火急

作者:屍衰

●可及的速やかに
 デウスエクスの鎌倉大侵攻。予見された未曾有の事態に加えて、更なる逼迫する要素が予知されたと、セリカ・リュミエールは告げた。
 大侵攻に呼応するかの如く、多くのドラゴンの封印が解け、動き出してしまうとのことだ。
「現在、ドラゴンはグラビティ・チェインが枯渇しているものと予想されます」
 エネルギーのない機械が動かないのと同様に、グラビティ・チェインが枯渇したドラゴンもまた数多の能力が戻っていない。
 だが、この地球に存在する人々を殺してしまえば別だ。そのため、このドラゴンは人を殺戮するべく街を破壊しながら人の多い場所へ進む。そして、己の力を完全なものへ復活しようとするのだ。
「先日、多くのドラゴンが出現した事件は、今回の前兆だったのでしょう」
 不幸中の幸いとも言えることは、現時点で多数のドラゴンを撃破できているため、数は多くない。急ぎ、現場に向かい、対象のドラゴンを討伐することが今回の任務である。
 市街の人間を殺し、十分なグラビティ・チェインを補充したならば鎌倉に向かうことが推測される。そのため、この場で撃破し、侵攻を阻止することが作戦の主旨である。
 ドラゴンの外見は赤竜であり、東洋のような蛇型ではなく、西洋の英雄譚などに出るような竜であるらしい。
「本任務でのドラゴンは、静岡県のとあるビル街に出現します」
 周囲は十階前後の階層ビルが立ち並び、面している道路は六車線ほどと、かなり広い空間が確保されている。
「なお、作戦終了後の話となりますが、ヘリオンに乗ってすぐさま鎌倉に向かうこととなります」
 この作戦に参加したがために、鎌倉での決戦に間に合わなくなるということはないとのことである。
 作戦に対する大枠の説明が成された後、今度はドラゴンの詳細な説明に移る。
「敵性ドラゴンの攻撃手段は、火によるものが想定されますので、その点は十分に留意されてください」
 もちろん、ドラゴンは巨体だ。そこから繰り出される一撃もまた、凄まじい破壊力を秘めていることは間違いない。
 火による注意点だが、それはケルベロスに対してのことであり、周囲への被害は度外視して問題ないとセリカは告げる。周囲を気にして戦えるほど温い相手ではない。衰弱しているとは言え、ドラゴンだ。破壊された町はヒールにより修復が可能なのだから、その点についての気遣いは無用であろう。
 もちろん、周辺の人々については避難勧告が成され、人はいない。ただただ敵の殲滅だけに気を配れば問題ない。
「決戦の趨勢に関わるかもしれない重要な任務です」
 ドラゴンは間違いなく強敵であるが、ここで撃破してしまえばその分だけケルベロス側が有利になる。
 よろしくお願いします、と。セリカはケルベロスたちへ一礼する。


参加者
ティクリコティク・キロ(幼き銃士・e00128)
相馬・泰地(マッチョ拳士・e00550)
長篠・樹(ペンデュラムロール・e01937)
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
カルメネール・ブラン(如何様キキーモラ・e05242)
アナーリア・シス(シャドウエルフの鹵獲術士・e06940)
玄梛・ユウマ(地球人のブレイズキャリバー・e09497)
アイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)

