かすみがうら事変~湧き出す力を与える種

作者:なちゅい

●楽園樹オーズの実
 茨城県かすみがうら市。
 路地裏の不良の溜まり場へと、現れる物陰。にやにやと笑いながら近づくそいつは、拍手しながら不良へ語りかける。
 だが、不良はすでに人の形をしてはいない。彼らは何らかの手段によって、すでに攻性植物となり果てていた。
「おめでとう。君は、進化の為の淘汰を耐え抜き、生き残る事が出来た」
 そう1人の不良に告げているのは、シルべスタという名のシャイターンの男。そいつはさらに不良へと語る。
「その栄誉を称え、この種を与えよう。この種こそ、攻性植物を超えアスガルド神に至る、楽園樹『オーズ』の種なのだ」
 シルべスタは、隣にいた、緑色のリスのような攻性植物……ユグドラシルガードモデルラタトスクが持っていたオーズの種を、不良のリーダー格の男へと渡す。
「なんだこれ、やべぇぞ……!」
 オーズの種を受け取った不良は、ものすごい力を放ち始める。
「ひ、ひひひ、力が、力が湧き出て、止まんねぇぇぇぇっ!!」
 そいつが叫ぶと、強大な力が放たれて。周囲の建物が破壊されてしまうが、不良を中心として植物的な見た目の何かに変化していく。さらにその不良の力で建物はすぐに破壊されるが、またもすぐに修復する。
 そんな不良の姿を見届けたシルべスタは満足気な表情をし、ユグドラシルガードモデルラタトスクと共にその場から去っていくのである……。
 
 ヘリポートへと集まっていたケルベロス達。
「皆、来てくれてありがとう」
 リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)は彼らへ簡単に挨拶を済ませ、すぐに説明を始める。どうやら、急を要する事態らしい。
 かすみがうらで発生している攻性植物の事件と、人馬宮ガイセリウムで発見された、『楽園樹オーズ』との関連について調査していた白神・楓(魔術狩猟者・e01132)から、緊急の報告が入ったそうだ。
「かすみがうらの攻性植物事件の裏には……。やはりと言うべきかな、楽園樹オーズの種を利用するシャイターンの暗躍があったようだね……」
 ケルベロスの介入や、攻性植物同士の抗争事件などを生き抜いた不良達。彼らに対し、シャイターンはより強力なオーズの種を与え、かすみがうら市街で一斉に事件を引き起こさせたらしい。
 オーズの種を与えられた攻性植物達を中心に、かすみがうら市の市街地は密林のような街に変貌し始めており、周囲の市民達は植物に巻きつかれてグラビティ・チェインを吸い取られているらしい。
「このまま放置すれば、全てのグラビティ・チェインを吸い取られた市民は干からびて死亡し、大量のグラビティ・チェインを得た攻性植物達は、新たな力を手に入れてしまうよ」
 それを防ぐ為、かすみがうらに向かって、オーズの種を手に入れた攻性植物を撃破して欲しいとリーゼリットは話す。
「キミ達には、攻性植物のうちの1体と戦ってほしい」
 攻性植物と張り果てた不良は、全長3メートルある植物の化け物のような姿をしている。
 そいつは、粘液を分泌することがあり、それをブラックスライムのようにして飛ばすこともある。
「周囲の建物が植物化していることもあって、警戒していないと忍び寄って奇襲してくる危険があるよ。気をつけて」
 また、攻性植物が力を放出したことによって、路地の周囲の建物内外、路上などで200名ほどの市民が倒れている。
「どうやら、その市民達には植物が取り付いているようだね。引き離して始末することで救助は可能だけれど……」
 その場合は、ケルベロスが周囲におり、救出を行っていることが攻性植物に気づかれてしまう。
 救助を行った場合は、その時点で敵がケルベロスが来たことに気づく為、気づかれないように潜入して奇襲といった事は行えなくなる。
 また、救助に時間をかけすぎたり、救助にばかり気を取られていると、敵の奇襲を受ける可能性もあることを考慮したい。
「攻性植物を撃破できれば、市民を捕まえている植物も消えるはずだよ」 この為、救助は行なう必要はない。どういう作戦を取るかはケルベロス次第ではあるのだが……。
 一通り説明を終えたリーゼリット。その表情は険しい。
「かすみがうら攻性植物事件とシャイターン……。この2つが結びついているとは思わなかったよ」
 ただ、白神・楓の行動もあり、最悪の事態になる前にこうしてヘリオライダー達が事件を察知することができた。ギリギリだが、対処することができそうだ。
「敵がかすみがうらを完全に植物化する前に、なんとか撃破して欲しい」
 リーゼリットは最後に、ケルベロス達へとそう願うのだった。


