モヒカンザコオークを誘惑せよ!

作者:紫堂空

●モヒカンオーク、出陣!
 触手に覆われた部屋の中。
 一人のドラグナーが、呼び出したオークへ命令を下している。
「グスタフよ、慈愛龍の名において命じる。お前とお前の軍団をもって、人間どもに憎悪と拒絶とを与えるのだ」
「ひゃっはー。敵がいれば逃げるが、敵がいなければ、俺達は無敵で絶倫だぜー」
 ギルポーク・ジューシィに指示を受けたグスタフは、情けないことを言いながら、自慢の虹色モヒカンを振ってみせる。
「……やはり、期待は薄いか。だが、無闇にケルベロスと戦おうとしないだけ、マシかもしれん」
「ひゃっはー。その通り、色気に迷わなければ、俺達は滅多に戦わないぜー」
「……」
 もはや何も言うまい。
 頭を抱えたくなるのを抑え、ギルポークは無言でただ魔空回廊を指差すのだった。

●よるときどきぶた
「あー、遅なってもたなぁ」
 鼻の頭にソバカスを散らした三つ編みお下げの眼鏡女子が、急いだ様子で走っている。
 レトロなアーケードゲームを愛する彼女は、珍しいものを揃えている良店を偶然見つけ、ついつい熱中してしまったのだ。
 電車を乗り継ぎ、地元に戻ってきたのは、もう日付が変わる頃。
 閑静な住宅街であるこの辺りは、夜遅くなるとろくに人も歩いていない。
 だが、それもいつものことらしく、特に不安を感じている様子は無い。
「っ!?」
 ――そんな彼女が足を止めたのは、触手の生えたモヒカン頭の豚の化け物達が、暗がりから躍り出てきたからだ。
「「「ひゃっはー!!」」」
「女は種つけだ~!! 繁殖されてぇかぁ~!!」
「な、な、な、なんなん!?」
 驚き戸惑う少女が我にかえり逃げ出そうとするよりも早く、モヒカンオーク達は我先にと少女に跳びかかっていくのだった。

●オークハンター、出動です!
「竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を始めたようです」
 セリカ・リュミエールが、集まったケルベロス達に静かに告げる。
 今回事件を起こすのは、オークを操るドラグナーである、ギルポーク・ジューシィの配下のオークの群れらしい。
「グループのリーダーはグスタフというオークで、手下のオーク共々、臆病だが非常に女好きという特徴を持っています」
 臆病なため、戦闘開始前にケルベロスを発見すれば一目散に逃げ出してしまう。
 標的となった女性が襲われるまでは、周囲に隠れて待っていなければならないだろう。
「戦闘が始まった後も、隙あらば逃げ出そうとするので、逃がさないような工夫が必要かもしれません」
 標的はデウスエクス、モヒカンオーク6体。
 見た目も行動も雑魚といった感じだが、戦闘能力自体は一般的なオークと変わりはない。
 それぞれ、赤、青、黄、緑、紫、桃色にモヒカンを染めているため、個体の識別は容易である。
 赤、青、黄のモヒカンが触手締めと触手溶解液を、緑、紫、桃色のモヒカンは触手刺しと溶解液で攻撃してくる。
 触手締めは、近くの標的一体を切れ味鋭い触手で締め上げ捕まえる。
 触手刺しは、先端を尖らせた触手を伸ばして離れた相手を貫き、衣服を破壊する。
 触手溶解液は、触手から魔法の液体を放ち、毒に侵す。
「また、自己回復と攻撃性を高める『欲望の咆哮』を全てのオークが使用してきます」
 現場となるのは、大阪市内の夜の住宅街。
 ほとんど人通りが無いので、巻き込まれる一般人の心配はないだろうが――。
「モヒカンオーク達を逃がさない為の作戦は用意しておいた方がいいでしょうか」
 女好きである事を利用して、女性のケルベロスが色気を振りまき、オークを魅了しつつ戦う……などはありかもしれない。
 顔を赤らめつつ、そんな風にセリカは忠告してくるのだった。
「うっふ~ん、あっは~ん。……よし、カンペキ!」
 なにがどう完璧なのか。ともかく、共に説明を受けていた夏川・舞は、自信満々に世紀末的豚退治に乗り出すのだった。


参加者
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)
花筐・ユル(メロウマインド・e03772)
皇・絶華(影月・e04491)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
虹・藍(蒼穹の刃・e14133)
夕霧・蛍(円光聖女・e14646)
久瀬・了介(二二二九七号・e22297)
アーニャ・クロエ(ちいさな輝き・e24974)