■リプレイ


 朝のビル街。今が日常であれば、往来を人々が行き来して活発だったのであろう。だが、人々の姿はない。時折、響く建造物が壊れるような轟音と、巨大な怪物と思われる存在の大咆哮が異常を物語っていた。その声は得るべき糧が存在しないことへの怒りだろうか。
「ッ……すごい声ね」
 カルメネール・ブラン(如何様キキーモラ・e05242)が大音声に身を竦める。ただでさえ緊張している状況で、それに拍車をかけられたように感じる。目の前にいる存在は、あまりにも巨躯であり、人など有象無象、矮小な存在だと言わんばかりだった。
 それでもわずかに震える体を叱咤しつつ歩を進める。
「ハハッ、こいつぁすげぇな……」
 ゴクリと喉を鳴らしつつ相馬・泰地(マッチョ拳士・e00550)もまた体を震わせていた。彼の場合、歓喜とこれから先の激闘を予感しての武者震いではあったのだが。
 彼らの存在に気づいたのか、ギロリとこちらを二つの眼が睨めつける。
「これでも弱くなっている、のですよね?」
 爛々と灯る瞳の力強さと存在感の重圧に、アナーリア・シス(シャドウエルフの鹵獲術士・e06940)は疑問を呈する。弱体化しているとは言え油断できる相手でない。そう思って臨んだが、目の前に立った瞬間にそんな認識は吹き飛んだ。
 油断も何もない。ほんの一瞬の気を抜けば待つのは死とすら思える。
「これが、ドラゴン……」
 ティクリコティク・キロ(幼き銃士・e00128)の中にある恐怖心がそろりと鎌首をもたげ、思わず言葉に漏れた。それでも首を振り眼前を見据える。恐怖を飲み込むその心は、勇気、ただ一つ。
 よく見ればチロチロとドラゴンの顎からは炎が漏れている。火竜という情報に偽りなく。その様子にアイオーニオン・クリュスタッロス(凍傷ソーダライト・e10107)の眉がほんのわずかに歪む。熱いという感情を理解できない彼女は、そのまま物理的な熱に対しても本能的な抵抗を感じていた。
「ドラゴンスレイヤーとか、物語の定番だけど」
 葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)は、リボルバー銃を強く握り直す。緊張に包まれたためか、手に掻いていた汗で思わずグリップの握りが甘くなっていた。笑みを浮かべようとするが、どこかぎこちない。まだ、緊張しているのだろうかと、深く息を吸って吐く。
「いやはや、しかし、この後にお城の王子様との舞踏会も待っているからね」
 まるで御伽噺のようだと、長篠・樹(ペンデュラムロール・e01937)は軽口を叩く。そう、こんな強大な敵が前哨戦でしかないのだ。
「そのためにも被害は抑えたいのですが……そうも言っていられませんね、これは」
 玄梛・ユウマ(地球人のブレイズキャリバー・e09497)が数多の戦いの記憶を呼び起こす。その中でも上位に位置する激戦が待ち受けているだろうことを予測するのは容易い。ドラゴンを相手に損傷軽微。それは如何程の理想であるか。
 だが。
「ここは私たちが押し通ります」
 アイオーニオンが決意を胸にケルベロスコートを羽織り直す。はためくローブは希望の風を運ぶべく。ここで立ち止まる訳にはいかない。
「だな! それに、このメンバーなら負ける気がしねぇぜ!」
 泰地が他の七人を見渡しながら力強く告げる。お互いに会ってからわずかな時間しか経っていない。それでも、互いを彼らは信頼していた。
 決意を秘めて、八人のケルベロスは武器を構える。それに呼応するかのように。
『グルァアァァアアアァァァアアアアアアアアアア!!!!』
 細い瞳孔をさらに細めて、眼前に現れたケルベロスたちをドラゴンは獲物と認識し、巨大な翼を広げ雄叫びを上げた。


