高潔なるマグノリア

作者:朱乃天

 夜も深まり人気がないはずの公園で、五つの人影が暗躍していた。
「つまらない任務よねぇ。もっとこう、派手に殺してグラビティ・チェインを集める方が、私は好きなんだけど」
 鮮やかなピンクの鎧を纏った、五人の中で紅一点の少女が不満を口にする。
「スターローズよ、言いたいことはわからんでもない。しかしこうして種を蒔いておけば、ケルベロス達も何れ俺達の存在に気付くだろう」
 漆黒の鎧に身を包んだ男がピンク鎧の少女を宥めると、青い鎧の男が眼鏡を指でくいっと押して、黒鎧の男に合わせるように言葉を続ける。
「スターノワールの言う通り、オーズの種の回収が今回の任務だからね。今はその時期ではないよ。ケルベロス達が襲撃してくれば話は別だけど」
「わかってるわよ。ただ言ってみたかっただけだから……と、はい、見つけたわ」
 文句を言いながらも任務をこなすピンク鎧の少女。彼女の報告を受けて、深紅の鎧を着た男が一同に指令を送る。
「よし、グラビティ・チェインを注入するぞ。皆、グラビティを高めるんだ」
 そう言って意識を集中させると、それぞれの鎧が眩い輝きを放ち始める。
 五色に輝く光の奔流が、黄色い鎧の男が持つバズーカの中に吸収されていく。
「充填完了――ほな、いきまっせー!」
 砲撃が放たれて、公園中に轟音が響き渡ると同時に地面がひび割れる。爆音に呼応するように、巨大な攻性植物が大地の裂け目をこじ開けながら地の底から姿を現した。
 その禍々しい外見とは対照的な、可憐な純白の花を咲かせた攻性植物の花弁が風に乗って闇夜に舞う。
 妖麗に狂い咲く魔性の植物は、この地に息づく生命を狩り取ろうと動き出したのだ。

 かすみがうら市から飛び散ったオーズの種を、エインヘリアルの部隊が回収している。
 ヘリポートに集まったケルベロス達は、そうした話を玖堂・シュリ(レプリカントのヘリオライダー・en0079) の口から伝えられる。
 五人組のエインヘリアルが、何らかの方法でオーズの種の位置を特定し、種に大量のグラビティ・チェインを与えて強制的に発芽させているようだ。
「発芽したオーズの種は全長七メートルの攻性植物に成長するけど、発芽直後に『オーズの種の部分』をエインヘリアルが奪っていくんだ」
 エインヘリアルはオーズの種を回収すると撤退し、種を奪われた攻性植物はその分のグラビティ・チェインを補う為に、市街地の一般人を虐殺してしまう。そうなる前に攻性植物を倒すことが今回の任務だ。
「敵は白木蓮の攻性植物だよ。一体だけで周囲に人はいないから、キミ達は攻撃に専念してくれれば大丈夫だよ」 
 攻性植物は蔓の触手を伸ばして締めつけてきたり、花から光線を発したり、白い花弁を舞い降らせて意識を惑わせようとする。
 また、通常よりも巨大化している分高い攻撃力を誇るが、オーズの種を奪われているので耐久力は低くなっている。そこに付け入る隙がある。
 エインヘリアル達がオーズの種を回収している理由はわからないが、このまま攻性植物を放置しておけば被害は拡大してしまう。
「色々と気になる点は多いけど、まずは攻性植物の撃破に全力を注いでほしいんだ」
 迂闊にエインヘリアル達に手を出すことは、今の段階では自殺行為に等しいだろう。
 だから、連中が撤退した後に作戦を開始するのが無難だと、シュリはヘリオンに乗り込むケルベロス達に忠告するのだった。


参加者
蒼龍院・静葉(蒼月光纏いし巫女狐・e00229)
鈴ヶ森・真言(心象監獄の司書・e00588)
ミルフィ・ホワイトラヴィット(メイドオブホワイトラビット・e01584)
天野・夕衣(ルミノックス・e02749)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
小鳥遊・祈梨(人として生きる機械少女・e04443)
湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)
ドミニク・ジェナー(狂騒ガンブレイズ・e14679)

