中華街丸ごと食べ歩きツアー

作者:現人

 兵庫県神戸市。
 土曜の昼下がり、中華街と海岸に程近い高級マンションの一室に、古めかしいデザインの巨大鍵を持った赤い頭巾の少女が音もなく現れた。
 この部屋の住人である女子高生は悲鳴を上げる余裕さえなく、巨大鍵で胸を貫かれてしまう。
 しかし胸からは血の一滴も流れないどころか、掠り傷の一つすら負っていない。
 赤頭巾の少女は彼女の胸に刺さったままの鍵をぐるりと回転させる。
 すると女子高生の胸から柔らかな光がふわりと噴出し、空中へ漂っていく。
「私のモザイクは晴れないけれど、貴女の願いは可愛らしいわ」
 赤頭巾の少女はドリームイーターであった。
 輝かしい夢を持っている人間の元へ現れ、その夢を奪い取る現場である。
 胸から光が噴き出るのが止まると、女子高生はそのまま意識を失って床へと倒れ落ちた。
 その代わり、噴出した夢は新たなドリームイーターへと変貌していた。
 おとぎ話に出てくる様なたっぷりのフリルの付いたドレスから覗く四肢と、口とお腹がモザイクに包まれた、お嬢様のぬいぐるみめいた姿。
 彼女の夢は、『みんなと買い食いをしてみたい』と言う他愛ないもの。
 しかし躾の厳しい両親はそんなはしたない真似を許す筈もなく、近所の中華街へ行く事があっても、観光客や修学旅行生が楽しげに買い食いしている光景を横目で見るだけで一度たりともその願いが叶えられた事はない。
 だが今、彼女の夢を受け継いだドリームイーターはベランダへ続く窓を開けると、三十階以上もある高さを恐れもせずに空中へと飛び出していった。

「幸せな夢を持っている人が、ドリームイーターに夢を奪われてしまう事件が起こっているのです」
 可愛らしい内装のヘリオンの中、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)が集まったケルベロス達へそう語りかける。
「ヨルヘン・シューゲイズ(ぐしゃぐしゃ・e20542)さんがドリームイーター事件を警戒してくれたおかげで、新しいドリームイーターの発生がいち早く予知出来たのですよ」
 そう言いながらねむがヨルヘンに視線を向けると、彼は眼鏡を指先で軽く押し上げた。
「買い食いくらい勝手にすればいいが、ドリームイーターがやるとなったら話は別だ。土曜の中華街じゃ観光客も食べ放題だよな、ねむ」
 ヨルヘンの言葉に、ねむは困った様に頷いた。
「はい、夢を奪ったドリームイーターの正体は不明ですが、奪われた夢を元に現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしています。夢を奪われる被害者さんをこれ以上増やさない為に、ドリームイーターを撃破してほしいのです。このドリームイーターを倒す事が出来れば、夢を奪われた女子高生さんも目を覚ますと思うのです」
 続いて今回の事件の説明をする為、事件が起こると予知された付近の地図を広げる。
「場所は神戸市元町駅の南部にある中華街です。被害者の女子高生さんの夢は、『みんなと買い食いをしてみたい』なのですが……今回のドリームイーターは買い食いしている人ごと食べてしまいます。特に土曜日の昼下がりですので、中華街は大変混雑してるのです」
 そう言いながらねむが中華街付近に包み紙にくるまれたキャンディを大量に乗せ、少し離れた場所に銀紙に包まれたチョコを一つ置く。キャンディが観光客、チョコがドリームーイーターを示しているらしい。
「ですが前もって中華街を封鎖したり避難させてしまうと、他の賑やかな場所に行ってしまうので予知が狂ってしまう恐れがすごく高くなるのです。なのでドリームイーターが発見されてから避難を開始して、避難が終わるまでドリームイーターを引き付ける方法を皆さんで考えてほしいのです」
 キャンディやチョコを動かしたりしながらも、ねむはすらすらと状況を説明していく。
「ケルベロスの皆さんは普通の人達と比べて夢の力が大きい様ですので、今回の事件だと皆で買い食いをしていれば一番最初にドリームイーターが皆さんを狙って現れる可能性が高くなるのです。特に、楽しく賑やかにしてればしてるほど効果的だと思うのです」
 そう言い終わったねむが銀紙を剥がしてチョコを口に入れると、キャンディを一つヨルヘンへ手渡した。
「今回のドリームイーターだが、機動性が高いキャスタータイプだ。鍵は持ってないが、代わりにモザイクを飛ばす攻撃が厄介だな。しかも治癒能力まで持ってやがる。めんどくせえ」
 いちごミルク味のキャンディを口に入れても、ヨルヘンの苦み走った表情は緩まない。
 甘いチョコをこくりと飲み込んだねむはキャンディの包み紙を剥がしながら、もう一度ケルベロス達を見やった。
「美味しいものを食べるのはとっても幸せなのです。でもそんな幸せを邪魔するドリームイーターは倒さなきゃいけないのです、皆さん頑張って下さい!」


