死者よ静かに眠れ -蝙蝠獣人蘇生工作-

作者:秋津透

 広島県呉市。人通りのない深夜の市街地に、ひどく陽気なのに、ひどく不気味な声が響く。
「さあさあ、我ら『マサクゥルサーカス団』のオンステージだ!」
 声の主……毒々しい蛾の羽を生やした死神『団長』は、芝居がかった仕草で両腕を広げる。すると『体長2mくらいの浮遊する怪魚』……下級死神が三体出現する。
「それでは君達、後は頼んだよ。君達が新入りを連れて来たら、パーティを始めよう!」
 『団長』が告げると、怪魚型の下級死神三体は、青白い光を放ちながら交差点の上を泳ぎ回りはじめる。その姿を見て『団長』は満足げにうなずき、そのまま姿を消す。
 それから間もなく、宙を泳ぐ下級死神の軌跡が、交差点の上に魔法陣のように浮かび上がる。そして、その中心に、尖った耳と、両腕に蝙蝠のような皮膜を持つ、毛深い獣人が現れた。
「キキキキキキキキ!」
 皮膜状の翼を広げ、蝙蝠の獣人……第二次侵略期以前に死亡し、死神によって甦らされたウェアライダーは、甲高く耳障りな叫びをあげた。

「広島県呉市で、蛾のような姿をした死神が出現し、第二次侵略期以前に死亡したウェアライダーをサルベージするという予知がありました」
 ヘリオライダーの高御倉・康が、真剣な表情で告げる。
「残念ですが、今から全力で急行しても、蛾のような姿をした死神は配下の下級死神を三体残して立ち去っていて、捕捉することはできません。また、サルベージそのものを防ぐこともできません。しかし、下級死神がサルベージされたウェアライダーを連れて消え去る前に到達することはできます。至急、奴らの出現ポイントに向かいますので、下級死神とウェアライダーを斃して欲しいのです」
 そう言って、康はプロジェクターに画像を出す。
「出現ポイントはここです。深夜なので周囲に人はおらず、警察に頼んで道路封鎖をしてもらうので、車両などが通りがかることもありません。ただ、相手は神出鬼没の死神なので、あまり時間がかかると、魔空回廊などを使って逃げてしまうかもしれません。また、死神を先に全部斃してしまうと、ウェアライダーは勝手に逃走する可能性があります。何というか、復活するのは蝙蝠のウェアライダーで翼飛行が可能かもしれないので、逃走されると厄介なのではないかと思います」
 なお、復活する蝙蝠のウェアライダーは、知性を失っているので、死神がいようがいまいが、説得などはできません、と、康は告げる。
「このところ、死神の行動が活発になっています。何を企んでいるのかはわかりませんが、彼らに新しい戦力を渡すわけにはいきません。どうか、きっちりと阻止してください」
 よろしくお願いします、と康は頭を下げた。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
片白・芙蓉(兎頂天・e02798)
マグル・コンフィ(地球人のキンダーウィッチ・e03345)
キーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)
天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873)
土岐・枢(フラガラッハ・e12824)

■リプレイ


「死神か……よくよく縁があるらしいな。もう、何回目の相手だかなんざ、覚えてもいないが」
 苦々しいとも、憤っているとも、少し違う。どちらかといえば虚無的な口調で、ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)が呟く。
