目覚めし獅子は猛り狂って

作者:なちゅい

●雄雄しき獅子も……
 山口県の下関駅西口。
 この付近は漁港ともなっている。明け方くらいにはたくさんの漁業関係者が集まるのだが、さすがに日付が変わって間もない時間帯ではほとんど人はいない。
 だが、そんな時間帯に、漁港の駐車場へと現れた男がいた。蛾の羽を生やした死神『団長』だ。
「さあさあ、我ら『マサクゥルサーカス団』のオンステージだ!」
 団長が大きな声で叫ぶと、そこに大きな怪魚が3体現れる。ふわり、ふわりと宙を舞う怪魚を確認した団長は、にやりと笑ってその場から消えていった。
 残された怪魚は青白く発行し、宙を泳ぎ回る。その軌跡がまるで魔方陣のように浮かび上がって……。
 その中心から現れたのは、この地で眠りについていたライオンの獣人だ。雄雄しいタテガミに凛々しい顔立ち。生前は勇敢なるウェアライダーだったのだろう。
 だが……。
「グワオオオオオオ!」
 猛る獣人の姿には、知性など全く感じられない。死神達はサルベージの際、変異強化をも施しており、この獅子は不自然なほどに全身の筋肉が盛り上がっていた。
「ウオオオオオオ!!」
 獅子は早速、手近な物をオーラを纏わせた拳でぶち壊す。そして、再び猛々しい叫び声を上げたのだった。
 
 ビルの屋上、ヘリオンのそばに腰掛けるリーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)。彼女はスマートフォンで何かを調べていた。
「皆、ようこそ」
 にっこりと微笑む彼女は、ケルベロスに何を見ていたのかと指摘されて答える。
「山口県の地図を確認していたんだよ」
 この地が、次なる事件を予見した場所。ヘリオンを動かすに辺り、彼女は地理の確認を行っていたのだ。
「下関駅付近に、蛾のような姿をした死神が現れるんだよ」
 どうやら、この死神、『団長』は第二次侵略期以前に死亡したデウスエクスをサルベージする作戦の指揮を執っているようだ。
 彼は配下である魚型の死神を放って変異強化とサルベージを行わせ、死んだデウスエクスを死神の勢力に取り込もうとしている。
 こうすることで戦力を増やそうとしているのかもしれないが、見逃すことは出来ない。
「それを防ぐ為に、死神の現れるポイントへと向かってほしいんだ」
 場所は下関駅西口の漁港。その駐車場に死神は現れる。時間帯も手伝い、駐車している車もほとんどない。この為、周囲を気にすることなく戦うことができそうだ。
 怪魚を指揮する団長はすでに姿を消しているが、3体の怪魚がライオンのウェアライダーをサルベージしてしまう。
「怪魚は噛み付きだけしか行わないよ。さほど強くはないけれど、ウェアライダーを守るように位置取るから、厄介だね」
 さらに問題なのは、クラッシャーとして行動する獅子のウェアライダーだ。
「死神がこのウェアライダーをサルベージする際、変異強化しているようだよ」
 不自然なほどに筋肉が膨れ上がったこの敵はバトルオーラを駆使し、強力な一撃を放ってくる。くれぐれも注意して討伐に当たりたい。
 一息ついたリーゼリットは、最後にこうケルベロス達へと告げる。
「戦いの中で命を落とした、誇り高いウェアライダーだったの思うのけれど……」
 死神によって強制的に復活させられたこの獣人は、ただ、力を振り回すだけの獣に成り果ててしまっている。
「……皆の手で、眠りにつかせてほしい」
 リーゼリットはそうケルベロス達へと願うのだった。


参加者
夜月・双(風の刃・e01405)
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)
深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)
ルリカ・ラディウス(破嬢・e11150)
バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)
クルーフ・リンクス(なんちゃっての塊・e24890)
マイア・イクリプス(蝕の乙女・e25169)
スライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)