参加者
ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)
安倍・麻里亞(竟・e03271)
アレーティア・クレイス(万年腹ペコ竜娘・e03934)
ヨルヘン・シューゲイズ(ぐしゃぐしゃ・e20542)
リップ・ビスクドール(暴食・e22116)
アリス・クルス(なんちゃってサキュバス・e22380)
龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829)
御幸・鏡花(鏡花水月・e24888)

■リプレイ

●中華街食べ歩きツアー御一行様
 そろそろ桜も咲く頃合の神戸市南京町、人呼んで中華街。
 土曜日の昼食時と言う大変混雑するそこでも、一際目を引く集団がいた。
 総勢八人、上は十七才、下は六才。少年少女達は中華街の東側に聳える長安門を潜り、雑多で活気ある街並みを歩んでいた。
「まるで学校行事と子守だな、この絵面は」
 その集団の最後尾、ヨルヘン・シューゲイズ(ぐしゃぐしゃ・e20542)は、年端も行かない同行者達の背中を見ながらそう呟いた。
「大人数だと色んな料理がシェア出来ていいわよね、餡まんに豚まんに小籠包……」
 アレーティア・クレイス(万年腹ペコ竜娘・e03934)は、点心が並ぶ屋台に早速吸い寄せられていた。
「ここの屋台だと豚の角煮の中華風バーガーが美味しいんですよ! あ、ボクのおすすめのごま団子もある……でも、デザートだから後で買うべきかな」
 猫耳をぴこぴこ動かしながら、ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)がアレーティアと並んで屋台の品揃えに目を輝かせる。
「いいのいいの、大勢いるんだから手当たり次第買っていきましょ、分け合いっこすれば大丈夫大丈夫♪」
 初めて訪れる中華街にテンションの上がった御幸・鏡花(鏡花水月・e24888)が、屋台に並んでいる品々を一人前ずつ買っていく。
「あ、噂のブラック肉まん! うわあ、本当に真っ黒! 見た目のインパクトすごい!」
 生地にイカスミを練り込み、見た目と風味を両立させた肉まん屋台の前で可愛らしく声を上げるのはアリス・クルス(なんちゃってサキュバス・e22380)。
「思ってたより少し暖かいけど、刀削麺は外せないかな」
 手に持った生地の塊を専用の小刀で次々と削り、沸騰した湯の中へ目にも留まらぬ早業で入れていく職人の腕前に龍・鈴華(龍翔蹴姫・e22829)は足を止め、何杯もまとめて注文する。
 ほんの数歩歩く度に屋台の前で立ち止まって各々好き勝手に料理を買えば、八人でも食べ切れるかどうかと言う量が容易く溜まっていく。
「太らない様には気を付けないといけないケド、そうも言ってられないわよネ……はい、お裾分け」
 安倍・麻里亞(竟・e03271)は豚まんを食べながら、幸せそうに頬を緩ませながら片手に持ったもう一つの豚まんを彼女へと放り投げた。。
「……おぉ? ……あそ、こ……次……あれ……食べる……」
 上半身を拘束服に包まれた姿で、擦れ違う観光客の視線を一手に集めながらも全く気にも留めず、大きく開いた口で豚まんを飲み込むのはリップ・ビスクドール(暴食・e22116)。
「おいお前ら、ちゃんと今回の目的判ってんのか? 俺達はフードファイトしに来た訳じゃないんだぞって……ほらあれ、この中華街に来たからには寄って行けって名店らしいぜ」
 引率役のヨルヘンも仏頂面ながら、真珠大のタピオカがたっぷり入ったタピオカミルクティ、別名パールミルクティの屋台を見つけて指差す。
 全員が思い思いの料理を両手に持ちながら、名物の十三体ある十二支の像が見えないほどの人でごった返す南京町広場の片隅で一先ず足を止めて食事に掛かる事とした。周囲からは威勢の良い呼び込みの声が引っ切り無しに飛ぶ中、若者らしく賑やかにそれぞれの目当ての料理を食べたり食べさせたりする。
「あ、あとアイスも食べたいです!」
 手の使えないリップに次々と点心を食べさせながら、ティクリコティクが続いて小籠包をよそおうとスプーンを入れるが、容器に入っているはずの小籠包は既に無くなっていた。
「あの店の小籠包……噂通りに美味しいですわね。そうそう、アイスならあそこのジェラートがオススメらしいですわ」
 待ち兼ねていた『九人目』の声に、ケルベロス達は一斉に彼女を見た。
 彼女を誘き寄せる為、食べ歩きに興じていたとは言え、予想以上の素早さでケルベロス達へ接近すると同時、目にも留まらぬ早業で小籠包を完食していた。
 必要以上にフリルがごてごてと付いたドレスを着て白く幅の広い帽子を被り、お嬢様と言うイメージをディフォルメしながらも口元と両手両足をモザイクに包んだ姿は、紛れもなく今回の標的であるドリームイーターであった。