■リプレイ

●痴女じゃないよ、オークスレイヤーだよ
「卑怯な上、寄ってたかって弱者を弄るとは、見逃してはおけぬ。
 このオレが引導を渡してくれようぞ」
 大胆な水着姿で囮を務めるのは、目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)。
 ブタ相手に気分が悪いが、そうも言っていられない。
 パーフェクトボディで魅力を底上げし、精一杯怖がってみせるのだ。
 気分の悪さが顔色にも出て、脅えているように演出できるはず。
「臆病な相手を逃がさぬようにするか。
 難題だが力を尽くそう」
 皇・絶華(影月・e04491)は、あらかじめ現場周辺を地図で確認済み。
 相手が逃走に使いそうな道や、追い込んだり誘い出したりしやすい場所を調べてきており、やる気十分である。
 螺旋隠れを使い、目に付き辛い場所で潜んでいる絶華だが――その姿は、普段とは大きく異なっている。
 ゴスロリ衣装に身を包み、ヘッドドレスまでつけて、弱弱しい娘を装っているのだ。
(「……何故か解らないが私は依頼でしょっちゅう女装していないか?
 趣味ではないからな?」)
 だそうです。
「触手とか凄く嫌ですが……やるしかないですね。
 夏川さんも一緒に頑張りましょうですよ」
 夏川・舞に声をかけるのは、スリングショットと呼ばれる大胆な水着姿……をケルベロスコートで隠した、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)。
「うん、しっかり女の子を助けないとねっ」
 真理は舞と共に、塀の陰に隠れて、モヒカンオーク達が来るまで待機するのだった。
 そうして、暫く待っていると、夜道を足早に駆けてくる足音が聞こえてくる。
 それに合わせたように、反対側から、六つの荒々しい息遣いと雑な足運びでアスファルトを踏む音が。
 標的の方もやって来たらしい。
 予知であった瞬間まで、あと少し、もう少し……。
「「「ひゃっは――?」」」
「っ……」
 今にも少女に襲い掛かろうとしていたオーク達の動きと声が、不意に止まる。
 オークの後ろから、コートを脱いで水着姿になった真理が飛び出し、そのパーフェクトボディを見せ付けたのだ。
 ……いや、一人ではない。
 白いチャイナドレスに身を包んだ虹・藍(蒼穹の刃・e14133)も、襲われる女性を豚共から遠ざけんと参戦。
 スリットの深さをいかし、太ももをチラチラ見せて、オーク達の気を引こうとする。
「「ブ、ブッヒ~!」」
(「……キモイ」)
 沸き立つモヒカンブタに、素直な感想を浮かべる藍。
 実は中に短パンをはいているのを伝えてショックを与えてやりたくなるが、そこは我慢。
「ひっ、あなた達はだれ?
 キャーッ、助けてーっ!」
 二人と一緒に囮として前に出た真は、何体かのオークがこちらを向いたのに合わせ、いかにもか弱そうな演技をしてみせる。
「そ、そこまでです……!」
 オーク達の注意が完全に少女から逸れた瞬間、飛行能力を生かして付近の民家の上で身を隠していた夕霧・蛍(円光聖女・e14646)が、少女とオークの間に舞い降りる。
(「……うぅ、恥ずかしい」)
 上空からの落下。スカートなので、豪快に下着が見えてしまう。
 恥ずかしがる蛍だが、オークを引き付ける役に立つと割り切ってみせる。
「え、え……?」
「遅くなってすまない。もう大丈夫、後は我々に任せて君は安全な場所に逃げてくれ」
 突然オークが現れたと思ったら、その後ろから女性が現れて、なにやらオークを誘惑。
 と思えば、空から女の子が降ってきて――。
 状況を理解する前に次々と事が起こり、混乱するばかりの被害者。
 民間人最優先の元自衛官、久瀬・了介(二二二九七号・e22297)は、そんな少女を素早く保護。
 地球人特有の親しみやすさを生かし、安全な場所へと誘導していく。
(「別の意味で恐ろしいオークなのです、女性好きで襲うなんて天罰が必要ですね」)
 少女の救出が終わり、アーニャ・クロエ(ちいさな輝き・e24974)もオークの前に姿を現す。
 蛍と同じくオークの正面に立ったアーニャは、セクシー系アルバイト(!)の制服を着て、短いスカートで注意を惹きつける。
 オークへの思いとは違い、おどおどとした感じを見せて、相手が襲いたくなるように仕向けるのだ。
「や、やめて……」
 一方、背後からオークに『見つけられた』真は、相変わらずの演技を――。
「――なんて、言うとでも思ったのか?
 この屑共め、このオレが相手になってやろう。
 煎兵衛、さっさと出てきな!」
 途中でやめ、ナノナノの煎兵衛に指示を出す。
「私などが言えた義理でもないけれど……不愉快なのよね
 女性の扱い方を知らないゲスヤロウな方々には、早々に退場願いましょうか」
 被害者が無事逃げられたのなら、あとはこの不埒な豚共を倒してしまうだけ。
 最後の一人。
 隠密気流を使い、密やかに待機していた花筐・ユル(メロウマインド・e03772)は、オークの群れの前へゆっくりと姿を現す。
 胸元の白が目立つ、魅惑的な黒の看護服に身を包んだユルは、地球人と同じ見た目をとってはいるが――。
 やはりサキュバスらしく、仕草や表情から色香を隠しきれていない。
「な、なんだなんだ?」
「どうなってんだ?」
「メスが一人逃げちまった」
「だがいっぱい来たぞ」
 ……なら、いいか。
 どうやら彼らの乏しい脳ミソは、そういう結論をはじき出したらしい。
「「「ひゃっはー!!」」」
 威勢だけはいい掛け声を上げて、六匹の豚はケルベロス達へと向かってくるのだった。

