汚豚スカイフォース

作者:雷紋寺音弥

●禁じられた実験
 どこにあるとも知れぬ薄暗い部屋の中、緑色の髪をした変態紳士……もとい、マッドな博士が眉間に皺を寄せて悩んでいた。
「ムムム……。量産型とはいえ、実験ではこれ以上の性能は出せないなァ。これ以上の性能を得るには、新たな因子の取り込みが不可欠だ」
 だから、お前達は新たな子孫を作るために、人間の女を攫って来い。そう言って薄汚いオーク達に指示を出している男こそ、他でもないマッドドラグナー・ラグ博士であった。
「お前達が産ませた子孫を実験体にすることで、飛空型オークは更なる進化を遂げるだろう! 公園でも温泉でも女子高でも、とにかくどこでもいい! 一刻も早く女を攫って、100体でも1000体でも子孫を生ませるのだぁっ!!」
「ブヒャッハァァッ! 待チ焦ガレタゼェェェッ!!」
 女性を襲いに行ける嬉しさから、歓喜の声を上げるオーク達。その背中には不気味な触手に加え、奇怪な皮膜のような物体が生えていた。

●狙われた露天温泉
 北陸地方に位置する、とある温泉旅館にて。
 巨大な天然露天温泉を有し、女性専用を売りにする乙女の聖地は、今や薄汚いオーク達によって無残にも蹂躙されていた。
「きゃぁぁぁっ! 化け物ぉぉぉっ!」
「ちょっ……! な、なんで豚が空から降ってくるのよ!」
 女性達の悲鳴と突っ込みが飛び交う中、降り立った飛空型オーク達は、次々と近くにいた獲物目掛けて触手を伸ばして行く。
「いやぁっ! は、離し……んっ!? くぅっ……!!」
 ある者は、問答無用で口に触手を突っ込まれて全身を弄ばれ。
「雨じゃなくて豚が降るとか、もうどうなって……って、痛ぁぁぁっ!!」
 また、ある者は触手で尻を殴打され、心が折れるまで調教され。
「ブヒヒヒヒッ! マダマダ、コノ程度デハ、物足リナイ!」
「ドウセナラ、コノ建物ニイル女ドモヲ、全テ孕マセテヤロウゾ!」
 女性達のすすり泣く声を餌に、飛空型オーク達の下品な笑い声が響き渡った。

●飛べちゃうイケナイ豚
「皆さん、大変です! 女性専用の温泉旅館にある露天風呂が、飛空型オークによって襲撃されることが予知されました」
 その日、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)からケルベロス達に伝えられたのは、マッドドラグナー・ラグ博士によって生み出された、新たな品種のオークによる事件の話だった。
「露天風呂のある旅館の場所は、北陸地方の山の中です。長弩弓・爆子(ハーレム女帝・e15239)さんが調査していた結果、偶然にも襲撃を察知できたのは幸いでした」
 もっとも、当の爆子は温泉で覗き行為に走る不届き者がいないかを探していただけらしい。だが、よりにもよって空から豚が覗いており、しかも降ってくるとは思っていなかっただろうが。
「温泉に出現する敵の数は8体です。戦闘能力や使用する技は、通常のオークと大差ありません。しっかりと作戦を練って戦えば、個々の戦闘力でも皆さんの方が劣るということはないと思いますが……」
 問題なのは、飛空型オークが滑空しながら獲物を探すということである。事前に避難活動をすると予知と違う場所に降下してしまうので事件の阻止ができず、場所が場所だけに男性の姿がオークや女性達から見える位置にあっても問題だ。
「出現する飛空型オークは、素の姿を晒している女性を好んで襲う傾向にあるようです。女性の方が温泉に潜入した上で、男性の方は連絡があり次第、直ぐに駆け付けられる場所で待機というのが理想でしょう」
 当然、いかに危険が付き纏うとはいえ、監視という名目で一般人のいる女風呂を除くのは厳禁である。
 くれぐれも、妙な役得など考えないように。笑顔の裏に静かな殺気を込めて、セリカは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
水無・ゆかり(おしとやか中学生・e00258)
佐々川・美幸(忍べてない・e00495)
神無月・玲那(執行者・e02624)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809)
空国・モカ(パッシングブリーズ・e07709)
ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)
シマツ・ロクドウ(ナイトバード・e24895)