●熱烈歓迎、健啖お嬢様
「おいでなすったわね……みんな、打ち合わせ通りに!」
 麻里亞がそう声を張りながら、ごま団子をファミリアロッドのラクの口に放り込みつつ、ヨルヘンと共にその場から離れて避難誘導へ移る。
 ヨルヘンがパニックテレパスで大勢の観光客へ無差別扇動を始める。
「全員、避難を! 俺たちはケルベロスだ、これからお前らの耳に届く少女の声をよく聞いて!」
 通りにいる観光客や店員は勿論、店内で食事を楽しんでいた客達も強烈な精神波を浴びてパニックに陥った。
 そこに間髪入れず、麻里亞の割り込みボイスが彼女の声の届く範囲の人々へと伝わる。
「ミンナ、とにかく広場から離れて! 長安門、西安門、海榮門……一番近くの出口から中華街から逃げて!」
 パニック状態に陥った人々は麻里亞の避難指示に従い、広場から急いで離れていくが、中華街がそれほど広くないとは言え端から端まで届くほど彼女の声量がある訳ではない。
 麻里亞が懸命に声を張り上げながら避難を促しても、中華街からの避難が完了するにはやや時間を要する事となる。
 その間、観光客に被害が出ない様にお嬢様の足止めを担うのは、残った六人のケルベロス。
 ヨルヘンのパニックテレパスで食事を中断させられた観光客が避難した結果、この周囲に残っているのはケルベロス達だけ。結果、お嬢様はケルベロスの周囲を目まぐるしく駆け回り飛び回っているが、その動きは余りにも早かった。
 ビルの壁面をモザイクの手足で駆け回り、全くスピードを緩めずにモザイクの手足や口がカメレオンの舌めいた動きで伸びてくる。
 お嬢様は広範囲の攻撃手段を持ち合わせていない代わり、回避する事を決して許さない俊敏さと的確に急所を狙う攻撃で着実に心を削り、冷静さを失わせ、悪夢を喚起する。
 避難誘導に専念する二人を抜いた六人で戦う上、お嬢様の注意を引く為に手に持った料理を食べ、楽しく会話を交わし続けなければならないと言うハンデも抱えざるを得ない。
「うふふ、こうやって中華街で楽しく食べ歩きするのが『彼女』の夢でしたけれど……貴方達の夢もとても美味しいですわ。褒めてあげても、宜しくてよ」
 例えどれだけの速さを誇っても、ドレスの裾は翻さず。幾許か攻撃が命中していても、口元を覆うモザイクの下の唇は明らかに笑みを象っていた。
「そうですか、それは良かったですね。皆さん、こいつを片付けたら次何食べます? ボク、あの屋台のやつとかいいなーって思うんですけど」
 ティクリコティクは意識を失いそうになるのを懸命に留めながら、食べ歩きを楽しんでいる笑顔を崩さない。
「あーっ! そういえばアレ食べ忘れた! ねっ、後で行こうよー!」
 大根もちを飲み込みながらも明朗に返事をする鈴華のチャイナドレスには所々にモザイクがこびりつき、苦戦の痕を如実に記していた。
「焼小籠包はまだ食べてないもんね、デザートもまだまだ一杯あるし、ね!」
 アリスがドラゴソと共に仲間達の回復に専念し続けているが、お嬢様の猛攻に回復が追い付かなくなり始めている焦りを、幼い顔立ちの下に隠して明るく声を上げる。
「そうですわね、南京町には色々と美味しいものがまだまだあるらしいですし……貴方がたを食べてしまってから、ゆっくりと心行くまで頂いてしまいましょうか」
 どちらかと言えばのんびりした声が聞こえた次の瞬間、お嬢様は圧倒的な素早さでアリスの眼前へと踏み込んでいた。口を覆うモザイクが爆発したように膨れ上がり、アリスへ向けて襲い掛かる。
「可愛い子、美味しく頂きま――」
 その言葉を言い終わる事が出来ず、お嬢様は石畳に二度、三度とぶつかりながら吹き飛ばされた。

