残霊たちの宴

作者:baron

 深夜の町中の、とある場所。
 闇夜の向こうから、賑やかな声が聞こえる。
「さあさあ、我ら『マサクゥルサーカス団』のオンステージだ!」
 蛾の羽を生やし愉快そうな笑顔を張りつけたナニカは、タップダンスでも踊りそうな調子で歩いて来る。
 だがその眼は冷たく、愉快というよりは痛快さを探している様であった。
「それでは君達、後は頼んだよ。君達が新入りを連れて来たら、パーティを始めよう!」
 ポーン!
 軽く手拍子打つと、周囲に怪しく光る怪魚が群がり始める。
 まるで人懐っこい犬が騒ぐかのようであるが、陰鬱な気配と青白い光を棚引かせる姿は、気味が悪いという他あるまい。
 まして2mものサイズがあり、空を浮かんでいるとあっては、まともな生物には見えなかった。
「おっ、さっそく良さそうな子を見つけたのかな? じゃっお願いするねえ」
 怪魚たちは、群がる中から三体ほど進み出て、町の一角を目指し始める。
 そこはかつて、とあるデウスエクスが倒された場所であった。
『ガ、ガ、ガ……』
 失われたナニカの肉体を、魂を元にグラビティが再構築し始める。
 怪魚が周囲を泳ぎ回り、青白い光がまるで魔法陣の様に機能し出すと、その勢いは加速度を増して行った。
 もともとの色なのか、それとも無理やり再構築したからか、そのナニカは黒く月光を跳ね返すかのようだ。
 異形の姿には、狼の如きケダモノの耳と牙、剛毛と爪を持つ。
 ……ソレはかつて、神造デウスエクスであったころの、ウェアライダーであった。
『破壊、はかい、ハカイ』
 ただし知性を感じさせる事無く、ただ、戦闘のみを追い求める姿であったけれど……。


「蛾のような姿をした死神が、動きを見せているようだ。どうやら、この死神は第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスをサルベージする作戦の指揮を執っているようだな」
 ザイフリート王子が、簡単に説明を始めた。
 第二侵略期といえば、ローカストはおらず、ウェアライダーなどがまだ敵あったころの時期だろうか?
「奴は配下である魚型の死神を放って変異強化とサルベージを行わせ、死神の勢力を強化しようとしている。蘇生と言えば聞こえは良いが、これを見逃すことは出来ない」
 それを防ぐため、奴らの出現ポイントに急いで向かって欲しい。
 そういって王子は地図を取り出すと、敵の姿を簡単にスケッチしはじめた。
「敵は狼型のウェアライダーと、配下として……どちらが配下とも言い難いが死神が三体。死神は噛みついてくる程度だが、ウェアライダーの方は屈強なので注意が必要だ」
 そういって王子は魚x3、黒狼人間のスケッチを描く。
 現在のウェアライダーよりもずっと野碑で荒ぶっているような感じだが、それがかつての姿なのか、それともサルベージして変異強化されたのかは良く判らなかった。
「このウェアライダーは屈強だが、ほぼ知性を感じられなかったので、正面から真正直にたたかいさえしなければ倒す事は可能だろう。精鋭足るケルベロスに言う事でも無いが、その辺りは注意が必要とも言える」
 サルベージされた相手は、元が強い上に変異強化されている。
 その上に死神が三体も居るのだから危険この上ないが、敵はただ突撃しかしてこない程度の知性しかないらしい。
 その辺りが単純に見えて知性を持った竜牙兵との差なのかもしれないが、作戦次第でやり易くなる。
「今は夜間で人通りの無い場所だが、放っておけば虐殺を始めてグラビティを集めかねん。その前に対処を頼んだ」
 そういって王子は相談を始める者を邪魔しないように、出発の準備に赴いた。


参加者
佐竹・勇華(勇気の歌を力に変えて・e00771)
毒島・漆(世俗は捨てた・e01815)
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)
花守・蒼志(月籠・e14916)
ノルン・コットフィア(今は戦離れし蟹座の騎士・e18080)
トレーネ・クロイター(闇を架ける月虹・e20611)
ポネシー・シンポル(情けは巡る・e23805)

