草木も眠る丑三つ時――市街地にある児童公園では、寂しい風に揺られたブランコが、きぃきぃと軋んだ音を立てていた。
「……地味な任務よねぇ。何かこうパーッと派手に暴れて、グラビティ・チェインを集めたいんだけど」
と、公園の一角に設置されたジャングルジムの前で、巨躯の戦士たちが顔を突き合わせて、ぶつぶつと何かを呟いている。彼らはひとでは無く、デウスエクスであるエインヘリアル――この声の主は、どうやら紅一点のピンクと言ったところか。
「ふむ、尤もだなスターローズ。しかし敵が来なければ戦えまい。だがまぁ戦うのは、奴らが俺たちの存在に気付いた時で問題ないだろう」
まあまあ、とピンクのエインヘリアルを宥めるのは黒の戦士。それに同意するのは、参謀ちっくな青――知的な眼鏡男子風のエインヘリアルである。
「そう……スターノワールの言う通りだよ。今回の任務は戦闘では無く、オーズの種の回収なのだからね。襲撃が無い限りはケルベロスと戦う必要は無いよ」
はーい、と眼鏡――スターブルーに頷くと、スターローズはしゅたっと華麗にポーズを決めた。
「そう言っている間に、見つけたわよー」
「よし、ならばグラビティ・チェイン注入開始だ。皆、グラビティを高めるんだ!」
その報告を受けたリーダー格っぽい赤――スタールージュが指令を出すと、彼の身に着けた鎧が輝き始める。そうして次々と、仲間のエインヘリアルたちの鎧も輝いていって――その光はぽっちゃり系のイエロー、スタージョーヌの構えるバズーカへと吸い込まれていった。
「ほな、いきまっせー……どっかーん!」
のんびりした掛け声に見合わぬ勢いで、バズーカは発射され――するとたちまち、公園の地面からは巨大な攻性植物が、うねうねと触手を蠢かせながら姿を現わしたのである。
ちょっと不穏な動きが察知されたんだ、とエリオット・ワーズワース(オラトリオのヘリオライダー・en0051)は、渋面を作って何やら考え込んでいた。
「……どうもね、かすみがうら市から飛び散ったオーズの種の回収を、エインヘリアルの部隊が開始しているらしいんだ」
彼らは5人組のエインヘリアルで、なんらかの方法で地下に眠るオーズの種の居場所を特定――それに大量のグラビティ・チェインを与えて、強制的に発芽させるようなのだ。
「発芽したオーズの種は、全長7mもある大型の攻性植物なんだけど、発芽直後に『オーズの種の部分』を、このエインヘリアルによって奪われてしまうみたいだよ」
オーズの種を回収したエインヘリアルはその場から撤退するが、攻性植物はその場に残される。そうして彼の存在は、奪われたオーズの種の分のグラビティ・チェインを早急に回復しようと、市街地の一般人を虐殺して回ることになる――。
「この攻性植物の戦闘力はかなり高いけれど、中枢であるオーズの種を奪われている為に耐久力が低いんだ。グラビティ・チェインを補給する前に戦う事ができれば、勝機は十分にあるからね」
そう言ってエリオットは大丈夫、と言い聞かせつつ、続いて戦場などの詳細説明に移る。場所は市街地の真ん中にある児童公園で、時刻は真夜中なのでひと気は無いらしい。なので戦いに集中して、虐殺が始まる前に何とか止めて欲しいとエリオットは語った。
「幸い、攻性植物はひとを取り込んでいたりはしないんだけど、かなり大きいからね……。一撃が脅威になるだろうから、心しておいてね」
尚、攻性植物の姿は巨大な食虫植物――蔓の触手を生やしたハエトリグサのような感じらしい。その見た目通りの凶暴な性格で、がちがちと牙を鳴らして襲い掛かってくるようだ。
「攻性植物は1体のみだけど、さっきも伝えた通り戦闘能力は高い。でも、オーズの種を奪われたことで耐久力は低いから、そこが狙い目になる筈だよ」
――通常の攻性植物よりも苦戦することになるだろうと、エリオットは顔を曇らせるけれど。それでも、幾度となくデウスエクスを撃退してきたケルベロス達ならばやってくれると、彼は真剣な眼差しで敬礼をした。
