モヒカン軍団消毒任務

作者:桜井薫

 どことも知れぬ、渦巻く魔空回廊の前。
 和装のような装束に身を包んだドラグナーは、部下に呼びかける。
「グスタフよ、慈愛龍の名において命じる。お前とお前の軍団をもって、人間どもに憎悪と拒絶とを与えるのだ」
 ドラグナーからグスタフと呼ばれたのは、一体のオークだ。鮮やかな七色に染めたモヒカンを額に戴き、腹部から特徴的な二本の触手をうごめかせている。
「ひゃっはー、まかせとけー。敵がいれば逃げるが、敵がいなければ、俺達は無敵で絶倫だぜー」
 モヒカンのオークは、逃げるという単語から想像されるうしろめたさや情けなさなど微塵も感じさせない、堂々とした口調で言い切る。
「……やはり、期待は薄いか。だが、無闇にケルベロスと戦おうとしないだけ、マシかもしれん」
 ある意味潔い部下の言葉を、ドラグナーは無表情に評し、独り言のように呟いた。
「ひゃっはー。その通りだ、お色気に気を取られたりしなけりゃ、俺達はめったに戦わないぜー」
「……」
 堂々と己の臆病を誇るオークに、ドラグナーは無言で魔空回廊を指差す。
 モヒカンのオークとその部下たちは、思い思いに荒ぶる歓声を上げながら、渦の中に飛び込んでいった。
 
 ところは変わって、大阪市内某所。
 人気のない夜の路地裏を、一人の女性がふらふらと歩いている。
「ふんふーん、ふふふーん♪……」
 よくわからない鼻歌とともに機嫌よく蛇行している様子から、しこたま飲んだ帰りというところだろう。
「……!? なんやぁ、あんたら……」
 と、その目前に、渦巻く魔空回廊が出現する。
 そして、けばけばしいスタイルに身を包んだオークたちが、まだ状況を把握してない彼女をあっという間に取り囲む。
「ひゃっはー! 酔っぱらった女は、いいコトしてからお持ち帰りだー!」
「ひゃっはー!」
 哀れな女性は悲鳴を上げる暇もなく、オークたちの触手に絡め取られていった……。
 
「押忍! 皆、よう集まってくれた。竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を始めたらしいんじゃ」
 円乗寺・勲(ウェアライダーのヘリオライダー・en0115)は、彼にとっての正装……応援団長の学ランに身を包み、集まったケルベロスたちに事件の説明を始める。
「今回事件を起こすんは、『ギルポーク・ジューシィ』っちゅう、オークを操るドラグナーじゃ」
 勲によると、そのドラグナー配下であるオーク『グスタフ』が、子分のオークたちを率いて女性を襲おうとしているという。
「こん『グスタフ』と配下のオークどもには、わかりやすか特徴があっての。オークん中でも目立つほどの女好きなんじゃが、えらく臆病な性根の持ち主なんじゃ」
 問題のオークたちはその臆病さゆえ、事件を起こす前にケルベロスたちの姿を見かけると、そのまま逃げ去ってしまうという。
「連中が逃げると、他所でまた違う事件を起こしてしまうからのう。今回予知された被害者が襲われるまでは、うまいこと周りに隠れて、奴らをおびき寄せて欲しいんじゃ」
 また、戦闘が始まった後でも隙あらば逃げ出そうとするので、殲滅するためには逃がさないようにする工夫が必要になるだろう、と勲は言う。
「今回『グスタフ』配下のオークどもが現れるんは、大阪じゃ。いわゆる飲み屋街の路地裏で、酔っ払ったおなごが一人でふらふら歩いとるんを襲おうとしちょる」
 現場の周辺は雑然としていて、身を隠す物には事欠かないだろう、とのことだ。
「奴らの攻撃手段や能力そのものは、他のオークどもとそう変わらん。触手で叩いたり締め付けてきたり、溶解液を飛ばしてきたり、ってとこじゃ」
 ただ、7体と数が多いこと、そして前述の隙あらば逃げ出そうとする臆病さにはくれぐれも注意してほしい、と勲はケルベロスたちに念を押す。
「臆病で面倒な連中じゃが、特徴をしっかり掴んで戦えば、きっと倒すことができるはずじゃ。たとえば、そうじゃのう……」
 勲は顔を真っ赤にして口ごもりつつ、オークたちの並外れた女好きぶりに付け込んで、女性のケルベロスがオークたちを惹きつける……といった手段を作戦の一例として提示する。
「はいっ! 私はあんまりお色気に自信ありませんけど……みんなで頑張れば、きっと大丈夫ですよねっ」
 天野・陽菜(オラトリオのミュージックファイター・en0073)が元気良く手を上げ、屈託ない様子で勲に応える。
 ともあれ勲はいつも通り『押忍!』の気合いで、ケルベロスたちを送り出すのだった。


