かゆかゆ撲滅!

作者:そらばる

●根絶は畑から
 山芋、長芋等をすりおろしたものを『とろろ』と呼ぶ。翻って、すりおろして食べる事のできる芋類は、全般的にトロロイモと称される。
 さて、このトロロイモに恨み節をぶつける鳥人間が、一羽。
「トロロイモに触れた時のかゆみ……それはアレルギーではない! そもそもがかゆみ成分の塊なのだ! すなわち、万人を害する食品なのである!」
 のどかな田園に、ビルシャナの演説が轟き渡る。
 山芋収穫に忙しくしていた農家の皆さんも、これにはぽかんと手を止めずにはいられない。
「有害物を栽培し、世間に売りつけるこやつらもまた害悪。皆の者……一切合切駆逐だァァァッ!!」
 烈火の如き号令に、ビルシャナの傍らに控える目出し帽の集団が、鍬や鋤を振りかざし、一斉に農夫達へと襲い掛かった。

●トロロイモの痒さ絶許明王
「こたびはビルシャナの一件にございます。サシャ・フラヴィニー(矯めるなら若木の内に・e21203)様の調査により明らかになりました」
 戸賀・鬼灯(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0096)が調査結果と予知を交えて語る。
 ビルシャナ化した人間が、『トロロイモの痒さなんて許さない』なる個人的主義主張を掲げて、山芋畑を襲う事件が発生するというのだ。
「襲撃当日は農家の皆様が収穫に勤しんでいらっしゃいます。これを捨て置けば、山芋農家の皆様が犠牲になるのは必定、慈しみ手間をかけた畑も荒らし尽くされてしまうことでしょう」
 倒すべき対象はビルシャナ一体。ただし、彼の主張に賛同する一般人が配下となっているので、これにも対処する必要がある。
 配下となった人々は、ひとたび戦闘に突入すれば、ビルシャナのサーヴァントのような形で、ケルベロスを攻撃してくるだろう。ビルシャナさえ倒せば正気を取り戻すため、救出は可能。しかし配下の数が増えるほどに、骨の折れる戦いになるはずだ。
「戦闘に突入する前に『トロロイモの痒さなんて許さない』という主張を覆すような、インパクトのある反論、説得、主張などを展開することで、戦わずして配下を無力化する事も可能でございましょう」

 襲撃される畑があるのは、山芋の生産地として有名な地域の田園地帯。人通りはほとんどない。
 ビルシャナの狙いは畑と農家の両方だ。そのため、手っ取り早く確実な、農作業中を襲撃しようとする。事前の避難を行う場合は、山芋の収穫作業を肩代わりする必要があるだろう。
 配下は男性8名。初めてとろろを食べた際に、ひどいかゆみを経験し、以来トロロイモに対して嫌悪の感情を抱き続けている人々だ。鋤、鍬などの農具で襲ってくるが、物凄く、弱い。手加減攻撃以外では死んでしまうので、準備は怠りないように、と鬼灯は念を押す。
「ちなみに、山芋にはアレルギー成分も含有されてはいますが、かゆみを引き起こすのは、アレルギーとは別種のメカニズムによるものだと言われています。この辺りについては、ビルシャナも配下達も把握しているようですので、ご注意ください」
 サシャが資料を参照しながら補足した。敵もまんざら馬鹿でもない。理詰めで説得するのは、そこそこ難易度が高そうだ。
「そもそも、嫌いなものにわざわざ近寄ってってぶん殴る、って時点で、ぜんぜん論理的じゃないけどな」
 毎度ビルシャナは何をしたいのかわからない、とぼやく近衛木・ヒダリギ(シャドウエルフのウィッチドクター・en0090)に、鬼灯は苦笑を向ける。
「食にまつわる因縁と申しますのは、理論では片の付かぬ根深いものなのでございましょう。翻せば、大手を振って不得手を晒しているも同じ事。明白な敵の弱点を、徹底的、物理的に、刺激する工夫をしてみてはいかがでしょうか」


