金のアクセサリーを狙う螺旋忍軍

作者:なちゅい

●暗闇の中での犯行
 深夜、とある街の片隅にて――。
 そこには2人の女性の姿があった。1人はスーツを着た、一見キャリアウーマン風の女性。普通に街を歩いていても、別段印象に残ることはなく、街中に溶け込むことができそうな印象だ。
 そして、もう1人は、螺旋の模様の仮面を被った少女。機能性を重視した忍び装束を纏っており、ポニーテールが目を引く。 
「あなたへの命令は、地球での活動資金の強奪、或いは、ケルベロスの戦闘能力の解析です」
 スーツの女性……夕霧さやかが螺旋の少女へと指示を出す。その外見から螺旋忍軍であることは推察できる。……ということは、この女性、さやかもまた、それに属する者、かつ、それだけの地位がある者なのだろう。
 そして、少女。彼女は月華衆の一員。その所属メンバーは性別、体格が似通っており、ほとんど同じ思考を行うよう教育を施されている。
「あなたが死んだとしても、情報は収集できますから、心置きなく死んできてください。勿論、活動資金を強奪して戻ってきてもよろしくってよ」
 指示を出すさやかの言葉に、少女は無言でこくりと頷いた。
 程無くして――。
 ビルからビルへと飛び移り、移動していく月華衆の少女。
 彼女が降り立ったのは、とあるビルの最上階だ。
 外壁を飛び移り、窓からそのアクセサリーショップへと侵入した少女。そこはフロアに商品が並べられており、レジ奥は小さな事務所になっている。
 彼女は店内のみ物色していく。主に見ていたのは、ガラスケースの金品だ。派手に割ると警備の網に掛かると思ったのか、ピンポイントでガラスに穴を開け、展示されていた金のネックレス、時計を根こそぎかき集める。
 それらを風呂敷に纏めた後、それを抱えた少女は、入ってきた窓から逃げ去ってしまう。
 鮮やかな犯行。それは警備の網にもかかることなくスムーズに行われ、何事もなかったかのように店内は静まり返っていたのだった。
 
 ヘリポートへとケルベロスが到着したのは、日が落ちてからだった。
 暖かくなってきたとはいえ、まだまだ朝晩は寒い。
「皆、ようこそ」
 リーゼリットは多少着込んだ上で待っていたようだ。この場にやってきてくれたケルベロスを彼女は歓迎する。
 同じく、ここで待っていたシェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)が簡単に挨拶をした後、やってきたケルベロス達へと告げる。
「月華衆の少女が金のアクセサリーを狙って、窃盗を行うようだね」
 場所は福岡県の繁華街にあるアクセサリーショップ。9階建ての最上階に位置するこの店へ、螺旋忍軍に属する少女がやってくる。
 少女は建物の屋上から屋上へと飛び移って目的のビルにやってきた後、ビルの外壁を伝ってビル内へと侵入、警備網をすべて潜り抜け、奪った金のアクセサリーを風呂敷に詰めてから元来た窓から逃げ出すのだと言う。
「『月華衆』というのは、螺旋忍軍の一派だよ。小柄で素早く、隠密行動が得意なようだね」
 リーゼリットが続いて説明を始める。なお、奪われる金のアクセサリーは特別なものではない。おそらくは地球での活動資金にするつもりではないかと思われる。
 さて、その敵、月華衆は月下美人の紋様が掘り込まれた螺旋手裏剣を持ってはいるが、そのグラビティを使用することはなく、特殊な忍術を利用する。
「自分が行動をする直前に使用された、ケルベロスのグラビティの一つをコピーして使用する忍術だね」
 これ以外の攻撃方法は無いようなので、戦い方によっては、相手の次の攻撃方法を特定するような戦い方もできるだろう。
 また、理由はわからないが、月華衆は『その戦闘で自分がまだ使用していないグラビティ』の使用を優先するので、その点も踏まえて作戦を立てれば、有利に戦えるだろう。
 説明を終えたリーゼリットはううんと唸りこむ。
「月華衆の目的が気になるね。この作戦を命じる黒幕がいるはずなのだけれど……」
 スーツの女性が月華衆に指示する姿を目にした者もいる。この女性が黒幕の可能性が高いが、現段階では何とも言えない。
「とにかく、事件を防いでおきたい。皆の活躍、期待しているよ」
 リーゼリットはそう告げ、ケルベロスへと微笑を浮かべたのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
トルティーヤ・フルーチェ(ファッションモンスター・e00274)
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
百花・白雪(真白の竜騎を継ぎしもの・e01319)
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)
柊・乙女(黄泉路・e03350)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
リュリュ・リュリュ(リタリ・e24445)

