其は忍ぶもの

作者:キジトラ

 高層ビルの上から夜の街を悠然と眺める女性がいた。
 螺旋忍軍がひとり、夕霧さやか。
 その姿はやり手のキャリアウーマンのようであり、街に目を遣りつつもその傍らで携帯端末を操作して、何か仕事のようなことを進めている。
「時間通りですね」
 突然のつぶやき……否、いつの間にか夕霧さやかの後ろには螺旋の仮面をつけたくノ一がひざまずいていた。
 携帯端末を操りながら、夕霧さやかは背後のくノ一に命令を下す。
「あなたへの命令は地球での活動資金の強奪、あるいはケルベロスの戦闘能力の解析です」
 くノ一はひざまずいたまま微動だにしない。
「あなたが死んだとしても、情報は収集できますから、心置きなく死んできてください。もちろん、活動資金を強奪して戻ってきてもよろしくってよ」
 くノ一は無言で、小さくうなずく。
 顔は螺旋の仮面をつけているためにうかがうことはできないが、先程の言葉に対して何の感情も抱いていないように感じられる。背格好から察するに、まだ少女といっていい年頃だろう。……いや、これが月華衆と呼ばれる者たちなのだ。もし、他の月華衆であったとしても同じ反応を示しただろう。同じ姿をしているだけでなく、思考や性格まで酷似させた者たち――故にここにいる少女もまた例外ではなかった。

 命令を受けた先程の月華衆が忍び込んだのは、とある富豪の家。
 素早く、そしてよどみない動きで塀を越え、各所に仕掛けられた防犯装置を掻い潜ると、音も無く家屋へと侵入を果たす。既に金品のある場所には当たりをつけているのか、進入時と変わらず、動きには迷いが無い。
 物音を立てず、月華衆はこの家の主人の部屋へと忍び込み、寝息を立てる老人を見つける。それと、同時に金庫の場所も。
「……」
 老人と金庫の場所を見比べ、僅かな思考時間の後に月華衆は老人へと近付いていく。その手にはいつの間にか螺旋手裏剣が握られていて、無言のままに老人へと振り落とす。手裏剣に描かれた月下美人が返り血に濡れ、それをさっと払うと今度は金庫へ歩いていった。

「螺旋忍軍が、金品を強奪する事件を起こそうとしていますの」
 テッサ・バーグソン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0130)は集まったケルベロスたちに事件の概要を伝えると、具体的な説明に移った。
「狙われるのは塩田・権三郎様の邸宅ですの。強奪されるであろう金品に特別な物はありませんしたの。ですから、おそらくは地球での活動資金にするつもりと思われますの」
 特別な物が無いのは、テッサ自身が確認している。
 また、その際には権三郎に事件の説明を行い協力も取り付けた。
「ですから、皆様には強盗を働く螺旋忍軍を撃退して欲しいんですの」
 事件を起こす螺旋忍軍は、『月華衆』という一派だ。素早く隠密行動が得意な螺旋忍軍であり、全員が小柄な女性で、同じ姿をしているという。
「月華衆は特殊な忍術を使いますの。それは自分が行動をする直前に、皆様が使用したグラビティのひとつをコピーして使用する忍術ですの」
 これ以外の攻撃方法は無いようなので、戦い方によっては相手の次の攻撃方法を特定するような戦い方もできるだろう。
「また、理由は分かりませんが、月華衆は『その戦闘で自分がまだ使用していないグラビティ』の使用を優先するようですの」
 その点を踏まえて作戦を立てていけば、有利に戦えるだろう。
「月華衆の行動には不思議な点が多いようですの。もしかしたら、これを命じている黒幕がいるのかもしれませんが、まずはこの月華衆の撃退ですの。良い報告を待っていますの」


参加者
ルーカス・リーバー(道化・e00384)
秋草・零斗(螺旋執事・e00439)
リリキス・ロイヤラスト(庭園の桃色メイドさん・e01008)
ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)
小田島・ナオジロ(動物がお医者さん・e08034)
鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)
リリーナ・モーガン(グリッター家令嬢お世話役・e08841)
イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555)

