悟りとはロリへの愛と見つけたり

作者:紫堂空

●鎌倉は悟りのメッカ
「皆さん、お忙しいところ恐縮です」
 セリカ・リュミエールは緊急招集に応じた一同に頭を下げる。
 デウスエクスの大軍勢が鎌倉に突如出現し、侵攻を開始。
 鎌倉市内を征圧し、さらにその侵攻の手を外に広げようとしている。
 この状況での召集となると――。
「はい、新手です。鎌倉市郊外で、ビルシャナ大菩薩の影響が発生し始めたようです。
 ビルシャナ大菩薩の影響を受けた市民の中から、悟りを開いたとしてビルシャナ化するものが現れています」
 新たにビルシャナとなった人間は、自らが作った教義に少しでも同意した者を支配下に置く事が可能で、鎌倉市民を自らの信徒にしようと動き始めたのだという。
 配下となった者はだんだんとその教義に支配されていき、最終的には新たなビルシャナとなってその教義を広めていく。
「このままでは、鎌倉市内が様々な宗派のビルシャナに埋め尽くされてしまうでしょう。そうならないよう、配下の数がまだ少ない内にビルシャナ化した市民の撃破をお願いします」
 
●ココロの病をこじらせたもの
「本作戦の目的は、悟りを開きビルシャナとなった人間およびその配下と戦い、ビルシャナ化した人間を倒すことです」
 目標のビルシャナは『至高の萌えとは早熟ロリとロリBBAのどちらであるか。――もちろん早熟ロリである』という教義の持ち主である。
 早熟ロリは加齢により年齢と外見のギャップが解消されれば『普通の大人』になってしまうし、早熟度合いが変わらないなら『年齢二十歳だけど見た目は五十代』となって萌えとはかけ離れてしまう。
 ――故に、早熟ロリはその賞味期限が短く、より希少価値が高いのだ!
「ということのようです。いえ、理解も共感も難しいのですが」
 セリカは困ったような笑顔を見せながらも補足説明を始める。
『早熟ロリ』とは、実年齢は子供なのに見た目は大人。
『ロリBBA』とは、見た目は子供なのに実際には受け手よりも遥かに年上のキャラクターを指す言葉――。
「のようです」
 調べました。と、情報端末の画面を見せるセリカは、町の破壊や死傷者の発生といったものとは別種の原因による頭痛を抱えているように見える。
「ビルシャナの外見は、全身が羽毛に包まれた鳥人間です。
 さらに今回の討伐対象の特徴として、表面に教義に該当するアニメや漫画等のキャラクターのイラストを描いた『痛アーマー』を身につけています。
 皆さんには、このビルシャナとなった人間が周囲の人々に自らの考えを布教し、配下を増やそうとしている現場に乗り込んでいただきます」
 ビルシャナとなったものの言葉には理屈を超えた説得力があり、放っておけば一般人はその教義に洗脳されてしまうのだという。
「配下となった人間はビルシャナと共に襲ってきますが、大本であるビルシャナを倒せば元に戻りますし、布教に対抗してインパクトのある主張をぶつければ、配下となること自体を防ぐことも出来るでしょう」
 ビルシャナの攻撃手段は三つ。
 破壊の光を放つ、ビルシャナ閃光。
 氷の輪を飛ばし凍結させる、八寒氷輪。
 本人以外理解不能な経を唱えて心を乱す、ビルシャナ経文。
「どれも遠距離、広範囲にわたる攻撃です。十分に注意してください」
 ビルシャナの出現場所は駅周辺のアーケード街の一角だが、『彼』の異形とその意味不明の教義によってほとんどの人間は逃げ去っている。
「残っているのは老若男女合わせて十人ですが、彼らは『ナシ……いや、アリ……か?』とビルシャナの言葉に心を動かされかけています」
 配下となった人間は身体的にはただの人間であり、戦闘力はほぼ無い。
 だが逆に、手加減無しの攻撃を加えれば簡単に死んでしまうだろう。
「ですが、第一目標としてはあくまでビルシャナを撃破し、これ以上のビルシャナ増殖を防ぐことです」
 ご留意ください。セリカは冷徹な声で告げる。
「ビルシャナの布教に対抗するには、理屈以上に『勢い』や『思いの強さ』が重要になるでしょう。皆さん、頑張ってください」