■リプレイ

●盗みを働くくのいち
 夜――。
 ケルベロス達の姿は、福岡県の繁華街にあった。
「また月華衆による盗難事件か」
 シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)はとあるビルを見上げる。
 このビルの上階にあるアクセサリーショップに螺旋忍者が現れ、金細工を奪い去っていくのだと言う。
「この前宝石を狙ったと思ったら、今度は金かい? いよいよ泥棒っぽくなってきたね」
 シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)は笑みを浮かべて両手を上げた。
「奴らはそんなに金を集めて、いったいなにをしようとしているのだ?」
「……デウスエクスにもやっぱり、活動資金って必要なものなんだね。螺旋忍者だけなのかな」
 敵の目的をシヴィルは考える。リュリュ・リュリュ(リタリ・e24445)が言うように、螺旋忍軍の狙いは活動資金だという話があるが、果たして。
「解析という言葉がー、気になりますけれどもー。特に難しく考えずともー、斃すだけで良さそうですわねぇー」
 敵はケルベロスの能力を探っている。それでも、とりあえずは現れる敵を倒せばいいとフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)は割り切っていた。
 柊・乙女(黄泉路・e03350)は顔見知りのフラッタリーの割り切りように同意はするのだが、月華衆の少女がこちらのグラビティを模倣してくることが若干引っかかってもいた。
「……まったく、気味が悪い事だ」
 今回の相手に乙女は嘆息しつつも、仲間と共にビルへと入っていくのだった。

 乙女がビルのオーナーやショップの店主へと話をつけた後、ショップに入るケルベロス達。ショップ内には沢山の金細工が並べられてある。
「金! 金のアクセ! はわー、憧れますわね痺れますわね!」
 トルティーヤ・フルーチェ(ファッションモンスター・e00274)はガラスケースの中の指輪や時計、ネックレスに目移りさせ、目がお金のマークにしてしまっている。金品に惹かれてしまうのは、女の子ならば当然……と言いたいところだが、トルティーヤは男の娘だ。
「ちょっとでいいから、身につけてみたいですわっ」
 彼は仲間にそう訴えるが、何時敵が訪れるか分からない以上お預けである。
「これだけ沢山あったら、一つくらい無くなっても……」
 何気にシェイもそう呟くが、飲み仲間でもある乙女が白い目でシェイを見つめる。
「……冗談だからね?」
 視線を感じたシェイは、飄々とした態度でその気がないことを主張した。
 乙女、シェイはその後、店主に人払いと、店内の警報を切ってもらうよう頼み、準備ができたところで、メンバーは店内のショーケースの陰や、事務所に隠れて待機する。
 隠れていた際、百花・白雪(真白の竜騎を継ぎしもの・e01319)はこほこほと咳き込む。
 かつて地球を、人類を護る為に戦った、真白の竜騎の一族の末裔。その当代当主である白雪。人派のドラゴニアンである彼の一族は皆病弱で短命であり、白雪もまた身体が弱い。迷惑にならぬようにと、出来る限り咳を抑えようとしていたようだ。
 ……やがて、ゆっくりと窓が開き、小柄な人影が店内に入ってくる。そいつはショーケースに穴を開け、金のアクセサリーを奪いとっていく。
「太陽の騎士シヴィル・カジャス、ここに見参!」
 突然かけられた声に、人影……月華衆の少女の動きが止まる。一斉に店内の照明がつき、闇に同化していた少女の身体を照らす。
「月並みですけれどー、泥棒は悪い事ー、ですのよー?」
 フラッタリーも螺旋の仮面を被った少女を咎めるように呼びかける。辺りを見回す少女は、すでにケルベロス達によって囲まれた事に気づく。
(「いくらデウスエクスとは言っても、私達ケルベロスとの戦闘中に扉を開けたり、壁を壊したりする余裕はないはずだ」)
 シヴィルを含め、メンバー達は少女が侵入してきた窓を中心として包囲網を固める。それを確認した少女はすらりと螺旋手裏剣を取り出した。
「情報収集用にキチンと訓練された相手なのでござろうが……。死ぬ事前提なのは勿体無い」
 仮面の下の素顔も非常に気になるところ。生きていれば素敵な恋愛が出来るかもしれないのにと、ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)は少女の生き方について嘆く。
「クノイチ……。2次元では素晴らしいこれも、リアルではもの悲しい……。現実は不条理でござるよ」
 リュリュはその言葉を聞いて、敵の手裏剣に目をやる。そこには月下美人の紋様が掘り込まれていた。
(「そういえば、月下美人の花言葉は『はかない美』だったっけ、ね……」)
 敵のあり方にやや哀れみを覚えはするが、それで窃盗が正等化されるはずもない。
「他人の金品を盗もうなんて、このリュリュ・リュリュ、許すことはできないよ」
 見習いとはいえ、騎士……リタリとして、見逃すわけにはいかぬとリュリュはエアシューズで駆け出す。
 メンバー達もまたケルベロスカードから武器を取り出し、月華衆の少女を討伐すべく、包囲網を狭めて攻め込んでいくのだった。

