●その闇は突然に
「おめでとう」
静まり返った倉庫。持ち込まれたソファーにどっしりと腰を下ろした巨躯の不良にシャイターン――シルベスタは微かな笑みを浮かべた。
「君は進化の為の淘汰を耐え抜き、生き残る事が出来た。その栄誉をたたえ、この種を与えよう」
「種……?」
シルベスタの言葉に不良が疑問を投げかける。シルベスタは隣にいたユグドラシルガードモデルラタトスクから種を受け取ると、不良にその種を見せた。
「この種こそ、攻性植物を超えアスガルド神に至る、楽園樹『オーズ』の種なのだ」
そう説明すると、シルベスタは不良の掌にオーズの種を載せる。
「おおおおお!」
握りこんだ不良の手の内、オーズの種から放出される凄まじい力に彼は歓喜に震えた。
「これは……これはぁぁぁ、なんという圧倒的なパワーだ!」
溢れ出たパワーアップの余波に持ち込まれた調度品が植物的な何かに変貌していく。
「わはははは、わはははははは!」
漲る力に笑いを抑えることの出来ない不良の奇声が倉庫に響く。
シルベスタとユグドラシルガードモデルラタトスク、宿敵2人の姿はすでにその場からは消えて。
●ブリーフィングルームにて
「ケルベロスの皆さん。天瀬・月乃です」
集まったケルベロスに対し、 天瀬・月乃(レプリカントのヘリオライダー・en0148)がぺこりと頭を下げた。
「かすみがうらで発生している攻性植物の事件と、人馬宮ガイセリウムで発見された『楽園樹オーズ』との関連について調査していた白神・楓(魔術狩猟者・e01132)さんから緊急の報告がありました」
淡々とした口調で説明する月乃。
「かすみがうらの攻性植物事件の裏には、楽園樹オーズの種を利用するシャイターンの暗躍があったらしく、ケルベロスの介入や攻性植物同士の抗争事件などを生き抜いた不良達に、より強力なオーズの種を与えたようです。
かすみがうら市街で一斉に事件が起き、オーズの種を与えられた攻性植物達を中心に、かすみがうら市の市街地は密林のような街に変貌し始めています。周囲の市民達は植物に巻きつかれてグラビティ・チェインを吸い取られている状況です」
このまま放置すれば、全てのグラビティ・チェインを吸い取られた市民は干からびて死亡し、大量のグラビティ・チェインを得たデウスエクスは新たな力を手に入れることになるだろう。そんなことは断固阻止なければならない。
「皆さんはかすみがうらに向かって、オーズの種を手に入れた攻性植物を撃破してください」
そう説明すると月乃は、敵の情報を表示した。
「敵は強力な攻性植物一体のみとなります」
表示されたのは体長3m程と表記された樹木で形作られたゴリラのような姿をしていた。
「ゴリラなのは元の不良の外見的特徴の影響かもしれませんが」
一言付けおいて、月乃が説明を続ける。
「グラビティは蔓を伸ばしてくる攻撃に加え、バトルガントレットに似た攻撃を繰り出してきます。周囲の建物が植物化していることから、奇襲に対する警戒も必要です」
それから、と彼女は付け足す。
「周囲で倒れている市民は道端や建物の中など合わせて約200名程度です。市民にとりついている植物を引き離して始末すれば救助可能ですが、その場合、攻性植物にその事実が伝わることになります。そのため、救助を行った時点で気付かれないように潜入して奇襲といった作戦は行えなくなります」
救助に時間をかけすぎたり、救助にばかり気を取られるのは危険だ。相手側の奇襲も考えなければならない。
「攻性植物を撃破できれば、市民を捕まえている植物も消えるはずなので、救助は行わなくても支障はありません。その上で……どういう作戦行動を取るかは、皆さんにお任せします」
現場での作戦はケルベロス達に任された。
「白神さんのおかげで最悪の事態になる前に察知できたのは不幸中の幸いです。敵がかすみがうらを完全に植物化してしまう前に、なんとか撃破してください」