 先手を取ったのは、火竜。その巨大な体躯に見合わず、動作は素早い。空間を薙ぎ払うように振るわれた尾が、前に立つカルメネールのボクスドラゴン―――ピノ、それに泰地、アイオーニオン、樹の三人へ襲い掛かった。
 樹が咄嗟に縛霊手で受け流そうと試みるも即座に不可能と判断し、むしろ自身へ誘導するように威力を殺すべく武器を添える。
「私たちがここは守る……ッ!」
 重々しい一撃に体が揺らぎ弾き飛ばされるが、威力の殺された尾をピノが体を張って止める。
「だから気にせず、前へ行け!」
 なお止まらずアスファルトを削り進むが、泰地とアイオーニオンの元に来る頃には半分ほどに速度が殺されており、二人は回避。
「ティクさん!」
 カルメネールがティクリコティクへ掛け声をかけつつ、左手に宿す植物をかざすと前に立つ三人と一匹へ光が収束する。人をも進化させるその力はありとあらゆる逆境への耐性を与えた。
「わかってるよ、カルメ!」
 掛け声を受けたティクリコティクは、カルメネールの目線の先にいる樹とピノを癒すべく動き出す。樹本人は霊力で模った紙兵を周囲へ散らし始め、自身の傷をわずかながらも癒しつつ前へ出た二人を援護する。それを見て、ティクリコティクは緑色の液体が入ったフラスコを取り出し栓を開ける。もくもくと立ち込める雲から癒しの雨が降り注ぎさらに傷を癒すが完治には至っていなさそうである。
「こいつでどうだ、食らいやがれ!」
「少し頭冷やしたらどう?」
 鋭い尾の一撃を避けた泰地とアイオーニオンの二人が左右から挟撃する。宙に跳ねそこから空中を蹴って加速した泰地の蹴りを火竜は返した尾で受け止める。鱗の硬い感触のみが伝わり痛打には遠いことを悟る。
 同時に放たれたアイオーニオンの研ぎ澄まされた一撃も太い左腕で受け止める。
 その間隙を縫うように、ユウマの手元から鎖の一撃が伸びるが、右腕で鎖の先端を叩き落とした。
「この大きさで、この動き……!」
 油断ならぬとユウマは敵の動きを具に観察する。本来あれほどの巨体であれば、動きは逆に遅くなるのが常だ。しかし、腐っても戦闘に特化したデウスエクスか。
 瞬間、火竜が吠える。唐突のそれは叫び声にも聞こえた。
「どんどん狙っていくぜ!」
 唯奈の右手に収まっている銃から硝煙が上がっている。クイと空いた左手の指先でカウボーイハットのつばを持ち上げた。周りを見渡せば気づいたであろう跳ね回る銃弾が火竜の翼のあちこちに穴を開ける。
「全てを焼きつくさんとする地獄の業火よ」
 それに合わせて厳かな詠唱が響く。溢れる力に、ローブのような裾の長いケルベロスコートがはためく。収束させた力をアナーリアが解き放つ。
「その力を今示せ!」
 振り下ろされた星辰を司る剣の閃きをなぞるように炎が飛び行く。火竜がそれに気づき振り向くが避ける間もなく直撃した。
『グルゥァア!!』
 左半身から煙を上げつつも、それでもなお健在だ。一瞬の交錯の攻防で、天秤はどちらにも振れず互いに退くべくもなく睨みを利かせた。