●敵のコピーグラビティに対して
 敵の間合いを計って攻撃を仕掛けるケルベロス達だが、少女は動かずにこちらの攻撃を注意深く観察している。
(「……目的を尋ねても、恐らく口を割らないだろうな。さっさと終わらせる」)
 乙女はちらりとショーケースに視線を走らせる。仲間が止めてくれたおかげで、少女は今のところアクセサリーに手をつけるには至っていない。しかしながら、逃がす際にそれらを持ち出す可能性もある為、十分に気を払うことにする。
 初手として、乙女は日本刀を握り締めて駆け出す。普段は御業や鎖、体術といった戦い方を好む彼女だが、今回は敵によるコピー対策として刀を使い、弧を描きながら斬撃を繰り出す。相手は少女とはいえ、デウスエクス。討伐すべき対象なのだ。その斬撃に迷いは微塵もない。
 シヴィルもまた解き放ったブラックスライムで敵を捕食させようとし、食らいつく牙によって斬撃を浴びせかけた。
 斬撃。それがケルベロス達の作戦の1つである。コピー忍術の対策として、メンバー全員で斬撃のみの攻撃を行う。
(「……動かないな」)
 ラプチャーはおちゃらけた言動を潜め、視線を戦場全体に走らせる。
 構えたままで動きを見せない少女。ラプチャーは仲間の攻撃の合間に流星のごとき蹴りを炸裂させる。一蹴させた蹴りは斬撃となり、少女の足止めを行う。
 続けて猛然と少女に近寄ってきたのは、フラッタリーだ。
 いつもはおっとりした雰囲気の彼女だが、いざ戦いとならばサークレットを展開させ、額の弾痕から地獄を迸らせて襲い掛かる。彼女が地獄化させていたのは、脳の前頭葉なのだ。
「アハァァ……、マダ未ダ……斬ッテ! 切ッTe!! ……Kilリ会ヰマセウ……?」
 全身を使って大きな弧を描き、少女の急所となるであろう関節をフラッタリーは狙う。言動すらも怪しくなっている状態だったが、狂気の衝動を理性で強引に押さえつけてはいた。
 同じくメンバーの手前側にいたシェイも、少女へと仕掛ける。
「北海の玄武よ、大地の猛威と共に敵を喰らえ」
 地面に自らの気を伝わらせていた彼は、敵の足元から無数の蛇を出現させる。大地の加護を受けたその蛇達は、敵を逃がさじと牙を突き立てていく。
 敵の動きを注視するトルティーヤ。仲間を庇うべくミミックと共に壁を成すが、動かない敵を見た彼もまた、影のように見ることが困難な斬撃を浴びせかけていった。
 愛用の斬霊刀『百花白雪』を自らの手足のように扱う白雪も、別の刀と一緒に二刀流で宙を薙ぎ祓うと、巻き起こる二陣の衝撃波で少女を襲い、その魂を刻む。
 動かぬ少女、それがまた不気味さを覚える。リュリュが燃え上がるエアシューズで蹴りかかり、少女の二の腕を燃え上がらせた。
 そこで、少女はようやく動き出す。手裏剣を2つに分解し、それを両手に握って衝撃波を放ってくる。これは、白雪が使った攻撃と同じものだ。
 白雪とて、一族で一二を争う刀の使い手。だが、こうも簡単に真似されてしまうものなのか。彼はそれを目の当たりにして眉を潜めた。
 敵の攻撃をすかさず、トルティーヤが身を挺して受け止める。魂を直接削り取るような連撃を浴びせかけられてやや怯んでしまうが、戦えぬ傷ではない。
 ここで、メンバーの作戦が功を奏する結果を生む。斬撃グラビティをコピーされるのは想定通り。ならば、防具で対処してしまえばいいと考えて準備してきていたのだ。
 しかしながら、汗水垂らして会得してきた技、ノウハウ。その全てが一瞬で写し取られてしまうのだ。敵が易々と仲間のグラビティをコピーしてしまう現実に、リュリュは一抹の恐怖と嫌悪を覚えてしまう。
 とはいえ、今は攻めるしかない。リュリュはいつも通りの対応を心がけつつ、地面を蹴った摩擦熱で燃え上がる炎と共に、少女の身体を力の限り蹴りつけるのである。