■リプレイ

●湯煙汚豚紀行
 山の中に建てられた温泉旅館。女性専用を売りにしているだけあって、設けられた天然温泉の質もまた、なかなかどうして高かった。
「えへへ……温泉なんて久しぶり」
 しばし、任務のことを忘れ、水無・ゆかり(おしとやか中学生・e00258)は肩まで湯に浸かって温泉を堪能している。ここ最近、色々と肩が凝ることが多かった。他人から羨望の眼差しを受けることもあるが、スタイルが良いのもまた苦労が絶えないのだ。
「たまにはこういうのも良いですよねー」
 もっとも、温泉を堪能しているのは彼女だけでなく、ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)も同じだった。
 これから下劣な豚が空から降ってくることを考えると、正直なところ気を抜き過ぎではないか。そんなことを思いつつ、空国・モカ(パッシングブリーズ・e07709)は油断なく周囲の様子に気を配り。
「……ふぅ、一般人客のふりをするのも疲れるな」
 最後に、周りに聞こえないくらいの声で、ぽつりと小声で呟いた時だった。
「ブヒャッハァァァッ! コイツハ、天国ダゼェェェッ!」
 突然、下品な叫び声と共に、背中から奇怪な皮膜と触手を生やした豚どもが降って来た。
「きゃぁぁぁっ!」
「か、怪物よぉぉぉっ!」
 温泉に響き渡る悲鳴。案の定、飛空型オークを目にした女性客達は、早くもパニック状態に陥っている。
「出たわね! 女の子達にいやらしいことをしようだなんて、そうは行かないんだもん! そのムササビみたいなやつ、引き裂いて飛べなくしてあげちゃうんだから!」
 逃げ惑う女性達を庇うようにして、佐々川・美幸(忍べてない・e00495)が武器を片手にオーク達の前に出た。が、そんな彼女の姿を見たオーク達は、ますます興奮しながら涎を垂らし。
「オオ! ナカナカ、気ノ強イ女ダナ! ソウイウノモ、嫌イジャナイゼ!」
「グフフフ……。ソレニ、生意気ナ餓鬼ノ方ガ、調教スル甲斐ガアル!」
 なんとも失礼極まりない台詞を吐きながら、怯むことなく迫って来た。
「サイッテーだな、このブタ……」
 腐敗して異臭を放つ生ゴミを見るような目付きで、巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)、早くもドン引き。目の前に並び立つケダモノどもに比べれば、それこそゴキブリの方が百万倍可愛らしく思えて来るから不思議なものだ。
 兎にも角にも、今は女性客達が逃げる時間を稼がねばならない。シマツ・ロクドウ(ナイトバード・e24895)が外で待つ如月・シノブ(蒼の稲妻・e02809)に連絡を取る中、神無月・玲那(執行者・e02624)は美幸から渡されたナイフを構えつつ、オーク達を挑発するようにして湯船から身を曝け出した。
「ほら、オーク共。ケルベロス相手とはいえ、裸の美人を放って置く気? 掛かってきなさいな」
 水音と共に現れる豊満な肢体。何故か、危険な部分は謎の太陽光と湯煙で見えなくなっていたが、それはそれ。
「「「ブッヒョォォォッ! コイツハ、堪ンネェェェッ!」」」
 一瞬にして女性客達から玲那の方へと顔を向け、下劣な豚どもは一斉に襲い掛かって来た。
「えぇっ!? そ、そんな同時になんて、聞いていませ……あんっ!!」
 残念ながら、玲那の言葉は汚豚の耳に届かなかったようである。
 逃げ惑う女性達の悲鳴を背景に、繰り広げられるオーク達の破廉恥行為。人々の身体と心を癒すはずの温泉は、今や完全に禁断の欲望が飛び交う戦場と化していた。

