蒼茫のエピタフ

作者:朱乃天

 夜の闇が濃く深まって、人々が寝静まった街を月明かりが煌々と照らし出す。
 漆黒の空間に月の淡い光が混ざり合い、藍色に染まった景色がそこに展開されていた。
 昼間は人々が行き交う交差点も今は誰の人影も見当たらない。静寂に包まれた市街地に、どこからともなく不気味な声が響き渡った。
 人の気配がないはずの十字路の中心に、異形の存在がいつの間にか立っていたのだ。
「さあさあ、我ら『マサクゥルサーカス団』のオンステージだ!」
 背中に蛾の翅を生やしたその男が手にした鞭をしならせると、虚空に青白い光が現れた。光は三つに分かれて宙を漂い始める。それは半透明の深海魚のような姿をしたモノだ。
 その光景は、地上にありながら海の中にいるような。まるで水底に沈んだ都市を泳ぎ回るが如く、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「それでは君達、後は頼んだよ。君達が新入りを連れて来たら、パーティを始めよう!」
 男は歪な笑みを浮かべながらそう言い残し、くるりと踵を返すと闇の中に掻き消えた。
 深海魚は男の命令に従うが如く光の軌跡を描いて魔法陣を形成し、中心部分がより眩しく強い輝きを放つ。
 ――やがて、光の中で何かが蠢いた。
 光に包まれながら産み落とされたのは、巨大な一羽の蒼い鳥だった。
 鳥は新たな生を得た歓喜から翼を羽ばたかせ、鳴き声をあげると旋律を奏でて歌となる。
 歌声に合わせて深海魚達が仲間の誕生を祝福するかのように宙を舞い、青い世界は深淵の中に溶け込んでいった――。

「済まないがお前達に協力を頼みたい。蛾のような姿をした死神が、不穏な動きを見せているようだ」 
 集まったケルベロス達を前に、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が事件の概要を語り始める。
 その死神は、第二次侵略期以前に地球で死亡したデウスエクスをサルベージする作戦の指揮を執っているらしい。
 まるでサーカス団の団長のようなその死神は、配下である魚型の死神を従えて変異強化とサルベージを行い、死んだデウスエクスを死神の勢力に取り込もうと企んでいる。 
「それを阻止する為に、お前達には取り急ぎ現場に向かってもらう」
 ザイフリート王子は、続けて今回戦う敵の情報と現場の状況について説明をする。
「変異強化されたのは、一体のヴァルキュリアだ。蒼い光を纏った巨大な鳥と化している」
 ヴァルキュリアは知性を失っており、後方に位置して襲いかかってくる。
 攻撃手段は、ヴァルキュリア固有のグラビティを使用する。
 また、三体の死神がヴァルキュリアを守るように動き、近付く者に噛みついたり怨念を集めた弾丸を周囲に撒き散らしたりして攻撃をする。
「現場は市街地の中心にある十字路の交差点だ。周辺に人はいないので、心置きなく戦いに集中してくれて大丈夫だ」
 全てを伝え終えた後、ザイフリート王子は込み上げてくる憤りを堪えて言葉を続ける。
「かつての同胞が死神に弄ばれるなど、断じて赦すべきではない……。どうかお前達の手で、迷える魂を安らかに眠らせてくれ」
 お前達ケルベロスなら成し遂げられると、私は信じている――ザイフリート王子は力強い口調で微笑むと、出発に向けて颯爽とヘリオンに乗り込むのだった。


参加者
ベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)
ガルディアン・ガーラウル(ドラゴンガンマン・e00800)
シア・アレクサンドラ(イツワリノウタヒメ・e02607)
イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)
イスクヴァ・ランドグリーズ(楯を壊すもの・e09599)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
皇・ラセン(サンライトブレイズ・e13390)
虹・藍(蒼穹の刃・e14133)