 有効打になったとは言え、火竜は当然のごとく悠然とそこに立っている。低い唸り声を上げながら、おもむろに口腔を開けた。
 光が灯る。莫大な熱量が生み出され、空気すらもが着火する。
 狙いは後方。着実に攻撃を積み重ねられるのは不味いと感じたか。
 激流のごとく広がりながら空間を占領した。恐るべき力が唯奈、ティクリコティク、カルメネール、アナーリアの四人へ襲い来る。唯奈は先ほど火竜が抉った地面の影に隠れ何とかやり過ごすも、三人は避ける間もなく炎に飲まれる。
「このっ! 口、閉じてろ!」
 地を蹴り、火竜の顎を目掛けて泰地が蹴り上げる。下からの衝撃に耐え切れず、火竜はブレスを止められる。
「暑いのは苦手って言ってるでしょ」
 間髪入れずに飛んでくるアイオーニオンの雷撃が火竜を焦がすと堪らず痛みに声を上げた。怒りの双眸を向けて、再度ブレスの姿勢に入ろうとするその瞬間。
「これ以上は、させませんよ」
 火竜の周囲の空間が歪むと、無数の鎖があらゆる方向から迫り来る。触れた箇所から獄炎が広がり、火竜の動きを縛らんと迫る。ユウマの放つ獄炎の鎖に堪らず巨体を翻し回避行動に移る。
 避けた先、置いてあるかのように銃弾が貫かんとする。直線的な動きをするそれに当たるはずもないと、見てからでも回避できると言わんばかりに火竜は身を捻る。
『ガァアァアアア!?』
 返るのは苦悶と困惑の悲鳴。死角から放たれていた時は反射すると言え直線的な動きをする攻撃だと、火竜は見切っていたはずだった。だが、あろうことか捻るように曲がり、肩に突き刺さってきた。
「ま、これを避けるのは骨だろうよ」
 瓦礫に身を潜め、唯奈が先ほど撃った銃の硝煙をフッと吹き消す。銃弾を曲げるなど、この星に満ちる力を使えば雑作もない。
「それにこっちばっか気を取られるのも、まぁ。無しだぜ?」
 縦横無尽に光線が飛び交う。触れた相手を石に変えると言われるおぞましき力を秘めた光が火竜を打ち据えようとする。辛くも回避するが有り得ぬとばかりに、光線の飛んできた方を向く。
 ブレスによる煙の晴れた先、そこには毅然とアナーリアが立っている。燻り続ける炎の大半はすでにティクリコティクの慈愛の雨により鎮火された。
「酷いよね、女の子に何てことするの」
 体のあちこちに火傷を負ったピノを癒しながらカルメネールが火竜を睨み付ける。ブレスの矢面に立ったピノだったが、辛うじて耐え切りフラフラとしながらも自力で動いてきた。
 周囲への延焼も、樹の放つ紙兵が身代わりになるが如く燃え尽きて防いでいた。そして、次第にその数は未だ増え続ける。
「我々を舐めないでいただこうか? 最強の戦闘種族だか何だか知らんが、こんなところで屈するわけにもいかないんでね」
 樹の挑発に自尊心を傷つけられたと思ったか、火竜は誇示するかのように雄叫びをあげ暴力を振りかざす。
 強力な痛撃を与えてきた泰地を厄介と見たか、全てを引き裂くほどに強力な爪を叩きつけようとする。その間に樹が割って入る。受け止めた樹の足元に蜘蛛の巣状に罅が入り、そのまま押し潰そうと火竜が力を込める。巨体に見合うその力は均衡さえ侭ならぬ。しかして、相手は彼女一人である訳もなく、その隙に泰地の蹴撃、アイオーニオンの鋭利な身も凍らすほどの一撃、唯奈の死角を狙った銃弾、アナーリアの剣閃から放たれる炎が一挙手一投足で放たれる。
 だが、やはり相手も生粋の怪物だ。泰地の攻撃を左腕で受け取め、アイオーニオンの一撃と唯奈の銃撃に怯まず、アナーリアの炎を薙ぎ払った尾の衝撃で掻き消す。
 そして、そのまま樹を押し潰そうと右腕に力を込める。凄まじい重圧で逃れようにも力を抜いた瞬間に潰されそうになるが故に動けなかったところ、受けていた重圧が軽くなる。
「今のうちに抜け出してください!」
 ユウマの手元から伸びる鎖が火竜の右腕一杯に絡みつき、逆方向のベクトルを働かせる。わずかに力が緩まるも長くは持たないことは明白だ。今にも引き千切れそうな鎖と共にユウマが歯を食いしばりながら力を込める。
 その隙に樹はその場から抜け出し、直後、轟音と共に火竜の右腕がアスファルトを貫く。
 傷ついた樹の傷を癒すべく、ティクリコティクが目を閉じ眼前に光珠を生み出す。近くに満月の力を感じ狂乱に飲まれそうになるが、これほどでなければ深い傷を癒せない。額に汗し息を乱しながらも、整えた力を放ち傷を癒す。併せて、カルメネールもまた魔力の木の葉で樹の傷を癒していく。荒げていた息がわずかに楽になったかのように収まるが、本調子には遠い。