参加者
鏑木・蒼一郎(蒼き独角・e05085)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
柳楽・宗右助(鴉羽の隠し手・e23927)
エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)
マナフ・アカラナ(万象劣化・e24346)
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)
セレネ・ヒューベリオン(月下に舞う銀焔の姫騎士・e25481)
エオス・ヒューベリオン(暁を讃える煌刃の舞刀家・e25535)

■リプレイ

●まずは先手をぶっちぎれ!
 一面に広がる田畑の合間、農道を行く奇妙な集団は、実に堂々としたものだった。
 先頭、鳥人間ことビルシャナ。後ろにずらりと、農具を担いだ目出し帽の男が八人。尋常でない不審者集団だが、人通りのない田舎道、幸か不幸か、これを目撃した者はいなかった。
「教祖様! あれを……」
 目出し帽の一人が、とある一角を指さした。
 示された区画では、十人ほどの人間が農作業に勤しんでおり、収穫物もちらほらと伺えた。
 土の中から掘り出されるのはまさに、白くて太くて長いけれど大根ではない、忌まわしきアレ。
 ビルシャナは全身の羽毛をけば立てると、信者達を引き連れて畑にずかずかと乗り込んだ。
「ここが我らが仇敵、トロロイモの伏魔殿か……!」
 鳥脚で乱雑に畝を踏みしだき、据わった目つきで農夫達をねめまわす。
 男女比半々、若者揃い。皆、一生懸命、労働に精を出している。
 ……見る者が見れば、ぎこちなかったり段取りが悪かったりと、普段から農業に従事している人間でない事は、一目で明らか。しかし農具や作業着など、使用している道具類の年季は本物だ。事前の簡単なレクチャーのおかげで、収穫作業もとりあえず様にはなっている。正真正銘ド素人であるビルシャナ一行が、違和感を覚えることはなかった。
 そう、もちろん彼等は、農家のフリをしてビルシャナを待ち伏せていた、ケルベロス達であった。
「……見事に釣れたようですねぇ」
 マナフ・アカラナ(万象劣化・e24346)は作業の手を止めぬまま、仲間達にのみ聞こえる音量で呟いた。ビルシャナの敵意は、まっすぐにケルベロス達へ向けられている。農家の人々を避難させる前に、わからない事はわからないと、教えを乞うた甲斐はあったようだ。
 ビルシャナは深く息を吸い込んだ。前口上に必要な酸素が十分に肺を満たした瞬間――、
 カチリ。
 素知らぬ顔で収穫を続けていた四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)が、どこからともなく取りいだしたるラジカセの再生スイッチを押し込んだ。
 たちまち一帯に響き渡る、キュアキュアにきらめかしいミュージック。ビルシャナが喉まで出かかっていた発声を詰まらせて、激しく咳き込んだ。
「ゆくぞえ、姉上!」
「もちろんです、セレネちゃん」
 女子児童向け変身BGMに合わせて、光の翼を広げるヴァルキュリア姉妹、セレネ・ヒューベリオン(月下に舞う銀焔の姫騎士・e25481)とエオス・ヒューベリオン(暁を讃える煌刃の舞刀家・e25535)。ふわりと宙に舞い上がりながら、プリンセスモード開放! キラッキラのプリンセスコスに大変身☆ 息の合った変身ポーズがばっちり決まった。
 目出し帽の一行は目を点にして、燦然たる輝きを放つ姉妹を、声もなく呆然と見上げるのだった。