「……あとは、エインヘリアル達が撤退した後に現場に向かうようにして欲しいんだ。今の段階で、何の作戦も無くエインヘリアル5体と戦うのは、自殺行為だから」
エインヘリアルが、オーズの種を回収している理由はわからない。しかし、先ずは攻性植物によって被害にあう住民を守る事が必要だろう。
「それにね、何だかヒーローみたいな敵が悪事を働くのって、悔しいから。是非、皆が『これぞヒーロー』と言う態度を示して、彼らの企みを潰して欲しいんだ……!」
参加者 | |
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ミグネット・スピードアロー(レモンサイダー・e00726) |
加賀・マキナ(料理の天災・e00837) |
イグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025) |
藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612) |
天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027) |
白・常葉(一億円札チョコ神・e09563) |
オーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928) |
マルコ・ネイス(猫戦士・e23667) |
●ヒーローの生き様とは
昼間には、元気な子供たちの声で賑わう公園。しかし真夜中の今は、しんと静まり返っており――それに加えて、何やら怪しい気配が立ち込めている。
(「……ふぅむ」)
茂みに隠れて公園の様子を覗く加賀・マキナ(料理の天災・e00837)の視線の先、ごそごそと不穏な動きを見せているのは五人組のエインヘリアル――人呼んで星霊戦隊アルカンシェルたちであった。彼らの目的を探る為、その様子の一部始終を観察していたマキナであったが、どうやら予知で伝えられた通りオーズの種の回収を行っているらしい。
「むう、アイツらに手を出しちゃダメなのね……? ムツカシイのね」
その隣で、レモンスカッシュを思わせる鮮やかな髪に、葉っぱを乗せて首を傾げているのはミグネット・スピードアロー(レモンサイダー・e00726)。アルカンシェルについての詳細が分かっていない現在、彼らに戦いを挑むのは危険過ぎる、と天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)が言い聞かせる中、一行は固唾を呑んで彼らの動向を見守っていた。
「こそこそしているようで嫌なんだが、今は出会うべきではないからな」
「うー、このウップンはショクブツで晴らすのね」
ヒーローは、皆に見えない所でもカツヤクしているもの――そう言って納得するミグネットだったが、お揃いの鎧でキメているアルカンシェルは、ちょっぴり羨ましいかもしれない。
「やってる事はヒーローのカザカミにも置けないけど、あの鎧はカッコイイのね……」
「でもさ、色被りはしてるし、英語とフランス語混じった呼び名だし、一人ヘルメット居るし。戦隊ってクセに統一感に欠けてるよな……アイツら」
――が、其処で冷静にツッコミを入れるのは藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612)である。放浪人生だったので、戦隊ヒーロー自体よく分かっていないとは彼の弁だが、何だかんだ言って鋭い所を突いているのは流石と言えよう。
「……でも、ま、不揃いってコトじゃこっちも一緒か……っと」
軽口を叩きつつもアルカンシェルの動きを注視していた雨祈は、事態が動いた様子にそっと身を乗り出す。彼らの行方や、何か手がかりが掴めないかと期待していたのだが――オーズの種を奪い、巨大化した攻性植物をそのままにした彼らは、魔空回廊の彼方へと姿を消してしまったのだった。
(「よし、星霊戦隊は撤退したか」)
