●力吸いし殺人虫
神奈川県足柄下郡、箱根街。
温泉地として有名なその地……芦ノ湖を見下ろす山中で、不敵に微笑むのは『上臈の禍津姫』ネフィリア。
「ふふ……いい景色」
微笑む彼女……その傍らには、一体のローカスト。
カブト虫が巨大化したような姿形……しかし、涎を垂れ流し、呻き声を上げるがのみ。
……そんなローカストに、ネフィリアは。
「最近、どなたもグラビティ・チェインを集める前に、ケルベロスに殺されているようですが……貴方は、上手にやって下さいますよね?」
くすりと微笑んだ彼女に、ローカストはうぐぅぅ、と咆哮を上げて応える。
そしてネフィリアは。
「そうですか。それでは……殺してきて下さいませ」
と指示。
その指示に従い、ローカストは山を下る。
……芦ノ湖の湖畔を観光に来ていた、観光客の一人を、不意を突いて背後から捕獲。
『きゃぁぁ!!』
と悲鳴を上げる彼女……周りにいた観光客達も、悲鳴を上げて逃げていく。
そして……彼女はカブト虫にのし掛かられ……そして、彼女からゆっくりと、グラビティ・チェインを吸収し始めた。
「ケルベロスの皆さん、集まって頂けましたね? それでは、早速ですが説明を始めさせて頂きますね」
と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロス達に一礼すると、早速説明を始める。
「今回、皆様への依頼ですが……最近動きを見せている、女郎蜘蛛型のローカストについての依頼です」
「どうやら、このローカストは知性の低いローカストを地球へと送り込み、グラビティ・チェインの収奪を行う作戦の指揮を執っている様なのです」
「彼女は、配下である知性の低いローカストを放ち、人を襲わせ、グラビティ・チェインを収奪しようとしています。放たれているローカストは知性が低い分、戦闘能力に優れた個体ですので、戦うには注意が必要でしょう」
そしてセリカは、続けて詳細な説明を。
「ローカストは巨大なカブト虫型のローカストです。このローカストは、観光に来ていた女性にのし掛かり、ゆっくりとグラビティ・チェインを吸い取っています」
「なのでまずは、女性からローカストを引き離す事が必要となります。彼女に攻撃が当たらないように注意しながら、ローカストへの攻撃が必要です」
「また、ローカストは彼女から引き離されると、皆さんをターゲットとして、鋭い角の一閃、強力なキック、そして自己回復の三つのグラビティを持っている様です」
「また、知性も無い相手ですので、基本的に前へ前へと進み出て強力な攻撃を掛けてきますので、真っ正面から喰らわない様注意が必要です」
そして、セリカは最後に。
「人々を虐殺し、グラビティ・チェインを奪うというのを赦す訳にはいきません。皆さんの力で、かならずやデウスエクスを倒してきて下さい。宜しくお願いします」
と、皆を送り出すのであった。
参加者 | |
---|---|
双星・雹(氷壺秋月・e00152) |
上月・紫緒(狂愛葬奏・e01167) |
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691) |
雨水・朧(己を知らぬ剣鬼・e15388) |
カロリナ・スター(喫煙所の守護天使・e16815) |
フィア・ルシフェリア(星の記憶と歩む少女・e19823) |
レイン・プラング(解析屋・e23893) |
アーニャ・クロエ(ちいさな輝き・e24974) |
●湖映
神奈川県箱根は芦ノ湖。
箱根の山に望む湖は、清い流れを湛える美しい湖。
そんな湖に、知性無きローカストが現れたという話。
「まったく……カブトムシはナイトのイメージだったのですが……弱者を狙うだなんて幻滅ですね」
「そうだね。まぁ知性の無いローカストとなっては、ある意味ナイトもへったくれも無いんだろうけどね」
カロリナ・スター(喫煙所の守護天使・e16815)に、双星・雹(氷壺秋月・e00152)が肩を竦め、一部苦笑しながら頷く。
そんな二人の言葉の様に、ローカストは芦ノ湖に観光に来ていた一般人達に襲いかかってくると言う。
女性にのし掛り、ゆっくり、じわりと……グラビティ・チェインを吸い取っていく……そんなローカストは、ネフィリアの指示を受けていた。
「しくじるわけにゃ、いかねぇな……」
と、雨水・朧(己を知らぬ剣鬼・e15388)が拳を握りしめると、それにラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)とフィア・ルシフェリア(星の記憶と歩む少女・e19823)