●座学のお時間です
 かくて畑のど真ん中で、何の脈絡もなく、リサイタルは幕を開けた。音楽はスムーズに主題歌兼戦闘BGMへと移行し、プリンセス達は軽快な振り付けで熱唱し始める。
 呆気にとられている目出し帽達に、千里が小分けに切った特製のお好み焼きを乗せた皿をしらっと配っていく。
 なんとなく状況に流されて、一口ぱくついた一人が、「うまい……」と小さくうめいた。他の目出し帽達も、リサイタルから目を離せぬまま、のろのろとお好み焼きを口に運び始める。評判は上々の模様。
 すっかり思考を蕩けさせている様子の目出し帽集団に、グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)が、少し間延びして聞こえる口調で声をかける。
「何、あんた達、トロロイモがご入用? トロロイモ、いいよねぇ、美味しいよねぇ」
「んなわけあるかァッ!! 我々の使命はかゆかゆ食材トロロイモの駆逐――ヒェッ」
 ようやく咳き込みから回復を果たしたビルシャナが即座に反論を返したが、セレネが歌って踊りながら急接近、ビルシャナの口許に半分皮を剥いた山芋を差し出して封殺する。
「……トロロイモのかゆみがお嫌いですか。それはそれで構わないでしょう。好き嫌いは人それぞれ」
 マナフはビルシャナの言い分に、一応の理解を示して見せつつ、かぶりを振った。
「しかし食材そのものを駆逐とはまた乱暴な。一方的な主張を押し通そうとするのは宜しくありませんね」
「まったくだ!」
 ご立腹気味に同意する鏑木・蒼一郎(蒼き独角・e05085)。農作業の邪魔になる翼も角も尻尾も収納状態で、ドラゴニアンの特徴を隠した作業着姿は、傍から見てもなかなか説得力のある仕上がりだ。
「痒さが許せないらしいが、考えてみろ。あの痒さがあるからこそ、『トロロイモを食べた!』と実感できるんじゃないか! 食べてかゆみを感じられないなんて、トロロイモじゃない!」
「確かに。私はあのかゆみ、嫌いじゃないですねぇ」
「どうせ痒さに負けて、一度っきりしか食べていないんだろう? 二度三度と食べてみろ。間違いなく、病みつきになるぞ!」
 深く同意し合う蒼一郎とマナフ。目出し帽達の反応は全体的に鈍めだが、彼等が初回で痒みにリタイアしたのは図星なので、一理ある、と納得しかけている者もなくはない。
「あー……ほら、こういう意見もあるみたいだし、トロロイモにも良い所いっぱいあるよ」
 グレイシアも、考え考え、フォローを入れる。
「ていうか、痒くなる仕組みを知ってるんなら、痒くならない方法だって調べられるでしょ……工夫して食べればいいだけじゃ……」
 的確なツッコミに、一同沈黙。揃いも揃って、トロロイモ憎しで暴走しまくっていたので、工夫して歩み寄る、という発想は端からなかったようである。
「とろろを食べて痒くなった経験か。俺もないわけじゃない。ただ、摩り下ろす前に、酢水につけておくと痒みは緩和できるんだ。知らないのか?」
 柳楽・宗右助(鴉羽の隠し手・e23927)は、助け舟を出すように知識を披露していく。
「あとは……そうだな。とろろをお好み焼きに入れるってのも悪くない。生地がふわっと仕上がるだけじゃなく、痒みも気にならなくなるはずだ」
 ほほー、と感心しきりの目出し帽達だが、
「ん? ……お好み焼き?」
 はて、その料理、ものすごく最近、口にしたような……。
 目出し帽の一人が首を傾げた、ちょうどその時、賑やかなBGMが終局を迎え、姉妹のダンスが美しいフィニッシュを決めたのだった。

