ほとばしる汗が

作者:一条もえる

「素晴らしい! じぃつに素晴らしぃッ!」
 興奮した声が薄暗い部屋の中に響く。
「飛空オークッ! 上空より敵に迫る、まさに夢のオークどもよ!」
 男はひとしきり高笑したのち、ピタリとその笑いを収めて顔をしかめる。
「しかし……量産型とはいえ、今の性能ではまだ不十分だなァ。さらなる性能向上のためには……んん~? 新たな因子の取り込みが不可欠か」
 その人物、マッドドラグナー・ラグ博士は居並ぶオークどもに、
「行け、我が英知の結晶! 飛空オークども! 人間の女を襲い、新たな子らを生み出すのだ!
 そやつらを実験体に用いることで、飛空オークはさらなる性能向上がはかれるであろう!」
「ぶひぶひ~!」
 オークどもは歓声を上げ、下卑た笑みとともに涎をしたたらせた。

 某所、テニスコート。
「いくよー!」
「はーい!」
 夕刻のこの時間、近くにある高校の女子テニス部が練習中であった。
 新入生を迎え、練習にも熱が入っている。
 春の陽気に、うなじも胸元も上気し、汗ばんでいた。
「よし、つぎー……んん?」
 今にもサーブを打とうとしていた主将が、空にポツポツと見えた黒い点に気がつき、怪訝そうな顔をした。鳥……ではない。
 打ち損ねて落ちたボールが、コートを転々とする。
「ぶひひひひ~ッ!」
 黒い点はあっという間に大きくなり、そしてオークどもの下卑た歓声が響いた。そのときには、すでに遅い。
 飛来したオークどもは触手を伸ばし、次々に少女たちを捕縛していく。
「むわッと女の匂いが立ち上るぶひ~ッ!」
「きゃぁ~ッ!」
 ふだんは厳しい主将も、腰に絡まった触手に抱え上げられ、アンダースコートを露わにされてしまっては悲鳴を上げるしかない。
 見られても仕方のないものとはいえ、ここまで露出するものではない。
「こんな布、邪魔ぶひ~!」
 ところがオークの興味は、そんなものにはない。
 触手はそれにとどまらず、アンダースコートを無残に引き裂き……!

「竜十字島のドラゴン勢力です」
 セリカ・リュミエールが血相を変えて姿を見せた。
「主謀者は、マッドドラグナー・ラグ博士です。
 この人物によって生み出された『飛空オーク』が、女性たちを狙って襲い来るようなのです」
 飛空といっても正しくは、滑空と言うべきであろう。自由に飛行するだけの能力はなく、高所から目的の場所まで飛んでくるだけのようである。
 しかしながら、襲撃目標である女性を発見し、直接降下するという攻撃方法の『効率』は侮れない。
 今回、オークどもはテニスコートの裏手にある山の上から滑空したのであろう。
 ならば、事前に避難してはどうだろうか?
 それは不可能だ。もしそうなれば、オークどもは予知とは異なった場所を襲うであろうから。
「ですから、女子学生たちを避難させるにしても、オーク襲撃の直前でなければなりません。
 彼女たちを敵から完全に隔離するには、時間が足りませんね。
 敵は練習中の彼女らに狙いを定めたようですから、たとえば練習を中断させて着替えさせるなどしておくと、敵の狙いから外れてしまうかもしれませんね」
 と、セリカは眉を寄せた。

「ドラゴンの勢力伸長を許すわけにはいきません。なにより、女子学生たちを守らなくては。
 皆さん、よろしくお願いします」


参加者
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)
長門・海(誘導弾系魔法少女・e01372)
大神・凛(ドラゴニアンの刀剣士・e01645)
鏡月・空(ボクスドラゴンは添えるだけ・e04902)
ヴィンセント・ヴォルフ(モノクローム・e11266)
大原・大地(飛空オークの参加者にご武運を・e12427)
唯織・雅(告死天使・e25132)

