つれない野良猫を愛でる男性

作者:なちゅい

●そっけない三毛猫に……
 香川県高松市。
 瀬戸内海には猫の楽園のような島があるというが。なかなかそこに行く機会もないと、サラリーマンの鬼塚・護は街中を歩きながら溜息をつく。
 猫を思いっきり愛でたい。日頃からそう願う彼だが、悲しいかな彼の住むアパートはペット禁止物件である。
 その為、鬼塚は近場をうろつく野良猫をよく愛でている。オスの三毛猫なのだが、やややさぐれた性格をしており、全く人に懐かないことで有名だ。
 それでも、なんとなく鬼塚はその猫に愛着を抱き、餌を与え続けている。
「おーい、ミケ、餌だぞー」
 鬼塚はわざわざペットショップで購入してきたキャットフードを差し出す。
 しかしながら、ミケと呼ばれた三毛猫はよほど気に食わないのか、ケッと小さく鳴いてから歩き去ろうとする。
 しゅんとする鬼塚の後ろ。いつの間にか黒いコートの少女……ドリームイーターが立っていた。そいつは手にした鍵で鬼塚の心臓を一突きしてしまう。
 ……血は出ない。それどころか、傷すら鬼塚は負っている様子もなく。
 この行為は、ドリームイーターにとって傷つける為の物ではない。人間の愛を得る為の行為なのだ。
「あんたの愛って、気持ち悪くて壊したくなるわ。でも、触るのも嫌だから、自分で壊してしまいなさい」
 意識を失って倒れてしまう鬼塚の隣には、猫のウェアライダーのような姿をした人影が立っていた。もちろん、本物のウェアライダーではない。心臓部分がモザイクに覆われたドリームイーターだ。少女はそれを確認し、くすりと笑ってこの場から消え去る。
 そして、新たに生み出された猫の獣人のようなドリームイーターは、この場から去っていくミケを追っていき、射程に捉えた後にモザイクを投げ飛ばす。
 モザイクに包まれて泡を吹き、がっくりと倒れる猫を確認したドリームイーターは、新たな獲物を求めて近場を彷徨い始めたのだった。
 
 とあるビルの屋上にやってきたケルベロス達。
 そこでは、リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)が1匹の三毛猫を抱えてケルベロスを待っていた。
「ようこそ、皆。……もふもふ」
 挨拶するリーゼリットは、猫の抱き心地を堪能していた。
 ケルベロス達が依頼の話をと促すと、彼女はそっと猫を屋上の床に下ろす。
 去り行くその姿に少し後ろ髪を引かれながらも、リーゼリットは依頼の話を始めた。
「見返りの無い無償の愛を注いでいる人が、ドリームイーターに愛を奪われてしまう事件が起こっているようだよ」
 愛を奪ったドリームイーターは『陽影』という名のようだ。彼女の正体は不明だが、この『陽影』が奪われた愛を元にして現実化させたドリームイーターが、事件を起こそうとしているようだ。
「愛を奪われる被害者をこれ以上増やさない為にも、ドリームイーターを撃破してきてほしいんだ」
 このドリームイーターを倒す事ができれば、愛を奪われてしまった男性も、目を覚ましてくれることだろう。
 ドリームイーターが現れるのは、香川県高松市。
 敵は1体だけ現れる。ちなみに、鍵を使って新たに生み出されたドリームイーターの少女は消えてしまったようだ。
「出現場所は市街地のようだね。車通りの少ない裏通りだね。人がちらほらいるから、人払いした方が敵の討伐には都合がいいはずだよ」
 また、猫のウェアライダーのようなドリームイーターはまず、目の前にいる三毛猫を狙う。愛を奪われた男性の願望を反映した訴えをしながら、モザイクを飛ばして攻撃をしてくるようだ。
 ケルベロスが現場に到着したタイミングでは、現れた猫の獣人の姿をしたドリームイーターが、三毛猫を追いかけている状況のはずだ。
「可能であれば、この猫も助けてあげてほしいな」
 とは言うものの、彼女の瞳は是非とも救って欲しいと訴えかけてきていた。
 リーゼリットは一通り依頼説明を終えると、足元の猫が頬擦りしてくるのを見て、改めて抱きかかえる。
「こんなに可愛らしい猫を手に掛けるなんて……。ボクは許せないんだよ」
 だから、ドリームイーターを討伐して欲しいと、彼女は改めてケルベロス達へと願うのだった。