「俺が死んだときには、どうか寝かせておいてくれよ……叩き起こされて強制労働なんざ、ごめんだからな」
「そう言われてもねぇ。誰を回収するのかは死神(むこう)が決めることでしょうし、叩き起こされるのが嫌なら、まず、死なないようにするしかないんじゃない?」
 こちらも微妙な表情で、メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)が応じる。
(「この前は友だちの宿敵が回収されてたけど、この基準って相変わらずわからないよなぁ……思惑はどうであれ、このまま野放しにはできないんだけどさ」)
「いずれにせよ、広義じゃ同族になるヤツの命を弄ばれるのは、凄まじく不愉快だ」
 吐き捨てるように、天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873)が唸る。彼は雪豹族のウェアライダーで、確かに広義においては、復活回収させられる蝙蝠のウェアライダーと同族になる。
「サーカスだと……戯けた真似を」
「ふ、結局のところはいつものサルベージで戦力増やし、死神も芸がないのぅ。ま、邪魔をしてやるまでじゃがな」
 薄く嗤いながらキーリア・スコティニャ(老害童子・e04853)が嘯き、傍らのミミック『千罠箱』をぽんと叩く。
「それにしても、手下残して組織の頭がとっとと居なくなるなんて、人事やる気あるのかしら!」
 責任感のカケラもないわね、と、片白・芙蓉(兎頂天・e02798)は他のメンバーとはちょっと違う視点で憤慨する。
「フン……ケッタクソ悪ィ真似しやがってよォ。ブッ潰してやるよ、かかってきやがれ!」
 うぃー、ひっく、と喉を鳴らし、伏見・万(万獣の檻・e02075)が喚く。既に相当酔っているようだが、更にスキットルを取り出し、ぐびぐびと中味を煽る。
 そして、正面を窺っていたマグル・コンフィ(地球人のキンダーウィッチ・e03345)が、穏やかな口調で告げる。
「光を確認しました……あれですね」
「命は誰でも一つなんだ。それを…ゲームの駒みたいに扱うなんて」
 許せないよ、と、土岐・枢(フラガラッハ・e12824)が怒りに満ちた口調で言い放ち、交差点で空中を泳ぐ光る怪魚……下級死神を睨み据える。
 そして、その瞬間、戦闘距離に踏み込んだジョージが突進した。
「まずは、小手調べだ」
 物憂げで鈍重にすら見える日常の動作からは想像もできないほど超高速で俊敏に、しかし醒めた表情と口調は日常のまま、ジョージは死神の群れに飛び込み蹴散らす。
 すると、死神に召喚された死者、蝙蝠のウェアライダーが飛び出してきて死神の一体を庇い、代わって攻撃を受ける。
「強制的に叩き起こされたあげくに、盾代わりか。つくづく、損な役回りだな」
 溜息まじりに唸りながら、ジョージは蝙蝠獣人に容赦ない蹴りを入れ、続いてナイフで突こうとしたが、その攻撃を別の死神が遮り、その身にナイフを受ける。
(「……なんだ?」)
 死神どもと獣人は両方とも前衛で同列か、と、ジョージは眉を寄せる。そして、死神の一体と獣人がディフェンダー確定……だが、残りの死神二体は、ディフェンダーなのか、クラッシャーなのか。
(「……もしかして、こいつら全員ディフェンダーか?」)
 だとしたら厄介だな、と、ジョージは苦い表情になる。
 そして、その推測を伝えるより早く、陽斗がゲシュタルトグレイブを振るい、ディフェンダー確定の死神に斬りかかる。すると、無傷の死神が飛び出してきて、その攻撃を受ける。
「む。こいつもディフェンダーか」
 唸る陽斗に、ジョージが告げる。
「ああ、どうやらこいつら、全員ディフェンダー臭いな。誰が誰を庇うやら、殴ってみないと分からないってぇシロモノだ」