■リプレイ


「また死神のサルベージかぁ……」
「また死神のサルベージですか」
 二つの声が重なり、夜の闇に響いた。
 それは皆に共通する思いであり、偶然ではあるが半ば必然であろう。
「奴らの戦力増加をみすみす見逃すわけには行きませんし、俺としても死者の蘇生は気に食いません。きっちりと殺して送り返してやりましょうか」
 ハモってしまった事に苦笑しつつ、毒島・漆(世俗は捨てた・e01815)は煙草を携帯灰皿でもみ消す。
 そして風下に向けて紫煙を愉しんでいると、パシンと何かを打ちつける音が聞こえた。
「そうだね! 何度やろうとも叩き潰すだけだよ」
 声のハモったもう一人、佐竹・勇華(勇気の歌を力に変えて・e00771)は思わぬ偶然に、ニカっと笑ってちょっとした幸運を見つけた。
 この辺りは性格もあるのだろうが、彼女はどこまで行っても、前向きであった。
「いずれにせよ、お客さんの到着です。出迎えるとしましょうか」
「はい……時間帯が夜で良かったです。一般人の方を巻き込まなくて済みますもんね」
 漆が抜刀すると同時に、トレーネ・クロイター(闇を架ける月虹・e20611)は微笑んで駆けだした。
 街灯の下を疾走し、やって来る敵に対して、敢然と立ち塞がったのである!
「さぁ、夜が明ける前に決着をつけましょう」
 トレーネはスライディング気味に飛び込み、途中で手を付いて、急減速で頭上を蹴りつける。
 そこには漆が蹴り落とした怪魚……死神がおり、測らずとも上下からツープラトンのキック攻勢を、掛けた形だ。

 そこへピンク色の影が飛び込んで来る。それはまるで春の風を体現したかのようだった。
「どいてどいて! 死神の戦力強化なんてさせない!」
「こっちは支えておくわ。さっさと叩き潰してちょうだいな」
 バーニア吹かした勇華が飛び込みざまの強烈なパンチ!
 ノルン・コットフィア(今は戦離れし蟹座の騎士・e18080)はその間を持たせる為、足止め役の周囲へ、鎖で結界を結んだ。
 ゴン! と弾けるような音を立てて、拳と牙がぶつかる音が聞こえた。
 他にも合わせてケルベロス達の連打を受けて死神は一体目が沈み、対して勇華の方はそれほど傷ついては居ない。
「間に……あったかな?」
「ありがとさんきゅっ」
 やはり花守・蒼志(月籠・e14916)たち治療役が、勇華ら傷ついた者に、即座の回復に掛って居るのが大きいだろう。
 傷口を蝕むグラビティを切除し、痛む身体を速攻で治療にかかっていた。
「死神のそれほどでもなさそうだけど、……あっちはそうもいかないみたいだね。早く何とかしないと」
 蒼志の関心は早いテンポで落ちた死神から、既に『本命』へと移って居た。
 そう……既に、激戦が始まっていたのだ。