●触手、ときどき粘液
 温泉宿に飛来した飛空型オークを迎え撃つべく、女性客の盾となって立ちはだかったケルベロス達。だが、客の避難誘導に専念している上に、黒一点のシノブを欠いた状態では、状況的にも人数的にも不利だった。
 迫り来る触手が、粘液が、一般客達の代わりにケルベロス達へと容赦なく降り注ぐ。こちらがまともに動けないのをいいことに、オーク達は、正に好き放題、し放題。
「やだっ! ……やだっ! そこはダメだって!」
「ひゃん、変なとこ触らないでよ! っていうか、水着引っ張っちゃダメだってば~!」
 触手の先端から撒き散らされる毒液を湯浴みの中に注ぎ込まれ、ゆかりは早くも大ピンチになっている。同じく、美幸も触手にやられ、あわや水着を脱がされる寸前に!
「ウゥゥゥ……ガウッ!!」
 だが、主の危機を察してか、済んでのところでオルトロスのブリュレがオーク達に襲い掛かった。
 怒りの力を地獄から湧き出る瘴気へと変え、まとめて敵へ解き放つ。猛毒の霧に蝕まれ、オーク達は激しく咳込みながら、ゆかり達から距離を取った。
「た、助かった……。ブリュレ! ありがとう! 偉いよブリュレ!」
 ドヤ顔を決めている相棒の頭を撫でながら、ゆかりは気を取り直して立ち上がる。酷い目に遭わされているのは自分だけではない。ここで体勢を立て直さねば、本当にオーク達の慰み者にされてしまう。
「うぅ……。ま、まだまだ、こんなもんじゃないですよね? ほらほら、頑張りましょう♪」
 ここで負けてはならないという強い意志。それを癒しの笑顔に変えて飛ばしたところで、他の者達も触手と粘液の地獄から解放された。
「あったま来た! こうなったら、石ころにしてバラバラに砕いてやるんだから!」
 これは先程の返礼だ。そう言わんばかりの勢いで、美幸が反撃の指天殺。が、しかし、食らったオークは触手の動きこそ鈍ったものの、未だ下品な笑みを絶やさないままだ。
「グフォッ! ソ、ソンナニ、固イノガ好キカ? ダッタラ、存分ニ堪能サセテヤルゼ……」
 なんというか、頭の中がピンク一色な生物だけに、何をやってもエロいことに返還して来るのが鬱陶しくて仕方がない。
「それならば……その、下劣な触手を斬り捨ててさしあげますわ!」
 もう、黙って見ているのも限界だと、続けて玲那がナイフ片手に斬り掛かる。自らの身体に返り血が降り注ぐのも構わずに、問答無用の滅多斬り!
「ブギャァァァッ! オ、俺様ノ触手ガァァァッ!」
 さすがに、これは堪えたようで、触手を斬られたオークが悶絶して辺りを転げまわっていた。だが、そんな光景を目にしてもなお、他のオークどもは下品な妄想を止めようとはせず。
「ナルホド、貴様ハ、ブッ掛ケラレルノガ好キカ! ナラバ、存分ニ味ワウガイイ♪」
 嬉々とした様子で、別のオークが触手の先から玲那目掛けて毒液を浴びせ掛けて来た。
「あんっ……! もう! やってくれましたわね!」
 生臭い汁を頭から被り、玲那は思わず顔を顰めて叫ぶ。こいつら、マジで節操がない。それこそ、脳みその中に詰まっているのは、全てエロに関する知識しかないと言わんばかり。
「傷は浅い、あなたはまだ戦えるはずだ。勇敢なる者に新緑の祝福を!」
 このまま放って置くのも拙そうなので、とりあえずモカが大地の気脈や植物から得たエネルギーを与え、玲那のことを回復させた。もっとも、傷は癒えても身体に付着した毒液の不快感までは、残念ながら除去できなかったが。
「すまない、皆! なんとか間に合……っ!?」
 そんな中、遅れて馳せ参じたシノブがようやく戦列に加わった。が、しかし、到着するや否や、彼はしばし唖然とした様子で完全に言葉を失ってしまった。
(「こ、これは……物凄く目のやり場に困る!!」)
 視界に飛び込んで来たのは、あられもない姿の女性陣。ある者は粘液でベタベタになり、またある者は水着や湯浴みを脱がされそうになっている。
 正直、目の保養とか、そんなことを言っている場合ではなかった。こんな刺激的な光景の中に男が独り。これでは、戦闘に集中しろという方が難しい。
「くっ……! だ、だが、ここで戦わねば男が廃る」
 それでも何とか理性を保ち、グラビティ・チェインを集中させるシノブ。高められた力は複数の大蛇へと姿を変え、一斉に近くにいたオークへと襲い掛かる。
「フギョォォォッ! コ、コレハ、強烈ナ、縛リプレイ……」
 しかし、全身を蛇に食らわれたオークは、別の意味でキモい。何も知らない者からすれば、どう見ても触手が触手を襲って食べているようにしか見えない光景に、後悔の念しか湧いて来ない。
「ったく、さっきから汚ねぇんだよ、ブタども! まとめてブッ飛ばしてやるから、覚悟しな!」
 これは酷い。あまりに酷い。主に目と精神に毒でしかないと、早くも真紀がブチ切れた。
「オレがパートナーだ。ノり遅れんなよ!」
 どうせ蛇に食われるなら、最後は華麗に美しく散れ。変幻自在の徒手空拳を叩き込みつつ、ステップの軌跡が描くのは黒色の魔力が舌舐めずる一匹の蛇。
「オ、オゴォォォ……」
 悶絶しながら涎を垂らし、それがオークの断末魔となった。まずは一体。確実に仕留めたところで、続けてジェニファーが光の翼を広げて高々と舞い上がり。
「弾丸の雨を受けなさい!!」
 巫術で呼び寄せた自らの分身と共に、問答無用の一斉射撃!
 ついでに、下から見上げているオーク達を、挑発するのも忘れずに。
「あれ~さっき飛んでましたよね~? 飛べないんですか~? ほらほら、こっちですよ~」
「ヌガァァァッ! 生意気ナ、小娘メ! コレデモ食ラエ!!」
 だが、馬鹿にされたことで激昂したオーク達は、ジェニファーに向けて触手の先から毒液のシャワーを浴びせて来た。
「きゃぁっ!? ちょ、ちょっと……!」 
 油断大敵。粘液を正面から被ってしまい、湯船の中に墜落である。頭こそ打たなかったものの、毒液が身体に染み込んで行く感触は気持ち悪いの一言だ。
「グハハハハッ! ナカナカ、良イ格好ニナッタデハナイカ!」
 勝ち誇ったようにして高笑いするオークの顔が、なんともいえぬ醜悪さを醸し出していた。が、それらの非道なる行いを目の当たりにしても、シマツだけは何故か顔色一つ変えてはおらず。
「どうも、飛空型オークさん達。シマツです」
 まずは一礼。その上で、笑顔のままに宣戦布告。
「では、殲滅しますね」
 表情と台詞が一致しないまま、何の躊躇いもなく爆破スイッチのボタンを押す。瞬間、見えない爆弾が一斉に爆発し、オーク達を炎と煙の中に飲み込んだ。