■リプレイ


 僅かに空いた扉の隙間から月光が差し込んでいた。
 暗い部屋の中には4人のケルベロスたちが息を潜めて、その時を待っている。
 もうかれこれ、3時間は経過しただろうか。
 それは何の前触れも無く起こった。
 見間違いかと疑いたくなるほどの僅かな時間であったが、月光が遮られ、ささやかな物音と微かな空気の震えを感じる。
 リリキス・ロイヤラスト(庭園の桃色メイドさん・e01008)は隣に視線を送ると、ルーカス・リーバー(道化・e00384)が小さく首肯する。他の2人からも同じ反応が示され、物音が聞こえなくなってからケルベロスたちは部屋を出て行く――。

 空気を震わしたものは階段へと進み、2階へと上がっていた。
 いや、上りきるまであと6段ほど残している。
 2階の廊下に待ち構える、鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)とウイングキャットの姿が目に入ったのだ。更に目を凝らして、後ろに居る3人と2体の姿も発見したのと同時に、
「ようやく来たか、待たせてくれたじゃねえか」
 慶も上ってきたものを見つける。上手く闇に潜んでいるが、その輪郭からヘリオライダーの言っていた月華衆の少女と見て取った。
「ようこそお越し下さいました、個性を捨てた哀れな量産品の忍者様」
 夜闇に金色の瞳を輝かせ、リリーナ・モーガン(グリッター家令嬢お世話役・e08841)が進み出ると優美にお辞儀をして、慇懃無礼に言い放つ。
 だが、月華衆に反応は無い。変わらず、動きを止めてこちらの出方をうかがっている。
「デウスエクスが泥棒の真似事なんて随分とせこい事をするじゃない」
「そうそう、君みたいな可愛い子には俺のハートの方を盗んで欲しいけどなー」
 今度は、イリス・ローゼンベルグ(白薔薇の黒い棘・e15555)と、ククロイ・ファー(鋼鉄の襲撃者・e06955)が口を開く。
「茶化さないでくれるかしら」
 イリスが少しきつめの視線をククロイに投げつけてから、話を再開。
「一応聞いておくけど、こんな事をするなんて一体誰の差し金かしら? 正直に言えば見逃してあげないこともないわよ?」
 ちょうど、その言葉を言ったと同時に廊下と階段の照明が灯る。
 闇を奪われた月華衆はすぐさま逃走を始めようと踵を返すが、背後から聞こえてきた足音に動きを止めた。僅かな逡巡の後、足場の悪さを嫌ってすぐさま階段を上りきる。
 そして、その判断が正しかったことを証明するように、1階に隠れていたケルベロスたちもほとんど時間を置くことなく到着した。
「こんばんは、可愛らしいお嬢さん。私どもの相手も、お願いできますかね」
 先頭に居たルーカスが道化師のように大げさな振る舞いで深く腰を折る。
「不法侵入されるような方に礼など不要でしょう」
 並び立って、秋草・零斗(螺旋執事・e00439)は月華衆に冷たい視線を送る。
「金品強奪……雇い主が何をさせたいのかは判りませんが、そうそう好きにはさせませんよ。仕える相手も居ない身ではありますが、執事として見逃すわけには行きません」
 言い放つと同時に得物を構えると、月華衆も螺旋手裏剣を取り出す。
 そこに響いてくる足音。
 階下から聞こえてきたそれは遅れてやってきた、小田島・ナオジロ(動物がお医者さん・e08034)もので――到着するなり彼のビハインドに思いっきり小突かれた。
「痛いです、アマネさん。遅くなったのは電灯のスイッチを入れてたからで……あいたた」
 更に小突かれるナオジロに月華衆は目を遣ってから、茶番を無視して廊下の先に視線を戻す。ケルベロスたちは横に並んで廊下を完全に塞いでいる。加えて、目的の部屋の前にはククロイが立ち塞がっていた。
(「もっとも奪う金品も一般人も避難していないのだけれどね」)
 イリスが心の中で視線を送り続けている月華衆に苦笑を漏らす。
 ここまでは予定通り、後は。
「ご足労頂き、誠に恐縮ですが当方強盗の類はお断りしております。……あぁ、お引き取り頂く必要はございませんわ」
 リリーナが始まりを告げるべく、携帯型の照明器具に明かりを灯す。
 それは他のケルベロスたちも。
「あなたはここで死に果てますもの」
「んじゃ、権三郎さんの命を守る為にも、いっぱいコピられる前にさっさと倒すか!」
 リリーナが嗤い、ククロイが仲間に呼び掛ける。
 直後、それぞれが手にしていた照明器具を手放して戦闘を始める。