離れた場所から様子を窺っていたイグナス・エクエス(怒れる獄炎・e01025)は、直ぐにアイズフォンを用いて仲間たちに合図――掌の上に表示された立体映像の操作を終えると、彼はR.F.NVゴーグルを装着して戦場へと駆け出した。
「出たな! デウスエクスめ! お前の好きにはさせないぜ!!」
それと時を同じくして、合図を確認したマルコ・ネイス(猫戦士・e23667)も現場に到着し、地獄化した左目を揺らめかせて啖呵を切る。彼らの前で蠢いているのは、巨大なハエトリグサを思わせる攻性植物であり――戦隊ヒーローっぽいマスクを着用していた白・常葉(一億円札チョコ神・e09563)は、いきなりマスクを脱ぎ捨てるとそれを投げつつ、白鳥っぽい華麗なポーズを決めて不敵に微笑んだ。
「ここで会うたが百年目やで、ハエトリグサくん! 初見やけど!」
――何やら台詞の前後が矛盾しているが、常葉は気にしない。ついでに両手を広げて片足を上げるポーズは、白鳥と言うより荒ぶってる鷹っぽかったが、これはどうでもいいのかもしれない。
「わっ……すごいね」
オーキッド・ハルジオン(カスミ・e21928)が思わず零した呟きには、常葉も含まれていたかもしれないが――彼が見上げるのは巨大な攻性植物だ。やっぱりこうして対峙すると、ちょっぴり怖いけれど。でも、ひとりじゃないから大丈夫だと、オーキッドは頭の上に乗っかったウイングキャットのなるとに微笑んだ。
「戦隊ヒーローはね! 仲間がいたら強くなれるんだっ。だから、頑張るっ!」
「ああ、その通りだ……!」
猫耳をぴくぴくと動かしつつ、マルコはちいさなヒーロー――オーキッドに頷いて。そうして、厄介な置き土産を残した、此処には居ない星霊戦隊に向かって高らかに宣言する。
「ヒーローの欠片もねえ戦隊共め……カラフルな戦隊ってのは、正義の為に、人を守る為に活動するって相場が決まってんだよ!」
てめえらなんかに負けてたまるか――その熱き決意を言葉に変えて、彼らケルベロス達は巨大な攻性植物の暴虐を止める為に、戦いに身を投じていった。
●華やかなりし戦絵巻
攻性植物の体力は低下しており、回復能力は持たない――事前に知り得た情報を素早く確認しつつ、先ずマキナは指輪を翳し、浮遊する光盾を具現化して守りを固める。
「攻撃面では問題ないかもしれないけど、攻撃力の高さまでは予測がつかないからね」
彼女の立ち回りは的確だったが、他の仲間がそれに追従する前に敵は動いた。触手の如き蔓、そして足のように自在に動く根を、攻性植物は地中に張り巡らせ――辺りを一気に侵食して此方を呑み込もうと動いたのだ。
「ぐぬぬ、やっぱ重い、のね……」
怒涛の埋葬形態を浴びたミグネットは、かぶりを振ってふらつく身体を立て直すが、その身を以て火力の高さを推し量れたのだから問題ない。
「でも、カンタンに潰せると思ったらオオマチガイなのね!」
ならばその動きを鈍らせるまでと、彼女は神槍を握りしめ、小柄な体格を活かして一気に植物の懐に斬り込んでいく。その穂先には因果律まで破壊せんと稲妻が奔り、超高速で突き出された一撃は、その神経回路まで焼き切ろうと標的を貫いた。
「巨大な敵! 頼れる仲間! ヒーローっぽいやん!」
賑やかしで皆を鼓舞しつつ、その間にも常葉は自在に黒鎖を操って守護の魔法陣を描く。少しでも盾となる者たちの助けとなるように――なるとも清浄な羽ばたきで邪気を祓うべく、懸命に回復役を務めていた。
「なると! 回復は任せたからねえ。ほぉら、キミの相手はこっち!」
と、愛猫の雄姿に励まされたオーキッドは、即席めんを作りつつも上手に割れなかった割り箸の先を使って、地味に痛い攻撃をお見舞いする。
「あー、植物だけに種から潰さないとダメってコトか……」
流石にこれには攻性植物も怒りをそそられたようで、ハエトリグサの牙をがちがちと鳴らしたが――其処へ雨祈が巧みに地形を利用して跳弾射撃を見舞い、跳ね返った弾丸は勢いを増して標的の死角に襲い掛かった。
「ったく、種回収して次はナニしでかすのやら、今から頭痛いぜ」
相棒不在の為に雑に結った黒髪を揺らし、雨祈はやれやれと溜息を吐いて。しかし休む隙を与えずに身を翻したイグナスが、機械化した肉体から大量のミサイルを射出して牽制に動く。
