飛ぶ豚彩る悪意

作者:幾夜緋琉

●飛ぶ豚彩る悪意
「……ふ、ふふふふ、はははは!! 良し、出来た、出来たぞ!! 量産型飛行オーク!!」
 と、白衣の上に紫色のマントを羽織った、何処か科学者風の男が嬉しそうに笑う。
 その男の前には、豚の顔に、下品な笑みを浮かべたオークの姿。
 しかし、普通のオークとは違う、その背中には、風を受ける翼の様なものが生えていた。
 そしてそのオークに対し、左から、右から……様々な確度からじーーーっ、と見回した科学者の男。
「……ムムム!? そうか。量産型とは言え、実験ではこれ以上の性能は出せぬ様だな。これ以上の性能を得るには、新たなる因子の取り込みが必要不可欠!!」
 と、目をキランと光らせた後。
「よし、お前に命じる! 今から人間の女を襲い、新たなる子孫を産み出すのだ! お前達が産ませた子孫を実験体にする事におり、飛行オークは更なる進化を遂げる!! さぁ、行けっ!!」
 と指示を出すと、その飛行オークはブヒィィィ、と嬉しそうに豚っ鼻を鳴らし、意気揚々と町に向かっていくのであった。
 
「もー、何してんのよー。ダメだってば♪」
 と、女性の声が響くここは、山梨県のとある温泉施設の、女湯の露天風呂。
 富士山を見渡すことが出来るという事で、夕刻の夕焼け空の下に見ながらの露天風呂というのは……とても気持ちが良い。
 だからこそ、ちょっと気分が開放的になって、いちゃついたりしている女性達が居たりする。
 ……そんな安らぎの一時に、建物をよじ登る影。
 先ほどの、翼のようなものを生やしたオーク。
 そして頂点まで登ると、露天風呂に入浴する女性陣に狙いを定めると、ばさっ、とジャンプ。
 風を受け、空から女湯に向けて滑空し……そして、取りあえず、落下地点にいた女性に上から襲いかかる。
 突然のオークの襲撃……露天風呂にいた女性陣は悲鳴を上げるが、オークは意気揚々と、触手を伸ばしたりして、襲いかかりはじめるのであった。
 
「皆さん、集まって頂けましたね? それでは、早速になりますが、説明を始めますね」
 と、セリカ・リュミエールは、ケルベロスらを見渡すと共に、早速説明を始める。
「竜十字島のドラゴン勢力……これが新たなる活動を始めたようです。今回事件を起こすのは、オークの品種改良を行うドラグナー、マッドドラグナー・ラグ博士です」
「このラグ博士が産み出した、飛行オークという飛行型オークが女性達を襲うという事件が発生しているのです」
「飛行……と言っても、この飛行は高い場所から滑空し、目的の場所に移動するだけの能力で、自由に飛行する、という事は出来ません。ですが、高所から滑空しながら襲撃目標である女性を見つけだし、その場所に直接降下するというのは、かなり効率的で脅威です」
「そこで皆様には、飛行オークに襲撃される女性を守り、飛行オークを撃破してきて頂きたいのです」
 と、言うとセリカは続けて。
「この飛行型オークは群れを成しており、6体の飛行オークの集団となります。そして彼らは、山梨県の富士山が見えるとある露天風呂に出没した様です」
「空を滑空し、襲撃場所を探すため、事前に避難活動というのが出来ません。事前に避難させてしまうと、違う温泉施設へと向かっていってしまう様なので……ですから、女性達の避難は、オークが降下する直前から始める必要があります」
「尚、滑空後のオーク自体は、普通のオークと同じ戦闘能力しか持ちません。飛ぶにはまた高い所まで登らないと行けませんので……ある意味、飛べない豚、という事になるでしょう」
「とは言え周りには露天風呂に入っていた女性達が数多く居る状況です……足元も、滑りやすくなっていますので、注意して下さい」
 そして、最後にセリカは。
「このオークを放置しておく事など、出来ません。破廉恥なこのオークを、確実に仕留めてきて頂けるよう、皆さん、宜しくお願いします」
 と頷くのであった。


参加者
フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)
上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)
狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)
叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076)
リルカ・リルカ(ストレイドッグ・e14497)
ルーディス・オルガニア(禁書に蝕まれた道化・e19893)
トライリゥト・リヴィンズ(炎武帝の末裔・e20989)
逆十字・飛燕(性根が汚い男の娘・e26345)