参加者
リーズグリース・モラトリアス(怠惰なヒッキーエロドクター・e00926)
武田・克己(雷凰・e02613)
オーフェ・クフェロン(人類好きの人形・e02657)
須々木・輪夏(翳刃・e04836)
羽丘・結衣菜(マジシャンエルフ・e04954)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)
志穂崎・藍(ウェアライダーの降魔拳士・e11953)

■リプレイ

●ジャングルと化した街
 茨城県かすみがうら市へとやってきたケルベロス達。
 ヘリオンから降下し、着地した一行は、街の惨状に唖然とする。街はすでに、攻性植物の手によって、密林のように変貌してしまっていた。
「楽園樹オーズとか、シャイターンはろくなことしないね……」
 嘆息するリーズグリース・モラトリアス(怠惰なヒッキーエロドクター・e00926)。若干眠そうにしてはいるが、普段の彼女を知る者なら、いつも通りと答えたことだろう。
「力を望む不良と、それを利用するシャイターンか」
 応えたのは、武田・克己(雷凰・e02613)だ。彼もまたのんびりとしたような雰囲気をしているが。彼を知らない者は、戦闘時とのそうでない時の違いに驚いたことだろう。
「悔しいかな、敵さん、的確な戦法をなさりますね……。こちらの神経が逆撫でされる程に」
 オーフェ・クフェロン(人類好きの人形・e02657)は感じる。つくづく、シャイターンとは厄介な存在だと。
「こんな事をして悦びますか、変態どもめ」
「胸糞悪い。力が欲しいって願いに付け込むか」
 克己も同意していたが、彼は飾り物の力よりも、自らの力を信じたいと考えている。
(「初めてケルベロスとして依頼を受け、仕事をしたのはこの街だったな」)
 変わり果てたかすみがうらの街を、コール・タール(多色夢幻のマホウ使い・e10649)は見回す。緑と呼ぶには、余りにも人に優しくないもの。それから、この街を救う為に、彼はここへと再びやってきたのだ。
「やってやるさ。……それなりに、な」

 事件現場まで、歩き出すケルベロス達。どの建物も植物に包まれてしまっており、鬱蒼と茂る街はまるでジャングルのようだ。
「攻性植物の密林、か。私は自然と緑が好きな方なのだけれども、この緑は肉食獣に睨まれてる感じがして、気味悪いわね」
 羽丘・結衣菜(マジシャンエルフ・e04954)は周囲を見回すと、その植物らは獲物を求めて蠢いている。どいつもこいつも、食らい尽くしてやろうという意志しか感じ取ることができない。
 その途中、メンバー達は早速、植物に絡み取られる女性を発見した。
「攻性植物で大勢の市民からグラビティ・チェインを吸い取るとか、とんでもない計画ね」
 急いで救出せねばと、リーズグリースはロッドを使って植物を払いのけ、その女性を解放する。
 しかし、この先では、あちらこちらで一般人が植物に捕らえられている。
「攻性植物の悪食、ここに極まれり、ね。放って置くわけには、行かないわ」
 結衣菜は目に付いた子供に絡みつく植物を、チェーンソー剣で切り払う。
「二百人もの人間を全て救助する事は不可能だろうけど、だからって苦しんでいる人達を放ってはおけないからな」
「一般人に手を出すなんて、ボクは久しぶりに怒ったよ」
 ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)もまた、目に付く人を植物から解放する。志穂崎・藍(ウェアライダーの降魔拳士・e11953)もそんな光景を目の当たりにして、憤りの為か、猫の耳と尻尾を逆立てていた。
「ボクの怒りの歌で、絶対退治してやるんだから」
「一般人を助け、敵もきっちりブチのめす。オレ達なら、やれるぜ!」
 直情的なロディは仲間達へとそう告げた。だが、ケルベロス達も思いは同じ。攻性植物と成り果てた不良を倒すべく、作戦を開始するのである。