参加者
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)
エピ・バラード(安全第一・e01793)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
イーリス・ステンノ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412)
アイリス・ブラックウッド(未だ己が何者か知らぬもの・e19733)
マナフ・アカラナ(万象劣化・e24346)
アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)
アスカロン・シュミット(竜爪の護り刀・e24977)

■リプレイ

●希少な野良猫とそれを追うドリームイーター
 香川県高松市までやってきた、8人のケルベロス達。
「自分は人間だ……と思っていたけど違うらしい。名前は一応アイリスという」
 スイートコーデ装備でやってきたアイリス・ブラックウッド(未だ己が何者か知らぬもの・e19733)はその後、『どこで生れたか頓と見當がつかぬのは、夏目漱石の小説の猫と一緒だ』と、小説の冒頭部分をもじって語りつつ高松の地へと降り立つ。余談だが、お隣の愛媛県松山市にて、漱石は教師を行った過去があるとのこと。
「冷静に考えると、猫の為に高松くんだりまで来るって皆、暇人だと思わないでもないけど。いつか猫の恩返しを期待するとしよう……」
 期待薄だけど、と独りごつアイリスは現金な一面を除かせていた。
「別に、猫には興味ないけど……まあ、殺されたら寝覚めが悪いしね」
 アビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)はそっけない態度をとっている。仲間からは距離を置く彼女。それでも、こうしてやってきているのは、密かに猫を思っての行動なのかもしれない。
 そんな彼女を見たからというわけではないだろうが、メンバー達の話題は今回狙われる野良の三毛猫へと移る。
「ふふ……人に懐かないというのは、己を強く持っているという事なのでしょうか。であれば中々、私としても好みの獣ですね」
 マナフ・アカラナ(万象劣化・e24346)の言葉にエピ・バラード(安全第一・e01793)が力いっぱい同意する。
「わかりますよ、猫はかわいいですもんね。愛想がなくたって太ってたって、かわいいずるいやつです!」
 猫の気を引こうと、エピはとっておきの品を用意していたはずだったが。
「にゃーん! 猫じゃらしもってくるの忘れちゃいましたっ!」
 彼女はがっくりと崩れ落ちてしまっていた。
「三毛猫って気まぐれで、猫らしい猫が多いって言うからねー」
 話を元に戻すイーリス・ステンノ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16412)。プライドの高さとツンデレ度に関しては、三毛猫が猫界ナンバーワンなのではないかと、イーリスは考えている。
「そこが、アタシ的にはイイんだよね♪」
 気まぐれなイーリスは、どこか猫に共感できる何かを持っているのかもしれない。
「……良い値もつきそうですしねぇ。そういう輩に狙われる前に、誰か保護出来れば良いのでしょうけど」
 マナフは好みの獣である理由の1つを語る。なぜなら……。
「ただでさえ珍しいオス三毛がデウスエクス関連事件に巻き込まれる……。どれだけの低確率で起きた事件なんだかこれは……」
 アスカロン・シュミット(竜爪の護り刀・e24977)は予知報告を聞いて驚いたという。
「三毛猫のオスの出生率と遭遇率を考えると、今回の事件は互いに不幸な事態になりかねないからね」
 無事に済ませたいと鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)も主張する。三毛猫は基本メスしか生まれない。だからこそ、オスの三毛猫は希少なのだ。
「猫を愛する気持ちを利用するなんて、同じ猫好きとして許せんっ!」
 ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)は声を荒げる。三毛猫と猫好きな男性の平穏の為に、ケルベロス達は現場に向かうのだった。