■リプレイ


 幽々たる夜の空に薄くかかった雲の隙間から、淡い光の雫が零れて地上に降り注ぐ。
 無明の闇に覆われた街がその輪郭を露わにし、無機質な建造物群が藍色に染まっていく風景は――まるで水底の中にいるような、幻想的で退廃的な雰囲気すら醸し出していた。
 その時、暗闇を照らす月明かりを背に浴びながら、複数の影が天空に舞い踊る。
「……ヴァルキュリアが仲間になって随分経ったね。味方が同胞と呼ぶ存在を弄ぶ者達を、僕達は許す訳にはいかない」
 イブ・アンナマリア(原罪のギフトリーベ・e02943)は空翔ける風に吹かれつつ、共に活動するようになったヴァルキュリア達やザイフリート王子のことを思い浮かべていた。
 闇夜に溶け込むような漆黒の翼を翻し、上空から戦場となる交差点を見下ろして、葡萄酒色の双眸が討つべき敵の姿を映し出す。
「死神の手によるサルベージ……死者への尊厳というものがありませんのね」
 その禍々しい異形を目にした瞬間、シア・アレクサンドラ(イツワリノウタヒメ・e02607)は死神への燻る怒りを吐き出した。
 しかしすぐに気を取り直し、隣を飛行する虹・藍(蒼穹の刃・e14133)と顔を合わせて小さく頷くと、純白の翼を月に翳すように広げて優雅に地上へ降りていく。
 藍もまた、シアの後に続いて降下する。視界に映る十字路の交差点は巨大な十字架のようにも見えて、その中心部には彼女の翼と同じ蒼い光を放つ怪鳥が座していた。
「綺麗ね……不謹慎だけど。でも駄目よ。惑わされてはあげないの」
 死神の力によって再び現世に黄泉返った戦乙女の魂は、異形の存在に成り果てたとはいえ、生前の気高さを留めているかのような荘厳な美しさを漂わせていた。
「迷い出た貴方にとって私達こそがヴァルキュリア。貴方の二度目の死を看取ってあげるわね」
 降り立った両脚で力強く地面を踏み締めて、藍は目の前の異貌の獣をその青い眼差しで冷たく見据えるのだった。
「死後の安らぎも許されず、馬車馬のように働かされるなんて……。そんな無体な話、あってがいいはずないよ」
 皇・ラセン(サンライトブレイズ・e13390)は込み上げてくる憤りに体を震わせながら、怒りを闘志に変換させて拳を握る。
 憐れな姿に変えられたヴァルキュリアを楽にしてやらなければならない。そして、背後に潜む元締めを消滅させてみせると闘争心を湧き立てた。
「魂を冒涜する行為……そんな事、あってはならない」 
 イスクヴァ・ランドグリーズ(楯を壊すもの・e09599)は冷淡を装い平静を保とうとしているが、苛立ちを必死に押し殺しているのが声色から読み取れた。
 死者の魂を弄ぶ死神の卑劣な行為を絶対に善しとせず、こうした非道な事件を許せず心を痛めていた。
「ヴァルキュリアが静かに眠れるよう、早急に解放してやりたい。皆、宜しく頼む」 
 昂る気持ちを鎮めようと奥歯を噛み締めて堪え、仲間達に決意の言葉をかけながら武器を抜いて身構える。
 イスクヴァの見つめる視線の先には、巨鳥と化したヴァルキュリアと、虚空を海のように揺蕩う深海魚の如き死神達がそこにいた。
 ケルベロスの気配に気付いた死神が濁った眼球で番犬達の姿を捉えると、生ける者の活力を喰らおうと否応無しに襲いかかってきた。