●乙女の怒り
 戦いは続く。温泉を舞台に繰り広げられる、ケルベロス達と飛空型オークの大乱闘。
 敵の数は、既に半分程にまで減っている。確固撃破を狙い集中攻撃を仕掛けた結果だろう。
 だが、それは即ち、攻撃を集中させている一体を除いては、敵への対応が疎かになってしまうということ。特に、火力と削りに傾倒し過ぎて、敵の行動を阻害する手段が甘かったのは致命的であり。
「ちょっ……や、やめて! ……んぅぅっ!?」
 ゆかりの口に、オークが触手を直接突っ込んできた。毒液を直に流し込まれ、思わず息が詰まりそうになる。
(「んくぅっ!? こ、こんなにたくさん……飲みきれな……」)
 口から毒液が溢れ出し、身体が中から蝕まれて行く。そんな中、モカと真紀の二人もまた、同じく触手に襲われていた。
「ひゃっ!? こ、こら、汚ねぇもんで触んな……って、痛ぇぇぇっ!!」
 調教宜しく、真紀を捉えたオークが彼女の尻を叩きまくる。その隣ではモカを捉えた別のオークが、なにやら下品な笑みを浮かべており。
「胸ハナイガ、ナカナカ良い身体ダ! 締マリガ、良サソウダゼ!」
 オークにしてみれば、率直な感想を言っただけ。しかし、世の中には禁句というものがある。決して踏んではいけない地雷。意図せずしてそれを踏み抜いてしまった今、彼らに明日は存在しない。
「……死ね」
 触手に絡まれたままの体勢から、モカがオークに容赦ない回し蹴りを見舞った。全身を痙攣させ、倒れ伏すオーク。そんなブタの成れの果てを、モカは冷めた視線で見下ろして。
「『胸が残念』と言った奴は殺す。言ってない奴も下品だから殺す」
 完全に本気モードのスイッチが入ったところで、真紀もまた力任せにオークの魔の手から脱出し。
「高くつくぜブタども!」
 怒りのままに、両手に持った惨殺ナイフで自分の尻を叩いたオークを斬る、斬る、斬る!
「往生際が悪いぜ。さっさと昇天しな!」
 それでも辛うじて生きていたオークに、シノブが容赦ない一撃を。二振りの斧を同時に叩き込まれ、また一体のオークが肉塊と化した。
「さっきはよくも!」
 もう、容赦する必要など欠片もないと、残るオークにジェニファーが炎弾を叩き込む。敵の全身が炎に包まれたところで、間髪入れずに飛び込んだのはシマツ。
「……斬らせていただきました」
 丸焼きになった豚の身体。自らを光の粒子へと変えた一閃で斬り捨てれば、世界一不味そうな焼き豚スライスの出来上がりだ。
「もう、怒ったわよ! 絶対に許さない!」
「女の子の怒り、思い知れ!」
 最後の一匹へは、完全にブチ切れたゆかりと美幸が、逃さず立て続けに攻撃を。
 召喚された巨大な黄金竜が敵を蹂躙し、螺旋を籠めた掌が敵を内部から爆破する。ブリュレの睨みが敵の身体を燃え上がらせたところで、仕上げは玲那のナイフが汚豚の喉笛を掻き切った。
「……ゴブゥ」
 生臭い体液を撒き散らしながら、オークがドス黒い血の海に沈む。色々と大変な相手だったが……これにて、なんとか温泉の平和と女性客達の尊厳は守られた。