 月華衆は腰を引いて、ケルベロスたちの初手を見る。
 まず先陣を切ったのはククロイ。
 攻性植物を斧に巻きつけながら、自身に記録されたドワーフのデータを呼び出す。
「機動力、いただきますッ! 壊・震・撃イィィッッ!!」
 ただただ豪快に振るわれたそれを、月華衆は身を翻して避ける。触れてもいないはずなのに風圧だけで衣服が切り裂かれた。
 それに驚くことなく、月華衆は続いて迫ってきたツルクサの茂みのようなものに対して、壁を蹴ることで対処。更に続く攻撃にもアクロバティックな動きで切り抜ける。
「ちっ……面倒くせぇな。とっとと蹴散らして終わらせるぞ」
 舌打ちしながらも、慶は内心で歯応えのある強敵に胸を躍らせる。
「なるほど、少しは出来るようですが――」
 零斗がライドキャリバーと共に肉薄。
 片や網状の霊力を放射し、片や激しいスピンで回避するスペースを奪う。
 されど、月華衆は僅かに生まれた隙間を掻い潜って――その抜けた先に広がっていた蔓触手形態になった攻性植物に目を見張る。
 咄嗟に月華衆は螺旋手裏剣を振るって難を逃れようとするが、
「逃がしませんわよ。リリキスさん」
「わかってますよ。イリスさん」
 2人の差し向ける攻性植物が物量で月華衆を押さえ込む。
 直後に鋭い切っ先が幾重にも走り、拘束を破り、ダメージを最小限に抑えて月華衆は再び動き始めた。流れるように自然な動作で先ほど見たククロイの壊震撃を模倣。
「――来ますわ。アーサーお願い」
 リリーナが仲間に警告を発してから、オルトロスに妨害を命じる。そして、自身もバスターライフルから凍結光線を撃ち放った。
 月華衆はそれらを機敏にかわすも、流石に勢いは減退。
「こちらは私がお引き受けいたしましょう」
 その間に、ルーカスが懐に飛び込んで威力を押さえ込みながらコピーを受け止める。
 だが、オリジナルよりも高火力になった壊震撃によって逆に押し込まれた。そして、月華衆は接近戦を嫌って即座にバックステップで距離を取る。
 追いかけるように撃ち込まれるグラビティ。
 右へ左へ、はたまた身を低くして、月華衆はそれらを掻い潜り、再び目の前に迫ってきたルーカスと激しく刃を打ち交わす。
「逃がしませんよ。そういえば、お名前を尋ねてもよろしいですか?」
 丁寧な物言いとは裏腹に、火花を散らすルーンアックスの切っ先に容赦はない。
「ルーカス様、避けてくださいませ」
 更に後ろから放たれたドラゴンの幻影をぎりぎりまでブラインドして仲間の攻撃をサポート。もう月華衆にも避けられる距離ではない。
 しかし、敵も然る者。
「……なんと」
 ルーカスの動きにぴったりと合わせて攻撃を切り抜けると、即座に魔法光線で反撃する。
「くっ、さすがに一筋縄では行きませんか……」
「大丈夫? いま治すからね」
 ルーカスが体勢を立て直したところに、すぐさまナオジロから満月に似たエネルギー光球が飛んだ。次いでナオジロはビハインドに指示を出して月華衆への牽制をお願いする。
 一進一退。
 手数ではケルベロスたちが押しているものの、有効打は少ない。スナイパーを3人と1体揃えてのこの状況、敵ながら凄い技量であると認めざるを得ない。
「うざってえんだよ、ちょこまか動くんじゃねぇ!」
 慶の差し向けるストラグルヴァインを月華衆は辛くも回避して再び距離を取る。
 そして、同じグラビティでウイングキャットを捕縛。
 次いで後ろに跳ぶとケルベロスたちの攻撃が、先ほど居た場所に降り注いだ。完全に回避したと月華衆が思ったところに、
「ならば、この紅の氷華が貴女の棺ですよ?」
 移動地点を読んで、リリキスはグラビティを操り、鮮血の如く美しい紅色の氷の華で包み込む。タイミング的にも回避は不可能だ。
 故に月華衆は即座に受けたグラビティで反撃を撃ち込む。
 痛み分け……いや。
「偽りの獄奪で私から奪えるとお思いにならないでくださいませ? 本当の紅氷華を教えて差し上げます」
 自らのグラビティを受けたリリキスの双眸に炎が灯り、唇から出た言葉には不敵なものが混じった。対して、月華衆も攻撃のギアを更に上げる。
 戦いが加速していく、それは限界が見えないほどに。