「命は簡単に扱うものではないよね……。遊びのように蘇生させるものでもないよ……」
 真っ先に動いたのはベルフェゴール・ヴァーミリオン(未来への種・e00211)だ。彼は誰よりも先んじてリボルバー銃を抜き、死神の一体に照準を合わせて狙い撃つ。
 自身の名前を冠した銃がベルフェゴールの波動に呼応するかのように唸りを上げて、一直線に放たれたカプセル型の弾丸が死神を確実に撃ち抜いた。
「……何をサルベージしようと厄介なのは変わらん。……忌々しい死神だ、絶対に祟る」
 あらゆるモノを呪い祟ることを行動の根源とする祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が、長い黒髪を振り乱しながら呪いの言霊を投げかける。
「……恨めしく祟る。祟る。祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……呪イ、砕ケ……!」
 イミナの紡ぐ呪言が怨嗟の領域を形成し、死神の加護を打ち破る為の霊力が仲間達に備わっていく。
「死した者まで利用しようなどとなんとも許せん! その様な状況から、ヴァルキュリア殿を解放してやらねばな!」
 普段は陽気な熱血漢のガルディアン・ガーラウル(ドラゴンガンマン・e00800)も、安らかに眠る死者を再び戦わせることに激昂していた。
 愛用のショットガンを粋に回して狙いを絞るが、構えた銃口の先にあるのは死神ではなくビル群だ。それでもガルディアンは構わず撃つと、射出された弾丸はビルの壁に当たるが跳ね返って角度が変わり、死角を突いて死神の背中に命中したのだった。
 得意気に笑うガルディアンの露出した肌に、重く澱んだ空気が絡みついてくる。それは瘴気だ。死神の力がこの地に眠る怨霊を呼び起こし、凝縮された怨念は黒い魔弾となってケルベロス達に叩きつけられた。
 怨霊の塊は着弾すると大きく爆ぜて、四散した怨念がケルベロス達の肉体を蝕んでいく。
 そこへ間髪を入れずに別の死神が、傷を負って消耗した体力を奪い取ろうと牙を剥く。
 死神は目の前に立つイミナに乱雑な歯牙を突き立てる。白装束が紅く滲むほどに深く喰い込んで、彼女の活力を搾取することで生の渇きを潤した。
 更にヴァルキュリアが高らかに啼くと、声が歌となって旋律を奏でる。哀しみに濡れた寂寥たる調べは魂を覚醒させて、喪失されし存在を復元させる力を宿す――はずだった。
 しかし初撃のベルフェゴールの弾丸に内包されたウイルスが死神の体内で繁殖し、死神の回復力を弱めて抑えつけていたのだ。
「戦士たちは、護るべき者達に、何を想い――♪」
 ヴァルキュリアに対抗するかのように、回復役のシアが詠唱を歌声として響かせる。彼女の優しく清らかな声は聴く者への癒しとなって、仲間達に纏わりつく怨念をも打ち消していく。
「淘汰されるべき死神には、愛を以て葬送の歌を」
 イブが憂いを帯びた仕草で哀婉な歌を口ずさみ、手にしたナイフで死神に斬りかかる。飛び散る鮮血が白い柔肌を汚しても、イブは表情一つ変えずにひたすら刃を突き刺した。
「これで楽にしてあげるわよ。貴方の心臓に、楔を――」
 一体ずつ集中攻撃を重ねて確実に倒す。その最初の仕上げをしようと藍が伸ばした指先に重力を込める。そして銃のように指先から弾丸が撃ち出され、死神の腹部を貫いた。
 続けて二発、三発と連射される銃撃の雨が虹色の光彩を纏って死神の躰に次々と浴びせられ、最後の一発となる星銀の楔が心臓に打ち込まれると、死神はついに息絶えた。