■リプレイ

●傀儡の獅子
 山口県下関市。
 駅の西側へとやってきたケルベロス達。
 彼らは漁港の駐車場へと足を踏み入れる。そこにはすでに、3体の怪魚型の死神、そして、それらに呼び起こされた獅子のウェアライダーの姿があった。
「酷く趣味の悪いサーカスだね。……というか、こんなのサーカスと一緒にしたら、本物のサーカスに失礼だよ」
「サルベージされた者は、知性も意思も無く死神の意のまま……か。まるでマリオネットだな」
 ルリカ・ラディウス(破嬢・e11150)も夜月・双(風の刃・e01405)も、猛り叫ぶ獅子に哀れみを覚えて。
「肉体は蘇っても、誇り高き獅子の精神は死んだまま……。再び深き眠りへと誘うのが、この者の為にもなるだろう」
「うん、ウェアライダーさんを今度こそゆっくり眠らせてあげるんだ」
 双もルリカも、彼をまた安らかな眠りにつかせてあげようとケルベロスカードから武器を取り出す。
「何時のウェアライダーなのかしら」
 バジル・サラザール(猛毒系女士・e24095)は考える。ケルベロスの出現はここ50年だ。状況を考えれば、この獅子はデウスエクスとして地球に攻めてきた際に潰えてしまった命なのだろうか。あるいは……。いずれにせよ、操られている相手と戦うのは心苦しい。
「でも、人々を、そして目の前の仲間達を守るのが私達の務めよね」
 深夜の漁港だ。何もなければ人など来ない。だが、念の為にとバジルは駐車場を中心に殺界を作り上げていく。
「あっしは命を得て、あちらは不死になる。不思議な縁じゃの」
 ヴァルキュリアのクルーフ・リンクス(なんちゃっての塊・e24890)が定命化し、すでに定命化したウェアライダーがサルベージされて不死の存在に。全く持って皮肉なものである。
「まぁまぁ、全員が無事に帰って来れるように頑張るのかの、そしてキチンと送り返すのじゃ」
 ケルベロスとして、ここで潰えるわけにはいかない。この獅子をきっちりと地面の下で眠らせてあげるべきだと彼もまた考えている。
 おなじヴァルキュリアのスライ・カナタ(彷徨う魔眼・e25682)、マイア・イクリプス(蝕の乙女・e25169)は死神へと視線が向いていた。
「死神か……私達ヴァルキュリアとは違ったサルベージの仕方をしている種族、定命化前からだが、本当に不気味な存在だ」
「死神は嫌いよ。鏡を見せられているみたいで嫌になるわ」
 死神と言う存在は、ごく最近定命化したヴァルキュリアにとっても忌むべき相手だ。とりわけ、彼らはごく最近まで、それを強いられる立場にあったからなおのこと。
「罪深いわね。死者の眠りを覚ますというのは」
 マイアの言葉に頷くスライは改めて、獅子に視線をやった。
「サルベージをされてしまったのは仕方ない、だが強者と戦えるのは望む所だ」
「相手がなんであっても、いつも通り真剣に楽しんで戦うのみだね」
 肌で感じるその力。スライはにやりと白い歯を見せ、葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)もスリルのある戦いに心を躍らせていたようだ。
 ただ、戦いを楽しむメンバーは少数。吼えるウェアライダーの姿は痛々しい。
「早く終わらせましょう……無理矢理起こされた彼の為にも」
 深緋・ルティエ(紅月を継ぎし銀狼・e10812)は静かに眼前の敵に言い放つ。
 ――眠りを妨げた愚か者に死を。
 ――そして、……獣人には今度こそ静かな眠りを。