「行くわよ」
「お任せください」
 イリスと、零斗が同時に前へ出る。
 連携攻撃で抑えこもうとしたところに、カウンター気味の強烈な回し蹴りが迎え撃つ。
 激しくぶつかり合って双方共に後退。
「逆巻く時の渦よ、顕現せよ。この地を覆いつくし、あるべきものをあるべき所へ返したまえ!」
 零斗が螺旋の力を用いて擬似的に時を巻き戻す。
 それで傷を癒したところに、追撃してくる月華衆。
 急ぎ、ナオジロもウィッチオペレーションを用いてフォローに周り、
「集中攻撃など、私が許すと思わないでくださいませ」
 リリーナがガトリングで弾幕を張って敵を下がらせる。
 一進一退の攻防が続く中に、今度はククロイが肉薄。
「知ってるか? 今はストラグルヴァインブームなんだぜ」
 振るった斧から蔓触手形態の植物を伸びて、月華衆に襲い掛かる。が、これも動きに合わせて回避――否、その足が途中で鈍って直撃する。少しずつも与えていたバッドステータスがようやく効果を発揮した。
 そこに畳み掛けるように、慶もまた蔓を伸ばして月華衆の動きを鈍らせる。
「死ぬのがわかってて戦う気分はどうだ? 死んでも構わねえから、雇い主はお前を寄越したんだろ?」
 続け様に言葉攻め。
 だが、月華衆は反応することなく蔦を切り裂いて後退。
「……だんまり決め込みやがって。まあいいさ、どうせこれから二度と喋れねぇ様になるんだ」
 言葉通り、戦局はケルベロスたちに傾き始めている。
 戦いの趨勢を決めたのはケルベロスたちの作戦によるところが大きい。頑健のグラビティで揃え、防具耐性に頑健を揃えきたのは見事というべきだろう。加えて、6枚のディフェンダーが月華衆の攻撃をシャットアウトしている。
 だが、有利といっても月華衆の俊敏さはまだまだ健在だ。
「どうにもすばしっこいお嬢さんですね。こうも押さえきれないとは思いませんでした」
 高々と跳び上がって、ルーカスがルーンアックスを振り下ろす。
 衣服を切り裂かれながらも月華衆が避けたところに、イリスがケルベロスチェインに地獄の炎を纏わせて叩きつける。が、これも前転しながら避けられた。
「気に入らないわね……」
 イリスが攻性植物を捕食形態に変化させながらつぶやく。
 苛立ちの理由は明確だ。
 ケルベロスたちは月華衆が撤退することを考えて退路を断つべく動いていた。だが、当の月華衆には微塵もその動きがない。じりじりと押され、いずれは致命傷を受けるのは明白。これだけの技量があれば、それを理解できないはずがない。
 ならば、与えられた任務のために命を捨てる気なのか。
「個性を捨てただけでなく、自らの命すら捨石にする気とは敵ながら見事な忠誠心です」
 応えた、リリーナが魔法光線を放つ。
「何か釈然としねえな……くそっ、ルーンなんたらァ!!」
 ルーンアックスを光り輝かせて、ククロイが全力で振り下ろす。回避しようとした月華衆は蔦に再び足を捕われ、代わりに螺旋手裏剣からグラビティを放って相殺を狙う。
 グラビティがぶつかり合って光が瞬く。
 直後に深手を負った月華衆が飛び出してくると、狙い済ましたように慶の竜語魔法が後を追う。身を翻しながら月華衆は零斗の時戻しを使って、これも耐えるも、
「鬱陶しい上にほんと気に食わねぇ……自分ってものがねえのかよ!」
 慶は続け様に蔦を伸ばして仕留めに掛かる。
 それでも耐えるのは、月華衆の技量と信念の強さか。
(「見るに耐えないよ。けれど――」)
 止めるには倒すしかないことも、ナオジロには分かっている。ならば、と攻撃に加わるべく攻性植物に手を伸ばす。
 メディックも攻撃に加わり、回避するスペースも与えぬ苛烈な攻撃が続く。
 肉薄し続けている、ルーカスが更に押し込み、
「それにしても、お嬢さんの裏側にいる誰かは、どうやって情報を得ているのでしょうね。お嬢さんに声をかけたなら、伝わったりするんでしょうか?」
 返答は攻撃で。
 されど、それに少しだけ動揺の色が見えたような気がする。
「斃されても情報収集が出来るという事は……覗かれていますかね? ま、今は高みの見物を気取っているといいですよ。いずれ……狩りに伺いますので」
 今度は零斗が異様な殺気を放ちながら話し掛けると、月華衆の動きが僅かに鈍った。
 それはこの戦いの中で初めて見せた隙であり、
「鮮血のごとき、美しき氷の華。咲き誇り、燃えるように凍えなさい……!」
 リリキスの生み出した氷華が月華衆を捉える。
 そして、
「名も知らぬ地獄を纏う者……今こそ、その魂を燃やしなさい」
 地獄で構成された鉄塊剣が甲高い音を上げながら月華衆ごと氷を砕く。金色の瞳がそれを映すと、リリーナは僅かに口角を上げて口から労いの言葉を漏らす。
「お疲れ様です。ゆっくりとお休みくださいませ」