●月の無い夜にはブタの悲鳴が良く似合う
「弄られる気分はどうだ。足も竦むか?」
 敵よりも味方よりも早く。
 真は、攻撃的オーラを纏っての超高速突撃を敢行。
 轢き逃げアタックで、前衛のブタ三匹を痛めつけていく。
「ぷぎぃ~!」
 苦痛の声を上げるモヒカンオーク達。
 行動するより先に一発を貰ったことで、三体のオークの足が止まったようだ。
「簡単だが大事な役目だぞ。しっかりやりな」
 指示を受けた煎兵衛が、事前の相談どおり、最初に倒す予定の緑モヒカンオークにハートのカタチをした光線を投げかける。
 繁殖の為に女を襲うオークだが、魔法の力には逆らえず、煎兵衛にめろめろになって動きが鈍る。
「聴いてください!」
 前列をかき乱されて統率が取れていない間に、アーニャは歌によって魂を呼び寄せ、前で戦う六人と二体へと纏わせる。
 これで相手が過剰にやる気になっても、その意気をくじく事が出来る。
 歌に合わせてウイングキャットのティナが羽ばたき、オークのけがらわしい攻撃への耐性を前衛陣へと付与。
(「思ったより、恥ずかしいですね」)
 オーク達が逃げ出さないようにと、お色気たっぷりな仕草で歌ってみせたのだが、元々内気なアーニャには少々ハードルが高い。
「ふふ、瑞々しくて素敵な華がこんなに沢山なのだから、捕り零すことはないでしょうけれど」
 さらに護りをもう一つ。
 万一の場合には自分も攻撃に回る事を匂わせつつ、ユルは守護星座を地面に描き、前衛へ護りの光を与えていく。
「カノ、遠慮はいらないわ。
 ……喰い千切りなさい」
 ユルの言葉で、助手であるミミックのカノは、近くの赤モヒカンに勢いよく喰らいついていく。
 色々なイミで厄介な『服狙いの攻撃』を仕掛けてくるオーク達を先に始末してしまうつもりなのだが、前衛を務める三匹が絶妙な感じで邪魔になっている。
「まずは緑から。一体ずつ確実に」
 続く藍は、縛霊手から巨大な光弾を放ち、後衛のオーク共をまとめて吹っ飛ばす。
「ひ、ひかりが……」
 光の影響を受け、緑モヒカンの体の自由が利かなくなったらしい。
 これは幸先がいい。
 すかさず、蛍がエアシューズで疾走。
 炎を纏った蹴りを、緑モヒカンへ右、左――テンポよく二発叩き込む。
「「ひゃっは~! 新鮮なパンチラだ~!!」」
 派手に蹴り飛ばされた仲間を気にすることなく、翻ったスカートの奥に覗くものに興味しんしんの豚の化け物達。
 なるほど、聞いていたとおりの色好みである。
「……借りるぞ」
 パンツを見られて羞恥に顔を染めている蛍を横目に、少女を戦場から遠ざけて戻ってきた了介が仕掛ける。
 銃撃。
 袖口に隠し持った、仲間の形見である拳銃での連射である。
「ぱわっ!」
 地獄の炎によって撃ち込まれた弾丸は、正確に急所に命中。
 緑モヒカンの頭部を破壊し、断末魔の悲鳴を上げさせる。
 ケルベロスの連携により、あっさりと一体やられたオーク達の間に動揺が走る。
「逃亡の警戒を!」
 絶華は仲間に注意を呼びかけ、近くの赤モヒカンへ、流星の如き跳び蹴りを叩き込む。
 出鼻をくじいて足を止めさせるつもりの一撃だが、予想以上に当たりが良かったらしく、大きなダメージを与えられた。
「おおっ!」
 スカートから見える絶華の白い太ももは、その筋の方々には大変目の毒である。
「夏川さんは指天殺と達人の一撃を主軸に、いざという時は分身の術をお願いするですよ」
 真理は舞に指示を出しつつ、次なる標的にアームドフォートを向け――主砲一斉発射!
 紫モヒカンのオークを派手にぶっ飛ばす。
 砲撃開始と共に、ライドキャリバーのプライド・ワンも炎を纏って突撃し、赤モヒカン豚を轢いていく。
(「中々うまくいかないのですよ」)
 戦闘時も豚共の誘惑を意識する真理だが、その無表情さから、そこまでの成果を上げられていない。
「「「ひゃっは~! 触手で陵辱だ~!!」」」
 ……とはいえ、相手がそこまで危機感をもっていない今なら、まだなんとか通用するようだが。
 ケルベロスの攻撃が途切れたことで、モヒカンオーク達が攻勢に移る。
「オンナ! オンナ! オンナ!!」
 叩かれて焼かれて、いい感じに下調理の進んだ赤豚が、性への執着によって生命の活性化を図る。
「……ゃ……」
 その様子に、絶華は脅えた様子でか細い悲鳴を上げてみせる。
 中々の演技派である。
 その反応に嗜虐心をそそられたのか、青と黄のモヒカン豚が触手を伸ばして締め上げにかかる。
 一本、二本――素早い動きで何とか躱す絶華だが、さらに追加。
 服を破り、身を貫く触手と触手液が、後方のオーク達から放たれる。
「させないですよ!」
 咄嗟に身代わりになった真理は、触手によって、ただでさえ面積の少ない水着に孔をあけられる。
 どろどろ液の方は、アーニャ……のティナが受け止め、濡れ鼠ならぬ濡れ猫にされるのだった。
「このっ、お返しだよっ!」
 仲間の被害に怒った舞は、赤モヒカンの喉を人差し指で深々と抉っていく。
「っ、とと。
 ……う、うふ~ん。あは~~ん」
 そのえぐい攻撃に、引いているオーク達。
 舞はそんな彼らを逃がすまいと誘惑してみるのだが……絶望的なまでに色香が足りない。
「ええと……もっと恥じらいを匂わせた方がいいですよ?
 女性の恥ずかしがる姿にこそ、オークも男性もグッとくるみたいですし」
 見かねた蛍が、男を誘うにはどうしたらいいかを教えてくれる。
「わ、私もお願いするですよ」
 そのやりとりに、真理も自身の色気の無さを解消するために参加する。
 期せずして始まった、戦闘中のお色気講座。
 それがどれだけ役に立つかは――これからのオーク退治で存分に見られるだろう。