●最後の役得
 戦いは終わった。だが、戦場となった温泉と、健闘したケルベロス達もまた色々な意味でボロボロだった。
「はぁ……。どうやら、終わったみたい……って、きゃぁっ!?」
 自分のあられもない姿に気づき、ジェニファーがその辺に転がっていた湯浴みを慌てて纏った。
「これも、ケルベロスの使命とはいえ……」
「うー……温泉で全てを洗い流したい……」
 げっそりとした様子で座り込む玲那とゆかり。主に精神面での被害が深刻だったのか、一刻も早く湯船に飛び込みたい模様。
「でも……その前に、その温泉をキレイにしなきゃいけないよね……」
 もっとも、美幸の言う通り、まずは粘液とオークの死骸で汚れた温泉を掃除しなければ、癒しを得ることも難しい。その一方で、真紀もまた苦虫を噛み潰したような表情のまま、なんともいえない不快感に顔を顰めていた。
「クソまずいわ……。二度とやんねー」
 どうやら、オーク達の欲望に根差した快楽エネルギーは、あまり質が良くなかったらしい。
 そんな中、一足先に湯殿を後にしたシノブは、助けた女性客達に囲まれていた。
「ありがとうございました! あ、あの……良かったら、今夜は私の部屋で……」
「あっ! 抜け駆けは駄目なんだよ! それに、この宿は女の子しか泊まれないんだし……」
 下劣なオークを退治した英雄として、完全にハーレム状態である。
 欲望に負けて、一般人の避難が終わる前に湯殿に突撃しなくて本当に良かった!
 やっぱり女の子には、紳士に接してあげなくちゃ駄目ですよね♪

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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