 戦闘が長引いただけに邸宅の損傷もそれなりのものになっていた。
 ククロイやナオジロを初めとして、何人かがヒールに入る。そして、邸宅の中が珍しいのか、キョロキョロしていたナオジロがビハインドに小突かれたことも追記しておこう。
 そうして仲間たちがヒールしている間に、リリーナが月華衆の亡骸に歩み寄る。
「……さて、あなたの魂はどんな力を下さいますかしら?」
 ブラックスライム「貪り喰らうもの」に食わせて、自らの力へと。
 何か言いそうな仲間はこの場に居ない、居るのは黙認してくれそうな者だけだ。後は遺体が消えたと口裏を合わせてもらえば問題にはならないだろうと、リリーナは見ていた仲間に視線で語り掛けた。

 で、十分後。
 後始末を終えたケルベロスたちは撤収を始める。
「探られてんのは気に食わねぇけど……今はどうしようもねえか」
 ぽつりと、慶がつぶやく。
「あのお嬢さんの裏側にいる者ですか、早いうちに対処したいところですが」
「そうですね。いつまでも高みの見物などできはしないと判らせなければなりません」
 ルーカスは口元に手を当て、零斗は確固たる意思を口にする。
 月華衆を裏で操る者。
 その存在を意識しながらケルベロスたちは邸宅を後にする。
 更なる戦いの予感を、胸に秘めて――。

作者:キジトラ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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