●胃袋をつかめ!
「で、どうだったかのぅ、わらわ達の歌――もとい、お好み焼きの味は?」
 戻って開口一番、セレネが訊ねた。もちろん、ビルシャナが口を挟まんとしようものなら、山芋を差し向けるのを忘れない。
 他の目出し帽達と困惑の視線をかわしつつ、一人がおずおずと答える。
「え、いや……う、美味かった……けど?」
「実はこのお好み焼きには、山芋が入っている……」
 千里が早々に種明かしをしてみせた。まさに論より証拠。
 目出し帽達は驚き、目をまん丸にお好み焼きを凝視したり、口元をぬぐったりしている。痒みを訴える者は誰もいない。
「美味しいし……かゆくもならないでしょう……? 山芋は食べ方や調理を工夫すれば、美味しく食べることが出来る……」
「使い方しだいでは料理の幅が広がったり、質も上がったりな」
「かるかん饅頭なんかの材料にもなる、大事な食材だからにゃあ。嫌いだからなくなれーなんて横暴だよ~」
 千里、宗右助が静かに諭し、エージュ・ワードゥック(未完の大姫・e24307)も哀願するように加勢した。目出し帽達は決まり悪そうだ。
 そこに、お盆を両手に持ったエオスがやってくる。
「つまるところ、擦った状態のとろろを、なるべく口の周りや皮膚につけないように食べるのが肝要で御座います」
 目出し帽一人一人に差し出されたのは、温かい麦飯にたっぷりとろろを乗せた、素朴なとろろご飯である。良い香りと湯気が、皆の食欲を刺激する。
「コツさえ確りと押さえれば美味しく頂けますのに……試してみませんか?」
 おしとやかな誘惑と、何よりも料理自身の訴える破壊力。
 実のところ、ビルシャナの行軍に付き合って、目出し帽達も良い具合にすきっ腹だったようだ。おまけにお好み焼きを半端に試食したおかげで、より空腹が刺激された状態である。
 そして一人が、誘惑に負けた。
 目をつぶり、箸に乗せた一口を、勢いつけてパクリ!
「う……美味いぃぃ……!」
 涙目になって賛辞を絞り出す目出し帽。子供の頃食べられなかった野菜を、大人になって美味しく食べられるようになった時の感動を、極大化したようなリアクションである。
 猛然とかきこみ始めるその一人につられて、他の面々も箸を取る。初めは恐る恐る、徐々に速度を上げて。
「とろろを食べるのに行儀なんて気にせず、すすって食べればいいのよ。すすった後にすぐ口元を拭うのを忘れずにね」
 ウンダは清潔なおしぼりを配り歩きながら、わさび醤油を添えた短冊切りなども勧めて回る。
 近衛木・ヒダリギ(シャドウエルフのウィッチドクター・en0090)も配給を手伝いながら、
「ちなみに、アレルギーの場合、症状とか対処方法は人それぞれでまたべつの話だから、気持ち悪いとかおかしいなとおもったらすぐに病院で診てもらうように」
 と、口酸っぱく補足していく。
 信者達は聞いているやらいないやら。かゆみ対策のための目出し帽も軍手も、もはや邪魔だとばかりに脱ぎ捨てて、すっかりとろろご飯に夢中である。
 あまり口に合わなかったか、納得しきれていないのか、ちょっと箸の進みの遅い一人には、千里が農具を片手に誘いをかけてみる。
「食材の素晴らしさを知るには、実際に触れてみることが大事……農家の大変さと、食べ物のありがたさを体験してみる……?」
「いいですにゃあ、収穫体験。わたしが手とり足とりお手伝いしてあげるよー」
 エージュはサービス精神旺盛に秋波を送ってやる。たちまちでれっと笑み崩れる信者。
「あ、でも、やりすぎセクハラは、ボキッ、だからね? ……山芋をですよ? うふふ」
 エージュの手の中でみしみし軋む太くて長い山芋に何を悟ったか、信者はすんっ、と真顔に戻って「結構です」と突っ返すや否や、とろろご飯を黙々とかっこみ始めた。
 以上をもって八名、目出し帽を捨てて無事更生完了。
「なん――っっっじゃこの惨状はッ!?」
 行動を起こそうとするたびに阻む山芋との熾烈な攻防の末、ようやく状況に気づいて奇声を上げたビルシャナの口に、とうとう生の山芋が突っ込まれるのだった。