 地面を穿った右腕を引き抜くと同時に火竜が再び凄まじい速度で尾を叩きつける。前衛に立つ三人が弾き飛ばされ、泰地とアイオーニオンが反撃を叩きつけるが、全てをその身で受け止めてなお怯まない。両腕を振るい切り裂こうとするそこへ幾多も銃弾と魔術が迫り、ユウマもまた火竜の攻撃を阻害することで辛うじて拮抗していた。当然、前に立つ二人とそれを庇う樹、ピノの二人をカルメネールとティクリコティクが癒し続けるが少しずつ限界は近づいている。
「なんつうタフさだ! だけど、これでこそ倒し甲斐があるぜぇ!」
「しぶといわね……」
 攻撃を物ともしない火竜へ、泰地は面白いとばかりに笑みを零すのに対し、アイオーニオンが呆れたように呟く。四度、泰地とアイオーニオンの二人は挑みかかる。連続で放たれる泰地の蹴りを左腕で捌いて翼をはためかせて吹き飛ばし距離を取らせる。
「へっ! そう簡単に取らせてくれはしねぇか! だけど、まだまだぁ!」
 さらに躍りかかると同時に、唯奈が複雑な軌道を描く銃弾を放つ。痛いが致命的ではないと思ったか銃弾を無視し、それ以上に泰地と、後ろで動き回りながら詠唱し隙を伺うアイオーニオンを警戒する。
 冷静に狙ってくるその瞳は狩人のごとく。妨害するように放たれる尾から身を翻し適度な距離を保ち続ける。苛立たしそうに火竜が吠えるが、熱狂する怪物とは対照的に冷めていく。
 幾度もの蹴りを放ったか、すでに人間の動きの限界を軽く突破し巨体を翻弄するかのように動く泰地に隙を見せず、火竜は鱗で受け止める。
 アナーリアの放つ怪光線さえも意に介さなかったが、不意にガクリと火竜が隙を見せる。ユウマが異空間から呼び出した鎖が全身を縛り上げ、さらに先ほどのアナーリアの一撃で思うような動きができなかった。
「隙ありだぜっ!」
 泰地が火竜の脳天めがけて踵を振り下ろす。凄まじ勢いの一撃は火竜の頭蓋を地面に捩じ伏せ叩き付ける。すぐさま起き上がろうとした火竜へ今度はアイオーニオンの雷撃が過たず直撃する。
 体を痺れさせたように仰け反らせるが、勢いに併せてブレスを噴いてくる。後方に吐き出されたその一撃をピノが受け止めるも、さすがに耐え切れず力尽きた。
「くぅっ……まだだ。ヒーローは、諦めなんてしないっ!」
 炎に焼かれながらも、ティクリコティクは後衛の傷を癒す。
「ピノ、頑張ったね」
『キュゥ……』
 弱々しく鳴くピノの前に立ってカルメネールもまた怪我を治していく。強力な一撃に耐えた相棒を労いつつ、未だ健在な敵を見据える。
 こちらも徐々に損害が出ているが、相手もまた満身創痍であった。全身から血を滴らせ、ふらつく体に叱咤を入れるがごとく吠え声を上げる。尾を薙ぎ払い、我武者羅に巨躯を振るい押し潰さんと迫る。
 その猛攻を受け止め続ける樹の肉体は、とうに限界を迎えていた。何故倒れぬと、火竜は躍起になって攻撃を加える。
 息を荒げ叩きつけるわずかな瞬間に目が合う。こちらを射抜くような眼光、口の端を挑発的に歪め痛みに耐え忍ぶ、それに火竜は一瞬恐怖した。こんな生物など見たことない、と。
 そして、それが火竜の最後の意識となった。
 泰地の蹴撃が火竜の首をへし折り、アイオーニオンの放つ雷が痙攣する火竜の動きを完全に止めたのだった。


 塵と化し始めた火竜の死骸を前に。急ごう、と。誰ともなく告げた。八人は遠く鎌倉の地を見つめる。戦いは、まだ終わらない。

作者:屍衰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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