●救出、そして敵の奇襲に備えて
 現場では、たくさんの人々が倒れている。そのほとんどが必死に植物から抜け出ようとしており、救いを求めていた。
 ケルベロスはすぐにその救出へと動くが、敵は200人ほどの一般人を捕らえておきながら、それが救出されるとすぐに感知してしまうのだという。
 その為、メンバー達は2班に分かれる。4人が周囲の警戒を行う間、残りの4人は奇襲を受けにくい場所を探しつつ、植物に捕まった人々の救出を行うのだ。
 リーズグリースは植物をはがして救出した一般人を、怪力を使うことで植物の動きが鈍いところまで運ぶ。
「ここまで運べばいいかな」
 彼女はそうして、次なる被害者を探す。
「安心して下さい。我々なら他の皆さんも救出し、守り通してみせます」
 同じく救出に当たっていたオーフェも、助け出した一般人に声をかけて安心させる。そして、すぐに退避勧告を行い、その場から一般人を避難させた。
 その後も、オーフェは警戒班と連携しつつ敵の接近にも備え、救出を続ける。場合によっては、一般人を庇いながらの戦闘にもなりうる。警戒はしておくに越したことはない。
 その頃、別所で行動していた藍、そして、須々木・輪夏(翳刃・e04836)。救出班でも分かれて捜索に当たっていたのは、救助にかかる時間を減らす為だ。
 そんな彼女達は、視界が開けた場所を発見していた。そこは、開けた交差点となっている場所だ。そこでも、多数の人々が植物に絡み取られ、必死に抵抗している。
「すぐ逃げるにゃーよ。大丈夫、他の捕まってる人はボク達が助けるから」
 藍はすぐにその場にいた人々を解放し、街の外へと避難を促す。さほど人々が弱っていないことは、幸いだったと言える。
「すぐ逃げて。他の捕まってる人はわたし達が助ける、から」
 輪夏もこの場を戦闘場所と見定め、まずは一般人を巻き込まないようにと救出を行う。時間の都合もあり、可能な限り自力での脱出を一般人に要請する。
「全員で一緒に帰るニャーよ。全員救出して笑って帰るのが、ボクのすたいるなんだにゃー」
 藍は自身の言葉を嘘にしない為に、救出活動を続けていく。
 程なく、警戒を行うメンバーもその場へと集めてくる。
 まず、先にこの場へとやってきた2人を警護するコール。彼は周辺の植物の動きや物音に気を払う。
(「敵のホームだから、油断はできないけれど……」)
 敵の大きさは全長3メートルもあるという。狭い場所に潜り込むなど、隠れるにも限界はあるだろうと踏んで、ロディは奇襲を警戒する。
 まして、仲間が開けた場所を見つけてくれた。接近するにも誰かがすぐに気づくはず。ロディは敵が忍び寄れそうな場所を絞り込み、重点的に警戒する。惜しむらくは、敵の風貌、人相が分からず、ウォンテッドが使えなかったことか。
 続いてやってきた結衣菜。植物の位置が動いていないか、別の植物が新たに現れていないか。小さな動きに注視しながら、敵の接近を警戒する。
 そして、風や空気の流れ。視覚だけでなく、それ以外の全ての感覚を研ぎ澄ませる。
 結衣菜は突然振り向く。同時に、コールもそれに気づいたようだ。彼はすかさず、手のひらにある『炉』から石礫を飛ばし、そいつの蔓触手を打ち抜いた。
「ガンマン相手に早撃ち勝負挑もうなんて、百年早いぜ!」
 ロディも若干遅れはしたが、速さで劣ってはいない。リボルバー銃から弾丸を撃ち放ち、別の触手を飛ばしていた。
「ひ、ひひひ……」
 奇襲は無理と判断し、物陰からゆらりと現れたのは、大きな人影……いや、攻性植物と化したそいつはヒトですらなくなっていた。
「おいでなすったようだ。気をつけろ」
 敵の気配を察してやってきた克己は、日本刀を構える。
「ん、相手はこっちよ」
 近場で一般人の救出をしていたリーズグリースも、ファミリアの知らせで敵の出現に気づき、敵の抑えるべくそちらへと向かうのである。