■リプレイ

●飛ぶ豚に
 山梨県は富士山を見渡すことが出来る、とある温泉施設の露天風呂。
 夕刻ともなれば、夕焼け空を見ながらの露天風呂に入ると、とても風情がある光景を見上げることが出来る。
 ……でも、そんな露天風呂の、安らぎの一時をぶちこわしにする事件。
「……豚もおだてりゃ木に登る、空も飛ぶ……か。でもこいつらは落下してるだけだよね。まぁ落下してきたら来たで倒すだけだけど」
 と、リルカ・リルカ(ストレイドッグ・e14497)が肩を竦め、呟く一言。
 そう、今回の依頼は、女性を辱めるオークの依頼。
 そのオーク自身、今迄のオークとは違い、空を飛ぶ……いや、空から滑空してくるという、今迄に無い特徴を持ったオーク。
 それも、全てはマッドドラグナー・ラグ博士の研究成果の賜……いや、賜とまでは言えないかも知れないけれど。
「しかしなんでオークを飛ばそうと思ったんだろう……効率を考えるなら、元から飛べる種族だっているのに……もしかして生理的な嫌がらせなのかな?」
 と、叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076)が小首をかしげると、それにフィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)は。
「そうだな……女性を辱めるオーク。何が何でも許す訳にはいかない。露天風呂に入り、一息を付いている女性達。それを空から滑空し、襲いかかる……絶対に、許せない」
 ……何だか、フィオリナの拳は怒りに震えている。そしてそれにリルカが。
「しかしラグ博士というのもまた、なんというか、オークの研究って楽しいのかな? 楽しいのからやってるんだろうけど。でもそれを目の前で粉微塵にしてあげたら楽しくないだろうね。あたしは凄く楽しいけど。そういう事に喜びを感じるんだ」
 そして、更に。
「それにしてもオークかぁ……相手にするのは初めてだけど、ほんとなんというか、アレな連中だね。でも大丈夫。向こうも年齢は気にしないけどあたしも気にしない。容赦無く粉砕してあげるよ、うん」
 納得したように頷き、そして狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)が。
「ああ、そうだな。んじゃ作戦確認しくか。って言っても女性陣しか女湯入れねえし、男性陣、大丈夫かー?」
 と言うと、それにルーディス・オルガニア(禁書に蝕まれた道化・e19893)、逆十字・飛燕(性根が汚い男の娘・e26345)、トライリゥト・リヴィンズ(炎武帝の末裔・e20989)ら三人は。
「ん……と、僕達は、掃除のおばさんに変装して、侵入でしたよね?」
「ああ。一応事前にこの施設の管理人の方には事情説明の上、立ち入り許可は得てくれたんだよなー? トライリゥト」
「ああ。中々大変だったが……隣人力をフル活用して、どうにか許可は貰えたさ。しかし……まさか、女装をする羽目になるとはな……」
「そうですね……ばれないか、凄く不安です」
「だよな。180センチ超えてる、そんな長身のおばちゃんがいるか、って所だよなぁ」
 ……ある意味男性陣の不安は当然。
 第一女湯に忍び込むなんて事、依頼でもそう簡単にする事ではないし……依頼だとしても、バレるバレないの瀬戸際なのが、一層不安を覚える所。
 ……まぁ、何にせよ、男性陣はしっかりと掃除のおばさんに衣装を着替え、それぞれ準備を整えていく。
 そして仲間達が着々と準備を整え……皆、覚悟も決まったところで、上月・紫緒(テンプティマイソロジー・e01167)が。
「囮をやるけど、どんな相手でも来てくれるなら、私も愛を届けないとね。さぁ……行きましょ♪」
 と微笑みを浮かべ、それにトライリゥトも。
「そうだな。空飛ぶ豚、きっちりと倒しておこうぜ!」
 と拳を振り上げ、そしてケルベロス達は、女湯へと侵入していくのであった。

