●オーダー・オブ・ドラグナー
腰に刀を刷き、襤褸を纏った男――否、男と呼んで良いかどうかは定かでない。顔の造形は人にありながら、覗く手足は異形であった。ギルポーク・ジューシィという名のドラグナーは、薄暗い空間にいた。目の前には自らが呼びつけたオークが待っている。
「ドン・ピッグ――」
ギルポークは、そのオークを呼びつけると命令した。
「慈愛龍の名において命じる。お前とお前の軍団をもって、人間どもに憎悪と拒絶とを与えよ」
その命令を聞いて、ドン・ピッグは逡巡し答えた。
「俺っちの隠れ家はあるのかい?」
「変わらず、用心深いな」
「へへっ、旦那。悪ぃですが、これも俺っちの性分でしてね」
「構わぬ」
だからこそ、このオークを選んだ。オークにあっては知恵が回る。用心深く辛抱強い。もちろん、このような要求をしてくることも想定済みだ。
故にギルポークは魔空回廊の方へと、ドン・ピッグを誘う。彼を用意した安全な隠れ家へと導くために。
●家出娘の最期
「ハァ……」
少女――早織の口から溜め息が漏れた。家を出てから何日が経ったろうか。まだ、二日程度しか経っていなかったはずだ。
家出など、早計だったとは思う。しかし、あそこに居続けたら自分が壊れてしまいそうだった。
どこかの機関や近くの家に駆け込めば良かったのかもしれない。だが、彼女はそれが何処にあるかも知らないし、調べる手段も思いつかなかった。近隣の家も我が家の状況を知っていそうなものの、我関せずだ。逃げ込んだところで家に戻される可能性が高い。
そう考えての家出だった。自分を痛めつける父は、きっと自分が居なくなっても気にしないだろう。
路地裏でダンボールに身を包み、そっと身体を横たえる。
「?」
ふと。近くで何かが這うような音が聞こえた。早織は起き上がって周囲を見渡していると、視界が反転した。
悲鳴を上げようとした瞬間、ぬめりとした悍ましい何かに口を塞がれ声を上げる暇もなかった。現れたのは、下卑た笑みを浮かべるオークたちだった。
●オークの暗躍
ヴァルトルーデ・シュタール(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0172)がヘリポートへと集まったケルベロスたちへ依頼の説明を始める。
「ドラゴン勢力が、きな臭い動きをしている」
予知した内容は、家出していた少女がオークに連れ去られてしまうというものだ。しかし、無差別に女性を拐っているというわけではなく、存在が消えても怪しまれないような者を狙っているらしい。
「襲われる少女はその場で暴行を受けた後に、ドン・ピッグなるオークが隠れている秘密のアジトへと連れ去られてしまう」
アジトの場所までは分からないが、ともかく少女の襲われる場所と時間は分かっている。ならば、襲われる前に助けてしまって自分たちが囮になっても大丈夫かという質問に対して、ヴァルトルーデは首を振る。
「襲われる前に助けたいという気持ちは分からないでもないが、事前の接触は控えて欲しい」
オークの接触前に彼女へ何らかのアクションを起こすと予知の範囲からずれてしまい、別の場所で襲撃が発生してしまうとのことである。それくらい敵のボスは用心深い。
故に、襲われた直後に間髪入れず助けるという方法がもっとも効果的だ。
「敵はドン・ピッグ配下のオーク。全部で七体だ」
群れている敵だ。ドラゴンやドラグナーのように一個体が強力というわけではないが、その点は注意する必要があるだろう。
オークの攻撃手段は、基本的に触手によるものだ。叩きつけたり、締め上げたり、刺し貫こうとしてくる。さらに、触手からは溶解液も出せるようである。
「周囲は人気のない路地裏だ。少し狭いが、貴方たちからしてみれば障害にもならない」
ケルベロスたちにとって、狭い場所での戦闘は特に問題にはならない。並外れた身体能力を持つ以上、そこは問題でない。当然、敵にとっても支障が出るものでない。