■リプレイ


 空を覆い尽くす雲が月明かりを遮って、光が差し込まない宵闇の世界が広がっている。
 漆黒の空間を照らすのは、公園に備えられた外灯の明かりのみ。その仄かな灯火が、不審な人影を朧気に映し出す。
「こんな夜更けにご苦労なこった。戦隊物が活躍するンは、日曜の朝じゃと思っとったンじゃがのォ」
 人影の正体――五人組のエインヘリアルから離れた位置で身を潜めて、様子を伺っていたドミニク・ジェナー(狂騒ガンブレイズ・e14679)が小声で呟いた。
「ここのところ……オーズの種の回収に、妙な五人組戦隊が動いている様ですわね……」
 少し大胆なメイド服姿のミルフィ・ホワイトラヴィット(メイドオブホワイトラビット・e01584)も、声を押し殺して遠くからエインヘリアルを監視する。
 オーズの種の奪取に暗躍する五人のエインヘリアル、『星霊戦隊アルカンシェル』に関する情報を少しでも入手しようと、ケルベロス達は隠れながらの接近を試みていた。
「一体どの様な方法で、オーズの種の位置を特定しているのですかしら……?」
 ミルフィは思った疑問を口にするが、今の離れた距離からは彼等の行動は確認できない。
「あのエインヘリアルの集団は何が目的なのかな? 何か少し嫌な予感がする……」
 小鳥遊・祈梨(人として生きる機械少女・e04443)は公園に生えている木の陰に隠れながら、徐々に近付こうとするのだが。相手の声が聞き取れるほどの距離まで詰め寄るには、より深く踏み込む必要がある。
「種を回収する目的は何なのでしょう。どうにか会話を聞けたらいいですけど」
 湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)も少しでも敵の会話を盗み聞きできればと思って聞き耳を立ててはみるものの、距離が遠くて話し声は美緒の耳まで届かない。
 ケルベロス達は全員が隠密気流やイシコロエフェクト等を用いて対策を行なっていたが、敵も決して無警戒ではない。例え隠密気流等を纏って気付かれにくくなったとしても、五人のエインヘリアルの目を全て掻い潜って近付くことは難しいだろう。
 遠目からではエインヘリアル達のシルエットも曖昧にしか見えないが、彼等から放たれる威圧感は十分過ぎるほど伝わってくる。
「それにしても、五人組なのに虹とは此れ如何に」
 鈴ヶ森・真言(心象監獄の司書・e00588)が独り言をぽつりと漏らしたその瞬間、アルカンシェルの一人がこちらの方を向いた気がした。まだ気付かれてはいないようだが、これ以上の接近は危険だと本能が告げる。
 緊迫した空気が重く圧し掛かってケルベロス達の足が竦む中、リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が口を開いて一つの提案をする。
「情報の入手より発見されないことの方が大事だからねっ。今は動かない方が得策かもっ」
 今回は攻性植物の撃破が目的である以上、この場でアルカンシェルと交戦することだけは確実に避けておきたい。リディの意見に同意した一行は、情報収集を断念して彼等が去っていくのを待つことにした。
 現れた攻性植物からオーズの種を奪い、魔空回廊に姿を消すアルカンシェル。後に残されたのは、巨大な攻性植物ただ一体のみだ。
「住民の命を脅かす魔は早々と倒しましょうか、皆様行きますよ!」
 五人のエインヘリアルが完全にいなくなったのを確認し、蒼龍院・静葉(蒼月光纏いし巫女狐・e00229)が掛け声と共に行動を開始する。
 最初に静葉が先陣を切り、彼女の後に続いて攻性植物に向かっていくケルベロス達。
「まぁ、人を傷つけられたら危ないですからね。伐採だー!」 
 攻性植物が巨大といっても白木蓮なら標準だろうと、天野・夕衣(ルミノックス・e02749)は聳え立つ攻性植物を見上げながら武器を構える。
 触手が絡み合ったような禍々しい本体とは対照的に、可憐な花を咲かせる異形なる存在。攻性植物によって犠牲者が出るのを阻止すべく、地獄の番犬達は戦場にその身を投じるのであった。