参加者
宗像・孫六(刀犬士・e00786)
安理・真優(サキュバスのトリガーハッピー・e01498)
大粟・還(クッキーの人・e02487)
ウォーレン・エルチェティン(砂塵の銃士・e03147)
朝倉・くしな(鬼龍の求道者・e06286)
ピヤーニツァ・プーシカ(シャドウエルフのブレイズキャリバー・e14785)
イヴリン・タイプキュート(ブレイズマイハート・e22185)
京緋・依織(刃をふるいし朱巫女・e22856)

■リプレイ

●消毒準備
 夜更けの繁華街に、ケルベロスたちは静かに身を潜めていた。
 目標は、オークたちの殲滅。頭の悪いチンピラ然とした傍若無人のふるまいと、極端に臆病で即逃げようとする過度な用心深さを併せ持った厄介な敵……ヘリオライダーから聞いた特徴をふまえ、ケルベロスたちは油断なく戦いに備える。
「さ~て、汚物は消毒だよ♪」
 安理・真優(サキュバスのトリガーハッピー・e01498)は、身を隠しつつもどこか嬉しげに、青い瞳をきらめかせる。
 今回のオークどもの影に暗躍する親玉・グスタフを筆頭に、心底オークが嫌いな真優。そんな嫌悪の対象には、デウスエクスとしての名すら口にしたくない……オークの『汚物』呼ばわりには、そんな思いが込められていた。決して、それ以外の他意はない。
「そうだそうだ、汚物は消毒でござる!」
「女性に手を出そうだなんて……万死に値しますね。すぐに消毒……いえ、殲滅しましょう」
 宗像・孫六(刀犬士・e00786)と京緋・依織(刃をふるいし朱巫女・e22856)も、同じ女性として、真優の嫌悪感には大いに共感するところだ。汚いものは、綺麗さっぱり消毒したい。それが共通認識というものだろう。
「ふんふーん♪……」
 と、ケルベロスたちのひそひそ話を遮って、脳天気な鼻歌が辺りに響き渡った……予知された被害者に間違いないだろう。
「ひゃっはー! 酔っぱらった女は、いいコトしてからお持ち帰りだー!」
「ひゃっはー!」
 そして、これまた予知の通り、オークたちが現れた。トゲトゲした肩パッドやチェーンやベルトが主成分の派手な格好に身を包み、欲望全開のIQ低いセリフ回し……特徴を確かめるまでもなく、今回の標的に違いなかった。
「誇りや気品のないオークというのは、私からするとあまりよろしくない存在です。どかんとやっつけちゃいましょう……さあ、女性陣のアピールタイムですね」
 オークを遠目に見て、朝倉・くしな(鬼龍の求道者・e06286)が周りの女性陣に目配せをする。くしなも女性だが、彼女は戦闘中のお色気大作戦に備え、今は力を蓄える。
「ふわぁ……ちょっと飲み過ぎたでござるぅ……」
 孫六が、無防備な薄着に包まれたナイスバデーを見せつけるように、よろよろと歩き出す。事前に近くの屋台で一杯引っ掛けてきたので、リアリティはバッチリだ。へそ出しスタイルのアグレッシブなアレンジをされた和服の胸元は、彼女がふらりと動くたびに、ぽよんたゆんと魅惑のたわわをゆらめかせる。
(「臆病な~、豚は~、面倒ね~。でも~、まぁ~、逃がしてあ~げない。ん~、でも~、色仕掛けって~、あんまり~、やり方が分かんないのよね~……こんな感じ~?」)
「暑いわ〜。お酒がおいしいから〜、服なんかいらないわね〜」
 また、ピヤーニツァ・プーシカ(シャドウエルフのブレイズキャリバー・e14785)も、ふらふらとおぼつかない足元で、度数の強い酒をあおりながらオークの前に出る。心の地獄化を酔いで補い自分を保つ彼女にとって、酒に酔った様子は日常そのもの。とりあえず脱いでおけば間違いないだろうと、ピヤーニツァはよろけながら羽織った上着を取っ払う。
「あと3ヶ月で三十路とか嘘だろ……オークでいいから付き合いたい」
 だらしない格好でこちらもふらふらとオークに近づくのは、大粟・還(クッキーの人・e02487)だ。設定としては、焦り始めた肉食系女子。正直、女子力はドラム缶に詰めて東京湾に沈めてきた系女子な還にとって、『付き合いたい』という気持ちはあまり実感が湧かない。だが、薄いTシャツから透ける農作業で鍛えたメリハリボディは、色仕掛けとして十分なだけのけしからん魅力だ。
「ひゃっはー! 今日は酔っ払い女が大漁だ!」
「狩り放題だぜ、ひゃっはー!」
 色仕掛け組の魅力に、オークどもはあっさり食いついた。元々理性など希薄な連中のこと、初心者向けの釣り堀でもここまで簡単に釣れないであろう、安定の爆釣っぷりだ。
(「さすがにアンなのに、裸見せたくないからね」)
 こちらはまだお酒の飲めない年齢ということで、真優は別方向からのアプローチを仕掛ける。それは、用意しておいた水バケツを被っての、濡れ濡れスケスケ攻撃だ。水が滴る髪とシャツを惜しげもなく見せつけ、不用心に通りに歩き出す。
「こっちは、水濡れの小娘だ! まとめて食っちまおうぜ!」
「女相手限定の、俺たちの無敵ぶりを見せつけてやるぜ、ひゃっはー!」
 裸を見せたくないゆえの選択だが、ある意味裸よりもエロス溢れる着衣水浸しは、これまた効果抜群だ。
 囮部隊が十分な効果を上げたのを見て取り、ケルベロスたちは戦いの準備を整える。
 ひゃっはーしていたオークたちがひゃっはーされる、運命の時はすぐそこだった。