そして、一般人が近寄ってくる可能性は限りなくゼロに近い。とは言え、万全を期するならば対策を施すのも良いだろう。
「用心深い敵が指示しているのは厄介だが……少なくとも、被害者を出す訳にはいかない」
隠れ家を見つけ根底を叩くことは、確かに必要だろう。
しかし、それでも。眼前の人々を救うこともまた、ケルベロスとしてあるべき姿なのだ。
参加者 | |
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西条・霧華(幻想のリナリア・e00311) |
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474) |
スノーエル・トリフォリウム(クローバーに幸せをこめて・e02161) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
シャルローネ・オーテンロッゼ(訪れし暖かき季節・e21876) |
六合・剣(太陽の化身・e22295) |
アルノルト・レーヴン(籠の鳥・e24845) |
ヒストリア・レーヴン(鳥籠の騎士・e24846) |
●闇夜に待つ
コツコツと宵闇に靴の音が響く。月は柔らかな光を照らし、夜であっても視界には困らない。煌々と灯る街灯のお蔭でもあるだろうか。人々は闇の中でも生活を続けるべく、光で闇を払っている。それでも、限界はあるのだろうとシャルローネ・オーテンロッゼ(訪れし暖かき季節・e21876))は思った。視線の向こう、路地裏の先には所々一片の光さえも差し込まない場所が見られる。
まるで、それは一人の少女の未来を暗示しているかのようで。ふと、西条・霧華(幻想のリナリア・e00311)は潰えた未来を想像した。儚げに咲いていた一輪の花が無残に手折られる、そんな光景を。それはこれから確実に起こる未来で、だからこそ、それを否定するべく自分はここに来たのだ。
暗がりを覗き込んで、アルノルト・レーヴン(籠の鳥・e24845)は思わず体を震わせた。
怖い。戦いも、闇に立ち向かうのも。体の芯から迫り来る恐怖に、身を竦める。しかし、退くわけにはいかない。ここで怖気づいて引き返せば失われる命があるのだから。
そんな弟の様子を見て、ヒストリア・レーヴン(鳥籠の騎士・e24846)が声を掛ける。
「怖い?」
「うん……」
彼にとっては初めての依頼。緊張もするのは分かる。自分とて初めての依頼だ。その気持ちは共有している。
しかし何だって、この怖がりの弟は数多ある依頼の中からオークの討伐などという依頼を受けたのだろうか。疑問には思うが、籠の中の鳥だと思っていた彼がやると言い出した。ならば、守るしかあるまいと。騎士の矜持を以て、守るべき者を守ろうと決意する。
針は時を刻み行く。手元の時計を眺め、ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)は溜め息を吐いた。進む時の歩みは遅い。だが、確実に地に足を付けて歩みを進めていかなければならない。さもなければ、この襲撃の裏に潜む者どもにまでは辿り着けぬ。慎重な相手というのはそれだけで厄介だ。攻め口を変えてきたドラゴン勢力に、ギルボークは何としても一手を伸ばしておきたかった。
逸る気を抑えて、今は待機の状態だと彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)は己に言い聞かせる。今のところ万事が滞りなく進んでいる。襲われる少女の受け入れ先は用意した。きっと彼女の闇は深いから。デウスエクスに関わってしまった無辜の人々、その中でも少年少女たちが巻き込まれた事件は少なくない。攻性植物、ビルシャナ――簡単に例を挙げられるくらいには、悠乃自身もそれらに関わってきた。だから、今回の事件の被害者を救うために全力を尽くすべく動く。