●死神に慈悲はなく
 ゆらゆらと宙を泳ぐ怪魚はただケルベロスへとかぶりつき、体力を奪ってくるだけだが、その横にいる獅子のウェアライダーは、猛然と前に飛び出し、音速を越える拳を叩きつけてくる。
 獅子の猛撃から仲間を守ろうと静夏が身構え、飛び出す。これぞ命を賭けているという実感を持ちながら、身体を投げ出すようにする彼女。
 そこへ、腹を抉りこむような一撃が飛んでくる。嗚咽すら吐きかけた重い一発。それでも、彼女は口元を吊り上げた。
「いいね、そうでなくちゃね」
 ディフェンダーとして位置取る静夏。これでこそ、仲間の壁役としての見せ場だ。
 踏みとどまった彼女は鉄塊剣『退魔の撞木』を握り締めた。
「デストロイ……ブレイドッ!」
 叫ぶ静夏は力任せに巨大な刃を叩きつける。その重さで、衝撃で、身を裂かれる痛みを覚えた敵は、ギロリと血走らせて狙いを定めていた。
 彼女がウェアライダーを抑えている間に、他のメンバーが邪魔な死神を討伐しようと動く。
(「死者の眠りを妨げ、本人の意思に関係なく手駒に加える死神……」)
 言葉に出すことはないが、双の表情は怒りに満ちている。両手のリボルバー銃の銃口を同時に怪魚へと突きつけた。
「気に入らないな」
 淡々とした口調で言葉を発した彼は敵の正面に飛び込み、舞うように銃弾を全方位に発射させる。
「何でこう死神ってのは、趣味悪いんだろうね」
 ルリカも敵を見据えてそんな感想を漏らす。死神の姿を見ていて、なんとなく頭に自身の宿敵の姿が一瞬浮かび、彼女は首を左右に振る。
「さ、ふぐが私を待っている。待ってて、ふぐ」
 この後、ふぐ料理が待っているという話もある。ルリカは己の感覚を研ぎ澄ませてから死神へと相対して行く。
 その間に、ルティエが狼と化した腕で殴りかかって死神にプレッシャーを与え、ボクスドラゴンの紅蓮がブレスを放ってそれを増幅させる。
 サーヴァント、ウイングキャットのぬこちゃんを連れたクルーフ。
 主がノリノリで歌いだすと音響兵器と主が化すことを知っている使い魔は、邪気を祓おうと翼を羽ばたかせながらも、主が楽しそうに歌おうとするのを強制的に止めている。
 それもあり、当のクルーフ本人のテンションは低い。クルーフは溜息をついて爆破スイッチを押し、前に立つ仲間のテンションを上げようとする。
「つまらぬのう、お主達も戦いを止めて歌わぬか? ……此方の方が楽しいのじゃ」
 だが、死神は応じることなく大きく口を開いて食らいついてくる。それを、ぬこちゃんはしっかりと身体を張ってガードしてくれていた。
 バジルもケルベロスチェインを地面に展開することで、仲間のサポートに当たる。鎖は魔方陣を形作り、前に立つ仲間に盾を張っていく。
 マイアはというと、早期の敵の殲滅の為、相手を状態異常にと立ち回る。
「早速だけど、花園を開きましょう。Aequat omnes cinis.Pulvis et umbra sumus.――夢死蝕」
 マイアは己の色で世界を蝕んでいく。彼女がこの場へと一時的に出現させたのは、無限の蝶が舞う夢幻の花園。招かれざる死神は、花園の素晴らしき美景に目を奪われ……いや、視覚や心だけでない。その魂をも奪われていき、徐々に身体を重く、固まらせてしまう。
「佳景と馨香に溺れるように、夢見るように永眠なさい」
 身体につけた多数の鈴をしゃらんと鳴らせて悠然と立ち振る舞うマイアに、死神はなす術がなく。
 刹那硬直した敵へ、スライが迫る。眼光鋭く敵を観察していた彼は命中率にいささか難を覚えはしていたが、仲間達の援護もあり、これなら問題ないと彼は判断した。
 スライはその拳に空の霊力を帯びさせ、仲間がつけた傷を抉るように突き出す。
 怪魚は苦しそうにジタバタと暴れた後、ぽとりと地面の上に落下し、溶ける様になくなってしまった。
「自分の死は操れない……死神も同じか」
 消え失せた死神へと冷淡に告げたスライは、次なる相手へと視線を傾けたのである。
 ケルベロスの攻勢は続く。ウェアライダーは静夏が抑えてくれているが、やはり1人では荷が重そうだ。
(「……大丈夫かしら」)
 バジルは雷の壁を展開し、少しでも負担が軽減できるようにと配慮する。
 急いで壁となる怪魚の殲滅を。双は傷が増えて来た敵へ、魔術を構築させていく。
「月夜に吹き荒ぶ冷たき風よ……此処に具現し、彼の者を斬り刻め」
 詠唱によって術が完成すると、三日月の形の風が幾陣も生み出され、怪魚の身体を刻む。双が手をかざすことで防御力低下の魔方陣も展開されるが、それには及ばなかった。なぜなら、怪魚は意識を完全に失い。先ほどの死神同様地面に消えていったからだ。
 残る怪魚にはルリカが狙いをつけていた。
「魔の旋律、貴方にあげる」
 彼女は宙で指を動かす。それは、ピアノを弾くようにも見えて。それに合わせ、戦慄に導かれるようにしていくつものエネルギー弾が連続で怪魚へと飛んでいく。浴びた敵は苦しそうに身をよじらせる。
「……さっさと消え失せろ」
 その姿はあまりに見苦しい。ルティエは惨殺ナイフを手に敵の周囲を飛び回る。
 重力を使い、残像が出るほどにルティエは加速していく。その間にも彼女は刃を怪魚に切り払い、突きたて、斬り捨てる。そして、ナイフをしまい、詠唱した彼女が最後に一言。
「罪の上に咲き誇れ……焔椿鬼!」
 ルティエが残した斬撃痕から黒と紅の焔が燃え盛る。死神はそのまま炎に包まれ、灰燼と化していったのだった。