 現場に到着したケルベロス一行。
 そこには、すでに猫好きな男性の愛を取り込んだ、猫のウェアライダー……いや、胸元をモザイクに包んだドリームイーターの姿がある。近場にはサラリーマンの男性が倒れていた。
 そして、置かれた缶詰には目もくれずに立ち去ろうとしている三毛猫はまだ、ドリームイーターに気づいていない。
「いけませーん!!」
 両者の間に割って入ったのは、エピだ。
「普段は無口でクールなのに、人目のないところで野良猫にご飯をあげる影のある男性……。王道ですけど、いいじゃないですか!?」
 ドリームイーターは立ち塞がるケルベロスに目をやり、動きを止める。
「お前さんが、猫に対する愛情を元に創られたドリームイーターだって?」
 アスカロンは問う。だが、敵はその問いかけには応じない。
「……愛を求めるなら、何故襲う? なぜ殺そうとする?」
 アスカロンはなおも問いかけたが、これにもドリームイーターが応える様子はなかった。
 同じく割り入ってきたマナフはドリームイーターを牽制しつつも、周囲にいる一般人へと逃げるよう呼びかけていく。ラギアもまた通行人を背にするように位置取り、「走って逃げろ!」と周囲の人々に避難を呼びかけていた。
 その間に、イーリスは殺界を作り上げ、新たな一般人が周囲に近づかないようにする。
「んじゃまあ、今日も頑張ってお仕事お仕事」
 猛もキープアウトテープで、関係のない人間が立ち入らないよう対策していた。
 アイリスは、悠然と構える三毛猫をラブフェロモンで呼び寄せようとする。動かぬその猫へとアイリスが逆に近寄り、接触テレパスにてこう伝える。
(「ここは任せて逃げて、近くの動物に危険を伝えて」)
 すると、三毛猫は「にゃー」と一声鳴き、のっしのっしと歩き去っていった。
 ドリームイーターはそうはさせじと追うが、アビスがそれを許さない。
「これ以上先には行かせないよ。通りたければ、僕達を倒して進むんだね」
 そして、アスカロンが再び言葉を投げかける。愛とは互いに相手の事を思いやる意思、そして絆であると。
「まあ、そこまで深い仲には至らずとも……。少なくとも、『襲う』事は愛には含まれないよな?」
 ケルベロスカードから、アスカロンは武器を取り出す。仲間達も同様に武装を固めていたようだ。
「その捻じ曲がった性根、俺達が教育的指導してやるよ」
 ケルベロス達の言葉が、そして、存在が煩わしくなったのだろう。猫の獣人の姿をしたドリームイーターは胸元のモザイクを飛ばし、ケルベロスへと攻撃を仕掛けてきたのだった。