●飛ぶ豚の影
 そして、すっかり空も夕暮れ田頃。
 ケルベロス達は、男性陣、女性陣に大きく分かれ、囮作戦を開始する。
 元々露天風呂に入浴していた一般女性達は……幸い、掃除のおばさんに変装した男性陣とばれてはいない。
 とは言え湯気の先には、女性達の裸がある訳で……。
「……ば、ばれませんように」
 と、内心とてもドキドキしているルーディスや。
「……」
 流石にいつもの調子を出さずに、ひっそりと目立たないように隠密気流を展開するトライリゥト、そして何処か鼻歌を歌いながら掃除している飛燕。
 ……そして三人が苦労している一方、女性陣は。
「ふんふーん、ふふーん♪」
 と上機嫌で入ってくる紫緒を戦闘に、夜魅、フィオリナ、秋沙にリルカも次々と入ってくる。
 湯気を纏いながら、暖かい露天風呂の中に肩まで浸かり、空を見上げる……時折吹く風が気持ちよい。
 ……そして、時は経過。
 すると……露天風呂の屋根の方から、視線を……。
「……ん」
 と、夜魅が一瞥し、仲間達に視線を配す。
 そして、夜魅は。
「うーん……ちょっと長湯しすぎたかな」
 と言って、風呂から一端上がる。
 ……健康的な裸身を、敢て隠さずに……立ち上がって、大きく背伸びをする。
 そんな夜魅に合わせるように、フィオリナも。
「そうだな。ふぅ……熱い熱い」
 と、同じように立ち上がって、汗を拭う。
 そんな二人の裸身に、男性陣は……慌ててそちらを見ない様に視線を少し外す。
 しかし二人がそういう行動をしたということは、オークが来るという合図でもある訳で……見てはいけないと思いつつ、其方の方に注意を向けなければいけない……葛藤。
 ……と、その時。
 屋根の方から、翼に風を受けて、降下してきたオーク。
 上手い具合に滑空し、オークは……夜魅をターゲットに、六匹が次々と到達。
 当然、そんなオークの出現に、周りの一般女性達は悲鳴を上げて逃げ惑う。
 悲鳴を上げれば、更にオークは勢いづいて女性達を捉えようと、触手を次々と伸ばし始める。
 そんなオークの触手を見て、夜魅が。
「っ……や、やめろ……来るな……」
 と、恐怖を露わにした声で、怯えるように叫ぶ。
 そして、フィオリナと紫緒が。
「みんな、危ないから急いで逃げてくれ!」
「そうだね、豚さんの相手は私たちに任せて、皆さんは避難ですよー」
 と一般女性達に声を掛ける。
 そしてそれを切っ掛けにして、飛燕、ルーディス、トライリゥトの男性陣も、掃除のおばさんの服装のまま、女性陣を避難させる。
 ……勿論、避難する女性陣はみんな、裸な訳で、対応もやっぱりドギマギしてしまう。
「か、火急のことにて、失礼しますっ!!」
「っ……い、いいから、早く服を着てくれ」
 と言いつつ、どうにか避難誘導。
 そんな逃げる一般女性達を逃すまいと、六体のオークの内数体が追いすがる。
 そんなオークと一般女性の間に、更にリルカと秋沙が立ち塞がる。
 ちなみに二人は水着着用で、安心。
 オークはそんな水着着用に、何処か不服そうに鳴くのだが。
「……しかし年齢関係無いとか節操ないね」
「うん、そうだね。本当オークって、下品な考えしか持って居ないのかもね」
 と二人の言葉が投げかけられる。
 そして一般女性達が脱衣所へと逃げていく間、女性陣でオークに対峙。
 オークは鼻息を荒くしながら、触手を振り回し、動きを拘束する様に蠢く。
 それら攻撃を夜魅は一手に引き受ける。時折嗜虐心を誘う様に、恐怖を呟く事で……オークを更に増長させる。
 そして、オークがターゲットを夜魅にしている横で、フィオリナ、紫緒、秋沙、リルカも一般女性達にオークの狙いが行かない様に、進路妨害を継続する。
 ……数分で、一般女性達は一通り避難誘導を完了し、露天風呂にはケルベロス達の他には居なくなる。
 そして……男性陣が、戦列に復帰する。
「お待たせ……っ……」
 とルーディスは言うと共に、少し顔を紅くする。
 仲間達が水着、もしくはほぼ裸の状態で戦っている状態であるのは、ある意味刺激が強い。
 そんな刺激の強い状況に、トライリゥトが。
「……すまん、いいから、まずは服着てくれないか!?」
 と言うも、夜魅、フィオリナは。
「ん、そんな服着替えてるヒマないぞ?」
「そうだ。さっさとオークを倒すんだ」
 と。そして紫緒も。
「そうだね。大丈夫大丈夫。さぁ……みんな揃ったし、始めましょうか」
 と呟き、そしてふふっ、と妖艶に微笑んだ後。
「私の翼で貫いて、私の炎で抱きしめて。この愛をナイフで突き刺すの♪」
 と、黒翼の流星を放つ。
 それに続けて夜魅も螺旋掌・獣牙で壊アップを自己付与すると、トライリゥトは-守護者-で夜魅の回復。
 その回復に合わせ、トライリゥトのボクスドラゴン、セイが属性インストールで更に夜魅を回復。
 そして、ルーディスは進化の切り札を使用し、妨アップを自分と飛燕に付与すると、飛燕は制圧射撃でオークの周囲を撃ち抜いていく。
 更にリルカはフルフラットと制圧射撃を交互に放ち、オークの行動を更に妨害。
 そして仲間達の行動の最後に、フィオリナ、秋沙がクラッシャー効果と共に。
「この変態共が!」
 と、声を荒げながら、Neu Celestial Feuerの一撃、秋沙も銃撃剣を撃ち抜いていく。
 ……そんなケルベロス達の猛攻。
 翼を持ったとしても……降りてしまえば再度飛び上がることが出来ないオーク。
 それ以上の反撃を帰す事も出来ずして、一匹、また一匹……と、次々に倒されていく。
 4ターン目で1匹目が倒れ、更に3ターン、3ターン、2ターン……と、段々と倒れるオークのペースも早まっていく。
 そして……十数分の後、残るオークは後一匹。
 オークもいつの間にか自分だけになっていたのかと気づいたようで……きょろきょろと、周りを見渡し、グォォオ、と悲鳴のような鳴き声を上げる。
「ふふ……」
 と、そんなオークに微笑み、そして。
「ねえ、アナタは私の愛を受け止めきれる? 受け止めて、受け止めて、私を愛してよ? 私もアナタの憎しみを受け止めるから……もっと憎んでよ?」
 と言い放ち、血襖斬りの一閃。
 そしてルーディス、飛燕、トライリゥトも。
「そうだな。其は破滅の炎。ソドムを焼きし灼滅の雨。ここに全てを灰燼と成す……」
「そうだ! 豚箱にはおくらねえ! ジゴクにおくってやるよぉ!!」
「おら、こいつで、焼き豚になりやがれ!」
 とファイアボールに、嬲り殺しの乱れダムダム弾、絶空斬の集中砲火。
 その猛攻で、最後のオークも最早ズタボロ。
 そして、最後に。
「さぁ、これでトドメだよ!!」
 と、秋沙が一気に近接し……そして、天叢雲剣を、その頭の方からたたき落とし……飛ぶオークは、全て滅殺されるのであった。