「まずは一体。この調子で行こう」
 倒れた死神には見向きもせずに、イスクヴァはすぐに次の獲物に狙いを定める。駆ける両脚が炎を纏って燃え盛り、灼けるほどの烈しい蹴りを死神に叩き込む。
「さあ、塵になる時間だよ」
 抑揚のない機械的な口調でベルフェゴールが呟いた。背中の機械の羽が機関銃のように変形し、銃口が火を噴き弾丸が荒々しく乱れ飛ぶ。広範囲に撒き散らされた銃弾は死神に反撃の隙を与えず力を削いでいく。
「道理を蹴り飛ばし、良心を路傍に転がし、希望に唾を吐くが如く、無慈悲に滅びを与えるが悪の所業」
 弱体化した死神をこの手で葬ろうと、ラセンが両腕の獄炎を燃え上がらせる。悪神たる存在を降ろして魂に憑依させ、炎が黒く変色していく。
「悪を以て善を制し、悪を以て悪を征す――必滅の一撃、その身で知るがいい」
 ラセンは地獄化した拳を握り締め、一気に力を解放して拳撃を放つ。力強い踏み込みは大地を揺るがし大気を震わせて、黒炎を帯びた拳圧の威力は凄まじく、死神は一瞬にして灰燼へと帰してしまった。
 残った最後の死神は地獄の番犬を一人でも死の淵に引き摺り込もうと喰らいかかるが、ここはイスクヴァが二本のグレイブを盾代わりにして死神の牙を受け止めた。
「……蝕影鬼、遠慮なく祟って往くぞ」
 イミナの指示で彼女のビハインドが動く。呪怨の霊力によって死神の動きを束縛したところへ、ガルディアンがショットガンを突きつける。
「この罪は死んで償ってもらうであるよ!」
 トリガーを引いて銃口から発射されたのは、魔力で生成された矢であった。無数の魔法の矢が死神を射抜いて串刺しにする。
「貴様の罪が、枷となろう――」
 イスクヴァが死神への秘めた憎悪を滾らせて、激しい殺意を込めて渾身の力でグレイブを薙いだ。鋭い斬撃は衝撃波となって、風を薙ぐ音が喚き叫ぶように死を告げる。次の瞬間、死神の胴体は二つに両断されて地に伏せ堕ちた。
 三体の死神はケルベロスの手によって全て死滅した。イスクヴァの右目の炎に映るのは、冥府に灯る蒼の光を纏ったヴァルキュリアただ一体のみだ。


