泉に入るには、ある意味でちょうどいい季節なのかもしれない。
 場所は屋久島、南海岸沿いにある、干潮時にだけ姿を現す温泉。岩礁に囲まれた中、ケルベロス達の周囲にも複数人の女性客が湯に身を浸し、日々の疲れを癒やしている。
「いちご、気持ちいいわね。後で背中流してあげようか?」
「はい、お願いしますねっ」
 そんな中、蒼天翼・舞刃(蒼き翼のバトジャン少女・e00965) と赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)も湯に浸かり、親戚同士特有の距離感の近さを見せ、笑いあっている。風呂桶がない関係上、舞刃は優しくいちごの肩に湯をかけてやる。
「はぁ~~、気持ちよくて力抜けちゃいそうだね~!」
「同感です。こんな機会じゃなく、ゆっくりと入って身体を癒やしたかったです」
 鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)がマインドリングとバトルオーラのみを身に纏った状態で、恥ずかしげもなく豊満な胸を湯に浮かせて蕩けた声を漏らすと、ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565) も恥ずかしそうに身を縮こまらせながら、猛の言葉の内容に心の底から同意した。
「それにしても、空から襲ってくるなんて、もう何でもありですね」
 お約束とばかりに頭にタオルを乗せたレベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392) が目を細めて言うと、
「そういう雰囲気を壊すことは言わないでおきましょう? 気持ちのいい気分でいられるのは、きっと今だけなんですから」 
 阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)がやんわりと 諫めた。
 ともかく、六人は最高にいい気分であった。巨乳、美乳、貧乳と勢揃いし、キャッキャウフフと互いに胸を触り合ったり、揶揄したり。
 だが、これからの事を考えると、きっと気分が落ち込んでしまうから。今だけは、忘れていたかった。まして、猛は全裸で、他の五人が身に着けているのはタオルのみである。不安はある。確かにあるが――――
「ちょっと、申し訳ない気もしますね」
 いちごは、あまりにも薄く華奢な胸元にタオルを寄せながら、もう二人がいるはずの岩陰に視線を向けた。

 隠密気流で岩陰に身を隠した螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)は、女性陣の黄色い声色を聞いて、少しだけ悶々としていた。無心を装うものの、異性に耐性のないセイヤでは完璧とまではいかない。
「……見ては、ダメですよ……?」
「わ、分かっている」
 現状、一緒に隠れている折平・茜(群れない羊・e25654)の見張りと、 鉄の精神力でなんとか自我を保っていた。
 二人に手元には、それぞれ大型のトランクが握られている。中にはバスローブが納められていて、これから必ず役に立つはずだ。
「……危機が来て、満を持して登場ですか……安い英雄像ですね……」
 準備をしながら、茜は自嘲気味に呟く。ケルベロスにも、限界がある。それは仕方のない事だし、だからといって手を抜くつもりは毛頭ない。
 そこへ――――
「飛行オーク確認しました!」
 ラズの鋭い声が響き、茜は女性客の避難のために、セイヤは迎撃のために翼を広げ、六体のオークが下降してくるタイミングを伺った。

●際どすぎる攻防
「ブ、ブブ、ブーー!!」
 オークの汚らしい鳴き声と、欲望に満ちた視線が、入浴中のケルベロス達に突き刺さる。纏わり付く不快感に顔を顰めながら、いちご、舞刃、猛、レベッカ、晴明、ラズの六人は、辛抱強くオークの接近を待った。
 そして、高度的にケルベロス達の元以外へはいけない事を確認して、ラズが避難誘導のために動く。
 その時、他の女性客も異常事態を悟ったのか、悲鳴が上がる。
「皆様! 私達はケルベロスです! どうか私達の指示に従って行動してください!」
 ラズが狂乱する一般客の女性に告げると、騒ぎがほんの少しだけ収まる。
 それと同時に、
「はあああああっ!!」
 飛行オークのお株を奪うように飛翔し、仕掛けたセイヤの奇襲。流星の如く煌めいた、重い飛び蹴りが一体のオークに炸裂する。
「ブー!?」
 呻くオーク。セイヤはそのまま、後ろを振り向かないようにしつつ、ラズにバスローブの入ったトランクを渡す。
「行け! その子達を頼む」
「はい!」
 ラズは頷き、トランクを受け取ると、女性客の背中を押して走る。誘導した先には、同じくトランクを手にした茜の姿。合流したラズと茜は、躓いて転んだ女性客達を支えながら、その肩にバスローブをかけてあげた。
「エイド! お願いします!」
 ラズが指示をすると、エイドはすぐに仲間のケルベロスを庇える位置についた。
「(……すぐに、合流します。だから、それまでは……)」
 茜は一瞬だけ振り返ったが、すぐに前を向き、女性客を巻き込まれない位置まで誘導していくのだった。