■リプレイ

●さわやかな汗
「いくよー! それぇッ!」
 長門・海(誘導弾系魔法少女・e01372)が元気なかけ声とともにボールを打った。
「うまいうまい」
 テニス部の主将も笑顔で応え、海が打ち返しやすいように、リターンする。
「雅ちゃんも波琉那ちゃんも、ちょっと振るくらいしてみたら?」
「え……、私ですか……? はぁ、では、せっかくなので……」
 と、促された唯織・雅(告死天使・e25132)もラケットを手にした。
「そうね。真似くらいしてみましょっか」
 喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)も、もたれていた金網から身を起こした。
 彼女らは関係者を装い、女生徒たちに混じって練習に参加、あるいは見学していた。
 一方で大原・大地(飛空オークの参加者にご武運を・e12427)は、
「この日本で、また目にすることになるなんて」
 と、物陰に隠れて腕組みをし、渋面を作っていた。仲間たちを、愛する人を奪っていった飛行オークども。
「……私が、残らず成敗してくれよう」
 大地の横顔を見つめていた大神・凛(ドラゴニアンの刀剣士・e01645)は、静かだが、力強く呟いた。
「不埒な豚どもは、バラバラにしますか」
 と、鏡月・空(ボクスドラゴンは添えるだけ・e04902)は口の端を持ち上げてわずかに笑った。
 ふたりの心情が染みたのであろうか。大地は気を取り直した様子で、
「案外と、オークの方がまともかもしれないですね」
 などと、苦笑して見せた。
「自分など、同じしたたり落ちる汗なら女生徒などより、筋骨隆々の肉体に流れるそれの方が、見ていたいと思うのですが……ヴィンセント君は違いますか?」
「……オレ?」
 気のない様子で女生徒たちを窺っていたヴィンセント・ヴォルフ(モノクローム・e11266)。
 それでも、大きくラケットを振った拍子に大きく、というか全開にまくれ上がった海のアンダースコートの方には、何となく視線が向いたりして。
 そこに声をかけられたものだから、彼にしては珍しく頓狂な声が出た。
 一方で、テニスコートからは少し離れた場所でストレッチを行っていた年少の女生徒たちに、フィニス・トリスティティア(銀・e26374)が声をかけた。
「ちょっと集まってくれる? ここにいるのは、あなたたちだけ?」
「はーい。そうでーす」
「なんだろー?」
 関係者を装ったフィニスの言葉に、女生徒たちは素直にコートの方へと向かった。
 危険かもしれないが、事前に逃がすわけにいかないのなら集まってもらっていた方がよい。
「それにしても、『テニス』ってどんな遊びなんでしょう? あの網で、何かすくったりするんでしょうか」
 ラケットを手に駆けていく女生徒たちの後ろ姿を見送りながら、フィニスは小首を傾げた。