●誇りは全て狂気に変わりて
 残るは、獅子のウェアライダー1体。
 変異強化させられた敵は、狂ったようにケルベロスへと殴りかかる。
(「暴走したら……こんなふうに……?」)
 同じウェアライダーのルティエにとって、それはあまりに恐ろしい光景だった。力を翳すだけの獣。これでは、他のデウスエクスと変わりないのではないか。
 時にスライが静夏の代わりに獅子の殴打を食らう。まるで大砲の砲弾を浴びたような衝撃。だが、それで落ちるわけにもいかず、彼は歯を食いしばる。
「歴戦の勇者の誇り、傷つけさせない為に再度安らかに眠らせてやろう」
 ともあれ、素早いこの敵を抑えねば。スライは縛霊手で殴りかかり、霊力の網で敵を捕らえる。そこに、ルリカが重力を宿した蹴りを食らわせて敵を足止めする。
(「地道に攻撃当ててかないとね」)
 すぐ倒せる敵というわけには行かない。ルリカは一撃を確実に与えて行くことにする。
「……考えている暇は無い、か」
 我に戻ったルティエもまた、紅蓮と共に攻撃に乗り出し、音速を越える拳を叩きこんでいく。
 傷つく仲間にはバジルが手当てに当たる。緊急施術を行い、敵の拳で痛めた内臓をも彼女は治療して回復させていく。その最中でも、敵の殴打を浴びる仲間を彼女は目を逸らさずに見据え、仲間に対する気遣いを見せていたようだ。
「これ以上、させないわ」
 獅子に対して、マイアは鈴の音を響かせながら杖を振るい、その先から火球を飛ばす。燃え上がる敵へ、双がブラックスライムを食らいつかせ、その動きを封じようとする。
 スライが死を感じ取る能力を発揮させると、敵の身体に走る緑の線が視えた。
「……そこがお前の死だな」
 それを狙い、彼は手刀を振り下ろす。
 確かに敵を寸断したはず。だが、獅子を仕留めるには浅かった。
「グアオオオオオッ!」
 獣の攻撃はまさに獅子奮迅の一撃。飛びかけた意識を静夏は歯を食いしばって食い止め、大きく吼える。
「うおおおおおっ!」
 裂帛の叫び。彼女はそれで自身を鼓舞した。まだ戦える。
 そこで、後ろにいたクルーフが静夏へと顔を向けて愚痴を語り始める。しかしながら、ややテンションの低いクルーフの口から出るその声には、癒しの力が篭っていた。
「大変そうじゃのう? ……もう一踏ん張りするのじゃ」
 ここまで誰も落ちずに済んでいたのは、静夏が抑えてくれていたからこそ。この戦いの功労者は、にやりと笑って見せた。
 さて、獅子はさらなるケルベロスの攻撃によって、すでに膝を突きかけている。過度な力は己を滅ぼす。
「操られてない時はきっといい勝負出来たのにね」
 ルリカは標的へと狙い違わず陰の弾丸を飛ばす。それで起き上がらぬだろうと察した彼女は、倒れるウェアライダーの姿にやや残念そうに目を伏せた。だが、彼女は顔を上げ、重い音を立てた敵へと静かに告げる。
「今度はゆっくり眠ってね」
 ――誰もあなたの眠りを、もう邪魔したりしないはずだから。
 ルリカは掌からドラゴンの幻影を放出する。
 燃え上がる獅子の身体。彼は一際大きな声で吼えた後、土に還っていった。
 その跡へと、メンバー達はゆっくりと歩み寄る。
 クルーフ、スライの2人が、ウェアライダーを弔うべく鎮魂歌を歌い始め、哀れなる魂に祈りを捧げる。
「今度こそゆっくり……休んでください」
「そうね、どうか安らかに」
 ルティエ、バジルが手を合わせた。
 マイアもそっとその遺体に触れる。看取りの戦乙女と呼ばれる彼女は、数え切れない人、ウェアライダー、そして死神の最後を看取ってきている。
「そりゃあ、死神は嫌いよ。だけど灰は全てを等しくするわ」
 彼女は、ウェアライダーを弔った後、姿を消した死神に対しても、同じように地面に触れていた。
「死ねば皆同じなのよ」
 そのマイアの言葉は、どことなく寂しげだった。