●消毒開始
(「まァ、そりゃ敵が無いから無敵、間違っちゃァいねェンだが……そういう奴に、未来を奪われるような人が生まれちゃァいけねェからなァ……!」)
 大はしゃぎのオークたちに内心苦笑いしつつ、ウォーレン・エルチェティン(砂塵の銃士・e03147)は、突然の事態に呆然としている酔っぱらいの女性に、防塵マントを掛けてやりながらそっと声をかける。
「怖ェ思いしたな……。だけどもう、大丈夫だ。立てるかね?」
 この場に初めて現れた、オーク以外の男性。よくわからないが、どうやら自分を助けてくれるらしい……頭が真っ白な被害女性の心象風景としては、おそらくこんなところだろう。驚きで声が出ないのか、彼女は黙って首を横に振った。
「……わかった。そンじゃ、ちゃちゃっと片付けてくっからよ。フラつかねェ様にな、お嬢さん」
 ウォーレンは軽々と女性を抱き上げ、あらかじめ目星をつけておいた安全地帯まで走る。幸い色仕掛け組の活躍で、その様子はオークに気づかれることはなかった。
「さて……即刻、消えてもらう」
 欲望にテンション最高潮となったオークに、隠れていた依織が古代語の魔法を唱え、石のような重みを誘う光線を浴びせる。
「汚物なんかにもったいないけど……アタシの二丁拳銃、超えられるものなら超えてみなッ!」
 依織の光線でよろめいた1体のオークを含め、複数のオークたちに真優の『双載銃騎』が牙を剥く。両手の銃に装填された弾丸は、彼女の嫌悪感を乗せたかのように、激しい当たりとなってオークたちに襲いかかった。
「ひゃっはー、話が違うぜ? 野郎ども、逃げるぜー!」
「とんずらだー、ひゃっはー!」
 次々と飛び出してくるケルベロスたちと、依織と真優の攻撃に、オークたちは早速逃げの体制だ。
「そうはさせじと、脱がしたり破いたり縛ったり……えい」
 そこに満を持して飛び出したのは、くしなだ。
 彼女の心に決めていた今回の役割は、『脱がし役』……一応火力面の担当をする心づもりもあったが、オークどもの逃走阻止に一番効くのは、何よりもお色気。ならば脱がせばいいじゃない。必要とあらば自分も脱いでもいいじゃない。服がないなら炎を纏えばいいじゃない。この完璧なロジックのもと、彼女はおもむろに、一番近くにいた還のジャージをぺろーんとめくり上げた!
「おっと!」
 女子力的な問題で可愛い悲鳴とはいかなかったが、いざとなったらくしなに任せるつもり満々だった還は、自ら協力してジャージを脱がされた。くしなの竜の爪でイイ感じに破れた布のすき間からは、還のナイスなCカップがポロリと見え隠れしている。
「ひゃっはー! 大きすぎず小さすぎずのおっぱい、最高だぜー!」
 性格は色気無しでも、還のサービスショットは、オークを惹きつけるには十分過ぎるだけのセクシーさだった。逃げようとしていたオークはあっさり足を止め、再びケルベロスたちに欲望の触手を伸ばしてくる。
「いつだって、どこだって、あたしはとびきり可愛いけど……あんた達は運が良いわ! だって、今のあたしはトクベツ可愛いんだからっ!」