 セイヤが奇襲によって作ってくれた一瞬の間。その間に、いちご、舞刃、晴明は装備を整え、猛とレベッカは逃げる女性客から視線をこちらに逸らすため、武器だけを手に挑発的な格好で対峙した。
「くっ!」
 すぐ傍でそんな格好をされ、セイヤはさすがに顔を赤らめ、そうと悟られぬよう顔を逸らす。
 そんなセイヤの心情を知ってか知らずか、猛が胸を弾ませ、動く。
「さぁさぁ! テンションアゲアゲでいこ~~!」
 猛が龍を放つと、それがレベッカ以外の前衛に吸収され、力を増していく。それが一体どういう原理でそうなるかは不明だが、とにかく力が増すなら問題はない。
 次に動いたのは、いちごだ。
「お姉さん達を汚い目で見ないでください!」
 いちごは「殲剣の理」を歌い上げる。飛行オーク達は怒り、半数の敵意がいちごに集中する。
「いちごっ! 危ない!」
 いちごに殺到する三体の飛行オーク。舞刃は純白の羽を広げ、三体の内、先程セイヤが痛撃を与えた相手に狙いを定める。
 ――――蒼天舞翼衝! 蒼天翼家に代々伝わる強烈な奥義が、舞うように美しく急所を捉え、狙われた飛行オークをただの肉塊に変えていく。
 まずは、一体。
「そう簡単にやらせはしません!」
 残る二体の内、一体をレベッカのフォートレスキャノンが強かに打ち据えて動きを止めさせ、残る一体はエイドが注射器やメスをばらまいて惑わせ、オークは思わず自らの肉体を触手で鞭打った。
 これで、一先ずの危機は脱した。そう安心しかけた所に――――
「そんなに…しぼ・・・る・・・だ・・・はさませるの!?」
「待っ!? そんなにかけないでください!!」
 猛とレベッカの悲鳴が海辺に木霊した。
「お……お尻はダメ! ダメになっちゃうからダメ!」
 猛とレベッカは、いちごが気を引いたのとは別。残り三体の飛行オークに、ヌルヌルと蠢く八本の触手で全身を嬲られている。
 何も阻むものの存在しない、晒された猛の胸やお尻。それらの上を、まるで舐めるようにネットリと、触手が締め付け、這い回っている。
「うっぁっ!? ちょっ!? 息ができないで!? んんっ!!」
 レベッカは、また別の意味で悲惨だ。ドロドロの白濁とした溶解液を頭から全身に浴び、最後の砦であるタオルはボロボロ。噎せ返る異臭が鼻から喉からせり上がってきている。
「ふぁっ……ん、んんっ! ああっ!」
 また、毒性があるのか、レベッカは背筋を痙攣させながら呻いていた。
「ブ、ブブブ! ブブ!」
 その姿を見て、飛行オーク達が歓声を上げる。
「貴様!? 今助ける!」
 セイヤが魂を喰らう降魔の一撃で、猛を拘束していた飛行オークの触手を吹き飛ばすと、
「止めです!」
 晴明が達人の一撃で、二体目の息の根を止める。
「ボクの胸やお尻を……よくもやったな!」
 解放された猛は、オーラを溜めて状態異常を解除。そのまま怒りに任せ、旋刃脚でレベッカを拘束する触手を貫く。
「あたしを敵にまわした事を後悔しなさい!」
 そこへ舞刃が、手裏剣を高速回転されて二つの大竜巻を生み出し、三体目を挟み潰した。
「今助けますね!」
 猛と同じく解放されたレベッカに、すかさずいちごがサキュバスミストを施す。
 そして――――
「これでお相手はわたし達しかいなくなりましたよ?」
 背筋が凍えるような、茜の絶対零度の声色がオークを凍り付かせる。女性客を避難させるという重要な役割を果たし、ついに合流した茜のアームドフォートから放たれたフォートレスキャノンは、手傷を負っていたオークを塵芥に変えていく。
「ダメです、暴れないで下さい」
 一見冷徹。だが、その裏には止めどなく温かい血が通っている。人を守るため、ラズは容赦しない。それも、無関係な女性客に危害を加えようとしていたならなおさらだ。
 ラズの体内から、一気に電流が放出される。残る二体の内、一体は致命的な被害を免れたが、もう一体は痺れて指一本動かせない。いくら動かそうとしても失敗してしまう。
 格好の的となったオークに、晴明は告げる。
「導きましょう、あなたの還るべき場所へ!」
 ゴールド・シンクロドラゴンが召還され、オークは為す術も亡く無に帰した。
 残りは一体。ケルベロス達は合流は果たした。最早、死角はない。
 猛とレベッカも装備を回収し、着用した。猛はきらきらと光り輝く美しい身体を強調する。
「さあ! デストロイタイムの始まりだ!!」
 さらに、晴明が最後の飛行オークに向けて言う。
「私達はオークなんかに絶対負けたりしません!」