●猫を求める夢喰い
「……なぜ懐いてくれない?」
 ドリームイーターは不気味な声と共に、モザイクを飛ばしてくる。
 しかし、仕掛けたエピが若干速い。
「三毛はあたしたちが守ります!」
 ローラーによる摩擦で、エピはエアシューズを燃え上がらせる。そして、そのまま、力の限り蹴りつけた。
 直後に飛んできた敵のモザイク。それを、アビスが身を張って受けとめる。
 冷静さを失わせる効果を与える一撃。しかし、アビスはすでに前面に紙兵を散布しており、その効果を防いでみせる。右手を胸の前に、掌を上に向けた状態で広げたアスカロンもまた、紙兵を散布していたようだ。
「厄介な奴だね……でも、効かないよ」
 アビスのボクスドラゴン、コキュートスは自ら属性をインストールさせることによって、ケルベロス達へと敵のモザイクに対する耐性を与えていく。
 すかさず、イーリスも後方で分身を仲間に纏わせることで被害の縮小に努める。アイリスもツーサイドアップにした赤紫の髪を揺らしながら、同じくちらつく分身の幻影を仲間につかせていた。
 モザイクが効いていないことに戸惑う敵。そこに、ケルベロス達は攻撃を畳み掛ける。
 正面から叫びつつ特攻して行ったのは、猛だ。
「蹴り裂く! 旋刃脚!!!」
 思いっきり声を上げたのは、気合を入れる為。繰り出した電光石火の蹴りが敵の腰の辺りに炸裂し、その身に痺れを覚えさせる。
 さらにラギアがその部分目掛けて、ゲシュタルトグレイブの切っ先を突き入れる。稲妻が敵の神経回路を駆け巡り、さらなる痺れを走らせた。
 現状は回復の必要がないと、マナフも攻撃に加わる。ただ、一度攻撃に乗り出せば、より強い魂を喰らわんとする元犯罪者の本性を垣間見せていた。
「妖魔召喚 ――塵塚怪王」
 多少の命中力の低下よりは威力と、マナフが呼び出した塵の王。それは猫の獣人にも似た敵へと拳を振り下ろして叩きつけ、同時に相手へと塵の一部を纏わせて動きを封じる。
 痺れに拘束。動きを止めた敵へとイーリスは無表情のままで「きゃはっ」と笑い声を上げる。半透明の御業を自らの体に降ろした彼女は、炎弾を放ち、ドリームイーターの体をさらに燃え上がらせた。
 確実に命中させるべくドリームイーターを狙うラギアは、その相手へと呼びかける。
「ミケと仲良くなれているのに、全てを壊してしまってはいけない」
 猫好きな男性の愛を奪ったドリームイーターならば、その男性、鬼塚・護にとってのミケとの思い出を呼び起こせればと考えたのだ。
 言葉と同時に、ラギアはアームドフォートの砲弾をぶつけていく。しかしながら、ドリームイーターは応じる様子は微塵も感じさせない。
「猫と……戯れたい」
 夢喰いはまたも、モザイクを飛ばす。それを今度は、コキュートスが率先して浴びてくれていた。モザイクは悪夢に包み込もうとするが。耐性も手伝い、そう易々と悪夢に負けることはない。アビスが仲間全体に行き渡る様に、紙兵を散布していたのだ。
 そして、多少の傷はマナフがオーラを打ち出して回復に当たる。彼もまた、時に仲間を守るようにと紙兵を飛ばしていたようだ。
 手厚い仲間達の支援を受けつつ、アビスも余裕を見つけ、敵の弱点となりそうな間接部を殴りつける。
 少し腰を落としたアスカロンは右腕を正面で真横に、そして左手右腰の刀を握って構えを取っていた。
 中衛にいた彼は颯爽と敵に近づき、右手の拳で裏拳を繰り出す。そのまま距離を取った彼は同時に手を開き、糸状の霊力で敵の体を捕らえる。
 入れ替わるように前に出たのは、猛だ。
「降魔ァぁぁぁぁ真拳!!」
 またも大声を上げて飛び出してきた彼女は、魂を喰らう降魔の一撃を叩き付けた。
「こんなにも、猫が好きなのに……」
 やや体勢を崩しかけたドリームイーターだが、まだまだその戦意は失われていない。そいつはなおもモザイクを飛ばしてくる。
 エピもまたテレビウムのチャンネルと共に身を盾とし、モザイクから仲間を守る。そのダメージはテレビウムが動画による応援で、力を与えて回復させていたようだ。
 ドリームイーターへとエピが呼びかける。懐いてくれずとも、ミケがエサを食べてくれたり、鳴き声を上げる姿で癒しを受けていたりしたはずだと。
「それに、猫は乱暴者にはぜーったい寄ってきませんよ!」
 刹那硬直する敵。アイリスはすかさず、急所と思われる関節部を狙って日本刀で切り払う。
「夢現へと舞え! 狂い咲きの徒花よ! 『花篝』!」
 アスカロンも続き、左手の刃を逆袈裟に振るう。幻の炎がその斬撃痕を彩った。
「逃げていたミケが、逃げなくなった時の喜びを覚えているか?」
 初めてご飯を食べてくれた時。毎日、小さな変化を、鬼塚は喜びを代償として受け取っていたはずだとラギアは主張する。
「無償は続かない。俺はそう思っているよ」
 ラギアは超硬化した手や足で殴打を食らわせ、燃え盛る炎を吐きかけた。
 それによって燃え上がる敵へ、またも猛が叫んで殴りかかっていく。
「ヴぁァァァァァニングゥゥゥブレイックワァぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 体細胞を活性化させた彼女の一点攻撃は、打撃と共に爆発を巻き起こす。自身の最大火力を浴びせた猛。ドリームイーターは吹っ飛んで仰向けに倒れ、全身がモザイクに包まれ、消え去っていく。
 そのモザイクが晴れた後、近場に倒れていたサラリーマン、鬼塚が意識を取り戻し、ゆっくりと起き上がったのだった。