よろしくお願いします、と月乃は最後にもう一度ぺこりと頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
叢雲・蓮(無常迅速・e00144) |
葛葉・影二(暗闇之忍銀狐・e02830) |
リコリス・セレスティア(凍月花・e03248) |
五里・抜刀(星の騎士・e04529) |
立花・吹雪(雷切・e13677) |
霧崎・天音(寡黙なる烈火のレプリカント・e18738) |
ドラーオ・ワシカナ(孫バカ爺・e19926) |
リシアンサス・タングスナイト(追加装甲盛り合わせ・e22471) |
●
「まさか、これほどのものとはのう……」
飛行しながら、イシコロエフェクトを発動したドラーオ・ワシカナ(孫バカ爺・e19926)は眼下に広がる光景に息を吐いた。生い茂った木々が市街地を飲み込んでいる。
「ひどいのう」
ドラーオは手にした望遠鏡を覗き込み、さらに先を見渡した。この様子では上空から空き地や仲間に近づく物体を発見することは難しいだろう。だが、植物の繁殖状況は上空から丸見えだ。それを確認し、彼は通信機を手に取った。
「ええ、了解しました」
ドラーオからの通信で植物が最も繁殖している位置の情報を得た立花・吹雪(雷切・e13677)はリストウォッチのGPS機能で現在地と目標の位置を確認した。攻性植物を中心に街が変貌し始めているというのなら、植物が最も繁殖している場所にターゲットが潜んでいる可能性が高い。
「悪い植物ゴリラをやっつけて、皆を助けるの」
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)が張り切って拳を握る。その手にウォンテッドを発動させて、手配書から相手の位置を探った。
「こういうの、デッドオアアライブって言うのだ、テレビで見たのだよ」
ウォンテッドの効果に子供心をくすぐられたのか、蓮が瞳を輝かせて手配書を眺める。
「よく出来てますね……」
その手配書を横から眺めながら、五里・抜刀(星の騎士・e04529)は感心したように顎をさすった。これならば高い精度で相手の位置を把握できる。
「それでは私達も行きましょう。レオ太」
黒い柴犬風のオルトロス――レオ太に声をかけるとレオ太は抜刀に擦り寄ってきた。
「動く気配と耳慣れない音に注意しながら進みましょう」
植物だらけの街では目視は効きづらい。そういう意味でもレオ太の存在は心強かった。
「市街地が樹木で覆われてしまうとは……オーズの種の影響力は侮れません。厳しい戦いが予想されますが助けを求める人達のためにも負けられません」
通信機を通して吹雪の声が仲間達に伝わる。
「皆さん参りましょう」
吹雪は通信を終えると蓮と抜刀と視線を交わし、一つ頷き合った。
「了解……」
アイズフォンで通信を受け取った霧崎・天音(寡黙なる烈火のレプリカント・e18738)は短く応じると、視線を目の前の密林に投げかけた。無表情で眺めるその先に、元は公園だった場所が写る。中には攻性植物の虜囚となった一般人達が横たわっていた。動く様子はない、が情報通りなら彼らはまだ生きている筈だ。
「こんなことをする人は……滅ぼさないといけない……」
天音は呟くと視線を進行方向へ戻した。作戦として、ケルベロス達は道中の救助を行わず、奇襲を成功させることを念頭に行動している。それが一般人を救い出すことにもなる、と。
天音が隠密気流を発動させ、エアシューズで足音を立てないように移動する。前方で警戒しながら進んでいたリコリス・セレスティア(凍月花・e03248)と目が合った。
「出来れば一般人の方々だけではなく、相手の男性も救いたいですが……難しい、のでしょうね」
考えてみれば今回のターゲットも素行が悪いとはいえ、元は一般人だ。運悪くデウスエクスの影響を受けてしまったと思えば、攻性植物化してしまった敵にも同情の余地はあるかもしれない。