●空からの襲撃者
「よし、つぎー……んん?」
 サーブを打とうとしていた主将が怪訝な顔で、空の一点を凝視した。
「ぶひひひひひ!」
 それは瞬く間に大きくなり、オークの姿と、下卑た高笑いとがコートからも捉えられるようになる。
 女生徒たちは真っ青な顔で悲鳴を上げた。逃げようにも、滑空してくるオークどもの速さは、走って逃げられるようなものではない。
「ぶひぶひー! 滴る汗の臭いが、鼻腔をくすぐるぶひー!」
 一番に地に降りたったオークは歓声を上げつつ、主将に向けて触手を放った。延びた触手がうなじに、脇に、腰に、そして内腿に絡まっていく。ぶちぶち、と布地の裂ける音。
「たまらんぶひ、このしっとりした肌!」
「そんなにその子がいい? それより私と一緒に、いいことしましょうよ!」
 波琉那が跳躍し、鼻の下を伸ばすオークの横面を、渾身の力で蹴りつけた。不意をつかれ、吹き飛ぶオーク。
「そう、たとえばコートの整備とかね!」
 と、波琉那は微笑む。
「気持ちの悪いこと、言わないでよッ! 殺人サーブ!」
 海がラケットを、地に降りたたんと高度を下げてきた後続のオークどもに突きつける。
 しかし放たれたのは、白球ではなくミサイルの束。顕現したミサイルはオークどもに狙いを付け、噴煙を巻き上げ次々と襲いかかった。
「魔法使いが、魔法弾しか撃てないって思った? 残念、SAMでしたッ!」
「ぶぎーッ!」
 SAM(地対空ミサイル)に追われたオークは慌てふためき、オークどもの隊列が乱れた。逃げ切れず命中したオークが、無様に地に落ちる。
「もういっかいいくよッ!」
 と、宣言して放ったのは、今度は魔法弾。不意を突かれたのか、喰らったオークは受け身さえ取れずに落下した。
「……主将、さん。落ち着いて、避難を」
「あなたたち……?」
「ケルベロス……です。皆さんのことは、必ず、お守りします、ゆえ。さ、お早く……」
 雅は怪訝な顔を見せる主将を手を取って助け起こし、避難を促した。
 主将は狼狽えながらも頷き、スカートを押さえ内股で逃げていった。
「さぁ、他のみんなも早く」
 女生徒たちを、フィニスが誘導する。
 しかし新たに降りたったオークどもが、
「逃がすなぶひー!」
「そのムレムレ肌は、俺たちのものぶひー!」
 と、追いすがってくる。
「逢瀬の相手を、お間違え、なく。お相手は、私たちです……」
 立ちはだかった雅の口から、寂しい歌声がこぼれる。『寂寞の調べ』は敵に相対する仲間たちに力を与えていく。
 フィニスのウイングキャット『トゥードゥルス』が飛びかかって、襲い来る触手を鋭い爪で、次々に打ち払った。
「邪魔するな、ぶひ!」
 怒りと性欲に燃えるオークはさらに触手を伸ばしてウイングキャットを払いのけると、何度も何度も、触手を叩きつけた。
「いけない!」
 大地は盾を構え、敵に迫る。コートの脇に隠れていたケルベロスたちも、すでに飛び出している。
 大地は硬化させた鋭い爪で、触手を引き裂いた。
 もう1匹のオークが放った溶解液を高く掲げた盾で受け止めた大地。彼のボクスドラゴン『ジン』も主に呼応するように一声鳴いて、触手に向かって噛みつき、仲間への攻撃を防いだ。
「空くん!」
「任せてください!」
 と、空が大地の陰から飛び出す。
 一瞬、周りの木が時季はずれの花を付けたのかと錯覚した。『桜花剣舞』。横一文字に振るった斬霊刀は2匹のオークの腹を、等しく切り裂いていった。
「おのれ、溶かしてやるぶひ! 本当は溶かすのは、メスの服だけでいいぶひ!」
「待つぶひ! メスだって、ビリビリ引き裂く方が興奮するぶひ!」
「ぶひぃ……一理あるぶひ」
「いま、どうでもいいだろうそんなこと」
 ミサイルに打ち落とされたオークどもが立ち上がる。その、今にも溶解液を放とうとしたオークに向けて、ヴィンセントはバトルオーラを向ける。放たれたオーラの弾丸を喰らい、なにごとか言っていたオークは吹き飛ばされ、審判席を破壊して倒れた。
「これが、オークか。あまり、見ていて気持ちのいいものではないな。なんというか、いろいろな意味で」
「ハッキリ気持ち悪いって言っていいんだよ?」
 と、海。
「あぁ。気持ちの悪い連中だな」
 凛は素直に同調し、斬霊刀を中段に構えて静かに息を吐く。心と体とが、一体となっていく。
「ライト!」
 主の声に応じ、ライドキャリバーが動く。波琉那に蹴り飛ばされたオークもすでに立ち上がり、触手を向けてきた。
 しかし従者のそれは陽動で、逃げていく女性の方に向かっただけ。凛はそれとは逆の方からオークに迫り、刀を一閃する。先ほどの傷あとを正確に狙った斬撃で、頬肉は削がれて口腔が露わになり、片目もつぶれる。
「あなたたちの背後、それに能力……聞きたいことはいろいろとあるのよ!」
 と、波琉那が追撃せんと構えを見せた。
「ぶひひひひーッ!」
 激怒は痛みを上回ったらしく、オークは8本の触手を大きく広げて怒鳴った。その先が、ぶくりと膨らんで波琉那に向く。
 放たれた溶解液が、肌を焼く。そればかりか、皮膚から浸透する毒が体をむしばんでいこうとする。
「く……負け、ないからね!」
 しかしそれに耐えた波琉那は振り返り、笑みを見せた。
 視線の先はフィニスだ。
「女生徒たちは逃がしたわ」
 戻ってきたフィニスが構築した雷の壁。それが、敵のおぞましい毒の浸透を防いでくれたのだ。