●ミケとのひと時
 無事にドリームイーターを撃破したケルベロス達。メンバー達の興味は希少なオスの三毛猫に向いていた。
「加工された餌ではなく、獲物ならばどうですか?」
 マナフは適当に用意していた魚を三毛猫の傍に置いてみる。しかしながら、ミケは一瞥しただけで興味を失ってしまう。
「オスの三毛猫だから、お金目当てに人間に酷いことでもされたんでしょうかねぇ……」
 同じく煮干しを与えようとしていたアイリスも、やはり結果は同じ。警戒心が非常に強いようである。
 それでも、そんなつれない猫の姿にアイリスはほっこりとしてしまう。懐かれたなら、瀬戸内海に浮かぶ猫島にでも連れて行ってやりたかったのだが。
「ふーん……まあ、見た目は可愛いよね」
 遠くでそれを見ていたアビス。ただ彼女、実はどう猫に接していいのか戸惑い、近づくことが出来ずにいたようだ。
 アスカロンは鬼塚へとヒールを施した後、出会った記念にとミケの写真を撮ろうとシャッターを切る。遠くからしか撮ることができなかったが、それでも、その写真は大切な思い出になりそうだ。
「猫の気を引く方法ね……マタタビ漬けとか……?」
 イーリスは茶目っ気まじりに、冗談だと口にする。猫にマタタビを与えるのは程々にしてあげたい。念の為。
「一番イイのは、その三毛猫の好きな事をよく見ることかな。かな? コレで、好感度アップ間違いなし!」
 彼女がじっと見つめていると、猛が隣人力を全開にして近づいていく。
 なんとかミケを愛でてあげたいと猛は思い、欲望を出来る限り内に秘め、気配は穏やかに、慈しみを持って近づき、撫でに行くが。またも、ミケはツンと歩き去ろうとする。
「わ、わ、オスのミケはおいくら万円するのでしょう……!? あっあっ、逃げられちゃいました!」
 そこで、エピがダッシュしてきた為、ミケは全力で走り出す。
「あっあっ、売ったりしませんから待ってくださーい!」
 エピはミケを捕まえようと駆け回るが、ミケはうまく跳び回って逃げていた。
 ラギアはそんなミケへとリボンで気を引く。ドラゴニアンだからなのか、それとも、彼の気の引き方がうまいからなのか。ミケは徐々にラギアへと近づいていく。
 三毛猫は希少価値が高いが、猫好きにとってはそれ以上に猫であることに価値を見出す。
 鬼塚もまたそんな人間なのだろう。ラギアから猫じゃらしのおもちゃを受け取ると、彼はミケの気を引き始める。つれない態度だったミケだったが、徐々に、徐々に近寄ってくる。完全に懐くことはなかったが、意識してくれただけでも鬼塚にとっては至福のひと時だったようだ。
「短命なのが気になるところだな……」
 オスの三毛猫は突然変異で生まれたこともあり、比較的短命だといわれる。それを気にしていたラギアは、良ければ飼ってみたいと主張する。野良猫であることもあり、否定する者はいないようだ。
「鬼塚さん、いつでも、会いにきてくれ」
 ラギアが同意を求めると、鬼塚はいつか会いにいくよと応える。
 ただ、当のミケは「にゃー」とつれない返事をして、あさっての方向を向いていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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