●逃げるオークを逃がさず倒せ
 そうして、触手に服を破かれたり、絡みつかれたり、液をかけられたりしながらも、ケルベロス達はオークを一匹また一匹と潰していった。
 残ったのは、後に回された青と黄のモヒカンオーク二体だけ。
「こ、こんなはしたない格好……で、でも、私だってケルベロスの端くれですっ。
 人々を守る為なら、下着くらい……!」
 流石に逃げ出そうとするオーク達に、蛍が『ヴァイオレット・トルネード』を仕掛ける。
 逆立ちし、足をこれでもかと開いた状態で行われる連続蹴りが、二体のオークに振る舞われる。
「「ぶひぃ~っ!」」
 痛手を受けながらも嬉しそうな豚の様子は、明らかに正気ではない。
 一体何が起きたのか。
 というのは、実に分かりやすい。
 技名のヴァイオレットとは、蛍が今穿いている下着の色――つまり、そういう事である。
(「うむ……敵を引き留めるためとはいえやはり……その……目に毒……だな」)
 敵の動きを注視しているため、自然と蛍の行為も視界に入る。
 絶華は、次々と展開される女性陣の誘惑行動に赤面しっぱなしである。
「は、恥ずかしいに決まってるですよ……!」
 さらに、蛍にレクチャーを受けた真理が、恥ずかしさを前面に出して水着のアナや胸元を手で隠しつつ攻撃。
 相手の意識を逃走から逸らしつつ、伸ばした攻性植物に捕食させるのだ。
 さらにプライド・ワンも、女性陣の身代わりとなって白濁液まみれになったボディをスピンさせて、豚の肉へ叩きつける。
「……痺れちゃう程の甘い夢を、魅せてあげる」
 茨姫の子守歌(ドルンレースヒェン・ヴィーゲンリート)。
 ユルが放った黒曜の茨の棘は、相手の欲へ絡みつき、悦楽の夢へと誘う。
 オーク達の女に対する欲望を糧として茨の茂みは深くなり、その動きを止めるのだ。
「天罰をお見舞いします!」
 まだまだ終わらない。
 続いてアーニャが『無慈悲な輝き(グリム・アグライア) 』で雷を落とし、オーク二体を痺れさせる。
「貴方の心臓に、楔を」
 星虹。
 藍は、虹色に輝きを纏う星銀の弾丸を、指先から連続射出。
 青豚の心臓に、重力の楔を打ち込んでやる。
「ちにゃ!」
 心(の臓器)がキュッとなって、昇天する青モヒカン。
 残るは、黄色いモヒカンの豚一匹だけだ。
(「挑発して怒らせ逃走阻止……はまずいか。
 女性達に気が向いているなら、自分はなるべく意識されない方がいいのか?」)
 せっかく相手の意識がお色気方面に向いているのだからと、了介は無言で死角へ回り込んで密やかに攻撃。
 意識外からの爆破をお見舞いしてやるのだった。
「消し飛べ!」
 さらにもう一発。
 真が見えない爆弾により、ラストオークを吹っ飛ばす。
「我が身に降り立つは暴食の狂獣! 四凶門「饕餮」……開門!!! ……ぐぎ……ぎが……GaaaAAAAAA!!!!!』
 爆発で打ち上げられた黄髪豚を、『四門「饕餮」』で古代の魔獣の力を宿した絶華が激しくカタールで突き刺しまくり、喰い千切る。
「残念だったな……私は男だ! 絶望を胸に散るがいい!
 ってなんで貴様そんなに嬉しそうなんだ!?」
 死にゆくオークへ最後の追い討ちをと考えた絶華だったが、相手の『繁殖は繁殖として、オトコノコもいいよね』という特殊なシュミによって空振りに終わる。
 ――最後の最後で微妙に締まらなかったものの、ケルベロス達は肉体的には大した怪我もなく、極めて手際よく汚豚達の処理を済ませたのだった。

