春と死を知らせる『巨大テントウムシ』蠢く

作者:凪木エコ

 都会の町並みには絶えず明かりが灯り、若者たちの喧騒は絶えない。
 季節は春。冬が終わり、春の陽気さに誰もが酔いしれているのだろう。
 真夜中の繁華街にて、若者たちの1グループを高層ビルから見下ろす快楽殺人鬼が目を細める。
 そして、
「行きなさい。私の可愛い下僕」
 『上臈の禍津姫』ネフィリアが、部下であるローカストに命令を下す。
 命令を受けたローカストが、羽を羽ばたかせながらも地上へと舞い降りる。
「?」
 1人の若者がズシン、という重音を微かに捉え、音のする方を振り向く。
 何か近づいてくると、首を傾げること数秒後。
 化物に気づいてしまう。
「!? うわぁぁぁぁ!?」
 酔いが一瞬にして覚め、その場で腰が砕けてしまう。
 周りにいた友人たちも若者のただ事ではないリアクションに、感染するかのように酔いが覚めてしまう。
「ど、どうしたんだよ?」
「あ、、、あれ……」
 若者が指差した先。
 巨大なテントウムシが迫ってきていた。
 指を差されたローカストはガッパリ、大きな口を開き叫ぶ。
『キャリィアアアアアア~~~!』
 刹那、地響きを立てながらもローカストが大地を駆ける。
 全員が悲鳴を上げ錯乱。その場から逃げようとするがローカストは逃さない。
 巨躯な身体にはそぐわないスピードで、乱雑にも若者たちの逃走手段である足を切断。
 泣き叫ぶ集団を無表情で覗くローカスト。冷酷にも1人の少女を持ち上げ、首筋に管を差し込んでいく。
 グラビティ・チェインを吸収するために。
 呼応するかのように、ローカスト背面の水玉が妖艶な輝きを放つ。
 春と死をローカストは告げる。

 セリカ・リュミエールは集まったメンバーに説明を始める。
「都市の繁華街にて、テントウムシ型のローカストが若者グループを襲撃するとの予測が入りました。事件の背後には女郎蜘蛛型のローカストが暗躍している模様です。……っ、いつになったら正体を表すのでしょうか……!」
 中々、尻尾を出さないネフィリアにセリカも焦りを隠せないようだ。
 いち早く駆けつけたクオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)がセリカの肩にそっと手を置く。
「今はテントウムシ型のローカストに集中しよう。いずれ痺れを切らして出てくるまでの辛抱だ」
「……そうですね。そのときまでの辛抱ですよね。クオンさん、ありがとうございます。話を戻しますね」
 セリカはクオンに微笑み、事件の詳細を話していく。

 ターゲットは3メートルを越えるテントウムシ型ローカスト。
 しかし、テントウムシに似ているからと油断してはならない。
 このローカスト、近接戦闘に非常に長けているらしい。迂闊に近づこうものなら一気に畳み掛けられる可能性も重々あるほどに。
「皆さんは距離を取って攻撃、連携を取って攻撃するなどして、1対1の近距離戦は極力避けてください。……あと、これは杞憂かもしれませんが」
 セリカは1点気になることがあるらしい。
「このローカスト。もしかすると、コギトエルゴスムを携行しているかもしれません」
 セリカいわくローカストの背中の羽には、8つの半球状に浮かび上がったガラス玉のようなものが、はめ込まれているらしい。
「それは人為的に埋め込まれたものなのか、元からの柄なのかは分かりません。けれどコギトエルゴスムの場合、吸収したグラビティ・チェインの摂取によって孵化してしまうかもしれません」
 セリカの心配事が的中すれば新たなローカストが生まれてしまい、戦況は一気に不利になるだろう。
 クオンも口に手を当て、凛とした表情を崩さず考える。
「破壊対象が増えるかもしれない、か……」