●決着
 改めて、オークどもと対峙するケルベロスたち。
「これ以上の増援は……ありません、ね」
 と、雅は天を仰ぐ。
 彼女は『寂寞の調べ』と『ブレイブマイン』を繰り返し、仲間たちを奮い立たせている。
 ウイングキャットの『セクメト』も翼を広げ、主とともにケルベロスたちを支援した。
 同様に、フィニスは『エレキブースト』を、波琉那は『紙兵散布』を使っている。
 敵は5体。 
 大地と空の攻撃を受けた2体が両翼に立ち、海に撃ち落とされた2体が後方に控える。
 最も深手を負っているのは正面に立つ、真っ先に降り立った1体だ。
 波琉那と凛の攻撃を受けて、立っている地面に血溜まりができるほど流血していたが。
「ぶひぶひぶひー! この程度で、心の触手は折れないぶひーッ! しっとりむっちりしたメスを、手にするぶひーッ!」
 欲望にまみれた雄叫びをあげると、なんと傷がふさがっていったではないか。それどころか、今まで以上の力を出してきたようにも見える。
「ぶひーッ!」
「くッ……!」
 8本の触手が、次々とヴィンセントに襲いかかった。1本2本と防いだものの、その隙をついた3本目の触手に胴を打たれてよろめいた。敵はなおも触手を叩きつけ、額が割れ、鮮血が滴る。打たれた左腕には、ヒビくらいは入ったかもしれない。
「まだ、その程度だ」
 呟いたヴィンセントはナイフを手に跳躍した。
「どこを見ているのです!」
 空が大声を上げ、バトルオーラが大きく揺らめく。音速を超えた拳に打たれたオークは、さきほどの威勢はどこへいったか、弱々しく呻いた。
 オークの、潰れた左目。その死角からヴィンセントは飛び込んだ。相手の首元を深々と切り裂くと、鮮血が吹き出る。その血を浴びたヴィンセントに、力が蘇った。
 流れ出た血は、ついにオークを絶命させる。
「おのれ、ぶひー!」
 両翼の2匹が雄叫びを上げ、打ち掛かってくる。
「やらせませんよ! 自分もオークも、体型は同じような生き物! それが悪事を働くなんて、無視できないッ!」
 飛びこんだ大地に向かって、2匹は触手を次々と乱れ打ちしてくる。
「負ける……ものか、これで防ぐ!」
 叫びとともに、手にした盾は2倍の大きさにも巨大化した。敵の触手を防ぐとともに、受けた手傷もふさがっていく。
 しかし、合計16本もの触手に襲われ続けては。
 後列にいた2匹も、掌のように広げた触手から、溶解液を打ち出してきた。
「させるか!」
 凛は白と黒、対照的な拵えの二刀を振るって、その毒液を払う。
 だが、完全には防ぎきれない。
「汚らしいし、臭いし……!」
 フィニスが顔をしかめ、身体を蝕む毒液を払いのけた。
 掌を天にかざして薬液の雨を降らせると、たちまち仲間たちの傷が癒えていく。
 しかし、仲間を庇う大地や凛の受けた傷は思いのほか深く。
「輝ける甘露にて、彼の者に力の一片を分け与えたまえ……」
 波琉那が『黄金の蜂蜜酒』で、その不足を補った。
「退くぶひぃ! 女をよこすぶひぃ!」
 オークどもはなおも逃げた女生徒たちに未練があるらしく、怒鳴り声を上げる。
「情熱的な誘いと、品のなさは、違うもの、ですよ……お間違えなき、よう」
 雅が雷神に祈りを捧げると、呼び招かれた迅雷が轟音とともに敵陣を薙いでいった。
 命中した後列のオーク。より深手を負っていた方はそのせいで動きが遅れたか、直撃を受けて動きまでも固まる。
「その武器、ここで破壊する!」
 空が斬霊刀を大上段に構え、跳躍した。狙ったのは両翼のうち、1体。触手の根元をめがけて刀を振り下ろしていくと、筋肉を破壊されたか、触手はだらりと垂れ下がって力を失った。
 それと同時に、もう1体にはボクスドラゴン『蓮龍』が飛びかかって注意を引きつける。
「奥義! 岩龍閃ッ!」
 気を取られていたのが災いした。凛が振り下ろした二刀に、オークは触手を掲げて防ぐことさえ出来なかった。頭蓋を割られたオークは石のように体を強ばらせながら、そのまま後ろに倒れる。
「トマホ~クッ!」
 海の叫びを聞いたオークどもは身構えたが、彼女は構えこそ斧でも投げつけようかというものだが、その手は空だ。
「ぶひひひひ、武器も持たずになにをする気ぶひ!
 薄い胸は物足りないぶひが、汗の染みついたその服装は悪くないから、慰み者にはしてやるぶひ!」
 残った一翼のオークはせせら笑い、思うように動かぬ触手だが海に向けて打ち付けようとした。
「誰が触らせるもんですか! 小さくたって、大事な胸なの!」
 ちょっと本気で怒った海が放ったのは、再び『真マジックミサイル』。彼方から飛来した巡航ミサイルはオークを直撃し、爆散した。
「またまた残念、『トマホーク』違いでした!」
「えぇいッ!」
 攻撃の手が緩んだ隙に、これまで防御に徹していた大地が、拳を握りしめて突進した。
 音速を超える拳はオークのはち切れんばかりにふくれた腹に食い込んだ。
「己に仇成す、理を受けろ」
 ヴィンセントが静かに呟き、吐瀉物をまき散らすオークに触れた。研ぎ澄まされた魔力は呪詛となって体内を駆け巡り、オークの身体は原形をとどめぬほどに引き裂かれた。
「ぶ、ぶひぃぃぃぃッ!」
 ここに至り、取り残された1体のオークは背を向け、満足に動かぬ身体で逃亡する。
 空が苦笑し、弓を構える。
「これ以上はダウトですよ。……最後に言い残すことは?」
「ぶひ……汗ばむ肌の触り心地は、最高だぶひ」

