戦人の摘みし罪の芽

作者:幾夜緋琉

●戦人の摘みし罪の芽
「全く、もう……地味な任務よねぇ。私はさ、もっと殺しまくってグラビティ・チェインを集める方が好みなんだけど……ねー?」
 とぼやくのは、ピンクの衣装に身を包んだ女性。
 そんな彼女に、黒い男が。
「まぁ、お前の言う事ももっともだ。だが、敵が来なければ戦えまい? ケルベロスと戦うのは、奴らが俺達の存在に気づき、攻撃してきた時でも遅くはないだろう」
 と言うと、その傍らの蒼い男が。
「そうだね。スターノワールの言う通りさ。今回の任務は戦闘では無く、オーズの種の回収だ。襲撃が無い限りはケルベロスと戦う必要は無いよ」
 ……と、それに。
「わかってるわよ……はい、見つけたわよ」
 とひょいっと、地面にある種を見つけた事を伝えるピンク。
 それにリーダーの様な男が。
「よくやった。よし、では皆、グラビティ・チェイン注入開始。皆、グラビティを高めるんだ」
 そう言うと、男の鎧が静かに輝く。
 そして他の彼ら……いや、エインヘリアル達の鎧もまた輝きだして……その輝きは、黄色の手に持ったバズーカの中にどんどんと吸い込まれていく。
 そして。
「ほな、いきまっせー……どっかーーーん!!」
 陽気な言葉と共に放たれるバズーカ砲。
 そのバズーカ砲が放たれた地面より、みるみる内に巨大な攻性植物が生まれてきたのである。
 
「皆さん、集まって貰えた様ですね? それでは、早速にはなりますが、私から説明を始めさせて頂きますね」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスへ一礼し、説明を始める。
「先日、かすみがうら市から飛び散ったオーズの種。この種の回収を、エインヘリアルの一部隊が開始している様なのです」
「彼らは五人組のエインヘリアルで、何らかの方法で居場所を特定した、地下に眠るオーズの種へ大量のグラビティ・チェインを与え、強制発芽させている様なのです」
「発芽したオーズの種は、全長7m程の大型の攻性植物となります。発芽直後にオーズの種の部分を、エインヘリアルが奪い撤退している様なのです」
「残された攻性植物は、奪われたオーズの種の分のグラビティ・チェインを早急に回復しようと、市街地の一般人を虐殺しようとします」
「攻性植物の戦闘能力はかなり高いです。ですが中枢となるオーズの種を奪われており、耐久力が低く、グラビティ・チェインを補給する前に戦う事が出来れば、勝機は十分にあり得ます」
 と、其処まで言うと、続けてセリカは状況の説明を加える。
「今回の攻性植物は一体のみで、幸い配下は居ない様です。とは言え体長7mと、とても巨大な相手となります」
「幸い、オーズの種が無く体力は低い状態です。ですが、戦闘能力はその巨体もあり、今迄の攻性植物と比べ、とても高い相手になります」
「又、この攻性植物が現れたのは、埼玉県は春日部にある、市街地のとある公園です。このまま放置しておけば、市街地で暴れ回り、多くの被害と共に攻性植物自体もグラビティ・チェインを回収して元気になってしまいます。だから今のチャンスで、かならずや倒してきて頂きたいのです」
 そこまで言うと、セリカは最後に。
「彼らエインヘリアルが、オーズの種を回収している理由は依然として分かりませんが……でも、攻性植物による被害をのさばらせておく訳にも行きません。皆さんの力を結集し、必ずやここで攻性植物の始末を……お願いします」
 と、頭を下げた。


参加者
バーヴェン・ルース(復讐者の残滓・e00819)
大河内・環(グルメハンターロボ娘・e08921)
玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)
キティエリス・ジョーンズ(夏梅荘の管理人代行・e16090)
龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829)
ディーネ・ヘルツォーク(蒼獅子・e24601)