 ヘリオンの出動準備が整ったアナウンスがセリカに入る。
「真夜中で視界が決して良い環境ではありませんが、皆さんならきっと乗り切れます。ご武運を!」


参加者
薬師丸・秋雨(その失意を希望に変えて・e00654)
ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)
大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)
フォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)
雪村・達也(漆黒に秘めし手負いの炎剣・e15316)
ガルフ・ウォールド(でかい犬・e16297)
戸叶・真白(エデン・e23569)
クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)

■リプレイ

●戦闘準備
「ちっちゃいテントウムシは可愛いけど、デカイのはなんかグロそう……」
 薄暗い街灯りの中、ローカストの姿を想像して青ざめるのは薬師丸・秋雨(その失意を希望に変えて・e00654)。
 現在、ローカストの襲撃に備え、一同は戦闘準備を整えている。
 秋雨は戦闘を有利に働かせるための魔法陣を地面や壁にチョークで書き上げていた。
 その数、十数個。ターゲットが攻撃範囲にいるとは限らない故の対策である。
 雑居ビル屋上で仁王立ちしているのは、大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)。
 マントを風に揺らし、街の光を一望する姿は猛々しい。
 まるで世界征服した瞬間を予行演習するかのように、
「フハハハ……我が名は、世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領!」
 領の今目的は、ローカストの背中に埋め込まれる宝物の回収。
 実のところ、ガラス玉がコギトエルゴスムの恐れがあるという重要な話を領は全く聞いていなかった。
「我が目利きと射撃の腕前で、見事に切除、討伐し、我がコレクションに加えてくれようか!」
 己が欲しいから回収する、というだけ。
 野心家で少し見栄っ張りな彼なだけに、回収した暁には装飾品にでも加工するのかもしれない。
 領の横に並ぶ戸叶・真白(エデン・e23569)は、未だに笑い続ける領に、本当のことを告げようとする。
「ん、背中のは、コギトエルゴスム―、」「フハハハハ!」
「……」
 聞いちゃくれないだろうと真白は断念。もし本物ならばそのときに考えればよいと判断したようだ。
 深夜の繁華街を遊歩することが趣味の真白は、領と一緒に繁華街の町並みを見下ろす。
 ぼんやりとした無表情の彼女は、一体何を考えているのだろうか。
「背中の、コギトエルゴスム、そのケースは初めてか、も……」
 領と真白はローカストの殲滅を優先とはせず、背中8つのガラス玉の正体を見極める射撃部隊。
 勿論、コギトエルゴスムだと判明し孵化する可能性があれば、破壊もしくは回収作業にそのまま移行。違った場合はサポートに徹する。
 戦力増加を防ぐ重要な役割だろう。
 雑居ビルの真下。歩行者天国で4人は最終確認をしていた。
「それでは私とガルフが攻撃に専念し、ジョージと達也がスイッチして守りを担当する、という形で問題ないな?」
 純白の翼が月光に照らされ、幻想的な雰囲気を漂わせるのはクオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)。
 190センチ前後のウェアライダー、ガルフ・ウォールド(でかい犬・e16297)は頷く。
「う、うん。問題ない」
 凛としたクオンと比べ、ガルフは初めてのペア戦闘に緊張しているようだ。
 理由はそれだけではない。今日は密かに尊敬の念を抱いている男が横にいるのだから。
 その男の名は、ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)。地中海の小さな漁村生まれで、どこかアンニュイな雰囲気を醸し出す男だ。
「壁は任せろ。1人で孤立しないようにってことだが、万一相方が落ちたら、もう一方の前衛組と合流だな」
 ジョージは自分に懐いているガルフの視線に気づき、器用にも右口角を上げる。
 成功するさと目で語られた気がしたガルフは、不思議と緊張が緩和していくのを感じる。
 最後の壁役、雪村・達也(漆黒に秘めし手負いの炎剣・e15316)は煙草に火を灯し、頭の中では首謀者である女郎蜘蛛型ローカストを思い浮かべていた。
 達也の友人は女郎蜘蛛と因縁があるらしい。
 だからこそ、少しでも役に立つ情報を入手するために今作戦へ身を乗り出すことにしたのだ。
「何か手掛りが掴めればいいが……」
 以上の4人がローカストと近接戦闘を行う部隊。
 クオンとジョージ、ガルフと達也のペアに別れ、効率良く切り替わりながらもローカストの殲滅を目指すポジションだ。
「ん、持ってきたなの!」
 小さな背丈に、ダンボールを一生懸命抱えてやって来るのはフォン・エンペリウス(生粋の動物好き・e07703)。フォンのボクスドラゴン『クルル』も主人の手伝いをすべく、ダンボールを持ち上げている。
 フォンは仲間たちが万全な状態で動けるように行動する治癒係。メンバーの生命線とも言っても過言ではない。
 持ってきたダンボールをフォンが開けると、中には人数分のペンライトと、複数個のカラーボール。カラーボールとはコンビニなどに置かれている防犯道具の1つで、投げつけられると暗闇でも目立つほどの蛍光塗料が弾け散るという代物だ。
 ペンライトは虫に多く見られる光に集まるという特性、『走光性』を持ち合わせている可能性を考慮しての準備物。
 領はペンライトの輝度を確認しながらも呟く。
「テントウムシと全く同じ機能を持っていれば良いがな」
 カラーボールはローカストのガラス玉をピンポイントで狙撃するためのマストアイテムといったところだろう。
 ひと仕事終えたフォンはあくびを噛み殺す。
「ん、眠いの……」
 6歳児の彼女にとって、これほどまでの夜更かしは中々にキツいのだろう。
 魔法陣を書き終えた秋雨は、早めの栄養補給『今日のぶんの野菜』ジュースを飲みながらも、腕時計を見る。
 日付けが変わって2時間が経過。
 間もなく戦いが始まる。
 