「女性をよく知る人達の為にも、一刻も早く恐怖と苦しみから救い出すんだ」
「そうなの。何としても、掴まった女の人を、助けるの!」
と、二人の言葉に対して。
「ネフィリア……その行方がつかめるまでは、こうして後手に回るしかありませんが……今は、目の前の犠牲者を救う事に集中しましょう」
とレイン・プラング(解析屋・e23893)が頷き、そして上月・紫緒(狂愛葬奏・e01167)とアーニャ・クロエ(ちいさな輝き・e24974)が。
「そうだね。さぁ……一杯一杯、愛しあいましょう♪」
「うん。ティナも一緒に頑張ろうね」
アーニャの言葉に、ウィングキャットのティナはぱたぱた飛びながら、アーニャの肩に乗って、にゃーと鳴く。
そして気合いを入れると共に、ケルベロス達は急ぎ、芦ノ湖湖畔を急いでいくのであった。
●暴虐者
そして芦ノ湖湖畔。
海賊船が往来し、蕩々と水を湛える湖畔は、とても美しい。
……しかし、そんな美しい光景にそぐわない、悲鳴。
『や、やめて、来ないで、来ないでーっ!!』
と女性の悲鳴。
その悲鳴を聞きつけ、ケルベロス達はその場へと急ぐ。
……そこにはローカスト。
観光客である彼女の上に乗っかかり、ジワジワとグラビティ・チェインの吸収していく。
そんなローカストに対峙したケルベロス達は、戦闘態勢を即時取りつつ。
「みなさん。まずは救出を! 慎重に行きますよ!」
アーニャの言葉に頷きつつ、ローカストに接近。
ローカストは、グラビティ・チェインを吸い取りながら、ケルベロス達へ威嚇。
……注意がこちらに向いたのを利用し、早速。
「ふふ……カブトムシみたいなローカスト。おまえの角はなーんのためにあるのかな? 立派な体は飾りかな? 弱虫、泣き虫、いじけ虫? 立派な角はハリボテかな♪」
唄う様に、ローカストへ挑発する紫緒。
更に朧、カロリナ、紫緒が続けて。
「よう虫けら。お前にゃグラビティ・チェインなんて上等すぎんだろ。カブトムシらしくスイカの皮でもかじってろってな」
「そうですそうです。さすがですねカブトムシさん。おいしそうなグラビティです。でも、独り占めするなんてずるいですよ。それ、ボクに下さいよ?」
「そうね。ねぇ……そんな無抵抗な相手じゃなくて、私を愛してよ。そうしたら私も憎んであげるから」
そんな三人の言葉に対し、ローカストは。
『ギィィィ……!!』
と啼き続けるがのみ。
やはり知能を持っていないローカストは……殆ど言葉を解する事も出来ない様である。
そんなローカストの暴虐に、組み敷かれた女性はううう……と最早泣き喚く。
「やっぱり……駄目か」
「そうですね……では、力尽くで引き離すとしましょう」
ラギアに頷くレイン。そして。
「……仕方ねえ。しくじるわけにゃ、いかねえな」
と呟きつつ、朧はスナイパーポジションを纏い。
「……腹出して転がりやがれー!」
効果と共に、無命・六花仙の頭に一撃をぶっ放す。
その一撃により、バランスを崩すローカスト……更にフィアも。
「舞い散る雪のように、一刀にて切り伏せる、なの」
と神槍刀ノ型【零式】で、ローカストを更に、彼女から体を浮かせる。
そして、浮いた体の所に割り込むようにして、レインが背後からタックルを行い、彼女からローカストを一端引き離す。
そのままレインは、彼女を抱きかかえてその場から一端離脱。
追いすがろうとするローカストだが、その間に立ち塞がる雹。
「いいんだよ? そのまま臆病なままでいても。でもその間に、ボクが皆を、強くしちゃうから……キミが手も足も出ないくらいに、ね」
軽く微笑む雹……そして、レインは彼女を攻撃の手が届かない、離れた所まで避難させると。
「いいですか? もう暫くここで耐えて下さい。ヤツを倒してから、迎えに来ます」
と彼女に言い聞かせる。
そして、レインはすぐに仲間達の元へと急ぐ。
その間も残る仲間達は、ローカストの足止めを継続。
「どんなに強そうでも、脆い部分はあるものだ」
と破鎧衝の一閃を叩き込むと、一方朧とフィアは継続し、雷刃突とレゾナンスグリードでローカストの部位を狙い、動きを止める。
そんな仲間達の行動に対し、雹はヒールドローンで仲間達に盾アップを付与し、カロリナもブレイブマインで後衛に壊アップを付与。
一通り強化を及ぼした後、続く紫緒が。
「ふふ……私はアナタを愛し、憎みます。私の愛で、私の憎しみで、アナタを滅ぼします。さようなら♪」
と狂愛葬奏。
と、ケルベロス達の攻撃に、ローカストは反撃。
といっても、狂う儘に鋭い角の攻撃を嗾けるローカストは……攻撃自体は一辺倒。