リコリスの憂いを帯びた瞳を天音がきょとんとした表情で見返す。リコリスの想いが伝わらなかったわけではない。
「でも……護らなければならない……敵を倒して」
「そうですね」
天音の言葉にリコリスが頷く。どんな理由があろうと、敵が手にしてしまった力を認めるわけにはいかない。そして、その力に囚われてしまった人々を救い出さねば。
2人が視線を進行方向へ向けると、やや先行していた葛葉・影二(暗闇之忍銀狐・e02830)がハンドサインで2人に追い付いてくるように合図した。影二が螺旋隠れを展開しながら、物陰に潜み、周囲を注意深く警戒する。進むたび、視界に囚われた一般人が映るが、影二は感情を表に出すことなく、周辺の情報を冷静に分析していく。
『何だか、大変なことになってるであります』
無線通信に入ってきたリシアンサス・タングスナイト(追加装甲盛り合わせ・e22471)の声に影二が視線をやや離れたところで並行している彼女の方へ向けた。ボクスドラゴンのレーヴィアと共に注意深く前進していたリシアンサスが進行方向を指差す。
『いま、チラッとゴリラっぽいのを見たであります。ですが、その近くに倒れてる人影のようなものも見えるであります』
植物が生い茂っている状態で、正確な位置を把握するのは難しい。動物変身で狐の姿になったリシアンサスが、より慎重に距離を詰めていく。そこに離れて索敵していた蓮と吹雪、抜刀が加わる。レオ太とレーヴィアが匍匐前進するかのように身を屈めてリシアンサスに追従した。
木面のゴリラ、その巨体が少し開けた場所の中央を陣取っている。
「おおお……」
手配書と木面を見比べて、蓮が感動に目を輝かせた。瓜二つの顔がそこにある。
「ドラーオさん」
『こちらでも、なんとか確認できとるよ』
吹雪の呼びかけに、上空から索敵を続けていたドラーオが即答する。背の高い木々の隙間から空が少し見えていた。全員がドラーオからの報告を頭に叩き込み、慎重に奇襲できる位置まで近づいていく。
影二が通信機を口に当てた。
「ドラーオ、こちらからでは気付かれずに接近できる距離に限りがある。頼めるか?」
影二の言葉に明るい声が返ってくる。
『まかせなさい』
ドラーオの返事を聞くなり、ケルベロス達は奇襲の体勢を整えた。
●
迷彩柄のポンチョが宙を駆ける。
「いただきじゃ!」
「なんだ!?」
奇襲の合図代わりにドラーオが叫び、木面ゴリラを頭上から強襲する。まったく警戒していなかった木面は慌てて頭上を見上げた。
「今です!」
抜刀が叫ぶと同時、身構えたケルベロス達が一斉に飛び出す。いち早く飛び込んだドラーオが殲剣の理を歌い上げ、木面の注意を引いた。
「その力は危険な物、今すぐに手放してください……!」
遠間から、リコリスの放った時空凍結弾が敵を直撃して凍りつかせると、間髪入れず吹雪が飛び込んだ。
「まずはその足、止めさせて頂きます!」
力の乗ったスターゲイザーで横面を蹴り飛ばし、木面がたたらを踏む。蹴った勢いで後方へ飛び退く吹雪。その軌跡をなぞる様に天音がさらに飛び込んだ。
「追撃します……」
彼女の脳裏にダモクレスの時の自分の姿が思い浮かぶ。敵に向けて、常に感じる静かな怒り。その怒りを乗せ、寸分違わぬ場所をさらにスターゲイザーで蹴り抜くと、耐え切れずに敵が膝を着いた。
「人に害を為すならば容赦はせぬ」
「ガンガン攻めるのだよ!」
一連の攻撃の死角をついて影二と蓮が疾走する。影二が【御人守】をかざし、すり抜け様に稲妻突きを放ち、後を追って懐に飛び込んだ蓮が居合いから雷刃突で敵を穿つ。
「お、おのれ……」
体勢を崩し、呻く木面。その間に抜刀は自身の体勢を磐石のものとするべく、空間に漂う祈りを集める。
「皆さんの交通安全を願う気持ちのお裾分け、いただきます!」
交通安全祈願玉を己の体に叩き込み、攻撃の手を託されたレオ太がパイロキネシスで睨んだ敵を燃え上がらせた。