 その瞬間、蝙蝠獣人がジョージに襲いかかる。おっと、と、身構えるより先に、マグルが飛び出してきて攻撃を受け止める。
「くっ……!」
 頭へと振り下ろされた獣人の鋭い爪を両腕を重ねて受けたものの、衝撃は流しきれず、マグルの眼鏡にびっと亀裂が走る。
「おい、大丈夫か」
 陽斗が尋ねると、マグルは顔を顰めながらも気丈に応じる。
「大丈夫です。まだまだ、これからですよ」
「そうか」
 うなずいて、陽斗は死神を睨みつける。
「立ち去ったアイツが団長なら、お前らはサーカスの裏方か? 迷惑な野郎共だ」
「キシャーッ!」
 陽斗の言葉がわかるのかどうか、下級死神たちは牙を剥いて耳障りな叫びをあげる。そして庇われた当のジョージは、敢えてマグルの方を見ず、ひどく黯い目で死神を見据える。
(「やめてくれ。俺のことなんぞ庇うんじゃねぇ」)
 思いはしたが言葉には出さず、ジョージはナイフを手に身構える。するといきなり、どん、と派手な爆発が生じ、なぜかマグルの傷が塞がる。どうやらメリルディが、士気上げと治癒の爆発ブレイブマインを使ったらしい。
「ふむ。どれを狙っても、どれが庇って、どれに当たるか分からんなら、とりあえず全部に当てるのが効率的かのぅ」
 ほれ往くぞ小童ども、と言い放ち、キーリアが縛霊手から巨大光弾を撃ち出す。それに対して、死神の一体が他の死神を庇ったようだが、撃墜には至っていない。
 更にミミック『千罠箱』が、触れるとダメージを受ける偽の金貨をざらざらとばら撒く。寄ってきた死神を突き飛ばして、蝙蝠獣人が偽金貨に突っ込み、ダメージを受ける。すると別の死神が、蝙蝠獣人を押しのけ、ダメージを受ける。一応、互いに庇い合っているはずなのだが、偽金貨の奪い合いをしているようにしか見えない。
「まあねえ、庇ってるったって自分の意志でやってるんじゃなしに、そういうポジションに置かれたから自動的に、でしょ? ダメよ、ダメダメ、全然ダメね」
 ばっさり言い捨てると、芙蓉はいきなり必殺技を出す。
「直き正しき眞心をして、言述べの綾をば奏上奉るとかそんな感じよ……!」
 偽書・ホツマツタヱをいい感じに唄い上げ、対象の持つ価値観・記憶の真偽をオリャアってあやふやにする、芙蓉の恐るべき必殺技『片白奏上・浅間浅間秀真政伝紀(カタシロソウジョウ・アサマセンゲンホツマツタエ)』が炸裂。死神たちと獣人が互いにどういう具合に庇ったかはよくわからないが、いい具合に二体の死神が空中をのたうつよう。
(「……でも、下級死神とか知性失った死者に、価値観とか記憶とかトラウマとかって、あるのかしら?」)
 自分が仕掛けた技に、一瞬、芙蓉は疑問を覚えたが、そこはもういい感じに有耶無耶にして、敢えて深く考えないことにしておく。 
 そして、続く万は、最初から見事なまでに何も考えていない。
「うりゃやっちゃとーっ! ひーっく!」
 珍妙な叫びとともに強烈な蹴りの一撃が死神を直撃、と見えた瞬間、蝙蝠獣人が飛び出して盾になる。
「おいこらっ、蝙蝠野郎、てめェに恨みはねェんだからよっ! 邪魔すんじゃねえよっ! 死んでる奴ァ死んでる奴らしく、大人しくしとけやっ、なっ!」
 かはっ、とアルコール臭い息を吐いて、万は蝙蝠獣人へと言い放つ。するとそこへ、下級死神三体がくわっと大口を開いて襲いかかる。
「危ない!」
 万を押しのけるようにして、マグルと『千罠箱』が飛び込み、それぞれ死神の攻撃を受ける。しかし三体目の死神はディフェンダーたちをかいくぐり、万にがっぷりと喰らいつく。
「てめー何しやがる痛ェじゃねーかっ! 殺す! 今すぐブチ殺すっ!」