●招かざる者、現る 
 飲み屋街から出てきた若者グループが、千鳥足で駅方向を目指している。
 事件は起こる。
 ドシン、と高いところから何か重いモノが落ちてくる音が響く。
 若者たち後方に降り立ったテントウムシ型のローカストだ。
 1人の若者が気づいたときには、大きな口で叫びながらもローカストは猛突進を開始。
『キャリィアアアアアア~~~! !』
 ローカストは背後から飛んでくる物体を確認し咄嗟に反転。その物体を切り裂いた。
 切断と同時に弾け飛ぶ蛍光液。カラーボールの塗料がローカストの腕に付着を成功させる。
 しかし目的を達せてはいない。ローカストを狙いやすくなったものの、背中のガラス玉を識別するのは未だ難しいのだ。
 路地裏にて息を潜めているのは秋雨。
「今のに反応するのか。ならこれはどうかな?」
 取り出した魔導書に力を込めると、ローカスト足元が輝き始める。
 あらかじめ用意されていた魔法陣が発動開始。近距離でぶつけることができれば大ダメージは必須だろう。
 しかし、ローカストは冷静だった。
 避けるよりも早いと、魔法陣の描かれたアスファルトごと叩き割って攻撃を無効化。
 秋雨は小さく口笛を吹く。
「……やるね」
 光の翼にて、ローカストの真上からクオンが急降下。
 自分の影が色濃くなったことに気づいたローカストは、すぐさまクオンの存在に気づき、防御態勢に。
「視野角が広い、な!」
 クオンは大剣と槍を召喚し、速度を活かしたまま両武器をローカストに叩きつける。
 ローカストの2本の腕が両の攻撃を完璧にシャットアウト。
 それでもクオンは鍔迫り合いを続行。
 時間を稼ぐために。
「ん、今のうちに逃げるの!」
 その間、フォンとクルルは若者たちの避難誘導を開始。
 長くは持たない。クオンが押し負け始めている。
「うおおおおお!」
『……!』
 更なる威力を繰り出すべく、高輝度の光をクオンは帯びる。
 傾いていた力を拮抗状態にまで戻す。
 ローカストは他の2本の足でクオンの両武器に掌底に近い打撃を浴びせ、軽く吹き飛ばす。
 クオンは勢いそのまま壁に激突。
「ク……」
『キャリィアアアアアア~~~!』
 更なる追撃をすべく、光の粒子が残留するクオン目掛けてローカストは駆け出す。
「走光性を確認してみま、す」
 射撃部隊の真白がペンライトで暗闇の一部分を照らす。
 しかしながらローカストの進行方向はクオンに変わりはない。
 迫り来るローカストの腕が鋭利な鎌に変化。
 すかさず割って入るのはジョージ。ナイフと刀身を腕と接地させ、重く響き渡る一撃をかろうじて受けきる。
「すまないな、ジョージ殿」
「壁は任せろって言っただろ? それにしても、虫のくせに天道を名乗るだけのことはあるな」
 肩が外れてもおかしくないほどの斬撃に、皮肉を挟めずにはいられない。