■リプレイ

●力を飲む
 セリカから依頼を受けたケルベロス達。
 かすみがうら市より飛び散ったオーズの種……その回収を進めるエインヘリアルの部隊。
「ウ-ム。オーズとエインヘリアル……か」
 と、腕を組み、考えるバーヴェン・ルース(復讐者の残滓・e00819)。
 それに龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829)、大河内・環(グルメハンターロボ娘・e08921)、アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)も。
「五人組のエインヘリアル……皆それぞれのカラーを持ってて何だかテレビで見たような感じだね」
「ええ。変なエインヘリアル部隊については気になりますが、考えたところでどうしようもありません。今は目の前の攻性植物デスネ。耐久力が落ちているということデスし、攻撃も強力で回復の可能性もあるとなれば、短期決戦を挑むほか無いデス」
「そうだね。ここでうち逃したら……大変な事になるもんね。帰りを待ってくれている、大事な人が……いるから、必ずみんなで、帰りましょう、ね」
「ええ。何を企んでいるのなら放ってはおけないし、その前に攻性植物を止めなきゃね!」
 と、そんな仲間達の言葉の一方。
「ーム。ヤレヤレ。奴らはどうやってオーズを見つけてるのか……方法が解れば我々もオーズ探索に利用出来るのだが」
 と、バーヴェンの疑問は尽きない。
 それこそが、彼らの特殊能力なのかもしれないし……何か、そいう道具を持って居るのかも知れない。
 しかし、セリカの話では、今回の依頼はオーズの種を回収されてしまった後という話……アルカンシェル達は姿を消した後だと言う。
 無論、問いただして答えが出てくるとも思わないし、それに。
「……今は戦っても勝てると思えん。無念だが……仕方ない」
 と頷く。そして。
「でも……植え付けて、発芽させて、種は回収していく。種を回収された攻性植物は、グラビティ・チェインを求めて暴れ回る……マッチポンプ的な、酷い仕組みね。そしてこの攻性植物が、更にグラビティ・チェインを得たら、手が付けられない程強くなってしまう。だったら……今、ここで摘み取ってしまわないと」
 と、キティエリス・ジョーンズ(夏梅荘の管理人代行・e16090)の言葉にディーネ・ヘルツォーク(蒼獅子・e24601)、ウィリアム・アシュフォード(轟天鎚・e03096)、玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)らも。
「でもあの戦隊とやら……一体何が目的なのかしら? 時間稼ぎ、それとも発芽させなければならない理由とは……ただグラビティ・チェインを得たいのならば、これ以外の方法もある筈……」
「発芽してからの種の回収か……再利用って事なのかな? うーん……良く解らないね」
「ええ……エインヘリアルの目的、良く解りません。でも、何にせよ、一般人の虐殺を許すわけにもいきません。強敵との事ですが、確実に撃破出来るよう、気を引き締めていきましょう!」
「そうだね。まぁ細かい事は後で考えよう。とりあえず今は、コレを何とかしないとね」
「ええ……今は戦闘に集中する時。さぁ……皆さん、急ぎましょう。被害は、最小限に食い止めたい所ですしね」
 ディーネの言葉に皆も頷き……そして、ケルベロス達は、春日部市の市街地、オーズの種を奪われ、暴走状態に陥った攻性植物の元へ急ぎ向かうのであった。