 そんなオークたちの中に、可愛らしい声を張り上げ、さっそうと降臨した金髪ツインテールのキュートなケルベロス。それは、イヴリン・タイプキュート(ブレイズマイハート・e22185)だった。特製の変身コスチュームに身を包み、そこから発揮されるプリンセスモードも輝かしく、バッチリ可愛いポーズを決める。
「ひゃっはー! 胸はぺったんこだが、ヤバ可愛いぜー!」
「こいつから食っちまおうぜ、ひゃっはー!」
 可愛さを目に焼き付けさせるその技は、オークたちの視線と攻撃意欲を思い切り引き付けたようだ。ちなみにイヴリン、男の娘なのだが、オークどもには見分けがついてないらしい。
「さあ、この超絶的可愛さにひれ伏しなさい……って、きゃあ!」
 オークの触手に胸元を引っ叩かれたイヴリンが、可憐な悲鳴を上げる。実際に襲われてみたらやっぱり痛かったので、ちょっと腰が引け気味……そんなイヴリンの様子も、オークの欲望をいい感じに煽っているようだ。
「拙者らの名前を言ってみるでござるよ!」
 隙を見せたオークに、孫六の鋭い斬撃が襲いかかる。炎をまとったその一撃は、『星火燎原の太刀』……彼女とっておきの必殺剣だ。また孫六のオルトロス『弥七』も、口にくわえた剣でオークを切り裂く。
「ひゃあ……俺たちは三歩歩くと忘れちまうから、名前は言えな……ぐはぁ!」
「やべえ、今度こそ逃げるぜ、ひゃっはー!」
 孫六と弥七の連携が、頭の悪さを誇示しようとしたオークにとどめを刺した。仲間が倒されたオークたちは、再び逃走の体勢に入る。
「え!? ちょ、まっ……く、くしなさん!?」
 すかさずくしなは、今度は依織に脱がしの矛先を向けた。依織は少し抵抗しつつも、彼女の白い肩があらわになる。
「依織さん、そう遠慮なさらずに……じゃあ私も脱ぎますね」
 脱がしが足りないと見て、くしなは自らも服の束縛を解き放つ。元々非常に露出度が高い彼女の服装からさらに脱ぐとあっては、これはもう裸と言っても差し支えないぐらいの脱ぎっぷりと言っていいだろう。一応、各方面から叱られるところは、ちゃんと地獄の炎で隠してあるので大丈夫だ(?)。
「裸だ裸だ、ひゃっはー!」
「脱がしかけも、これはこれでいいぜー!」
 このオークども、まったく懲りてない。渾身の脱がしと脱ぎによって、再びオークはあっさり引き返してきた。
「そうよ〜、逃がさないんだから〜」
 ピヤーニツァは、そんなオークたちに超加速の突撃で足止めを誘う。どこか酔ったようにふらふらとした突進は、酔拳のような軌跡でオークたちを蹴散らした。そこに、くしなのマインドリングから放たれる光線が追い打ちをかける。
「ひゃ、あ、あわばっ!」
 防御を削ぐ、すなわち衣服へのダメージを与えることもある光の戦輪が、オークのワイルドな胸当てを真っ二つに切り裂いた。要らないサービスカットと謎の悲鳴と共に、2体目のオークが地に沈んでゆく。
「遅くなりましたよ、って!」
「ひぎゃあ!」
 女性を安全な場所に送り届けて駆けつけたたウォーレンが、別のオークに御業を叩きつけ、さらに1体の動き止める。
 これで残りは4体。ケルベロスたちの戦いも、折り返しを迎えようとしていた。