そろそろだろうかと、六合・剣(太陽の化身・e22295)はガードレールから腰を上げる。スノーエル・トリフォリウム(クローバーに幸せをこめて・e02161)も、他の面々の面持ちを見て悟る。時は来たのだと。
行こう、と。誰から共なく呟いて、ケルベロスたちは暗闇の底から人を救いあげるべく、行動を開始した。
●露と消させず
悲鳴を上げようとして、しかし、くぐもった声しか出なかった。醜悪な笑い声と、滑りとした感触が口を塞ぐ。必死に身体を捩り、この場から逃げようとしても触手に縛られていて、それも叶わない。心が絶望に染まり、諦観と共に涙が溢れる。
少女の人生はここで終わる。それは確定した未来であった。異形の子を孕まされ、人を人として思わぬ辱めを受け、絶望の果てに死に果てる。そんな、最悪の未来。
―――しかし、未来は変わる。
始まりは、ゆったりとしたものだった。
少女を拘束する触手が僅かながら緩む、たったそれだけ。
何かあったのかと思った少女だったが、次の瞬間には状況が劇的に変化する。
「きゃっ!」
口元を覆っていたはずの拘束は解かれる。視界を覆い尽くすのは、眩ゆい光を放つ業火。熱風が舐めるように地を這い、少女の下にまで届く。近くにいたはずの怪物は今や炎に包まれている。
そして気付いたら次には空を跳んでいた。
「もう、大丈夫ですよ」
たおやかな笑みと共に、柔らかな声が耳をくすぐる。その声の温もりに助かったのかと安堵した。
それでも未だ襲い来る恐怖故にか、ギュッと霧華の腕が掴まれた。襲われた少女へと気を遣って霧華はされるがままにする。少しばかり避けにくいが、瑣末だ。
触手を刀で切り裂き、少女を救った霧華は壁を蹴る。ジュルジュルと不気味な音を立てて、触手が迫り来る。獲物を逃すまいとする触手を、手に持つ刀で斬り払う。それでも数十もの触手を掻い潜るには手が足りない。
「ほんっと最低な豚野郎だよね」
その触手の壁も剣の放った光弾で爆ぜた。引き金を何度も引いてなお両の手に構えたバスターライフルを揺るがすことなく、弾幕を形成する。
「視界に映す事すら目に毒だから――とっとと消えてくれる?」
剣の光弾の前に耐え切れず、触手が退がる。怯んだ隙に、霧華が再び触手を切り裂いて、道ができた。
そのまま壁を蹴り、地を蹴り、あっという間にその場から少女を抱えて立ち去った。
獲物を奪われたことに憤りを感じて、一部の何もしなかった味方へとオークが抗議の鳴き声を上げ振り返ったが、すぐにそれも止んだ。夜の黒の中にあって、輝く女の姿を見て動きが止まったのも仕方がないだろう。美しく光り輝くスノーエルの姿に、オークたちは一瞬だけ目を奪われていた。
だが、すぐに歓喜の雄叫びを上げる。女と見れば、襲う。オークの性が故に、非力な存在と思い込んだままに飛び掛ろうとした。
返しに振るわれたのは槍の石突き。肉を打つ鈍い音が響いて、一匹の足が止まる。その瞬間にスノーエルは、手首で槍を反転させてグラビティを乗せた穂先を稲妻のごとく突き込んだ。正確無比な一撃にオークの触手が爆ぜて、そのまま体へと槍が食い込む。
腹に穴を開けられて苦悶の叫びを上げる味方も目に入っていないのか、オークはなおも突き進む。弾丸のように飛び込んできた悠乃の蹴撃を受けて、一匹が無様に吹き飛んで壁に叩きつけられた。
それでも数に任せて――もっとも、そんな知能など持たず勢いと獣欲のままに飛び込んだだけだろう――スノーエルへとオークたちが迫る。距離をあっという間に取っていた彼女へ、多くは届かないが触手の数本を刺すように伸ばす。だが、それはヒストリアとギルボークの闘気が阻む。わずかに闘気を貫いて傷ができるが、すぐにアルノルトがギターを掻き鳴らして旋律を紡ぎ傷を癒す。魔力を乗せた音は、迫る触手を阻む二人の闘気を高める。
今までに襲っていた少女の存在を忘れでもしたかのように、オークたちは飛び込んできたケルベロスたちへそのまま襲い掛かってきた。