『はかい、ハカイ、破壊!』
 捻りを効かせた超高速の裏拳にも関わらず、黒狼の拳は正拳突きの力強さで飛び込んで来る。
 ありえない形の一段、途中で正調に変化する二段の段階を経て、近い場所に居るサーバントの胴を凄まじい勢いで薙ぎ払った。
「これが神造エクスデウスかっ」
 早くも崩れ去るディフェンスに、フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)は唸りを上げる。
 誰かの連れて来たボクスドラゴンが、悲鳴をこらえながら、それでも立ち上がる健気な姿が見えた。
 フィストの連れて来た翼猫が支援の為に動きだし、数体のサーバントが同じように陣形の一部として機能し始めている。
『A・RARA・アー!!』
「確かにサーバントは言うほど強固ではないが……生きていた頃は名のある猛者だったに違いなかろう。それが、こうもケダモノのようになってしまっては哀れだ」
 僅か数撃で膝をつくほど敵の攻撃は苛烈で強大だ。
 フィストはその様子にある種の戦慄を覚えつつも、憐憫を感じていた。
 何しろこの光景は想像された物であり、作戦に寄る誘導そのままの結果なのだから。
「作戦だからといってそのまま看過出来ん。『命を守護する我が一族の名にかけて、この声を刻みつけてやる!!』とくと喰らえ!!」
 フィストの方向が、次第に変化し始めた。
 最初は絶叫に過ぎなかったものが、次第に力を帯びでグラビティへと変化する!
 その衝撃が死神どもを圧し始め、ついには、焔へと入れ替わった!!
「一発、熱いのはいかがかな?」
「うちの奴の為に怒ってくれるのは嬉しいが、そう熱くなるな。戦いはまだまだこれからだぞ」
 獰猛さが窺えるような笑顔を浮かべ、フィストは竜声に続いて火焔の息吹へと移行する。
 ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)は冷静さを喚起しつつ、全体を睥睨した。

 敵は全て前列、それもクラッシャーばかり……。
 前面に向けて、それも邪魔な存在に直線的に突進する特攻とも言えるスタイル。攻撃しかしない戦報は痛みこそ伴うが、対処し易い相手だった。
「一撃毎は強力であっても、この子も回復できたように、予定通りに先に『向こう』を落せば行けそうですね」
「すまんな。本来は主である俺の役目なのかもしれんが……助かる」
 そんな中で、ディフェンス陣を中心に癒していたポネシー・シンポル(情けは巡る・e23805)がおっとりとした声を掛けると、ビーツーは少しだけ頬を緩めた。
 その優しい声は、苦難は今だけですよと、フォローしてくれるかのようでもあった。
 炸裂する爆発も、むしろ竜だけでなく運気を上げるようにすら感じられる。
「やはり盤面を読む気配なしか。ウェアライダーのご先祖様、にあたるのだよな。このような形で対面したくはなかったが……行くぞ!」
「知性までは蘇って居ないのでしょうね。死神ですか……一度無くなった命を無理矢理戻すのは好ましくありません、キチンと送り返します」
 ビーツーは飛び蹴りを掛け敵陣を分断し、ポネシーは生体活性に切り替えるが、まるで対応しない黒狼の動きに残念な物を感じていた。
 黒狼は強大だがただ殴るだけ、その強さ・素早さで後方に回り込まれて居たら、相当に危険だったろう。
 いや、回り込みなどせずとも、取り囲む中で、こちらの攻め手を一人ずつ潰すだけでも相当に勝敗が怪しくなったはずだ。
 それだけの力を有しているのに、有効活用しようともしない。
「操られたことには色々と思う事もあるが……せめて、お望みの戦闘で、丁重にもてなすとしようか.」
 ビーツーは目線を軽く流した後、身体を揺らすようにして態勢を入れ換え、腰だめに構えたライフルから冷凍光線を射出。
 そして彼の射撃に合わせて、戦線に復帰したボクスドラゴンが、反対側から飛び付いていく。

 挟撃により二体目の死神もまた動きを鈍らせ、その隙を見逃すはずもない。
「わたし達も続くよ。そーれっ」
「これで二体目! やり易くなるはずです」
 すかさず勇華が震動波を叩き込み、トレーネが回し蹴りを浴びせることで葬ったのである。
 やはりこの連携こそが、ケルベロスの力であろう。