●消毒本番
「ひゃあ……おい、今度こそ、本当の本当にヤバいぜー!」
「やっぱり逃げてこその俺たちだ、ひゃっはー!」
 相次いで倒された仲間たちの姿に、再びオークは逃走の気配を固める。先ほどまでとは比較にならない、固い決心をもって逃げようとしているようだ。
「はふぅ……激しく動くとお酒がまわるでござるぅ……!」
 すかさず孫六は、酔いが回ったていで刀を杖のようにつき、艶やかにしなを作った。戦いに上気した肌はほんのりと桜色に染まり、しっとりと汗のにじんだ長い髪がうなじにかかる。控えめに言って、大変に色っぽけしからん光景だ。
「あ〜、動いたら〜、もっと身体が熱くなってきたわ〜……もう、ダメ〜」
 さらにピヤーニツァも、酔っ払った感を全面に出し、すでにだいぶ薄着な装いをはらりと脱ぎ捨ててみせる。普段は包み隠している大きな胸は惜しげもなく弾み、こぼれんばかりの谷間と魅惑のモザイクゾーンが、圧倒的な存在感をもって晒されていた。
「ひゃひゃひゃ、ひゃっはー! やっぱり、酔っぱらいは最高だぜー!」
 学習能力? 知らない子ですね。とばかりに、またまたオークたちは見事、二人の色香に釘付けになった。そしてテンション高く振り回された触手が、ケルベロスたちに襲いかかってくる。
「ちょ、ちょっと、そんなモノで攻めてこないで……きゃあ!」
 運悪く、1体のオークの触手が、激しい勢いでイヴリンの身体を叩きつけた。触手本体とぴゅっと飛ばされた溶解液は、イヴリンを大変倫理的に危険な姿に陥れた。とはいえ、男の娘の貞操と大事な部分だけは、どうにかブラックスライムで死守されたようだ。
「い、良いわよ、このくらいした方が、ヤツらを逃がさないでしょ!」
 イヴリンは頬を真っ赤に染めながら、怒りの表情で胸元のコアブラスターを解き放つ。動揺が出たのかオークには当たらなかったものの、さらに胸元が際どくなったので、まあ結果オーライというところだろう。
「あはははは……!」
「う、うわ……わびゅ!」
 刺激的な状況に刺激されたかのように、真優は恍惚とした表情で頭を狙い銃を撃ちまくる。銃弾の軌跡はかすかな弧を描き、鮮やかにオークの額を貫いた。無様に喉を反らして、オークが断末魔の悲鳴を上げる。
「ほ、本当の本当の本当に、ヤバくなってきたぜ!」
「に、逃げるぞ!」
 残された3体のオークが、ケルベロスたちを押しのけようとパニックに陥り、その触手を振り回す。
「あっ……こ、これはこれで……!」
 破れかぶれの触手が、トリガーハッピーで撃ちまくっていた真優に直撃する。もっとも彼女にとっては、その痛みもそれはそれで、戦いの高揚と快楽を誘うものだったらしい。刹那の快楽と逃げ足を求めるオークたちからしてみれば、真優はある種好敵手、というところかも知れない。
「だから、逃しませんよ。まだ脱いでない子は……いました」
「やっ、きゃあ!」
 パニックで逃げようとしてるオークを止めるべく、再びくしなのあざやかな脱がしが炸裂する。その対象は、後ろでひっそり回復していた天野・陽菜(オラトリオのミュージックファイター・en0073)だ。容赦のないずり下ろし攻撃に、陽菜の姿はかなりあられもないことになっている。