接近しての攻撃を連続してくるローカストは、正しく狂虫。
そんなローカストの攻撃は雹のミミックと、アーニャ、そしてウィングキャットのティナが仲間達をカバーリング。
清浄の翼の回復を受けつつも、寂寞の調べで破剣を仲間に付与し、強化。
そして、避難させていたレインが合流すると。
「彼女は無事です……さぁ、一気にローカストを倒しましょう」
とレインは頷きながら。
「ターゲット捕捉……解析完了。データリンクします」
とLaplace's demonで、仲間に狙アップを付与する。
そして多種強化されたケルベロス達は、ローカストを完全に包囲。
「良し。皆、一気に仕掛けるぞ!」
とラギアの指示の下、猛攻開始。
防御の手を忘れた様なローカストに、攻撃を立て続けに嗾けることで、体力をガンガンと削る。
……無論ローカストからの攻撃は、カロリナが軸となり、ブレイブマインやサルベイションで回復し、体力は維持。
そして……経過する事十数分。
ローカストの体力は確実に削られており、その動きが段々と鈍り始める。
そして鈍り始めたローカストは……ウォォォ、と叫びながら自己回復。
今迄とは違う動きは、彼が危機的状況であるという事を如実に示す事となる。
そして、その動きの違いを鋭く感じた雹が。
「後、もう少しだよ!」
と仲間達を鼓舞すると共に、ラギアが。
「さぁ、塵も残さず消え去れっ!」
と、騎竜拳で殴りかかる。
その一撃は、ローカストを地面へと叩きつける……そして雹も。
「教えて上げる……力を吸われる痛みが、どういうものか!」
と、吸魔の機翼を使用し攻撃すると、更に紫緒も。
「そうだね。だから……私の愛で壊れないでよ? 壊れたら憎めなくなっちゃうから。もっともっと愛し合おうよ」
と妖艶に微笑みながら、更なる攻撃。
ケルベロス達の連携攻撃が、ローカストの体中を蜂の巣にしていく。
「ほら、痛みを返すぜっ!」
そして、ラギアの幾度目かの二刀斬空閃が、その脚をバッサリ切り落とす。
片足失い、動きが大きく制限されたローカスト……そして。
「ふざけた理由で人の思い出を踏み躙っていいと思うな!」
と、朧の渾身の無命・六花仙がその角を砕き割る……そして。
「これで終わり、なの!」
渾身のブラッディダンシングが決まり……ローカストはその一撃に崩れ去った。
●命塞ぎて
「……ふぅ……」
と、息を吐き、構えを外すカロリナ。
他のケルベロスらも同じく、息を整える。
そして……倒れたローカストに向けてカロリナが。
「主よ、どうかこの憐れな子羊に救いの道を示したまえ……」
と祈りを捧げ、手を合わせる。
他の仲間らも、手を合わせ、冥福を祈る。
……ローカストが、迷わず空へと召される様に願う。そして……祈りを終えた後、朧はそらに振り返り。
「……テメエの思い通りにゃ、させねえよ」
拳を握りしめた朧。
そして……祈りと怒りを覚えながら。
「さて……と、どうするの?」
とフィアが小首をかしげる戸、紫緒は。
「んー……まずは取りあえず、例の女郎蜘蛛型ローカストの手がかりが無いか、ちょっと探してみようかな? ほら、蜘蛛だけに糸で支配していたみたいな? そんな痕跡とかないかな?」
と、調査を提案すると、それに朧も。
「そうだな。もしかしたら、何か見つかるかもしれねえし……手伝うぜ」
と頷く。
その一方、レインはカロリナやアーニャ達と共に、避難させた女の子の所へ。
彼女の怪我をヒールした上で、少女にレインが。
「一人で寂しい思いをしたかもしれません。でも、何かあれば私達が駆けつけます。絶対に、貴女を一人にはしませんから、ね」
と跪き、声を掛ける。
そんなレインの言葉に、あ、ありがとうございます……と、おずおずと頷く彼女。
……そして彼女がの治療も済んで、痕跡調査の仲間達と時間を合せ、彼女を繁華街の所まで送っていく。
そして……。
「さて、と……皆さんせっかくの箱根なんで、温泉にでも行きませんか?」
と、カロリナの提案に、フィアやアーニャが。
「うん、そうね。箱根と言えば温泉処でもありますし……戦いの汗を流すとしましょうか」
「あ、うん……そうだね」
と頷き合い……そしてケルベロス達は、箱根の温泉郷へと向かうのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年3月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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