「負けていられないのであります。レーヴィア!」
戦場を駆けながら動物変身を解いたリシアンサスが破鎧衝を木面の肩に叩き込む。
「ぐうっ!」
肩を押さえた敵の表情が歪んだ。さらに主と連携したレーヴィアのボクスブレスがケルベロス達の奇襲の痕をさらに押し広げる。
「貴様ら、ぶっ殺してやる!」
完全に後手に回った木面が怒りに震えながら吠えた。
「リシアンサスさん……」
「了解、救出であります」
天音の呼びかけに、奇襲を仕掛けた勢いのままリシアンサスが走り出す。ドラーオの情報で、自分の見た人影が攻性植物に捕らえられた一般人であることは分かっていた。場所は広場の端とはいえ戦場。救出できるのなら放っておくわけには行かない。
「子供……」
運悪く通りかかったのだろう。幼い子供が4人、固まって倒れていた。
「天音様、下がるであります!」
リシアンサスが獣撃拳で子供に纏わりつく植物を引き裂く。2人は直ぐに子供達を両脇に抱え、物陰へと避難させに動いた。
「お、俺の獲物!」
己の領域と定めた場所で勝手を振舞う天音とリシアンサスに木面が動き出そうとする。その前をドラーオが遮った。
「まぁまぁ、そう慌てなさんな。これから爺のワンマンライブの始まりじゃ!」
迷彩ポンチョに手をかけると一気に脱ぎ捨てる。現れたのはキラキラと煌くコート。木々の隙間から零れた光がまるでスポットライトの如く、ドラーオを照らし出した。
「その聲歌うは輝く未来! あの世に行く刹那の合間。そのでか耳かっぽじってよーく聞いて逝って下されっ!」
「お前が先に逝け! ジジィ!」
木面が怒りに任せてその巨腕を振り上げる。見た目通りの重い一撃がドラーオを殴り飛ばした。
「ドラーオ様!」
リコリスが即座に護殻装殻術でドラーオを回復させる。その間に抜刀が距離を詰めた。
「悪いが押し込ませてもらうぞ!」
仲間が傷つき、スイッチの入った抜刀が選定の剣(岩付き)で木面を押して、星天十字撃で切り裂く。上体の起きたところへ吹雪が正面から飛び込んだ。
「攻性植物の力を自ら受け入れ、人であることを捨ててしまったか……これ以上悲しみを生み出させないためにも終わらせましょう」
放たれた絶空斬が木面の傷痕を斬り広げ、動きを鈍らせる。さらに蓮の斬霊斬が脇を切り裂いた。
「悪い植物ゴリラはやっつけちゃうのです!」
「おのれ……」
ケルベロスの猛攻に木面が呻く。
「人を捨て、力に溺れ、果てに何を望むか」
螺旋の力を掌に集め、懐深く潜り込んだ影二が螺旋掌を木面の体の中心に叩き込んだ。
●
救助に回った天音とリシアンサスも戦線に復帰すると、ケルベロス達の攻撃が厚みを増す。奇襲から流れは完全にケルベロス達が支配していた。
「ぐおお!」
動き出す蓮を死角から引きずり出すような軌道を描いて、木面の蔓触手が襲い掛かる。
「させるか!」
間に飛び込んだ抜刀が体をぶつける様にその一撃を受け止めた。
(「一撃一撃が重いですね……」)
仲間の傷を護殻装殻術で癒すリコリスは前衛に蓄積されていくダメージを感じ取っていた。このまま押し切れれば何も言うことはない。そろそろ逃走防止の為に包囲を固めようかと思った矢先、それは起こった。
「クソガアアア!」
連携して攻撃を繰り返すケルベロスを振り払った木面が高々と拳を天に突き上げる。
「オーズの種よ、我に力を!」
「なんです!?」
距離を取りながら、吹雪が顔を上げた。オーズの種から凄まじいパワーが溢れ出す。そのグラビティの流れを感じ取って、影二は目を細めた。
「捕らえた一般人からグラビティを……」
グラビティを吸収する木面の傷が瞬く間に癒えていく。
「勝負はこれからだ!」
笑みを浮かべた木面が飛び上がった。
「危ない!」
危険を感じ取ったドラーオが叫ぶ。両腕を振り上げた木面が拳を叩きつけて振動波を炸裂させ、ケルベロス達の前衛を巻き込んだ。