「奇襲が通じず、グラビティも使わずこの腕力……。かなり厄介だな」
 ローカストの3本の腕が鎌状に変化。
 うち1本を振り上げる。
「笑えねぇ……。サポート頼む」
 ジョージの言葉をイヤホンで聞き取った領は、ビル屋上からライフルのトリガーを押し込む。
「塗料が付いた腕は良く目立つ」
 正確無比な砲撃がローカストの攻撃を逸らす。
 ガルフが雄叫びを上げながらもローカストに急接近。その高鳴きは頂点に君臨する狼の王者の如し。
 全力のタックルでぶつかり、クオンとジョージを逃がすことに成功。
 高身長かつガタイの良いガルフでさえ、見上げる必要があるほどに巨大なローカストだがガルフに恐れはない。
 尊敬するジョージの目の前で弱い自分を見せたくないのだ。
「どっちの刃が強いか勝負!」
 ローカストの鎌を噛みちぎろうと、鋭くも尖ったガルフの犬歯はさらに研ぎ澄まされていく。
 オリジナルグラビティ『牙砕』。
 ガルフが噛みついた刹那、ローカストの鎌が通常の腕に戻り、尚も別形態に変化する。
 アルミニウム生命体を解放することで、超硬質化。
 ガルフの刃で噛み砕くことができないほどの密度だ。
「下がれ!」
 後方からやって来る達也の声にガルフは攻撃を中断し、スイッチ。
 迎撃されるにはまだ時間があると、達也は巨躯な鉄塊剣に雷を纏わせ、ローカストのボディに力いっぱい刃を押し込む。
 刃が貫かなくとも、導電率の上がった身体が災いしたようだ。
 ローカストの身体が硬直。
「ん、今なのクルル!」
 救助を終えたフォンの命令に従い、ボクスドラゴンのクルルがローカストの背中目掛けてカラーボールを投下。
 見事に1つのガラス玉を覆い尽くすほどの塗料が付着する。
 ガルフは目を凝らす。1つのガラス玉を中心にボンヤリと背中の紋様パターンを把握。
 昆虫や小動物の生態に詳しいガルフは、背中の紋様パターンが七ツ星テントウと酷似していることに気づく。
 そして、
「右肩部位のガラス玉だけ色が違う! コギト玉かもしれない!」
 右肩部位のガラス玉のみ、僅かなながらも白色がかった色味。カラーボールが当たらなければ分からないレベルだ。
「今がチャンスです、ね」
「その宝、我によこせ!」
 屋上の2人が一斉に弾丸を放射。
 大切なガラス玉を守るかのように腕を後ろに持っていき、瞬時にアルミニウム鎧化。関節の可動部位までも虫ではないようだ。
 甲高くも幾多の弾丸を浴びさせ、他部位のガラス玉を破壊することに成功。しかしながら狙いのガラス玉ではない。
 未だに大したダメージを与えることができてはいないものの、達也に焦る気持ちはない。
「あのガラス玉、コギト玉で間違いなさそうだな。しかも壊されるのを拒んでいるように見える。行くぞガルフ」
「了解」
 このアドバンテージは活かすべく2人がローカストに迫ると、すぐさまクオンとジョージも地面を蹴り上げる。