「先ずは、ホットな砲撃のプレゼントですわ……!」
 先手を取ってミルフィが攻性植物を狙い撃つ。砲撃しやすいようにアームドフォートのパーツを組み変えて、複数の砲台から焼夷弾を射出する。大きく爆ぜた砲弾は炎と化して、攻性植物を灼き尽くそうと燃え盛る。
「さぁさぁ、皆さん頑張ってください。ここは夕衣さんが支援しますよ」
 回復役の夕衣が漆黒の鎖を操り魔法陣を展開させて、加護の力を仲間達に付与して敵の攻撃を迎え撃つ。
「歌うだけじゃありません!」
 美緒がギターを掻き鳴らし、奏でる音で攻性植物に攻撃を加える。脅威的な速さの手捌きによって生じた衝撃は、大気を震わせ攻性植物をも圧迫させる。しかし余りにも激しい速弾きの為、音が鳴り止むと同時にギターの弦の一本が切れてしまう。
「オーズの種を奪われて弱体化しているようですが、油断なく行きましょう」
 静葉がバスターライフルの照準を合わせて、魔力を込めた光線を発射する。一直線に放たれた光状の帯が命中すると、攻性植物の重力を吸収し、力の一部を封じ込めた。
「白木蓮の花言葉は『高潔な心』や『慈悲』……罪のない人達の虐殺なんて似合わないこと、させるわけにはいかないよねっ!」
 リディの表情から笑顔が消えて、真剣な目つきで攻性植物を見つめて飛びかかる。繰り出された音速の蹴りは、刃の如き鋭さで風を切り裂き攻性植物に創傷を刻み込む。
 今の攻撃に手応えを感じたリディだが、表情は決して変わらない。むしろ、どこか思いつめたような悲壮感さえ漂っている。彼女の翡翠色の双眸には、純白に咲き乱れる花の群れが映り込んでいた。
 一億年以上の昔から、最も古く地球上に存在する白木蓮の花。その荘厳たる美しさはまるで現世と常世の境界線上にいるような、天上世界に咲くが如く畏怖の念すら覚えてしまうほどである。
 攻性植物は枝を触手のように動かし、祈梨に向かって伸ばして彼女の身体に巻きつける。
「くっ、この……離してよ!」
 祈梨は絡みつく枝の触手を必死に振り解こうとするが、もがけばもがくほど触手は祈梨を強く締め上げる。それでも諦めることなく抵抗し、斬霊刀に重力を乗せて触手を一閃して断ち斬った。
 束縛を逃れて辛うじて危機を脱するも、祈梨の体力は想像以上に消耗させられる。
 巨大攻性植物はオーズの種を奪われたことで耐久力は低下しているが、通常の攻性植物よりも高い戦闘力を秘めているので油断はできない。
 ケルベロス達が活路を開くには、火力を集中させて早期に深手を負わせることが重要だ。
「封印限定解放、心象監獄・封印図書館より貴様を招聘す」
 真言が呪符を張り巡らせながら呪文を唱えると、一冊の古びた書物が召喚される。真言の一族が代々封印してきた古の異形。本の頁が自動で捲られ解放された力が真言に宿る。
「――砕け『魔晶震羅』」
 彼女の心の内に在る『心象監獄』から呼び起こした力が魔弾となって、攻性植物を的確に撃ち貫いた。
「なンじゃろ……すげェ、落ち着かねェ」
 白木蓮の花を目にした瞬間からドミニクの頭の奥がざわつき始め、フィルターがかかったように思考が断片的に霞んでしまう。
 脳内を覆う靄をどうにか払おうと、ガトリングガンを構えて闇雲に銃弾を乱射する。銃撃音が鳴り響いて黒煙が立ち上る、だがドミニクの違和感は拭えないままだ。
「戦白兎乙女の槍撃……そのでかい図体貫きますわよ……!」
 ただ真っ直ぐに攻性植物だけを見据え、ミルフィが戦乙女の槍を突き出し脇目も振らずに疾駆する。雷を纏った刃の刺突が攻性植物を貫通し、流れる雷撃が麻痺を引き起こす。
「手を緩めずに、ここは攻め続けるよ……っ!」
 高く跳躍したリディが風に乗って宙に舞い、白い翼を翻しながら急降下する。落下の加速によって威力を増幅させた蹴りを叩き込み、重い一撃は攻性植物の動きを鈍らせる。
「攻撃を重ねていくよ。これはどうかな」
 祈梨がアームドフォートで狙いを定めて一斉に撃ち込むと、次々に砲撃を浴びせられて攻性植物がグラリと大きく揺れ動く。
 ケルベロス達は攻勢をかけてダメージを積み重ね、戦況を優位に進めていくが、攻性植物もこのまま黙って手をこまねいているわけではない。
 枝をしならせると白い花弁が花吹雪となってケルベロス達の視界を覆う。降り注がれる鮮やかな白花の舞いに、ドミニクは目も心も奪われていく。
 彼の瞳に映るのは、褪せた景色の中で幽かに浮かび上がる小さな人影だ。それは幼い少女のようでもあるが、時折ノイズが混ざったように乱れ飛んでしまう。そして突然ドミニクの視界が赤黒く染まって、少女の姿が掻き消されようとする――その時だった。
「ドミニクさん、惑わされないでください!」
 夕衣の声と共に眩い光が差し込んで、ドミニクは我に返った。気が付くと、彼は手にしたリボルバー銃を仲間の方へと向けていたのだ。
「ワシは、一体……」
 頭を大きく振って気を取り直そうとするが、深い霧の中に迷い込んだような感覚は、未だに晴れることはない。
「幻術とは厄介ですね。ならば――遍く星々の加護を彼の者達へ」
 静葉がゾディアックソードを頭上に掲げると地面に光り輝く星座が描かれて、ケルベロス達は守護の力を宿したオーラに包まれる。
「これでも食らいなさい!」
 桃色の髪を靡かせながら、美緒の奏でるギターの音色が彼女の体内に眠る御業を醒まし、空気に透けた巨大な腕が攻性植物を掴んで抑え込む。
「おっし、ドカンと逝くぞー?」
 真言の召喚に応じた御業から放射された炎が攻性植物を直撃し、紅蓮の火柱が立ち上る。焼べられた業火は花篝りの如く、攻性植物を赤く燃え上がらせる。
 炎の灯りが闇夜を照らす。白木蓮の花はより白さを増して眩いほどに煌めいていた。それは天上へと誘うかのようでいて、やがて光が花弁に吸収されていく。
 一点に集束された光は膨大な熱の塊となって、周囲を白い世界に塗り替えながら破壊の力を宿した光線が放たれる。その斜線上にいたのは真言だ。全てを無に帰す光線が彼女を襲撃するが、ボクスドラゴンのブランが前に立ちはだかって盾になる。
 滅びを齎す光はブランを無慈悲に飲み込んで、跡形も残さず消滅させてしまう。代わりに一命を取り止めた真言は、込み上げる怒りを抑えて攻性植物を睨み返した。