「危険な目に、あわせて。申し訳、ありませんでした……」
 頭を下げる雅に、女生徒たちは「こちらこそ助けてもらって」と手を振る。
「……う~ん。
 体液とか、肉片とか。残留物がないわけじゃないけど、これだけでドラグナーの策がわかるかどうか。微妙ね」
 と、波琉那は戦場から何かしらの成果を持ち帰ろうとしていた。
「ん、これは?」
 と、手にした布きれ。
「それ、わたしの、パ……」
「あぁ、パンツ」
「きゃー!」
 スカートを押さえてもじもじしていた主将が、無残に敗れた布地をひったくる。
「まぁ、わからないことを考えてもしかたがありません。皆さん、お茶にしませんか?」
 大地は肩をすくめて、皆に声をかけた。
「いいわね。ちょっと休憩したら、そのあと私にもテニス、教えてもらってもいいかしら?」
 と、フィニスが楽しそうに問うている。
 飛行オークは全滅したわけではなく、黒幕であるラグ博士が次にどんな手を打ってくるかもわからない。
 それでも、こうして防いでいる限り、必ず相手は痺れを切らしてくるだろう。
「決着をつけるときだって、決して遠くはないはずです……」
 仲間たち、女生徒たちの方を眺めながら、大地は小さく呟いた。 

作者:一条もえる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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