「この日常を壊そうとする奴は俺が許さねえぜ! イグニッション!」
「ああ、敵の後始末は癪だが、放ってもおけないしな。手早く片付ける!」
地獄化した右腕に炎を纏うイグナスに頷き、精神を極限まで集中させた矜棲は攻性植物の力を削ごうと、その蔓の一部を突如として爆破させた。
「さあ、錨を上げるぜ!」
ランブルフィッシュ海賊団船長として矜棲がばっちり決めポーズを取ると、仲間たちの華麗な連携を見守っていた常葉が思わずぱちぱちと手を叩く。
「やー、格好ええわー。こうなったら俺らも最後は巨大化したいとこやねんけどな。あ、理想のヒーロー像は決めポーズにカラフルな爆煙、男3に女2やで!」
「……このメンバーだと、男性が余るけどね」
ぽそりと呟きつつも、マキナは古代語を詠唱して石化の魔法を敵目掛けて放った。相手はただの攻性植物――故に、取り敢えず倒せばいいから気は楽だ。しかしオーズの種を内包していたこともあり、未知数の部分も多々あるから油断と慢心はしないけれど。
「地獄、解放!!」
まるで本物のヒーローさながらにマルコが掛け声を決めると、ニャアアアアーッ! と何処からか猫の鳴き声が響いて来た。そのままマルコは、高威力の剣技を立て続けに繰り出したのだが――共に頑健さを活かした攻撃は惜しくも見切られ、敵を叩き潰す筈だった鉄塊剣の一振りは手応え無く空を斬る。
「ダイジョウブ、ヒーローはレンケイが大事なのね」
そして、お返しとばかりに攻性植物の蔓触手がオーキッドを締め上げるが、敵の火力の高さに回復が追いつかないと見て取ったミグネットは、溜めた気力を解き放って支援に回った。
――一行の狙いは短期決戦。その為に攻撃を集中させたのだが、敵の一撃の重さは盾でさえも完全に凌ぎきれないほどだ。回復にまわるか攻撃を続けるかの一瞬の判断が、勝負を分ける――強引に押し切るとまでも行かず、ある程度敵の力を削ぐことにも注視していればとも思うが、一度流れに乗った戦いは、たったひとりの意思など容易く呑み込んでしまう。
「……絶対にな、ヒーローは負けんのや。だってそうじゃないと面白くないやん?」
肩で大きく息を吐きながらも、常葉は巧みにヒールを使い分けて的確な処置を施していく。呪医ならではの魔術を駆使した緊急手術を行いつつ、彼は不敵な笑みを絶やさなかった。
「それにな、俺の苗字的にもホワイトと枠争いする気満々で来たら、ホワイトおらへんし」
――いつか、スターホワイト枠の重要さをアルカンシェルに教える為にも。常葉は耽々と、勝利を手繰り寄せていくのだ。
●決着のファンファーレ
戦いは熾烈を極めていった。限界は近いのであろうが、それにも関わらず攻性植物は攻撃の手を休めない。捕食形態を取る、ハエトリグサの牙が矜棲に迫るが――未知の部分は実地で対応するとばかりに、彼は咄嗟に達人の一撃を繰り出して相殺に成功した。
「こっちで引き受ける、攻撃は任せた!」
「えー、と、これ以上は俺らが暴れさせないぜ! ってトコか?」
咄嗟に振られた雨祈は、何とかヒーローっぽい受け答えをしつつ、喰らいつけとばかりに気咬弾を放つ。雰囲気を合わせる感じで彼が目指すのは、いわゆる後から加わる助っ人ヒーローっぽいポジションらしい。
「……また来る、のね!」
しかし攻性植物は最後の力を振り絞り、鞭のように鋭い蔓を振り下ろす。回復に奔走するミグネットが叫んだその時――その一撃は、激しい攻撃の傷が癒えぬオーキッドの体力を、完全に奪い去っていた。
(「あ……!」)
サーヴァントを従える彼は、その代償に皆よりも体力が低い。しかし盾となることでダメージを半減し、更に怒りによって攻撃を引きつけていたのだが――その戦法も火力の高い敵が相手では、そう長くはもたなかった。
(「病院や、おうちにいた時からずっと。テレビでみていた番組に出てきたヒーローやケルベロスの活躍は、ボクの憧れで、支えだったんだ……!」)