参加者
八王子・東西南北(サキュバスの自宅警備員・e00658)
リソナ・シンフォニック(交響機関・e00761)
神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)
ローゼマリー・ディマンティウス(ディレッヒャリン・e00817)
樫木・正彦(シュバインリッター・e00916)
メイディ・トッド(自称ウィッチメイド・e02679)
舞・冥華(重火砲駆逐騎兵・e05871)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)

■リプレイ

●三次元からの刺客 ~光の使徒の究極問答~
「故に、真に素晴らしき萌えは早熟ロリとロリBBAの二つ。中でも早熟ロリはその刹那の輝き、賞味期限の短さから至宝といえよう!」
「分かるような、分からないような……」
「――分からん!!」
 異形でありながら萌えを説くビルシャナと、それを聞く十人の人間達。
 神楽火・皇士朗(破天快刀・e00777)はその異様な集団に正面から近づき、剣気と共にみもふたも無い言葉を叩き付ける。
「早熟ロリだのロリBBAだの、そんなものは感傷と欲望を投影しただけの幻想にすぎない。すなわち、お前の問答に意味や価値などない。
 人間は変化していくからこそ愛すべき存在たりえるのだ。少女が大人の女へと変わる瞬間の美しさを理解できない者が、愛を語るな」
「ぬ、ぬぅ……」
 皇士朗の語りにより、人々の間に動揺が走る。
 放たれた剣気はビルシャナの影響力に遮られたものの。
『持たざる者』として二次元をよりどころとする彼らには、『持てる者』による幻想否定が何より痛い。
「ど、動揺するな、皆の衆! それが、その痛みこそが三次元が我らに与える唯一のもの!
 故に二次元に救いを求めたのではないか! 早熟ロリを愛せ! そして満たされよ!!」
「そ、そうか……」
 いち早く立ち直ったビルシャナが、信者(予定)の動揺を逆手に取って、洗脳の深度を増しにかかる。
 もっとも話術というよりは、単に心から湧き上がるものを叫んだだけのようではあるが――。
「いいから、そういうの」
 沸き立つ十人と一体の前に進み出たローゼマリー・ディマンティウス(ディレッヒャリン・e00817)は冷たく切って捨てる。
 エインヘリアルの元へさっさと行きたいローゼマリーの『前座』への扱いは、どこまでも辛辣だ。
「例え体が大人であろうとも、子供に手を出すようなクズは死ねばいいと思うわ」
「い、いや、『ロリは遠くにありて想うもの』。それに、二次元に三次元の倫理を持ち込まれても……」
「相手の容姿、性格、それらを属性で括ってラベリングするのが楽しいなら、一生やってればいいんじゃない? もっとも、その一生もここで終わるけれど」
 同好の士でない『一般人』と会話経験の無いビルシャナはそれでも抗弁しようとするが、追撃を受けてついに黙り込んでしまう。
「なんて、無様。失望しました、ビルシャナのファンやめます。――というか、三次元の罵りもいいよね!」
 即座の切り返しが出来なかったビルシャナの影響下から抜け出したのは、三十歳無職男性。『ロリに嘲られ罵られること』が大好きな二次元オタクである。
 様子を見ていた皇士朗が剣気を放ち、しょうきにもどった一般人をこの場から追い立てる。
「さあ皆さん目を覚まして。ロリはロリというだけでジャスティス、尊い!」
 ついで飛び出したのは八王子・東西南北(サキュバスの自宅警備員・e00658)。
「ロリBBAも早熟ロリも邪道、真性ロリこそ至高!!
 水蜜桃のようにすべすべ瑞々しいお肌と膨らみかけたキュートな胸、年相応の無邪気な振る舞いと時折見せる恥じらいの表情こそがロリをロリ足らしめる黄金律!
 ロリはロリというだけで素晴らしい!
 さあ目覚めよ諸君!」
 二次元ロリキャラのTシャツ姿の東西南北は、ロリ漫画をばら撒き『真性ロリ』の素晴らしさを訴える。
 言葉と物の物量攻撃だ。
「拾え、拾うのよぉっ!!」
『女子小学校の教員になりたかった』二十六歳女性が、宙を舞うロリ漫画の群れに狂喜して自分を開放する。
 そう、やはりロリはいい。ロリならいい。多ければ多いほど!
 テレビウムの小金井に付き添われ退場する彼女の両手には、拾い集めた大量のロリ漫画がしっかりと抱えられていたのだった。
「ふっ。ロリBBAが早熟ロリに劣るなど……」
 嘲笑と共に前に出るのはリソナ・シンフォニック(交響機関・e00761)。
 十二歳! ひゃくよんじゅうろくセンチ!
「幼い体に悠久の時を湛えている、それがロリBBAの魅力!
 早熟ロリは内面が幼い大人が取って代われるかもしれませんが、ロリBBAに代われる者はいません。
 ロリBBAの内面は、その者が歩んできた永き時間の証なのですから!
 この非代替性こそ、至高の萌えに与えられたオンリーワンの魅力ではないでしょうか!」
 ロリがロリを説く。
 なんという地獄絵図――いや、これこそが天国の景色なのか。
 もっとも、演説を盛り上げんと彼女が鳴らしていた音の数々は、まさしく地獄の産物だったが。
「ふっ、やはり時代はロリBBAか。俺にはわかっていたぜ」
『ロリにお姉さんプレイしてもらいたい』六十五歳児が、白くなって久しい顎髭を撫でながらしたり顔で言ってのける。