●汚れはお風呂でキレイにね
「オツカレサマ。
 お嬢ちゃんは無事だったかな?
 異変と隣り合わせの生活だ、気をつけな」
 オーク退治が終わった後、被害者少女の無事を確かめにいったケルベロス達。
 真は少女を気遣う言葉をかけ、ユルは落ち着くように温かい飲み物を渡してやる。
『前の依頼で、オークにも褌文化があり、おしゃれに気を使うことが判明しているが、今回、モヒカンをカラーリングする個体を発見。
 今回も見た目について、気にしていることを伺わせた。キモイけど』
 戦いで壊れた周囲の修復を終えた藍は、たまにつけている『オーク観察日記』に、新たな一ページを書き込んでいる。
「……うぐぅ……べたべたになったな……皆で湯につかるのもいいかもしれん」
 ユルに着替えやタオルを受け取った絶華は、ふるふると顔についた汚液を振り飛ばしつつ、そんな提案をする。
「殺戮と違う恐怖は、あるかもですね……」
 同じくオーク被害を受けた真理も、触手やそこから吐き出される液体のハカイリョクに唸っている。
「あぁ、それやったら、この先曲がったとこに――」
 助けた少女に、夜中でも大丈夫なスーパー銭湯を教えてもらったケルベロス達。
 いやらしい豚の化け物と戦い傷ついた心と体を、温かい湯にゆっくり浸かって癒していくのだった。

作者:紫堂空 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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