●中華街、フードファイト
「人間を食べ放題しようなんざ、下品なんだよお嬢様!」
 お嬢様が寸前までいた空間には、超加速突撃でアームドフォートの重量をお嬢様に叩き付けたヨルヘンが立っていた。
「全くその通りよネ、フリフリのドレスだと体型は隠せるかもしれないケド!」
 突然の衝撃から体勢を整えようとする事さえ許さず、麻里亞の構えるファミリアロッドから放たれる禁縄禁縛呪がお嬢様を捕える。
「シューゲイズさん、安倍さん! 避難は終わったんだね!」
 守勢の戦いを強いられていた鏡花が、表情を綻ばせながら声を掛ける。
「そんなに広くないってのに、どんだけ客が押し寄せてたんだって話だ。思ってたより時間が掛かった」
「遅刻した分はキッチリ取り返すわ!」
 勢揃いしたケルベロス達が武器を構え直すが、路上に転がっているはずのお嬢様の姿がない。
 慌てて周囲に視線をやるケルベロス達の頭上から、彼女の声が降った。
「『彼女』が御両親と中華街に来る事はあっても、食べるのは格式高い店の中だけ」
 あずまやの上に立つお嬢様の手には、ほんの僅かな時間で『周囲の店内』から集めてきた高級料理の皿達が乗っていた。
「北京ダック、干し鮑の姿煮、伊勢海老のチリソース、神戸牛のステーキ。確かに美味だけれど、躾の厳しい御両親と食べる料理は味気無かったのかもしれなくてよ」
 中華街でも圧倒的に豪華な料理を皿ごと吊るし食いで飲み込めば、お嬢様の着ているドレスも、全身の傷も、モザイクが洗い流して癒してしまう。
「その夢はあなたのものじゃ、ない!」
 自らの翼で飛んだ鈴華が上空から見舞う龍閃蹴は、お嬢様の速度を凌駕する勢いで彼女の胸を捕らえる。
「大勢の人の邪魔をして、一人きりで食べて何が楽しいのかな!」
 全身を光の粒子に変えた鏡花が続け様、あずまやから落ち来るお嬢様へ突撃し、回避など許さずに全身を打ち据えて石畳へと倒した。
「そんなに高い料理を食べた貴方は、どんな味がするのかしら……」
「なる、ほど……次は……デウスエクスの……踊り食い……」
 食欲ではデウスエクスのお嬢様にも引けを取らないアレーティアとリップの目が、ぎらりと輝いた。
 既に二人の手から食べ物が無くなって時間が経っている。
 獣めいた二対の視線を受けたお嬢様は裾を翻して立ち上がると、モザイクの下で満面の笑みを浮かべた。
「この私に食欲で張り合おうと! いいですわ、その傲慢さごと平らげて差し上げます!」
 石畳に力強い踏み込みを与え、どちらを先に食おうかと高速移動に入った、瞬間。
 鼠の石像の影から躍り出たティクリコティクが放つ、水面蹴りめいたスターゲイザーがお嬢様の出足を捕えた。
「足元の鼠に気付かなかったですか、お嬢様!」
「なっ……!」
 足を払われ、完全に体勢を崩したお嬢様が見たのは、自らを食らおうとする二人のケルベロス。
「貴方の血も魂も夢も……私が美味しく頂くわ!」
 アレーティアの超硬化した爪牙がドレスごとお嬢様の胴を抉り、まるで焼鶏を切り分ける様に彼女を抉り、食らっていく。
「喰べて……いい……? ……いただきま……す」
 アレーティアに負けるかとばかり、リップも大きく開いた口と捕食器官である『黒い杯』でお嬢様に齧り付き、貪り食い千切っていく。
「く、ぅっ……しくじりましたわ……せめて、牡蠣の中華粥も頂いておきたかったのですけれど……それだけが、心残り……!」
 お嬢様は食われ続けながらも、最後まで優雅な振る舞いを崩さず事無く、事切れた。