 その後も迫り来る攻性植物の攻撃にケルベロス達は耐え抜いて、積極果敢に攻め立てながら次第に攻性植物を追い詰めていく。
「――星が輝き、世界を照らす」
 星も月もない暗闇の空。夕衣が星剣を振り翳すと満天の星が瞬く夜に移り変わっていく。零れ落ちる光の雫は戦士達の傷を癒して活力を奮い立たせる。
 心に燻る思いはあるものの、今は攻性植物を倒すことに全力を注ぐべきだとドミニクが闘志を剥き出しにする。
「大人しゅうせンなら、喰い千切ってやらァ」
 リボルバー銃を構えてトリガーを引く。聞こえた銃声は一つのみだが、神速ともいえる射撃術によって複数の銃弾が攻性植物を撃ち抜いた。
 鋼の獣の咆哮は閃く牙となり、白い花弁を散らして攻性植物に風穴を開けたのだった。
「さーて、今週のビックリドッキリ巨大戦と参りますわ……! ――ナイトオブホワイト、起動……!」
 ミルフィが気合を滾らせながら全ての武装を組み合わせ、巨大な機動鎧へと変形させて乗り込むように装着をする。
「白兵戦と参りますわよ……!」
 攻性植物は触手を振り下ろしてミルフィを叩き潰そうとするが、ミルフィは一歩も退かずに受け止めて、返す刀で攻性植物を深く斬り裂いた。
「本気でいくよ……覚悟してね!」
 祈梨のアームドフォートから火力を最大限に高めた砲撃が放たれる。攻性植物に着弾すると同時に爆風が発生し、祈梨は巻き上がる土煙に隠れるように間合いを詰めて斬りかかる。息もつかせぬ連撃が、攻性植物の生命力を削いでいく。
 静葉が右手に携えるのは、蒼き月の御業を纏わせた、魔力で生成した一本の矢だ。静葉は弓を持つようにして左手を構え、蒼き光の矢を宛がう。
「纏うは『煌』、蒼き月の加護を受けし破魔矢にて敵を討つ!」
 射抜かれた矢は、蒼い軌跡を描いて攻性植物に突き刺さり、魔力の奔流が敵の神経回路を狂わせる。
 敵の攻撃が鈍ったこの機を逃すまいと、リディが失われた力の一端を解き放つ。瞑目して強く念じると、目の前の空間が歪に捩れて『道』を繋げる。
「みんなの幸せを守るために……貫け!」
 リディが投じた鎖は空間へと吸い込まれ、その空間を突き破るように無数の鎖の束が攻性植物の背後から襲いかかった。断罪の鎖は容赦なく攻性植物を穿ち貫いて、最後に魂を滅ぼす止めの楔を打ち込んだ。
 刹那――攻性植物の体内から光が漏れて、激しい閃光と共に命の花を散らしたのだった。