――どうする、とマキナは今の状況を見て己に問いかける。いざとなれば、自分が前に出て盾役となることも考慮していたが、その具体的なタイミングが掴めずにいた。立ち位置を変えるには、己の手番をひとつ消費してしまう為、慎重にならざるを得ないのだが――。
「勇気をいっぱいいっぱい貰って、乗り越えられたからっ、ボクはここにいるから、力を持ったから……だからっ」
しかし、そんな中オーキッドは懸命に踏み止まり、魂が肉体を凌駕する勢いで懸命に己を奮い立たせた。
「戦うんだっ! 憧れたヒーローになる為にっ!」
「よっしゃ、しゃきっと目覚ましいくでー!」
何とか窮地を脱したオーキッドを支えようと、リボルバーの銃口から放つイメージで気力溜めを飛ばすのは常葉。これを切っ掛けに一行は猛攻に転じ、マルコの繰り出す刃の切っ先が遂に敵を捕らえる。
「ニャア!」
両の手に握られた鉄塊の如き大剣が十字の傷を刻むと、其処からは轟と地獄の炎が噴き上がり、一気にその身を舐め尽していった。その勢いが止まぬうちに、矜棲は羅針ドライバーを起動――ベルトからは『オモカジイッパーイ!』の音声が高らかに響く。
「叩き起こされて種を抜かれた挙句に倒されるのは納得出来ないと思うが、相手が悪かったと思ってくれ」
遅かれ早かれって奴だ――そう呟くと矜棲は海賊服を靡かせ、グラビティで造り上げた巨大な錨を勢いよく敵に撃ち込んだ。そのまま彼は一気に跳躍し、動きを封じられた攻性植物をその錨ごと――重力を乗せた跳び蹴りで豪快に粉砕する。
「じゃあな!」
「巨大な相手にはこれだ! 俺の魂の炎に応えろッ!」
――あと一撃、与えられれば。地獄の炎を極限までに高めたイグナスが空を仰ぐと、時空の狭間からは対デウスエクス決戦人型兵装『炎神装攻』が召喚されていった。これと合身する事により、彼は炎を纏った鋼の巨人『ダイイグナス』へと変貌――その突破力を以て、障害となるデウスエクスを殲滅するのだ。
「炎神装攻ッ! 今こそ一つとなりてダイイグナスの力を見せる時だ!」
巨躯に見合わぬ素早い動きでダイイグナスは大空へと舞い上がり、矜棲の与えた傷口を更に押し広げるように、炎の矢と化して突き進んでいく。そして繰り出した蹴りが止めとなった――その一撃は巨大攻性植物の肉体を軽々と突き破り、直後に敵は爆発して四散した。
「ふふふ、やっぱりセイギは勝つ、なのね♪」
その最期を見届けたミグネットは勝利のVサイン。ぶんぶんと戦斧を振り回して勝ちどきをあげたのだった。
●夜空への誓い
「ヒーローは無駄な被害は出さないもんだ。そこを忘れると悪党と変わらないからな」
激しい戦いを無事に制したイグナス達は、被害を受けた公園の遊具などを手分けしてヒールしていく。何か手がかりはないかと雨祈は辺りを見渡していたが、肝心の種が回収された以上めぼしいものは無いようで――その一方でマルコは、実は特撮ヒーローが好きなのだと仲間たちにカミングアウトしていた。
「あ、俺も特撮ヒーロー番組を鑑賞するのが趣味だな」
すると早速イグナスと言う同士が見つかり、実際に変身ヒーローとして戦う矜棲も居たりして、マルコは大いに勇気づけられる。人々を守る為に俺たちは戦っているんだ、そう思って彼はしみじみと夜空を見上げた。
「いつか、アルカンシェルと戦うことになるんだよね。やっぱり強いのかなぁ……」
そして、ヒーローを目指して今も頑張り続けるオーキッドは、なるとを頭の上に乗せて、ぎゅっと拳を握りしめつつ気合を入れる。
「負けないように、ボク、いっぱい特訓する……!」
「悪の戦隊共! 何度でもかかってこい! いくらでも返り討ちにしてやる!」
今此処には居ない敵に言い聞かせるように、マルコは大きく息を吸い込んで思いの丈を吐き出した。憧れのヒーローのように――そう、何故ならば我々は――。
「俺たちは人々を守る、ケルベロスだ!!」
作者:柚烏 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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