●ふぐ料理の味をご堪能あれ
 ケルベロス達が戦場となった駐車場へとヒールを施す。
 スライは同時に、周囲に黒幕の情報が残されていないかと捜索していたようだが、それらしい物は発見できなかったようだ。
 そんな中、漁港付近で戦いがあることを聞きつけた漁師や関係者がやってくる。
「さすがケルベロス、こりゃめでてえや!」
 彼らはケルベロス達の活躍を喜び、下関名産のふぐを振舞うと申し出てくれた。てきぱきと準備をしてくれる中、ルリカもその手伝いを行う。
 程無く、漁港の一室から美味しそうな匂いが漂ってくる。ふぐ料理でまず思い浮かぶのは、てっちり……ふぐ鍋だろう。昆布でダシを取り、野菜と一緒に切り身を入れて煮込んだ物だ。
 そして、ふぐ刺し。丸1~2日寝かして熟成させてから食べると美味しいとされる。丁度いい物があると漁師が寝かしていた肉を持ち出して振舞ってくれた。これらをポン酢で食べると、美味しいのだ。
「あー、お腹すいた。皆、張り切って食べようよ」
 早速ルリカが切り身を皿に運ぶと、ほのかな香りが漂う。それを口に入れて噛んでいると、コリコリとした触感が癖になりそうだ。
「ふぐ毒、テトロドトキシンは青酸カリの十倍の強さとも言われて……あれ、私の分まだあるわよね?」
 バジルは自身の知識をひけらかしていたのだが、仲間達が料理を口にし出していたことで、彼女も慌てて卓に向かう。
 余談だが、料理をしてくれた料理人はふぐ取扱資格を持っている。無資格者がふぐを調理するとは許されないので、重々注意したい。
 双も折角の好意を無下にするわけにもと、卓につく。
「折角だし、いただくよ」
「私も一口もらっていいですか?」
 ルティエも先に食べているメンバーを見て微笑みつつ、腰を下ろす。
 周囲はまだ暗かったが、その場にいる人々の表情は非常に晴れやかだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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