「ふむ……どうやら残滓すらも残ってないようですね」
 平穏を取り戻した戦場で、静葉はオーズの種の手掛かりを探すが見つからず、漠然と考え事をして頭の中を整理する。
「ヴァナディース様の力を吸収しているオーズの種……何としても、悪用させる訳には参りませんわ……」
 ミルフィは自身が仕える少女の心情を思いやりながら、事件解決の決意を一層強める。
「とにかく、全員無事で良かったね」
 仲間の負傷状態を確認していた祈梨は、最小限の被害で済んだことに安堵の溜息を吐く。
「壊しちゃった分は直さないとねっ♪」
「それじゃ夕衣さんも一緒に手伝っちゃいますよ」
 リディの言葉に夕衣が応えて、二人は壊れた箇所をヒールで修復作業する。戦闘中は気を張り詰めていたリディだったが、彼女の表情にはいつもの明るい笑顔が戻っていた。
 彼女達から少し離れるようにして、ドミニクは木に凭れながら休息を取っていた。戦いが終わった後も、何かを訴えかけてくるかのように頭鳴に襲われる。
 あの時に視た少女の幻影は、一体何だったのだろう。その何かを思い出そうにも、心に染み付いた煤を払う術がわからない。
 悩み苦しむドミニクの頭上から、白い花弁が風に流れて彼の下へと舞い落ちる。
 凛として気高く咲き誇る、その花の名は――マグノリア。
 花は黙して語らず。ただ静かに揺蕩いながら、戦士達の安息を見守るだけだった。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年4月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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