 ヴァルキュリアの全身に昏く冷たいオーラが宿る。背徳の翼を羽ばたかせ、翅は氷の矢となり凍てつく蒼茫がケルベロス達を襲う。 
「その魂に救いの手を――如何なる困難も、戦士たちの熱き心は決して屈しない……!」
 浸食してくる凍気の波動に抵抗すべく、シアがすかさず流星瞬くギターを掻き鳴らし、勇壮なるメロディーで仲間の闘志を奮い立たせる。
「最後は安らかな眠りに就かせてあげること……それがせめてもの情けだね……」
 今は仲間となったヴァルキュリア達、そのかつての同胞に対する思いを込めて。ベルフェゴールがマスケット銃から放った重力の光弾が、蒼き巨鳥の力の根源たる冷気を吸い寄せ奪い取っていく。
「……月で蝕むように斬り結ぶ」
 戦場を煌々と照らす月光に反射して、刀が閃く。イミナが繰り出した一太刀は、円を描いてヴァルキュリアを斬り裂いて、刃の軌跡を赤い血線で染め上げた。
 ケルベロス達の畳み掛けるような猛攻にヴァルキュリアが啼き声を上げる。その姿は痛みに苦悶するようであり、犯した罪の告解をするようでもあった。
「辛いよね、もう終わりたいよね? 今度こそ楽にするよ……もう、苦しまない為にもね」
 もがき苦しむヴァルキュリアにラセンは諭すように語り始める。戦乙女を拘束する檻から救い出す為、ガトリングガンを連射して悼みの雨の如く浴びせ続ける。
 死神なんてものは……跡形もなくスリ潰シテヤル――。その呟きは誰に言うのでもなく、ラセン自身の決意を認識させる内なる声だった。彼女の心の奥深くには、死神に対する怨讐の念が黒く渦巻いていた。
「貴方にとってだって、死を冒涜するようなこんなやり方は許せないでしょう。だったら、抗ってみない?」
 ヴァルキュリアに言葉をかける藍だが、目の前の蒼い鳥にはもう理性も知性もないことくらい十分承知している。それでも、声をかけずにはいられなかった。
 突如、巨大な冷蒼の光が藍を覆い尽くした。暴走したヴァルキュリアの力が荒れ狂い、全てを蹂躙しようと突撃を仕掛けてきたのだ。
「……やっぱり無理か。何だか切ないね」
 結論は初めから分かっていた。だがこれでもう未練はない。藍はナイフを逆手に持って迫り来る光の鳥を迎え撃ち、罪の意識と共に消えない心の傷をヴァルキュリアに斬り刻んだ。
「もう十分だろう。これで決着をつけさせてもらう」
 これ以上、傷付いていくヴァルキュリアを見るのが耐え難い。イスクヴァはこの戦いに早く終焉を齎そうと、火力を集中させて攻め立てる。二本のグレイブから高速の突きを連打して、ヴァルキュリアを一気に追い詰める。
「後は任せるであるよ! ガルド流散弾術【集】、これぞ奥義が一!」
 ガルディアンが銃に込めた散弾状のエネルギーを一点に集束させて、威力を増幅させた銃弾を祈りを捧げるように撃ち込んだ。
 蒼い翼が緋色に染まり、仮初めの肉体が朽ち果てようとする。喘ぐような力無き啼き声は、滅びの刻の訪れを告げていた。
「飛ぶ鳥を落とすのは忍びないけれど、地に伏して聴くといい」
 イブが物憂げな瞳で瀕死のヴァルキュリアを見つめ、毒を宿した唇で呟きながら、淘汰され逝く者への手向けに天啓の詩が紡がれる。
「Erue a framea animam meam et de manu canis unicam meam. Salva me――」
 透き通った旋律は死神に穢されし魂を浄化させ、ヴァルキュリアを咎の枷から解き放つ。
 存るべきモノを在るべき場所へ――示し導くこと、其れが彼女の『Raison d'etre』。
 罪禍の翼が散って翅が宙に舞い、死を灯す蒼い光は霧のように消え去って――やがて崩壊の調べが止むと同時に、戦場は静謐な空気に包まれた。

 戦いを終えて平穏を取り戻したケルベロス達。ヴァルキュリアの魂が二度と死神に囚われないように、静かに冥福を祈っていた。
 ラセンは瞼を閉じて黙祷する。一つの事件は解決したが、これで終わったわけではない。命を弄ぶ存在は全て葬る――目を開き、失った両腕を眺めながらラセンは心に固く誓った。
「今度はちゃんと生まれ変わって地上に戻ってくると良いわ」
 命が廻り繰り返されるなら、平和な世界で戦いのない日常を送れるようにと藍は願った。
「眠りを妨げられ、さぞ辛かったろう。ゆっくりと休んでくれ」
 鎮魂の祈りを捧げるイスクヴァの脳裏に思い浮かんだのは、かつての親友の面影だった。刹那、イスクヴァの表情が険しく変わる。歯痒く晴れない気持ちを抱えつつ、祈り終えると共に戦いを乗り越えた仲間達を労った。
 ガルディアンがふと自分の足元を見ると、蒼い光を放つ一枚の翅が落ちていた。ガルディアンはその翅を手に取って、頭の羽根飾りにすることで死者の魂を祀るのだった。
「もう操られなくて済みますの。どうか安らかに……」
 シアが慈しみの言葉を囁いて、ヴァルキュリアへの想いを込めて鎮魂歌を唄い奏でる。
 吹き抜ける夜の風がシアの髪をそっと撫でると、金色の髪に咲くピンクのカンパニュラの鐘が、シアの歌声に合わせて微かに揺れる。
 十字路の墓標に捧げる弔いの曲。悠久の安寧を祈る少女の優しくも切ない歌声が、一陣の風に乗って魂の眠る空に響き渡った。

作者:朱乃天 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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