●止まらぬ螺旋の少女へと
 ケルベロス達のグラビティを真似してくる月華衆の少女との戦い。
 一行の作戦は相手の特徴をうまく利用し、受けるダメージを軽減していた。
 その上でスナイパー勢が少女へと確実に攻撃を当てて徐々に足止め、捕縛をし、火力となるメンバーが斬撃を与え続ける。
 その間、ケルベロス達は数々のグラビティを行使し、その多くを少女に真似されていた。
 ラプチャーは己独自のグラビティの情報流出を嫌い、ブラックスライムによる捕食、そして重力を宿した蹴りのみで対処に当たる。
「……聞いて貰えないとは思うでござるが、敵対を止めて此方側に来ない? 死んでも良い事は何もないでござるよ」
 しかしながら、少女は全く応じず、ラプチャーのグラビティを模倣する。ブラックスライムを模した何かをケルベロスに向けて食らいつかせてきた。
 壁役となるメンバーも多い。この場はまたもトルティーヤが受け止めた。真似したグラビティだが、体内を巡り始める毒は本物となんら変わらない。
「とっておきの弾だ、心して聴きなッ」
 トルティーヤはそのまま特殊な銃声を響かせることで、自身と仲間を奮起させる。身体を蝕む毒もうまく消えてくれたようだ。
 リュリュはジッと敵の行動を観察していた。相手が使うグラビティは、ケルベロスがよく使う技であることも多い。ならば、予備動作で次に使う技は判別できる。
「一朝一夕で身に付けた技術で負けてやるほど、リュリュも落ちぶれたつもりは無いよ」
 敵は仲間が抑えてくれている。リュリュはゲシュタルトグレイブで少女に連続突きで攻め立て、シェイも同じくゲシュタルトグレイブを振るい、稲妻を帯びた刃を高速で突き出していく。
 少女は攻撃を行うべく手裏剣を振り上げたが、どうやら神経の一部を麻痺させてしまったらしく、思い通りに動けずにいた。
 癒しの雨を降らせて回復にも立ち回っていた乙女だが、ここは攻め時だと冷静に判断し、居合いで敵を切り伏せる。
 同じく刀、こちらは斬霊刀を操る白雪。非物質化した刀身で少女の霊体を切りつけて毒に侵し、一時の後に今度は刃に空の霊力を帯びさせ、自身や仲間の与えた傷を抉り取り、傷口を広げていく。
「コピーだけでは、決して到達し得ない強さというものを見せてやろう」
 シヴィルはここぞと重心を低く構えを取った。これが止めとなるなら、斬撃でなくとも。そんな考えと共に、彼は仲間に対して小さく謝罪をする。
(「すまない、みんな、作戦を破って……」)
 背中の翼を大きく羽ばたかせ、シヴィルは風を巻き起こす。
「亡き養父より授かりしこの技だけは、貴様らにもコピーできないことはわかっているぞ! 喰らうが良い! カジャス流奥義、サン・ブラスト!」
 彼は前回の月華衆との戦いで、このグラビティをコピーされることがなかった。だからこそ、自信満々に敵へと捨て身の一撃で特攻していく。
 腹に一撃を受け、吹き飛びかけた月華衆の少女だが、彼女は数メートルのところで踏み留まる。