●敵の足止めを
 現れた攻性植物。あちらこちらで救出活動を行っていたこともあり、翻弄されていたのだろう。思ったよりも遅い登場だ。
 だが、ケルベロス達も一般人の避難を十分にはできていない。
 救出人数は100人は超えただろうが、それでも、救出班4人で200名の一般人を救出するには時間が足りなさ過ぎた。
 背中合わせで死角がないようにしながら、救出を続けていた輪夏と藍。敵の出現を察した2人もまた、攻性植物の討伐を優先させることにする。

 一方、攻性植物となった不良は、高まる力をもてあましていて。
「ひひゃああっ!」
 そいつはケルベロス目掛け、粘液を飛ばしてくる。まっすぐ飛ばすそれは槍のようになり、仲間を庇うオーフェの身体を貫き、その身体を毒に侵す。
 まずは敵の攻撃の対策をと、リーズグリースは雷の壁を前方に展開した。これによって、敵の異常攻撃から多少なりとも味方を守ることができる。
「せっかく解禁したこれが有効か、試させて頂きますわ」
 傷を負ったオーフェは、初使用の拡張ユニットを使おうと考えていた。
 本来は緊急用だが、試用運用といったところか。右肩から腕までを撤回のような外見の大砲で包み、さらに背中にはバーニアユニットを転送装着し、大砲の駆動、姿勢制御を図る。
「『隠し腕』緊急装着。障壁を展開」
 そうして、砲口からエネルギーを拡散射出することで障壁を展開していく。
 盾を得た仲間達は、目の前の攻性植物へと一挙に攻め込む。
「おら、どうした? 力を与えて貰ってそんなもんか? こっちは全然楽しくねえぞ?」
 克己はそうして煽るが、敵はさほど関心を持つ様子はない。それならと克己は日本刀に雷の闘気を纏わせ、それを攻性植物へと突き入れる。
「全速でぶつけるのみ!!」
 貫かれたことで、自身の身体を纏う植物を破かれた攻性植物。
 ロディもその箇所目掛け、炎の一撃を叩き込むことで、さらに植物の鎧が破壊されていく。
 先制攻撃をと考えていた結衣菜だったが、攻撃グラビティは近距離のみ。結局は敵が近づいてきてから、仕掛けることとなる。
「音も、光も、そして拍手も無いマジックショーの開幕よ」
 結衣菜は魔術によって光を屈折し、音を歪める。極限まで気配を殺した彼女はその姿を消したまま、一撃を見舞う。
「へっ、大したことないな!」
 ロディは軽口を叩きつつ、次なる攻撃の為に体勢を整える。
 遅れて輪夏、藍がこの場へと駆けつけてきた。
「あなたの影、ちょっともらう、ね」
 輪夏は刀で攻性植物の影を切り取る。まるで半身を失われたかのような虚無感を覚えた敵は、注意力が散漫になってしまう。
 さらに、藍も大きく咆哮する。それによって敵はビクリと身を振るわせ、攻撃の手を一瞬止めてしまったようだった。