『オーン!!』
 範囲攻撃で巻き込まれたレベルならば、月光すら吸収する力で黒狼は完全に回復してしまう。
 だが、既に二体の死神が落ち、最後の三体目の生命も風前の灯だ。
 だからこそ戦場を駆ける存在の恐ろしさが良く見えるし、対抗するのがどれだけ厄介かも良く判る。
「数が減って来ると、逆にどれだけ凄いのかがはっきり判りますね……。戦力として惜しいと言うのも判る気はします」
「ですが命は戻らないから、私達は必死に救おうとします……彼らのやり方は命への冒涜です」
 漆の放つ剣戦は弧を描いて死神の腹を切り割き、ポネシーはその間に傷ついたテレビウムに電極を当てた。
 来るのが判って居て避けられない……。それほどまでの一撃が、前衛の一角を担うサーバント達を容易く一蹴していた。
 確かにこのレベルの個体を仲間に引き入れることが出来るならば、戦力強化につながるだろう。
「しかし、有利には成りつつありますが、此方側に重傷が出ない事も絶対です。油断せずにいきましょう」
 ポネシーは傾きつつある戦局を理解しながらも、皆に自制の言葉を送った。
 いま治療しているサーバントは予め防御態勢を整えたディフェンスだから無事なだけで、攻勢に出ているクラッシャー達だったらもっと危険だったろう。
 相手も機動戦に特化したキャスターゆえに一撃は軽いが、逆にいえば簡単に決着などつかない。
 油断すれば思わぬ一撃が、仲間達に不幸をもたらすだろう。
「そうえいばさ、神造デウスエクスを見るのは初めてだけど……。苦しんでいるように見えるのは、俺の都合のいい解釈なのかな」
「苦しいだろうさ。全身を砕かれ、無理やりグラビティで繋げているみたいだからな」
 蒼志が障壁を張りつつも首を傾げていると、ビーツーが蹴りで最後の死神にトドメを刺しながら簡単に疑問に答えた。
 指差した部位は、確かに砕けている。
 それを重力が筋肉のように繋ぐことで、人間にはありえない多関節を作り上げているのだ。
 もはや人型というよりは、SFに出てくる多足ロボなり重力ワイヤーの宇宙戦艦が格闘技を使っていると言った方が、むしろシックリくるぐらいである。

 こうして全ての死神が倒されたことで、本命である黒狼に、ケルベロス達は向かう事に成った。
 憎しみなど覚えてはいないが、かといって放置も出来まい。ならば戦って倒す事が、弔いと言えるのかもしれない。
「苦しむ人を操って……か。相変わらず、いけ好かないことをしてくれるわね、死神は」
「早くまた眠らせてあげよう。今度こそ静かな眠りを邪魔されないように」
 ノルンは軽く息を吐いて、星剣の輝きを緩めた。
 彼女が一休みして次の行動を定める間に、蒼志はすかさずカバーに入って仲間の治療を担う。
 もはや黒狼を足止めする側と、死神を倒す側の両方を適宜に確認しながら癒して行く必要はない。
「ここから先は全員で対処するとしよう『……足元注意、だな』まずはその足を封じる」
 ビーツーは威力よりも、相手の動きを制限する為、足元めがけて熱戦を放った。
 ともに敵を……いや、死すら利用された被害者を解き放つ為の戦いである。力を束ねて一つにして行けばよいのだ。
 熱を帯びて石やアスファルトが黒狼の足に食らいついて行くのが見える。
「ここからが本番と言う訳だな。……いくぞ」
 フィストはふっと笑って竜すら葬る刃を引き抜いた。
 この相手にならば相応しかろうと、黒狼の周囲にただよう怪しき力にこそ斬りかかる。
 それはまるで、操り人形の糸を切ろうとするかのようであった。