●醜悪な怪物を戮せ
ふっと軽く息を吐く。眼前に迫るオークを見据えて、ギルボークは刀の柄に手を掛ける。一呼吸の間もなく、鍔鳴りの音が闇夜に響く。一瞬の内にオークの身体が膾切りにされるが、傷は浅い。それに気付いた敵がギルボークの姿を見ると、既に納刀している。相手にするのも煩わしいと言われたように感じたのか、オークは怒りの雄叫びを上げて彼へと触手を差し向ける。
「ここからが本番――行きますよ!」
シャルローネがギルボークへと向かう触手を死角にしつつ、オークへと向かう。地面に身体が触れるほどに身を屈めて、脱力した落下の勢いを前方へと向けて鋭く踏み込む。体内のグラビティを練り上げて、爆発的な加速のまま掬い上げるようにして鎌を振り上げる。触手ごとオークの体をバッサリと切り裂き、生命力を奪い取る。のたうち回りながらも生き存えて距離を取ったオークだが、次の瞬間にはそこに来ることが解っていた悠乃によって、唐竹割りに両断された。グラビティを攻撃の力へと傾け続けた強力無比な二人の連撃を前に、あっという間に一体のオークが塵へと還る。
残りは六体。霧華が戻ってくるまでこちらは七人。数の上ではまだ優位に立てない。当然、オークも猛攻を仕掛けてくる。
触手が唸り襲いかかってくる。狙いは、女性陣、スノーエルと悠乃、シャルローネだった。攻撃に徹している上に、女性というだけでかなりのヘイトを集めている。柔肌を狙い蹂躙せんと、欲望に満ちる濁った瞳で舐め回し触手を叩きつけてきた。剣の放ったバスターライフルの光線で一匹は足を止めたが、残りは構わずに動いていた。
距離を取っているスノーエルはまだマシだが、悠乃とシャルローネのほとんどの触手が向かい、溶解液を撒き散らす。飛散する飛沫に身を取られ、斬り払い損ねた触手がシャルローネへと迫る。
その間にヒストリアが割って入る。ウィングキャットのリィクが放っていた尾にある輪で触手の動きが鈍ったのも幸いして傷は浅い。
悠乃の方へと向かっていた触手は、ギルボークが庇っていた。一匹を引きつけている以上、すべてを替わることはできなかったが、悠乃への被害は最小限に抑えられた。それでも疼く痛みに顔を顰めるが、魔力の乗った歌声でゆっくりと癒えていく。楽になった身体を確かめると、再びオークたちの元へと立ち向かっていく。
歌っていたのは、アルノルトだ。恐怖を胸中だけに抑えて、声は震えながらも癒しの歌声を仲間たちへと届ける。皆、勇敢に戦っているのだ。前面に立っている兄だけでない。女性にとっては嫌悪しか抱けないような敵であるにも関わらず、彼女たちは果敢に向かっている。その背中に隠れているだけでは駄目だ。そう思えば、恐怖も何とか押し殺せた。
弟のその姿に、ヒストリアは笑みを浮かべて前を向く。後ろを振り返る必要はない。まだ前に立つことはできないだろう。それでも、一歩を踏み出せてはいたから。自分は彼の前に立ち、味方を守り、敵の尽くを討ち滅ぼすまでの盾とならんと。敵へと呪いの歌声を届ける。
一進一退、ケルベロスたちとオークとの戦いは続く。初手に決定打を与えられはしたが、二分ほど戦況が硬直する。ひたすら攻撃に傾注している二体の動きを運悪く止めきれず、こちらの被害が少しばかり大きかった。守勢に立つギルボーク、ヒストリア、スノーエルのボクスドラゴン――マシュが自分たちを回復せざるを得ない程度には。
スノーエルの放った炎の魔術と悠乃の蹴撃に耐えたオークが、グラビティを載せた欲望の咆哮を上げようとした瞬間。ビルの上から落下する勢いを乗せた霧華の刀が袈裟懸けにオークを切り裂いた。
襲われていた少女を遠方に避難させた霧華が戻ってきた。これで趨勢は一気に傾いた。敵の数の残りは五に対して、こちらはサーヴァントを入れると十。倍する数を前にオークたちの動きも鳴りを潜める。初手で偶然とは言え、女性陣に群がろうとしたところを男性陣が庇う形となり、敵の攻撃が前衛にほぼ等しく分散されたことも功を奏していた。アルノルトの回復の力が最良の形で前衛へと届いたのだから。