●中華街食べ歩きツアー、第二部開始
 ドリームイーターが出現してから三十分後、早くも再開した店や屋台に観光客達が戻ってきていた。
 あちらこちらに戦闘の痕跡がヒールされないまま残っているが、そんな事はお構いなし、とばかりに先程までの喧騒が復活し始めていた。
「ついさっきまでデウスエクスが出てたのにねえ。でも火事とかならなくて良かった」
 頭の上に乗せたドラゴソと一緒に桃饅頭を食べながら、アリスが建物にヒールを掛けて行く。
「そりゃあ春先の書き入れ時だしねー。中華街じゃ珍しくもないって」
「へえ、そう……なのかな? よく判らないけど」
 鈴華と鏡花も中華街の修復を続けながら、漂い始めてきた食欲をそそる匂いにちらちらと視線を向けてしまう。
「まあ、商魂たくましいってのはいい事だろ。お嬢様が言ってたよな、ジェラートが美味しいとか牡蠣の中華粥食いたかったとか。やってるんだったら行ってみようぜ、地元住民のオススメだからな」
 携帯で目当ての店を検索すると、ヨルヘンは仲間達を見やる。
「……行く。食べる」
 ドリームイーターの残骸をひたすら食べ続けていたリップも、ヨルヘンの言葉にすいと立ち上がった。
「お腹減ったわー。私、街の修復が終わったら中華街の食べ歩き出来る物を食べ尽くすわ」
 あちらこちらの屋台からお礼にと手渡された料理を食べ続けながらも、アレーティアの食欲はまだまだ減ずる事を知らないのは明白だった。
 ティクリコティクは杏仁豆腐アイスを舐めながら、うきうきした足取りで手を上げた。
「はいはい! さっき教えてもらったんですけど、ごま団子なら絶対行っとけって店が開いてるのさっき見ました! そこってデザート系が大体美味しいらしいですから、そこも行きましょう!」
「そうね、ラクもお腹空かせちゃってるし。次はお店の食べ歩きに挑む他ないわネ。本場の味を堪能するわ、太らない程度に!」
 麻里亞が新たな決意を固めた頃、おおよその修復が終わる。
 昼も長くなった春の日、少年少女達の食欲を満たすには十分な時間がある。
 平穏と喧騒を取り戻した中華街は、何事も無かった様に大勢の観光客で埋まっていった。

作者:現人 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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