●力付けし怪植物
 そして、ケルベロス達は、春日部市の公園へと到着。
 ……すると、公園のど真ん中で、巨大化した攻性植物が姿を現わす。
「うわぁ……でっかいなぁ……」
 と、7mの巨大な体躯に、アトリがぽつり呟く。
 ともあれ……自分達の数倍はあろうかという、この巨大な攻性植物をこの公園から出さず、倒すのが今回の依頼。
「……中々、厳しい戦いになりそうですね……」
 と、その威圧感に唇を噛みしめるキティエリス。
 その間にディーネは周囲に逃げ遅れた人が居ないかを確認し、見つけ次第割り込みヴォイスで避難誘導を行う。
 そして、残る仲間達は、攻性植物を包囲。
 ……近づくと、更に攻性植物の威圧感を肌に感じ取る事が出来る。
 が……。
「ふふ……相手が何とか戦隊なら、ボクはレッドだね! さぁ、いっくよー!!」
 元気よく、そして無邪気な言葉を上げる鈴華に、傍らのボクスドラゴン、リンリンも雄叫びを上げる。
 ……そんなケルベロス達に対し、攻性植物は蠢き……そして、頭上に伸びた木の枝を大きく震わせての攻撃。
 七メートルの巨躯から振り払われる攻撃は、下手に喰らえば即重傷の可能性すらある、危険な一撃。
「よーし、ココはふんばっていくよー!」
 しかしその攻撃を、臆すること無く受け止めるのは、ディフェンダーに属したユウマ、キティエリス、鈴華とリンリン。
 龍脈解放・耐とライトニングウォールでBS耐性を得る。
 一方ユウマは、体力維持に気力溜め。
 その体力の状況を踏まえ、更にアトリに。
「すみません、回復……お願いします!」
 と声を掛け、それにアトリは。
「解りました!」
 と強く頷き、そして。
「私は守る戦いをすると決めた……だから、みんなを守れるように、戦ってみせる……誰一人かけることなく、守って見せる……!」
 と強い気持ちと共に、旅人達への守護で、仲間達に盾を付与していく。
 ……そして、攻性植物の先手の一撃に対する行動が一巡した後。
「どちらかと言えば前で火力をばらまく方が多かったデスが、これはこれで正しい弾幕の張り方デスネ」
 と、環がジョブレスオーラで仲間に更なるBS耐性を展開する一方、スナイパーのウィリアム、彼のミミックのジャック・ワンダー、そしてディーネが。
「音叉槍展開。さぁ、悲鳴を聞かせろ!」
 と二股に割れた槍を構え、鋭く楽園への招待状の一撃を叩き込み、ウィリアムも殺神ウィルスを注ぎ込み、そしてガブリングで噛みつく。
 そして、最後にクラッシャーのバーヴェンは。
「全力で行くぞ!」
 と、気合いと共にインフェルノファクターで壊アップ。
 そして、次のターン。
 攻性植物は変らず、頭上から繰り出す強力な一撃を叩き込んでくる。
 ムチのように枝をしならせ、攻撃。
「っ……!」
 それを今度は、キティエリスがカバーリングし受け止める。
 自身の回復を、気力溜めで施し、アトリからも回復を受けて体力を維持……そして、ユウマがブレイズクラッシュ。
「どっかーんと、気合い入れていくよっ! リンリンも一緒に!」
 鈴華はリンリンに指示を与えながら、今度はブレイブマインで後衛陣に壊アップを付与しつつ、ボクスブレスで攻撃。
 ……そして、壊アップを受けたウィリアム、ジャック・ワンダー、ディーネらが、コアブラスターに愚者の黄金、そして。
「焼き加減は地獄級だ。さっさと燃え尽きな!」
 とブレイズクラッシュの炎で、ツタを焼く。
 ……元は樹だからか、その攻撃はかなり効いている様にも見える。
 とは言え、その炎は巨体の僅かな部位に着火した程度。
 幹を震わせ、枝をカサカサとさせて……すぐに火は収まる。
「ちっ……随分と過激に暴れてやがるな!」
 と吐き捨てるディーネ。
「何にせよ、ちょっと苦手分野なので、弱めなのは大目に見て欲しいデス」
 と環はフォートレスキャノンで攻撃し、バーヴェンもインフェルノファクターで強力な一撃を叩きつける。
 ……そして、その後も、ケルベロス達はディフェンダーが順繰りに攻撃をカバーリングし、体力減少の一極集中を抑える。
 そして、残る仲間達で、攻性植物を四方八方からの集中砲火で削り続ける。
 確かに、攻撃力が高く、強力な相手なのは間違い無い。
 とはいえ、体力が少ないのは幸いな所……気合いと共に、確実に体力を削る。
 経過する事、5分。
「teiwaz……祝福してやる。消えてなくなれ!」
 と、ディーネが放った楽園の招待状の一撃……それが、攻性植物の太い幹に、大きな裂け目を生じさせる。
 その一撃と共に、大きく体を震わせる攻性植物……そして、環が。
「見た目が悪くても美味しくいのは珍しく無いデスし、レッツチャレンジなのデス」
 と。それにえっ、とウィリアムが首を傾げるが。
「私はグラビティで、デウスエクスも捕食出来るのデスよ! ……イタダキマス!」
 ……捕食者の牙で、攻性植物に食らい付く環。
 その牙は、大木を貪り喰らい……攻性植物は、崩れ墜ちるのであった。

●力失う時
 ……そして、どうにか攻性植物を抑え、倒したケルベロス達。
「……うーん……あんまり、美味しく無かったデスね」
 と、口元を拭う環……それに苦笑しながら。
「……ふぅ……終わったね。それにしても……でっかかったなぁ……」
 汗を拭いつつ、アトリがほっと一息を付く。
 その言葉に、キティエリスも。
「そうだね……本当、大きい敵だった。あたし達が退治出来なかったら……目も当てられない光景が広がっていたんだろうね……」
 と、軽く身震いする。
 そして、そんな仲間達の言葉の一方、ハーヴェンは片膝をつき、瞑目。
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
 と、攻性植物に対しての冥福を祈る。
 ……攻性植物が意思ある存在かどうかは解らないが。
 そして。
「さて……と。残っているかは解らないけれど、敵の狙いを探してみましょうか」
 と、ディーネがいうと、それにウィリアムも。
「そうだね。何も無いかもしれないけれど、もしかしたら他と違っている所があるかもしれないしね」
「ええ……かすみがうらみたいに、周辺に変な影響を及ぼしているかもしれません。何が目的か解らないからこそ……細かいところ、一つ一つ調べていきましょう」
 と頷き合い、地面を一部掘り返してみたり、土壌を持ち帰る。
 そして、一通り調査した後は……街の人達が平和に住めるよう、ヒールで戦場となった跡を回復していく。
 一通り回復し、少しファンシーになった街角の公園の姿。
「……うん。これでよし……と」
 と頷き……ケルベロス達は、帰路につくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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