『来世はロリになりたい』四十歳会社員男性も(「ロリBBAなら今世でもなれる――か?」)と、斜め上の覚醒を果たす。
 ともあれ、新たに二人がビルシャナの支配から逃れ、無事にこの場から立ち去っていったのだった。
「ん? とり、ちょっときいていい?」
「な、なにかな? お嬢ちゃん」
 説得に興味無しな舞・冥華(重火砲駆逐騎兵・e05871)だが、今までの話を聞く内に疑問が生まれたらしい。
「早熟ろりとかろりBBAってなに?」
「ふむ――」
 嬉々として説明するビルシャナだが、冥華の表情は訝しげなまま。
「どわーふ的にはよくわかんない。いま以上に見た目成長できないし……ん? もしかして悪口? むー差別いくなーい」
「ぬ、ぬぅ、だからだな……」
「純真ロリ! そういうのもあるのか!」
 そのやり取りを見ていた蕎麦打ち職人志望の十歳男子が、無垢な子供の良さに目覚める。
「く……」
 元々多いとはいえなかった信者候補の半数が既に脱落。
 ビルシャナの肩がわなわなと震える。
「洗脳、ダメ絶対! 萌え・イズ・フリーダムです!」
 そこへ追い討ちをかけるのはメイディ・トッド(自称ウィッチメイド・e02679)。
「早熟ロリもロリBBAも、全てのロリ萌えは等しく萌え!
 萌えはフリーダムであるべきなのです!
 他人に言われて良さに気が付くような萌えは、真の萌えではないのでございます!」
「ふ、その良さに気づかぬ者に光明を与えてやることこそ我が使命。いいから三次元は――」
「ほらほら、私も二十六歳ですがロリっぽい容姿ですし。早熟ロリだけを信奉するのは勿体無いですよ!」
 ビルシャナの反論を可愛い子ぶったポーズで遮り、ラブフェロモンを撒き散らしながら語るメイディ。
 その色香に惹かれたのか、一人の少女が進み出る。
「お姉様って、呼んでいいですか?」
『早熟ロリとロリBBAの百合』そんな理想郷を求めていた十一歳女子も、新たな道に辿りついたようだ。
「ぐ、ぬぬぬ……」
「そうだお!」
 減っていくばかりの賛同者にビルシャナの怒りが高まっていく。
 だが、容赦は無い。
 メイディの萌えは自由という論に同調し、樫木・正彦(シュバインリッター・e00916)が強く語る。
「早熟ロリも良いが、それはロリに母性求めようとする人間的甘えだお。
 ロリBBAもそうだお! 実は年上ということによる母性を求めてる。
 ……ちがうお!
 ロリっていうのは幼い少女に萌えを抱き、そして遠くから見守る父性的なハート。
 ロリは一つじゃないお!
 そしてみんなも!
 心に持つものを信じるお!
 誰かに導かれるものは……萌えでも夢でもないお!」
「……アンタの想い、伝わったぜ」
『三ヶ月毎に嫁のかわる女』の異名を持つ十七歳女子は主体性の無さからビルシャナの教義に染まり、今また正彦の言葉に流されたのだった。
「――萌えのなんたるかも分からぬ蒙昧どもめぇ……!」
「笑止!!」
「ど、どこだ!?」
「あそこのオタクショップのビルの屋上よ!」
 そこにいたのは、サラシとふんどしを身につけた推定幼女。
「ろりとか! BBAとか! 賞味期限とか希少価値とか!」
 だん! だん! だだん! と端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)が、足を踏み鳴らすと共に空砲を撃ち叫ぶ。
 そして勢いよく飛び降り着地。
「そんな肩書きや十把ひとからげの基準で愛を語るなど言語道断! 愛するならば相手を愛せよ! 好いた相手がおらぬなら! このわしを崇めさせてあげるのじゃ! わしを拝み崇めよー!」
 熊耳尻尾の二十六歳は、十三歳相当の背丈の体をめいっぱい反らしてふんぞり返る。
 そのふんどしとサラシの白さがやけに眩しい。
(「あんな教義が広まったら氏子や皆に見放されてしまうかも……そんなのやなのじゃ」)
 ご近所の方に神様扱いされる括にはそんな打算もあったが、もちろん人々を救いたいという気持ちも大きい。
 きっと、その身長よりも。
「これが萌え神さま。ふつくしい……」
「これが光……これが慈悲、愛だというのね……。見えたッ! ロリ痴女は正義!」
「そんな餌に全力で釣られるクマ~っ!」
「括たん! 括たん!」
 可愛いもの大好きなナルシスト拳法家二十五歳男は思わず涙を流し。
 括の格好から、清純の象徴であるロリとビッチというギャップに可能性を見出した十八歳家事手伝い女子が、自らの想いを薄い本にするために猛烈に走り去る。
 二十一歳アニメショップ店員男子は、ロリBBA+ケモという合わせ技で一本釣りされ狂喜の吠え声を上げる。
 こうして、最後に残った三人も無事改心したようである。まさに会心の演説だ。
 ……一人多い? 最後のは、正彦の漏らした雄叫びだ。
「ふ、ふふ。まさかここまでやってくれるとはな。いいだろう、貴様等を始末して新たな布教対象を探しに行くとしよう!」
「民草にそんな戯けた教義、広めさせぬのじゃ!」
「ここで終わりよ。おわかり?」
 括が叫び、ローゼマリーが羽織っていたコートを脱ぎ捨てて地獄と化したその両腕をあらわにする。
「ん、はこは後ろのみんなをしぬ気でまもれ」
 冥華がミミックのはこに指示を出し、これで戦いの準備は整った。
 長い舌戦だった。
 既に一仕事終えたような疲労感がないでもないものの、ビルシャナ退治の本番はこれからなのだった。