「凍てつく氷の礫よ、理力をまといて弾丸となれ!」
 喚く万を尻目に、マグルが必殺の『アイスボルト』を唱え、死神の一体に氷弾を叩きつける。しかし蝙蝠獣人が盾になって受け、死神には届かない。
(「まずいな……互いに庇われては、攻撃対象が絞れない」)
 声には出さなかったが、マグルは内心で唸る。すると枢が、大声で叫んだ。
「死者を盾にしても無駄だ! 死神! 今、仕留めてやる!」
 そして枢は、死神の一体に向けて猛然と斬りかかる。必殺の『バーサークチャージ』は、別の死神に割り込み妨害されるが、この際、どれであろうと死神を斬れれば御の字だ、とばかりに枢は我武者羅に鉄塊剣を叩きつける。
「潰れろ!」
「キシャーッ!」
 枢の鉄塊剣に直撃された死神は耳障りな叫びをあげたが、致命傷には至らずにひょろひょろと宙を泳ぎ去ろうとする。
 そこへジョージが、ずいとナイフを突き付ける。
「蘇生を業にしてる奴が死神とは嗤わせる。死の恐怖なんぞ味わったこともないんだろうが」
 ジョージが告げると、鏡面と化したナイフにいったい何を見たのか、死神は狂ったように大きく宙に跳ね上がり、そのまま勢いよく地に墜ちて粉々に砕け散る。
「鏡を見て自滅か。何ともつまらない死に方だな」
 心底うんざりした呟きを漏らすと、ジョージは別の死神へ視線を向ける。
「知ってるよ。貴様らは半人前どころか、三匹つるんでないと、まともに逃げることすらできないんだろう? そして、こいつは死んだ。貴様らも、もう終わりだ」
 淡々と告げるジョージを横目で見やったマグルが、その目の黯さに、思わずわずかに身を縮める。
(「……団長とやらがどれほどのものか知りませんが、少なくともこの魚連中よりも、ジョージさんの方が遥かに死神らしく見えます……」)
 
●死神は地獄へ、死者は冥府へ 
(「とにかく死神一体が潰れて、魔空回廊を開かれる恐れはなくなった。後は、死神が先に全滅してしまって、蝙蝠獣人が飛んで逃げやしないか……でも、それは、その状況になってから対応すればいいことね」)
 敵全員がディフェンダーで庇い合ってるんじゃ、飽和攻撃かけて全部潰すしかないもんね、と、小さく肩をすくめると、メリルディは爆破スイッチを押し、再び勇気をもたらす爆破で前衛の傷を癒やす。
 同時に陽斗がゲシュタルトグレイブを振るい、いったん斬ると見せかけて、不用意に避けた死神に反対方向から蹴りを叩き込む。
「キシャーッ!」
「ふ、どうだ。これなら割り込めまい」
 ほんのちょっとだけドヤ顔になって、陽斗は言い放つ。すると蝙蝠獣人が、甲高い咆哮をあげた。
「キキキキキキキキキキキキキ!」
「……ハウリングか」
 蝙蝠だけあって超音波か、相当の威力だ、と、陽斗は顔を顰めて唸る。そこへキーリアが、悠然と告げる。
「中々やるのぅ。今癒すぞぃ」
 そしてキーリアは、天を仰いで唱える。
「七つの大罪よ、煙へと姿を変え、力を与えよ……おお、七つの大罪宿し煙よ、わしらに力を与えん」
「え? 癒しに大罪の力使うの? それってヤバくない?」
 芙蓉が驚いて尋ねるが、キーリアは低く嗤って応じる。
「なぁに、元が何じゃろうと、効果があればそれでよいのじゃよ」
「……そっかー」
 ま、確かに効果があれば正義よね、と、芙蓉はあっさり納得し、キーリアの秘呪『七煙の大気(セブンエア)』が、前衛のダメージを癒やす。そして『千罠箱』が蝙蝠獣人に飛びつき、がぶりと噛みつく。
「あら、もう庇わないの? 何て薄情なの、このサカナども!」
 腹立たしげに言い放って、芙蓉がシャーマンズカードを高々と掲げる。
「さあ、どいつもこいつもボコボコにするのよ! ククク、頼りにしてるわっ!」