●春のみを知らせるため
 硬質化したローカストに音速の拳をジョージは叩き込む。
 瞬く間にアルミニウムの鎧を剥がすことに成功するが、ジョージのダメージもかなり蓄積されている。
「ん、回復は任せるの!」
 目まぐるしく攻守を切り替えるメンバーの治癒をし続けるフォンに、汗を拭う時間はない。
 バスターライフル『エンペリウス』に気力を溜め込んだ赤い弾丸をジョージに撃ち込むと、みるみる傷は塞がっていく。
 ジョージは自身が回復していることに気づかずに拳を振るい続ける。
 余裕がないからだろうか? 自殺行為にすら感じるほどに、攻撃を避けずに戦いを挑んでいる。
 ジョージを助けるべく、領は背中のコギトエルゴスムを狙おうとするが、背中の向きが正反対で大したサポートにならない。
 中々に破壊することができず、領の苛立ちは募るばかり。
「私に任せ、て」
 武器をしまった真白が詠唱を呟く。
 瞬く間に異界の門から大量の魚型死神『カンディル』がやって来る。
「お願、い」
 主人の命に従い、カンディルはローカストの背中を狙うように弧を描きながらもホーミング。
『!』
 攻撃に気づいたローカストは4本の腕で背中をガード。腕に纏わりつくように大量のカンディルが齧り付く。
 ローカストの目の前で大胆にも両腕、両足の力を溜め込むのはクオン。
 連動するかのように大剣と槍は緋のオーラを纏わせていく。
「ローカスト。前がガラ空きだぞ?」
 一斉解放。
 灼熱を帯びる武器が、ローカストの身体へ容赦なく叩きつけられていく。
 嵐のような猛攻に、解除された鎧を再び構築するローカストだが、まともな回復をすることができない。
 秋雨は手のひらの毒々しい色のカプセルを見せびらかしながらも、ローカストに語りかける。
「そうだろうね。どれだけキミにウイルスを投薬したと思ってるんだい?」
 ローカスト周りの地面と壁の計3つの魔法陣が輝き始める。
「今度は避けきれるかな?」
 社交的な秋雨に垣間見える、一瞬の暴力的な表情。
 秋雨のオリジナルグラビティ『落ちし牡丹花の走馬灯』が発動。
 魔法陣から放たれる高密度プラズマがローカストを3方向から穿ち、空気摩擦によって身体が発火し始める。
 炎の連撃は未だに降り止まない。
「焼き尽くせ、カグツチ!」
 右腕に溜め込んだ極大の炎を、達也はローカストに頭上から叩き込む。
『ギギッ……!』
 真っ赤な身体がついに悲鳴を上げ、ローカストは燃え盛り続ける。
 終焉は近いと、領は柵に足を掛けて宣言。
「宝は我が頂戴するぞ!」
 その言葉を実現すべく、巨腕を具現化して発射。
 領のオリジナルグラビティ『征服者ノ巨腕』がローカストのコギトエルゴスム、それどころかローカストの身体を鷲掴み潰していく。
 ……ピキ、ピキ、ピキッ!
 領はしまったと思うが時既に遅し。
 右肩のコギトエルゴスムを粉々に粉砕してしまう。
 ガルフは身の丈に相応しい巨大な斧をローカストの頭に振り下ろす。
「鉄は熱いうちに打つもの」
『ギギっ! ……ギ、ギギ……』
 頭部粉砕。
 ガルフが斧をしまった瞬間、ローカストは崩れ落ちる。

●密かに蠢く
 修復作業も終わり、メンバーと入れ替わりにやって来た回収部隊。
 コギトエルゴスムは破壊してしまったものの、人為的に埋め込まれたか否かを調べるだけでも成果はあると判断したのだ。
「本部までよろしく頼む」
 達也は回収部隊に告げると、ローカストがコンテナに詰め込まれていく一部始終を眺める。
 真っ黒になったローカストから、未だに昇り続ける微かな煙。
 禍津姫への反撃の狼煙を上げているような光景だった。
 運び込みが終了し、トラックは本部を目指し夜の街を後にする。
 コンテナの中で息絶えた死骸と、未だに残るガラス玉。
 蛍光色に塗れたガラス玉が内側でドクン、ドクン、と自光し続ける。

作者:凪木エコ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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