「むっ。そっちに行ったぞ気を付けろ」
 フィストが空……いや霊体を切り裂く!
 返す刀で星の輝きを剣に灯した所で、黒狼の動きに気が付いた。
 翻す刃で留めようとするが間にあわない。仕方無く仲間に警告を掛けてから、追撃の為の助走に移行する。
『シネ!』
「……っ。良くこんなのを耐えたね。後で褒めてあげてくださいね」
 トレーネに注ぎ込まれる圧倒的な力。
 包囲の為に移動した彼女を、黒狼の放った闘気が襲いかかったのだ。
 絶望と言うよりは、力に酔いそうになるほどだ。サーバント達は良くこらえていたものだとトレーネは優しく微笑んだ。
「そのつもりだけどね……。もうちょっと踏ん張ってなさい」
 ノルンは一息ついた後で、早速振りかかる災厄を退けることにした。
 紡ぎあげた思い出の鎖が、重力すらまとって仲間の周囲に結界を気づきあげるのだ。
 その力で闇を遮断されたことで、トレーネは攻撃を再開した。
「夜の闇に紛れてやってきたのは死神だけじゃないみたいですよ。ほら、聞こえませんか? 感じませんか?」
 負荷が薄れて行く中で、トレーネは軽く耳を傾ける仕草をした。
 最初はパントマイムに過ぎないソレが、グラビティを帯びることで、言魂を交えることで次第に変化して行く。
『ああ、ほら……闇に紛れて貴方を迎えにやって来ましたよ』
 そしていつしかソレは、噂話から真実に転化する。
 トレーネが呼びだした闇は、払いのけようとする黒狼の後ろから、ゾワリと拡がって呑みこみ始めた。

 一巡、二巡の戦闘を経て、眼に見えて敵の動きが鈍くなってきた。
 最初は避けられることも多かったが、仲間の攻撃が命中するにつれ、段々と当てやすくなってきたのだ。
「チャ~ンス。ここで苦しみは終わらせるよ」
 勇華は魂ごと砕くかのように拳を叩き込んだ後で、軽く目を閉じて、もう一度眼を見開いた。
 今度は外さない! 高鳴る心に同調するかのように、彼女の闘志が膨れ上がり全身を駆け廻って増幅した後で、拳に集約されて行く。
『闘気を内に流し込んで……爆ぜろ!』
 勇華の拳が滑るように黒狼の身体に密着する。
 さほどの助走も振り抜きもしていないはずだが……拳を通して注ぎ込まれた膨大な闘気が、内側から身体を破壊し始めた。
「正拳からの裏当てですか。……連続でヒットしたことを考えると、ようやく効果が出て来たといったところですね」
 漆の剣閃が、目に見えて変化した。
 弧を描く斬撃の後、爪との鍔競り合いを掛けつつ、逆手で大鎌を投げ放った。
 ソレは一度回避しようとする敵の足元を切り割いたのである。
「回復は任せてください。ご存分に」
『針が突く一点を、馬鹿にしない方がいいわよ? ――― 点結律針』
 ここに来てポネシーが回復に専念し、ノルンは始めて攻勢に出た。
 全員が治療役に徹するよりは、むしろ攻撃を重ねて行くべきだと的確に判断したのである。
 ノルンは自分の神を一本だけ引き抜くと、重力を込めて針と化し、いまだ機能するツボに突き立てたのである。
「終わりだ! ……もう星辰は過ぎた。早く星へ帰ってやれ」
「……とうに彼岸は過ぎたのだ。在るべき場所に、還るといい」
 そしてフィストとビーツーが終局をもたらした。
 再び霊体を切り割く斬撃が見舞われ、完全に動きを止めたところを、痛みを和らげるかのように額をライフルが撃ち抜いたのである。
 敵というよりは、強敵と書いてトモと読む。そんな相手に際して、黙祷し寂しげな表情と共に葬ることにした。
「今度こそゆっくり眠ってくださいね」
「静かにお休み。今度こそ覚めない夢を」
 トレーネと蒼志は黒狼を葬った後で、仲間と共に周囲の損害を直しにかかった。
 めくれ上がったアスファルトを、大地に戻していく。
「ヒールで完全に元には戻らないと言っても、地に成るのは珍しいですね。案外、『彼』の影響でしょうか」
 漆は道路にではなく自然に還った路に、ふと物思いに耽った。
 そしてその考えを愉しむかのように、懐から煙草を一本取り出して火を点ける。
「死神は不気味ですね……でも、これからも負けません」
 こうして戦いの名残が消え去ると一同は帰還を始め……最後にポネシーは去り際に呟いた。
 それはあたかも、これからを担う覚悟のようにも思えた。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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