「皆様!」
「回復であります!」
リコリスとリシアンサスがほぼ同時に前衛を癒す。
「まだまだ!」
「爺のライブはこっからが佳境ですぞ!」
抜刀とドラーオが傷ついた体でシャウトすると、脇を抜けて天音が飛び込んだ。
「私達は負けない……」
振り払われる巨腕を飛び越え、スパイラルアームを叩き込む。天音の動きに釣られた木面の隙を蓮は見逃さなかった。
「何度でもやっつけちゃうのです!」
死角から飛び込んだ蓮の雷刃突、一閃。木面の癒えた体に新たな傷を刻み込む。
「その凶行、赦すわけにはいかぬ」
静かに告げる影二の矢継ぎ早に放った毒手裏剣が木面を穿った。
「こ、この!」
勢いを弱めないケルベロス達を木面が睨みつける。その視線を真正面から吹雪が睨み返した。
「デウスエクスよ! 我らの意地……侮ってくれるなよ!」
守ると誓った、決して砕かれぬその意地を刃とし、凛とした声で魂の赴くままに歌い上げる吹雪の守護者の誇りは確実に木面を怯ませた。
●
前衛の体力はもう限界だ。
「レオ太!」
影二を狙った木面の指天殺をレオ太が庇い、限界を迎えて消滅する。
「ここで仕留めます」
低い姿勢で飛び込んだ吹雪が絶空斬で斬り上げた。開いた傷口に呻いた木面をドラーオがさらに追撃する。
「名残惜しいが閉幕とするかの!」
ドラーオが蒸気龍の祭典を歌うと蒸気が一気に木面を包み込んだ。その蒸気の龍に紛れて飛び込んだ蓮がすれ違い様、絶空斬で斬りつける。
「リコリス姉!」
一瞬の気を引いた蓮が叫ぶ。
「せめて、安らかに……!」
リコリスが熾炎業炎砲を放ち、木面の体から火の手が上がった。
「行くであります! レーヴィア!」
リシアンサスの呼びかけに一声鳴いて、レーヴィアのボクスタックルが木面の脇に直撃する。その隙を逃さず、リシアンサスが飛び込んだ。
「どんな大きな力を手に入れても、力に溺れたら何にもならないでありますよ」
全身に光のグラビティを纏ったリシアンサスが舞う。
「スターバースト・ライジング!」
流星群の如き光の剣閃が幾重にも木面を切り裂いた。
「俺は強くなったんだ! こんなところで!」
もがき苦しむ木面が拳を振り上げ、リシアンサスに叩き落す。が、
「この程度で!」
割って入った抜刀が真正面から木面の巨腕を受け止めた。
「我が騎士道精神、砕けると思うなよ!」
体力の限界を超えて、抜刀が木面の拳を弾き飛ばす。体勢を崩した敵に天音が駆けた。
「そんなものは強さなんかじゃない……そんなものに頼った時点で『負けた』んだ……」
「ちくしょう!」
精神的に圧倒された木面が歯噛みする。
「私は、その力を滅ぼす……噛み裂け……地獄の刃……!」
地獄化した右足の炎を限界まで高め、天音が跳躍した。右足を直に叩きつけて一気に切り裂く。
「おおお!」
木面が暴れ回る。その背面、死角から舞い降りた影二の掌が木面の首を捉えた。同時に敵の体内に火焔の螺旋を送り込む。
「五体滅却!」
叫ぶと同時、内部から爆発した木面はその場に崩れ落ちた。
「終わった……?」
急速に枯れていく木面の体に違和感を覚えつつ、抜刀が覗き込む。その時、突如光り輝いたオーズの種が出現し、瞬く間に飛び去った。いきなりの出来事に誰も動けず、その行方を視線で追う。
「謎が残ったのであります」
リシアンサスがポツリと呟く。が、ひとまず戦いはケルベロス達の勝利で幕を閉じた。
「治療しましょう。囚われた方の救護もしなければなりませんし……」
リコリスの提案に一同頷く。応急手当を済ませたケルベロス達は座り込みたい程の傷と疲労感を覚えながらもかすみがうらの地を踏みしめ、その足で一般人の救護へと向かった。
作者:綾河司 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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