●行き過ぎたかゆかゆ嫌いの末路
 腹いっぱいとろろ料理を堪能した、元・目出し帽軍団の曰く。
「僕達、これからはトロロイモと上手く付き合っていけそうです」
 ……以上を更生事由として、全員が実に晴れやかに田園地帯を後にした。
 残されたビルシャナはといえば。
「ひぇぇぇぇぃかゆかゆイヤーーっ! ほんっと滅びろトロロイモ!!」
 くちばし周りの物理的なかゆみに、清めの光連打である(もちろんかゆみ止めの効果はない)。もはや配下云々を気にしている場合ではない模様。
「天網恢恢疎にして漏らさず。その悪行、止めてくれる! ――行くぞ! 龍身変!」
 蒼一郎は猛々しく気合を発しながら、隠していた翼を広げ、角と尻尾を露わに、臨戦態勢。
「やかましい鳥だな。黙らせてやろう」
 同じくしまい込んでいた一対の黒い翼を広げ、くちばしの意匠を施した仮面を身に着けた姿はあたかも烏天狗。傍らに控えるトラ柄のウィングキャットと、髪に揺れる藤花も風雅な宗右助。
 ビルシャナは孔雀炎と浄罪の鐘でケルベロス達を牽制しつつ、かなり頻繁にヒールを行った。効き目がないとはわかっていても、よっぽどかゆいのが嫌らしい。
「ビルシャナのくちばしって、かゆみを感じる神経なんてとおってるのかにゃ」
「どうだろ……プラシーボの逆というか、錯覚とか、条件反射の一種なのかも」
 エージュとヒダリギのメディック勢は、仲間のフォローに回りつつ、首を傾げて考察しあう。
「我々の話をちゃんと聴いて、教訓を活かせばああはならなかったでしょうに。……それはそうと、今晩の食事は山芋と鳥肉の炒め物にでもしましょうか」
 マナフは夕飯へと思いを馳せつつ、己が『糧』と見定めたビルシャナを熱気と冷気で弄ぶ。極端な温度差に苦しむ敵に、更に宗右助の時空凍結弾が追い打ちをかけていく。
「後方での攻撃は任せてよねぇ。しっかりバッチリ連射しちゃうよ」
 のんびりと見せかけて、グレイシアの手腕はそつがない。的確な援護射撃を受けた千里が、愛刀を手に鋭く斬り込んでいく。
 ビルシャナは回復に気を取られ過ぎた。それは悪戯に時間を浪費するばかりで、完全なるジリ貧であった。ケルベロス達も攻撃に集中でき、ビルシャナはあっけなく治癒不能の傷にまみれていった。
「かゆいぃ……痛いぃ……もうイヤだぁ……」
 なんとも憐れにうめきながらも、しつこく孔雀炎を飛ばしてくる。
「ヒールはお任せ~。ほいっ」
 焼け出された千里を、すかさずエージュが大きなエネルギー球を取り出して、瞬く間に癒していく。
 敵の消耗を見て取り、蒼一郎は我が身に雷を纏う。
「雷龍の一撃、耐えられるか?」
 全身に帯電するエネルギーを、額の角へと集中させ、撃ち出す。文字通りの電光石火に貫かれ、ビルシャナの全身が発火した。
 トリを務めるは、兵站の重要性を重んじるヴァルキュリア姉妹。
「姉上、戦にあずかる者として、農家に害成す思考は赦せぬのじゃ……わらわ達の業で討ち滅ぼそうぞ!」
「ええ、セレネちゃん! このような思考は絶対に見逃せません!」
 エオスが創造するは、数多の魔剣のレプリカ。敵の全方位を取り囲み、一斉に斬撃を放てば、それは回避不能。
 セレネは鉄塊剣に地獄の銀焔を纏わせ、魔剣が消え果てていく煌めきの軌跡をなぞるように、踊るような軽やかさで自ら斬り込む。
 銀焔の華の中心で、ビルシャナの凄絶な絶叫が空気を裂いた。

 牧歌的な田園風景を、とりどりのヒールの輝きが彩る。
 荒らされた畑はみるみる元通り。激しい戦闘で踏み抜かれた芋は、さすがに全てが元通りとはいかなかったが、戻ってきた農家の皆さんはとても喜んでくれた。
 滞っていた収穫作業を手伝ったり、とれたての春掘りと熟成させた秋堀りの食べ比べをさせてもらったり、とっておきの逸品ものを購入させてもらったり。
 日常を取り戻した田舎の時間は、のどかに過ぎていくのだった。

作者:そらばる 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。