●こころを侵すビルシャナの経
「少々時間を食いすぎた。さっさと決めさせてもらう」
 皇士朗が勢いよくフォートレスキャノンをぶちかます。
 一般人に気を割く必要がなくなった為に、その動きは軽い。
「黄道十二宮白羊の騎士、樫木正彦が萌えを一つにしようとするその歪みを断つお!」
 戦いへの恐怖を使命感で塗り潰し正彦が叫ぶ。
 放たれた聖神拘束が、ビルシャナに地下牢の幻覚を見せその身を縛ろうとする。
「――受けなさい」
 辛うじて拘束を逃れたビルシャナにローゼマリーが回り込み、エアシューズと大地の摩擦で生まれた炎を蹴りで飛ばす。
 羽毛を炙られ慌てたところへ、リソナの追撃。
「鳴りわたれ、刻限の鐘! 汝に定命の時迫れり!」
「ぐぅ、その耳障りな音をやめろぉっ!」
 リソナが奏でる殲剣の理は、音の暴力でビルシャナの神経を逆撫でる。
「聞くがいい、これが至高の調べというものだ!!」
 耳に残る騒音を振り払うように、リソナに向けて教義の結晶たる経文を朗々と読み上げる。
「ぅえ、気持ち悪い……」
 彼の愛する二次元幼女達の名前と想いを綴った経文は余人の理解を拒み、聞く者の精神を掻き乱す。
「治療いたします!」
 すかさずメイディが、桃色の霧を飛ばして治療に回る。
「お返しです」
 東西南北が催眠魔眼で、逆にビルシャナの心を乱そうと試みる。
 その攻撃を援護するように、冥華がアームドフォートの主砲を一斉に撃ち出し、括が頭部狙いの銃弾を放つ。
「まだ、まだ! やられはせんぞぉーっ!」
 傷を負いながら吠えるビルシャナ。
 その勢いは、色々な意味でまだまだ健在なようだ。