●安息の一時
「……ふぅ……」
 と、深く息を吐き……呼吸を整えるフィオリナ。
 どうにか無事、オークを倒した事に対する安心と……特に男性陣は、張り詰めていた気を少し緩められる事に対する安堵。
「そうだなぁ。終わった終わったー。でも差ぁー、おかたづけしましょうねぇー」
 と、飛燕が男性陣を誘い、色々と壊れた露天風呂で壊れた所を色々、ヒールアビリティで修理。
 崩れた岩等も力を合わせて元に戻す。
 そして避難していた女性陣には、紫緒やフィオリナが向かい。
「皆さん、大丈夫です。もう心配無いですよ」
「そうだな。オークは倒した。今、壊れた部分を修理しているから、もう少し待っておいてくれ」
 と、女性陣に声を掛けて安心させていく。
 そして……一通り片付けが終わった所で。
「これで……良しっと。さて、と事件が解決したなら、平和な入浴を楽しむとしようぜ!」
 とトライリゥトが言うと、それに夜魅が。
「ああ、そうだな! って……ここ女湯だぞー。男湯があるんだから、ソッチに行った行ったー」
 と、男性陣をさっさと叩きだす。
 そしてオークとの戦いで掻いた汗を、夕焼けの暮れゆく富士山を見上げながら、のんびりと入浴し、一時を過ごすのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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