●攻性植物の力
 ケルベロス達の救出の甲斐もあり、この近辺からは一般人の姿はなくなっている。避難の時間を稼ごうと立ち回っていたメンバー達は、攻勢を強めていく。
 対する敵、攻性植物は粘液をブラックスライムのように操る。槍のように貫いてきたり、粘液で敵を食らいつかせることで、こちらの強化を打ち消すことも行ってきていた。
「さぁ、雑草刈りの時間だ。恨むなら自分の運を恨め」
 コールは柄だけの剣を掴み、そこから炎の刃を出現させて敵に斬りかかる。燃え上がる攻性植物の身体。
 熱さに悶える敵へ、結衣菜は稲妻を帯びたゲシュタルトグレイブの切っ先で敵を貫かんと突き出し、その身体に痺れを走らせた。
「戦乙女の声で導いてあげる………。滅びの道へ」
 いつもは封印している、美しくも哀しく響く声で藍は歌う。仲間には勇気を。敵には戦慄を。
「皆と力を合わせれば、ボクにもできることがあるんだ」
 彼女の歌は、敵の戦意を鈍らせる。しかし、それでも敵は蔓触手で絡みつき、あるいは、自らの口で食らいついてきた。
 身を張ってそれを受け止めるロディ、オーフェ。リーズグリースは癒しの雨を降り注がせることで2人を癒す。
 オーフェがなおも雷の壁を展開する後ろから、ロディが敵の前へと躍りこむ。
「ターゲットロック! 奔れ、青い流星!」
 消防車型アームドフォートから、ロディは冷凍ビームを放つ。
 凍った敵へと、輪夏はさらに影のごとき斬撃を浴びせ、敵を抑えこんだ。
「……燃やし尽くしてやるよぉ!! その命をなぁ!!!」
 少しでもダメージを。コールもまた斬撃を浴びせかけ、敵の急所を掻き切る。
 体液を飛び散らせた敵は、苦しげに叫ぶ。
「お、おお、オーズの種よ、俺に力をぉぉ!」
 叫ぶ攻性植物。だが、克己は敵が何か仕掛けてくると理解した上で、敢えて飛び込んだ。
 しかし、敵の反応がおかしい。
「ひ、なぜだぁ、なぜ力がこねぇぇ!?」
 攻性植物は力が流れ込んでこないことに動揺する。こんなはずはないと。
 それは、ケルベロス達が、半数以上の一般人を助けていたことが要因だった。流れ込む力が足りず、攻性植物は己の身体を癒せなかったのだ。
 賭けに勝ったと笑う克己。
「そんなに飛びたいなら、飛ばしてやろう! 破邪剣聖! 一天!」
 神速で踏み込む彼は、その速さを全て刀に乗せ、上段から相手を切り捨てる。
「風雅流1000年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
 攻性植物の身体が斜めにずれる。そして、そいつは急速に枯れ、干からびてしまった。
 しかし、その身体から光り輝く種が出現する。……オーズの種だ。
 それが現れるとは思っても見ないメンバー達は対処ができず、種が飛び去るのを見逃すこととなってしまう。
 種の回収を考えていたコール。だが、それを見逃すしかない状況に思わず舌打ちをしてしまったのだった。

●解決はしたものの……
 メンバー達は改めて救出活動を再開する。
 街の植物もこころなしか、弱ってきているようにも見えた。捕まっていた人々も拘束から逃れてはしていたが、グラビティ・チェインを奪われていたのか、動けぬ者も多い。
 救出のたびに、克己、リーズグリースは治療を行う。一時はどうなるかと思った人々も、ケルベロス達の活躍に喜び、敬意を表していた。
 一方、倒した攻性植物の残骸などを確認していたコール。
 飛んでいった種が非常に気がかりだが、近辺に手がかりとなるようなものは残されていない。
「強い力が欲しい人って、多分、力が足りないって、悲しんだことがあった人なんだと思う」
 輪夏はその残骸を見下ろしつつ、呟く。この不良だって、こうして事件を起こしてはいるが、全部彼は悪いというわけではないと、輪夏は考える。
「本当は、攻性植物の種とか渡してる黒幕を、わたし達が早く見つけなきゃいけなかった」
 黒幕となるシャイターンを止めねばならない。コールも苦々しい顔で輪夏の主張を長い耳で聞いていた。
「助けられなくてごめん、ね」
 輪夏は最後に一言。その残骸へと謝罪の言葉を口にするのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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