 物騒至極な掛け声とともに召喚されたのは、暴走ロボットのエネルギー体。ガンガオー、と、どっかで聞いたような咆哮をあげながら、死神と蝙蝠獣人に襲いかかる。
「よっしゃあ! 俺も一発くらわしたるぜェ! 死ねや、死神ィ!」
 罵声とともに万が繰り出した蹴りが、炎をまとって死神にぶち当たる。酔いが回って足元がふらついているのに、蹴りは的確に命中させるのだから侮れない。
 そして二体の死神は攻撃に出ず、ふらふらと宙を泳ぎ回って自己ヒールを図る。
「選択としては正しいのかもしれませんが、セコいことこの上ないですね」
 辛辣に言い放ち、マグルがまとっていたケルベロスコートを脱ぎ捨てる。その下は、漆黒に銀刺繍のウィズローブ、青い棒タイを翻しつつ、ライトニングロッドを振るい雷攻撃……と見せかけて、氷の刃でずばっと死神を斬る。
「達人の一撃……躱せまい!」
「同じくっ!」
 偶然ながら、マグルと同じ攻撃アビリティを選んだ枢が、反対側から鉄塊剣を叩きつける。狙ったのは蝙蝠獣人だったが、死神が飛び出して盾になるのを、そのまま力任せに両断する。
「地獄に……墜ちろっ!」
「キシャーッ!」
 氷を帯びた鉄塊剣で真っ二つに叩き斬られた死神が、そのまま粉々に砕け散る。そして、残った蝙蝠獣人と死神一体を見やって、ジョージが鼻で嗤った。
「……フン」
「キシャーッ!」
 狙った相手は蝙蝠獣人だったが、死神が飛びだし、凄まじい声で喚く。ジョージの嘲笑は、ただの笑いではない。相手を激怒させ、ダメージを与え、脳を破裂させる、歴とした必殺の攻撃アビリティ『鼻で笑う(ツマラナサソウニ)』なのだ。
 そして最後の死神は、そこまで相当に損傷を負っていたこともあり、自らの怒りに耐えきれずに粉々に砕け散った。
「……まったく、どうにもつまらない死に方だな」
 呟いて、ジョージは蝙蝠獣人を見やる。
「逃げるか? だが、逃げた先で待っているパーティとやらは、お前のためのものじゃないことだけは確かなんだぜ?」
「キキキキキ……」
 相手の言葉を理解しているとはとても思えないが、かといって翼を広げて逃げる素振りも見せず、蝙蝠獣人は呪縛されたかのようにジョージを見返す。
 そこへメリルディが、ポケットに忍ばせていた金平糖を投げつける。
「これがホントの、冥土の土産! 美味しいんだから遠慮なく食べて、冥土へお帰りなさい!」
「ガッ!」
 自動的に口へ飛び込む金平糖を喉に詰まらせ、蝙蝠獣人は白目を剥く。メリルディの金平糖投げは、遊びでも冗談でもない、ジョージの嘲笑と同じく相手に必殺のダメージを与える攻撃アビリティ『流星飴追尾(スタードロップホーミング)』である。
 そして、崩れ倒れる蝙蝠獣人に、芙蓉が駆け寄る。
「望まぬ反魂、苦しかったでしょう。でも、貴方は立派に闘った。死神が全滅した後まで、立っていたのは貴方よ」
 別人のように優しく穏やかな口調で、芙蓉は二度目の死を迎えようとする蝙蝠獣人を慰め送る。霊媒巫女の家に生れた彼女は、物心付く前から死霊を慰め、次の生へと送ってきたのだ。
 そして間もなく、彼女は仲間たちを振り向いて告げた。
「逝ったわ。せめて安らかであってくれれば、よいのだけれど」
「そうだな」
 魂は巡りゆくものだ。せめて静かに眠れ、弄ばれた者よ、と、陽斗が呟く。
 そしてジョージは、自分でも与り知らない幾らかの羨望を込めて、蝙蝠獣人の遺骸を無言で眺めていた。 

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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