「陽菜、指示を頼む!」
「えっ!? じゃ、じゃあ、攻撃の援護をお願いします!」
 そんな状態で、サポートに駆けつけた雅也に指示を求められた彼女。慌てつつも、戦況を見て彼に攻撃を依頼する。
「よし、任せとけ! 紅一点……じゃなくて黒一点? ウォーレンも頑張れよー」
「おうよ! 豚生初の敗北の味……たっぷり教えてやろうや、野郎どもォ!」
 日本刀を鋭く振り下ろす旧知の応援に、ウォーレンはかつての仲間たちの亡霊を従えた一斉射撃で応える。志を同じくした旧友たちと共に放つ銃弾の雨は、残るオークたちをまとめてなぎ払い、うち1体にとどめを刺した。
「お主らに今日を生きる資格はないでござる!」
 鋭い射撃の雨に、孫六の両手に握られた二振りの斬霊刀が、激しい風圧を加える。気合いの入った一太刀は、さらにオークの命を刈り取っていった。
「畜生、こうなりゃヤケだ……くらいやがれ、ひゃっはー!」
「……!」
 最後の1体となったオークの触手が、目の前に居たピヤーニツァを直撃する。最後の力を込めた一撃は、初めて酔い以外でピヤーニツァの足元をふらつかせた。
「あら、仕方ないから本気出しましょう……るーさんも頼みます」
 すかさず、還がウイングキャット『るーさん』の羽ばたきと共に、味方に癒しをもたらすクッキーを召喚する。技を出すためスマホに熱中しつつ、手が空く一瞬の隙にジャージを自らめくり上げるのも忘れない。
「ひゃっはー、いい眺めだぜ……もう一発だぁ!」
「そんなモノで女性に触れるなっ! 炎に焼かれ、自らの罪を償え!」
 オークは死にかけてすら還にいやらしい目を送り、卑猥な外見の触手を振るう。そんな浅ましい姿に怒りを爆発させるように、依織はオークに竜の幻影を力いっぱい叩きつけた。
「汚物にふさわしい末路をあげるよ……これで、消毒完了だ!」
 依織の一撃で虫の息となったオークに、真優が心底冷たい視線を送る。
 冷たく、徹底的に見下し、何の迷いもなく。
 真優は、愛用のリボルバーをオークにつきつけた。
「ひぃやっはあぁぁ……!」
 ぶざまな悲鳴が、路地裏にこだまする。
 それが、7匹のモヒカン軍団最後の断末魔だった。

●消毒完了
「それにしても、皆、ひどい格好でござる……」
 戦いそのものは、それほど重大な危機もなかったが……孫六の言う通り、色仕掛けその他もろもろで、女性陣の服装は大変なことになっていた。
「仲間外れは悲しいと思うので、ウォーレンさんも縛って服破いて焼き払いましょうか」
「ええッ、いやいやいや! あ、そうだ、俺、助けたお嬢ちゃんを送りに行かねえと!」
 しれっと野郎も容赦せず脱がせようとするくしなに、慌ててウォーレンは被害女性のもとに走る。
 被害状況、女性陣の服装。
 被害を免れたもの、一般女性。
 被害を与えたもの、モヒカンのオークたち。
 ともあれ、ここにもまた、平穏が保たれたのだった。

作者:桜井薫 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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