ケルベロスたちは一転、攻勢に移る。
霧華が歩を進める。猶予は一足。地が縮まんばかりに軸足で蹴り、一歩を踏み込んだ。届かない分の距離は刃長に任せる。踏み込んだ勢いで腰を捻り、一息にも満たない刹那で抜刀しさらに間合いを白銀で塗り潰す。
直後、霧華の刀に蒼炎が灯る。オークの意識は瞬きもしない以前の、霧華が居た場所のまま。気付いたときは振り払われた刀で強かに斬り付けられていた。
苦悶の雄叫びを上げて、遮二無二に暴れ回り叩きつけてくる触手は、ギルボークが打ち払う。できた僅かな隙間の空間に、シャルローネが忍び寄って鎌を振るう。
「地獄が奏でる音楽、その身体でたっぷり味わいなよ!」
剣の歌声が炎として具現化する。あたかも五線譜のごとく並んだ炎は敵を灼く音符となり、オークたちへと向かっていく。炎に包まれ動きの鈍ったオークへと、スノーエルがオラトリオの権能を振るう。時を司る力を以て生み出された弾丸に魔力を込めてオークへと放つ。時が止まり熱的死をもたらされたオークの身体が凍ったように傷ついていく。
少しずつ減っていくオークだが、その壊滅する速度は加速度的に上昇していく。
然程の時を待たずして、最後のオークが霧華の斬撃で倒れ伏した。
●闇夜を灯す微かな光
戦いも終わり、ケルベロスたちは霧華によって逃がされた少女の元へと向かっていた。悠乃の手によって、すでに児童相談所へは連絡が行っていた。すでに少女と合流していたようで、落ち着くように傍に居てくれたようである。
霧華の姿が見えた瞬間、少女は近寄ってきた。まだ少し怖いのだろう、霧華に抱きついていた。ここに来るまでケルベロスが全力で向かえば一分と掛からない。それでも、霧華の到着が少し遅くなったのは彼女を安心させるために必要なことだった。結果としてオークを討伐することもでき、少女も救えた事実に悠乃は安堵する。自分たちが知ることになった以上、彼女の家庭についても考えてやらねばなるまい。このオークたちの事件はきっとこれからも起こり続ける。また家出などされれば、それで再び事件が起きる可能性もある。それに、困っている人々を見過ごすことはできないから。
「もし何かあっても今回みたいにまた力になるから、ね?」
「今までよく我慢したね」
スノーエルも剣もケルベロスカードを差し出し、彼女を支援することに決めた。おどおどとしつつもカードを受け取った少女にスノーエルが微笑む。どこかぎこちないものが残るものの、少女も微かに笑みを返してきた。
ヒストリアは、その様子を見て心が頑なになるまで虐げた彼女の家族へと憤りを憶えた。職員に彼女を何とかしてもらうよう強く告げる。職員本人も事態を重く見たため色々と手を回すとのことであった。
こうして、事件は収束する。
だが、根本の事件そのものは終わっていない。ギルボークはそう感じていた。
どうしても裏で動く陰の存在が脳裏から離れない。それは暗躍するオークもそうであるのだが。むしろ、予知にあったというドラグナー。事件の根源であるそちらの方がどういう訳か気に掛かる。因縁というべきだろうか、得体の知れない不安が胸中に燻っていた。それも何時かきっと分かるだろう。今のところはギルボークも事件が解決したことに安堵を憶える。
いつか策謀を巡らす者共が白日の下に晒される、その時まで。
悲劇に見舞われるすべての人々を守り続けようと、ケルベロスたちは少女の笑顔の前に決意する。
作者:屍衰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年5月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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