 その上で、螺旋の少女は新しく目にしたそのグラビティを注視していた。オラトリオのヴィゼル同様に風を巻き起こす。風を操るのは一時的に現したオーラの翼。風を纏った彼女は一陣の風となって一直線に飛んできた。
 受け止めたのは白雪。だが、そのダメージは大きい。だが、かろうじて急所が外れていたこともあり、ボクスドラゴンの吹雪が自らの属性をインストールさせ、相棒の危機を救う。その後方では、シヴィルが己のグラビティをコピーされたことに愕然としていたようだ。
 その間に、フラッタリーが少女を狙う。
 霞の構えの如く、日本刀の切っ先を敵へと突きつけた彼女。額の弾痕から溢れる地獄の炎と激憤を封入し……、刹那の後、限界まで高めた膂力で狂奔する。
「鴻鵠之志知ラズバ、セメテ炎灼之心根ヲ教ヱン」
 まさに雲耀の速度で飛び出した彼女は、刃で少女の身体を穿つ。
 叩き込まれた強烈なる斬撃。2歩、3歩、よろけた少女はショーケースに背中を当てる。
 だが、少女に戦う力はもう残ってはおらず、その全身は煙のように掻き消えてしまったのだった。
(「使い捨ての駒に使われた螺旋忍者に多少の同情はしないでもない。でも、どういう認識だったのだろう」)
 リュリュとて、ヴァルキュリア。ごく最近まで、エインヘリアルに操られる存在であった種族だ。
 ただ命令されたから、あの少女は従っただけなのだろうか。あまりにも人間味の薄すぎる少女の姿を思い返し、かくなりたくはないものだとリュリュは実感する。
 ラプチャーは少女達がこうなってもなお、情報が得られるというカラクリを実証しようと調べてみるのだが。残念ながら、手がかりはつかめずじまいだった。
「この子達を送り出している人物には天誅を……。クノイチを粗末に扱う奴には、それ相応の罰を与えねばならないでござるなっ」
 普段の調子に戻ったラプチャーは、今回の黒幕の打倒を誓うのであった。

 他のケルベロス達は、戦いによって荒れた店内にヒールをかけて補修に当たっていた。
 その際、トルティーヤは荒れたショーケース内を片付け、元の場所へと戻すつもりでそっと金のネックレスを掴み取った。
「1個くらいなら。いや、元に戻さなきゃ……」
 彼の頭の中で、天使と悪魔がバトルを繰り広げ始める。人を惑わす恐ろしさすら持つ金品の輝きとは、かくも恐ろしいものだろうか。
 被害が多少なりとも出ていることもあり、店主にはフラッタリーが率先してケルベロスカードを渡していたようだ。
「さて、飲みに行くぞ」
 金品に見とれるシェイを乙女が強引に引っ張る。今日もまた賭け事で飲み代の支払いを決めたのだが、今回もまた乙女の支払いになったのは別の話である。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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