●三次元は二度刺す
「貴様らには分かるまい! この鎧を通して出る力が! これこそが叡智の光よ!」
 痛アーマーの無数の穴から漏れるビルシャナ閃光。あたかも鎧の二次元幼女達が光を放ったような演出だ。
 その光はビルシャナの近くにいた四人と一体へ平等に降り注ぎ、破壊の力を示す。
「っ、至高の萌えなんてないお!」
 背後の仲間への攻撃を引き受けていた為に一際傷の深い正彦が、それでも戦意を失わずビルシャナを否定する。
「回復いくよー」
「ご奉仕致します! メイディ・ヒール!」
 前衛の回復に冥華がドローンを飛ばし、メイディが自己流奉仕治療魔法をかける。
「ふふ、ボクといいことしませんか……?」
 チェリーボーイ×クラッシュキッス。
 前屈みで胸の谷間を強調する『あざとエロ可愛い小悪魔ポーズ』を東西南北がキメ、セクシーさを破壊力に変換したハート型ビームがビルシャナを襲う。
「おのれおのれおのれおのれ!!」
 痛アーマーに描かれた幼女をキズつけれられ、激昂するビルシャナ。
「祖国への愛を胸に――リソナ、進攻いたします!」
 だが、ケルベロス達の攻撃が止むことはない。
 パラディアン・マーチを奏でるリソナは、その破壊的な音の障壁を纏い突撃。
 括も、熾炎業炎砲で炎を放ち援護する。
「我が血よ、刃に宿れ」
 ふらふらと足元がおぼつかなくなったビルシャナへ、ローゼマリーが駆ける。
 紅桜鮮烈刃。
 横薙ぎからの逆袈裟――刃へ流した自らの血を地獄の業火に変えての神速の二連斬である。
「とどめだ……我らが故郷の未来のために、お前の妄念を討つ!」
 皇士朗が放った二刀斬霊波。
 霊体を断つ衝撃が、ビルシャナの最後の気力を断ち切ったのだった。

●光ある所に闇もまたどうのこうの
「ぐ、ふっ……。我が野望潰えるともロリは死なず。いずれ第二第三の幼女スキーが貴様等の前に現れるだろう。その時まで、せいぜい萌え力(もえぢから)を蓄えておくのだな……。がくっ」
 最後の力なく首が倒れる音も自らの口から発し、ビルシャナは果てた。
 他者を蹂躙しても自分の想いを遂げようとした男は、その報いを受けて滅びたのだ。

「うぅ……恥ずかしい死にたい……まっピンクの黒歴史だ」
 戦闘後、東西南北はばら撒いたロリ漫画を回収したが、その全ては戦いの余波を受けて消し炭となっていた。
「よしよし。撫でてやるのじゃ――ところで、わしを崇める気は無いか?」
 怪我人治療及び布教が一段落した括は、泣き崩れる東西南北を哀れんで頭を撫でてやる。
「括たんを崇めるお! あと写真撮っていい?」
「む、むぅ。まぁ、いずれな、いずれ」
 飛びつかんばかりの正彦に、括は信者が出来て嬉しいのか微妙な表情を浮かべつつ、とりあえず先延ばしにする。
「さあ、本当の戦いはここからだ」
「そう、前座は終わり。アイツの事を聞きだすためにも、ビフレストに向かいましょうか」
「そいえば、せんそって……おやついくらまで? ばななはおやつに入るっぽい?」
 真剣な表情でビフレストを見上げる皇士朗とローゼマリーに、あくまでマイペースな冥華。
 そう、戦いの本番は、まだ始まってもいないのだった。

作者:紫堂空 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年9月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 13/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 13
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