●女の敵、死すべし!
「ひっ! 触手が…入り込んで!? いやっ、そんな所に入らないで…ひゃうっ! そ、そこはだめ……あひぃっ! ひぎぃっ!? も、もうやめぇ……っっ!!」
 格好良く勝利宣言していたはずの晴明が、触手に肢体を余すところなく愛撫され、ビクビクと身体を震わせていた。油断禁物。負けフラグはもっと禁物という事なのだろう。
 ともかく、
「ブブブーー!!」
 ふいに飛行オークが茜に向け、溶解液を吐き出す。
「ブブブブブブブ!」
 白濁に塗れた茜に、オークは喜悦の雄叫びを上げた。
 しかし、服が溶け、肌が露出されるが、茜は顔色一つ変えることはない。
「何が嬉しいんでしょうか、これから死ぬだけの奴らにどんな醜態を見せたところで、何の感情も沸きません」
 むしろ、怯むどころか攻撃はさらに苛烈となる。
 茜のチェーンソー剣の刃が、触手を容易く切り裂いた。
「熱いですが、我慢してくださいね?」
 さらにレベッカの爆炎の魔力を込めた弾丸が飛行オークに降り注ぎ、
「打ち貫け!!魔龍の双牙ッッ!!」
 漆黒のオーラを漲らせ、黒龍を象ったセイヤの利き腕が飛行オークに叩き付けられ、呑み込んでいく。
「ブブブ……ブブ……ッ!」
 満身創痍の飛行オーク。集中砲火に耐えきれず、よろめいた。それでもその瞳は女体を求めるように女に向けられ、触手が蠢いている。なんという執念、執着心。だが、それでも終わりの時は近い。
「行くわよ、いちご! 2人で重ねて叩くわよ!」
 舞刃の声は響く。長い付き合いから、いちごはそれだけですべてを察する。
「アリカさん! 晴明さんをお願いします! 私は……っ!」
 いちごがアリカさんに属性インストールを指示しつつ、ブラックスライムを捕食モードに変形させ、オークを丸呑みにする。
「お姉さん、トドメお願いします」
「ええ! あたしに任せなさい!」
 息の合ったコンビネーション。動きの鈍ったオークに、蒼天翼家の奥義が再びベールを脱ぐ。真っ白な翼が、高揚して蒼く染まった。舞刃の美しい舞いは、どこか初撃よりもキレを増したように、最後のオークを消滅へと導くのだった。

●明日への休息
 シャワーがないため、女性陣プラス名誉乙女一名は、海水やお湯で汚れを落とした後、ゆっくりと入浴にいそしんでいた。
「わっ!」
 いちごがのぼせてフラつき、舞刃の胸にぽふんと突っ込むように倒れこんでしまう。
「わ、ご、ごめんなさいっ」
 どこまでも沈み込むような柔らかな感触に、思わずいちごは赤面してしまう。
「な、何してんのよ、ばか……!」
 対する舞刃は、言葉こそ怒っているような素振りを見せるものの、額をツンと指で弾くだけで済ませる。
「あ~気持ちいい~。ダメになっちゃいそうだね~」
「……それは……同感です……」
 猛が言うと、本日初入浴の茜は肩まで湯に浸かりながらしみじみと答えた。
「それにしても、皆様本当に大きいですよね?」
「あ、そうそう! そうです! 私もずっと思ってました!」
 ラズが恥ずかしそうに自分の胸を隠しながらポツリと言うと、レベッカが強く同意する。茜は興味なさげに、いちごは極めて個人的な事情で聞かないふり。
 対する巨乳勢の反応といえば。
「「「気にする事ない。重くて肩が凝るだけ」」」
 そんな、夢も希望もないものであった。
 最も、晴明だけは、日常的に胸が締め付けられる服装をしているため、情状酌量の余地ありといった所だろうか。
 そんなこんなで、女性陣達にとっては、最終的に満足な一日であった。

「…………」
 温泉から少し離れた所で、セイヤは黄昏れていた。彼も温泉は好きではあったが、さすがに女性陣の中に入りこむ度胸はない。
 セイヤは、無言で夕日を眺める。
 そして、一言呟いた。
「皆が出たら、俺も入るか」
 彼も戦闘で汚れている。それを洗い流したかった。
「……ん?」
 ふと、セイヤは視線の先に人影を見つける。どうも、少女のようだ。複数人いるようだ。少女達は、セイヤに向かって手を振ると、何事かを大声で叫び、そして頭を深々と下げた。
「…………」
 自然と、セイヤの口元に笑みが浮かぶ。
 ――――『ありがとう』
 それは、ケルベロス達に与えられる、最高のご褒美であった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年5月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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