●Warning
茨城県かすみがうら市。
廃ビル内に蠢く影。それは、人であったもの。
ゆらゆらと不気味な動きをする攻性植物は、此の辺りで『クリムゾン』を名乗っていた不良グループの一味だった。
その中で、異形化してしまった攻性植物は、蔓の様な腕をしゅるしゅると伸ばす。その傍らに鉄パイプが転がっていた。
――薄暗い廃ビルに、足音が響く。
現れたのは、ユグドラシルガードモデルとシャイターン。
攻性植物化した不良達を前に、シャイターンの方が口を開いた。
「おめでとう。君は、進化の為の淘汰を耐え抜き、生き残る事が出来た。その栄誉をたたえ、この種を与えよう。
この種こそ、攻性植物を超えアスガルド神に至る、楽園樹『オーズ』の種なのだ」
シャイターン・シルベスタは、そう告げると、ユグドラシルガードモデル・ラタトスクが持っていたオーズの種を、差し出した。
しゅるり、と蔓を伸ばした攻性植物が、オーズの種を受け取る。
すると全身の葉や茎、植物の身体の全てに、ぶわりと凄まじい力が漲った。
「ふ……ふおおお! 力が漲るッこれが俺の真の力ッ……!」
既に攻性植物と化していた身体は、更なる異形化が進んでゆく。
少し力を籠めれば、廃ビルの床には亀裂が生まれ、蔓で天井を叩けば大穴が空いた。
廃墟的な風情のあった廃ビルの一室が、いとも容易く半壊する。
オーズを得た攻性植物の蔓は、転がっていた鉄パイプを拾い上げた。
「ふーっ……。つまりこうだな? 超究極進化・タツキ様は、強えヤツが支配者たるこの世界の法則どおり、廃ビル内に留まらずこのかすみがうらを手中にすべきだと……」
タツキは振り返った。
しかし其処には誰も居らず、シルベスタとラタトスクは既に立ち去っていた。
●『予知』
「ええっと……」
黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、どう切り出すか一寸考えた。
「緊急の報告っす……」
そして普通に話し始めた。
かすみがうらで発生している攻性植物の事件と、人馬宮ガイセリウムで発見された、『楽園樹オーズ』との関連について調査していた白神・楓(魔術狩猟者・e01132)から、緊急の報告が入ったとのこと。
「報告によると、かすみがうらの攻性植物事件の裏に、楽園樹オーズの種を利用するシャイターンの暗躍があったらしいっす。そのシャイターンが、ケルベロスの介入や攻性植物同士の紛争事件を生き抜いた不良たちに、より強力なオーズの種ってのを与えて、かすみがうら市街で一斉に事件を引き起こさせたっすよ」
オーズの種を与えられた攻性植物達を中心に、かすみがうら市の市街地は密林のような街に変貌しはじめた。周囲の市民達は、植物に巻きつかれてグラビティ・チェインを吸い取られているらしい。
「このまま放置すれば、すべてのグラビティ・チェインを吸い取られた市民が干からびて死んでしまうっす。そして、大量のグラビティ・チェインを得た攻性植物達は、新たな力を手に入れてしまうっす」
ダンテはゆっくりと首を振って、それから貴方達ケルベロスを真っ直ぐに見た。
「市民達を助けて欲しいっすよ。かすみがうらに向かって、攻性植物の撃破をお願いするっす……!」
今回撃破すべき敵は、強力な攻性植物が1体。
「かすみがうら某所にある廃ビルを根城にしていた不良グループのリーダーっす」
タツキはオーズの種を与えられて、植物のバケモノのような姿となっている。
「ええと……体長は3メートルくらいあるらしいっす。デカいっすね。でも、周囲の建物も植物化している所為で、ケルベロスの皆さんでも警戒を怠ると、忍び寄って奇襲することも可能らしいっす……」
気をつけてくださいっす、と、ダンテは言う。
「このタツキっすけど、蔓で絡みついて首を絞めたり、攻性植物っぽい攻撃方法の他に、昔からの愛用の鉄パイプで殴りつけてくるっす」
タツキは廃ビルを出て、市街地を徘徊している。
グループ抗争で敵対していたミッドナイトブルーの縄張りであるクラブハウスを乗っ取り、破壊し、植物のジャングルのような状態にして居座っているようだ。
市街では、周囲で倒れている市民が、道端や建物の中などあわせて200名程度。
「市民に取り付いている植物を引き剥がして始末すれば救助することが可能だけど、救助を行った場合、攻性植物にその事実が伝わってしまうっす」
つまりダンテが言うには、市民を植物から救助すれば、敵はケルベロスの存在に気づいてしまう為、気づかれないように潜入してケルベロス側からの奇襲等は行えなくなる。
「それに、救助に時間をかけすぎたりして気を取られすぎると、敵側からの奇襲を受ける可能性もあるっす……攻性植物、タツキそのものを撃破できれば、市民を捕まえている植物も消えるはず、っす」
ダンテはちょいと考えるように首を傾げた。
「迅速に攻性植物を撃破すれば、市民も植物から解放されるって事、っすよね?」
かすみがうらの攻性植物の事件の背後で、シャイターンが暗躍していたというのは、予想外の事だった。
「白神さんのおかげで、最悪の事態になる前に察知できたっす」
ダンテは、うんうんと大きく何度も頷いた。
そして、貴方達ケルベロスを信頼の瞳で見渡した。
「敵がかすみがうらを完全に植物化してしまう前に、撃破して欲しいっす。よろしく頼むであります! ――現地までヘリオンで案内するっすよ!」
参加者 | |
---|---|
天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355) |
九道・十至(七天八刀・e01587) |
千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749) |
セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755) |
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108) |
浅生・七日(カウンターバースト・e17330) |
久保田・龍彦(無音の処断者・e19662) |
ソル・レヴィル(ヴィツィオ・e22341) |
●索敵
街に到着すると、全体が異様な雰囲気に包まれていた。
何所を見ても植物、植物……。
どこまで元建物で、どこから植物か、敵が何所に潜んで居るのか、判らない。
ケルベロス達は、目的のクラブハウス付近で一旦ヘリオンから降下し、そこから慎重に移動する事となった。
上空から見た目的地は建物の名残が判る形であったが、地上を歩けば植物が迷路のようになっている。
植物に捕えられている市民を多々見つけたが、救助は後回しにして索敵を急いだ。
「要はさっさと雑草もどきを燃やしちまえばいいンだろうがよ。
タイミングだのなんだのはどうでもいい。吹き飛ばす、それで済む話なんだろうがよ?」
ソル・レヴィル(ヴィツィオ・e22341)は冷ややかな声で言う。
クラブハウスが不良達の敵対グループの縄張りであった所為か、この付近で植物に捕まっている市民は、チンピラのような者が多かった。
殆ど気を失って倒れているが、助けてくれ、と弱音を吐いている者も居る。
「うっとおしいんだよイラつかせてくれるぜぇ!!」
ソルが叱咤する声に、仲間達が口元に人差し指を立てる。
「ああ……」
(「逃げ遅れた劣等共なんざしったこっちゃねえ、 雑魚は死ぬ、それだけだろうが。それを助けろだのなんだのと……」)
ソルは小さく舌打ちした。
ケルベロス達は、倒れている市民を残して、警戒しながら進んでいく。
「200ってのは現実的な数値じゃねぇしな。ちょいと、辛抱してくれよ?」
九道・十至(七天八刀・e01587)の声に、ぐったりとした市民の反応は無い。
まずは敵を探したい。先に発見できれば、此方から仕掛けられる。
「敵がどうこっちを知覚してるかはわからねぇが、奇襲気味に仕掛けよう。なるだけ風下から。上部から突入できるようなら、そこから」
十至は、壁の如く聳える植物を見上げた。
柱と、その上の方に天井の名残がある。
用意してきた梯子を、浅生・七日(カウンターバースト・e17330)が立てかけた。
「まずは上がろうぜ?」
「ロープも用意してますので、上から下ろします」
そう言って、天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)は壁歩きで上り始めた。
「俺も一緒に引っ張り上げるぜ!」
セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755)は、普段は隠している翼で飛び上がる。
千軒寺・吏緒(ドラゴニアンのガンスリンガー・e01749)も、翼を広げて浮かんだ。
「飛べるってのは便利よな、やっぱよ。ついでだから誰か運んでやっかね?」
翼を持つものは翼で、無い者は梯子で、各々が隠密気流を用いる等して慎重に上った。
天井はほぼ崩壊していたが、建物の柱はしっかりと残っている。
其処からケルベロス達は、植物に囲まれたクラブハウス跡を見下ろした。
「奇襲を狙えそうでしょうか?」
旋堂・竜華(竜蛇の姫・e12108)は気配を潜め、いつでも仕掛けられるよう身構えた。
久保田・龍彦(無音の処断者・e19662)がこっそりと中を覗う。携帯用手鏡で死角を確認するが、反射した光でバレないように、細心の注意を払っている。
「気張らず行こうぜ、何事もな」
口調は軽いが行動は慎重だ。龍彦は植物に紛れた背の高い攻性植物を発見した。
「襲って来ねーって事は、まだ気づかれちゃいねぇ筈だ」
仲間に知らせる為に龍彦が指差す。其処には鉄パイプを抱えた攻性植物の姿。
「一斉に行こうぜ! 合図は七日さんがやろう。いち、にの、さん……な」
ひそひそと告げる七日の声に、仲間達は頷いた。
動き回る攻性植物を見下ろして、七日はタイミングを計った。
鉄パイプを抱えた敵が近づいてきて、ちょうど柱の傍で止まった。
「――いち、にの、さん!!」
●奇襲
「あなたの魂……私が喰らい尽くします♪」
真っ先に降下したのは竜華。
ブレイズクラッシュの地獄の炎を鉄塊剣に纏わせて、攻性植物に頭上から叩き付ける。
「グアァッ……! なっ、何だァ?!」
敵は大きく仰け反った。どうやら奇襲は上手く行ったようだ。
竜華は妖艶な笑みを浮かべる。先程までの清楚なお嬢さんのような振る舞いに反して、戦いに快楽を感じる狂戦士のスイッチが入った。
「強い方との闘いは喜ばしいですが……所詮は与えられた力。その様なモノで喜んでいるとは情けない方ですね」
「なっ、何だと?!」
攻性植物、タツキは植物の腕のような蔓を伸ばした。
続くのはケイの殺神ウイルス。投射されるウイルスカプセルは、対デウスエクス用。
「随分ご満悦の様子ですが、そんな力のどこに価値があるのか、私にはさっぱりわかりませんねえ」
ケイの声が最後まで届く前に爆音が響く。タツキの身体の一部が爆破された。
十至の遠隔爆破が、無数にある蔓の幾つかを破壊した。
「あー……OK、OK。大丈夫、大丈夫さ」
「大丈夫じゃねェ!」
「植物には炎の華がお似合いってことさ。OK?」
「OK! じゃねェ?! 何だお前たちは」
慌てて見上げたタツキの頭上に、またひとり。
「ケルベロスだ! 行くぜロックンロール!」
セラスは竜殺剣ラグナブレイズに地獄の炎を乗せて、タツキへと叩き付けた。
「グハッ……! む、お前は?!」
タツキはセラスの一撃を受けながら、それ以上に衝撃を受けていた。
「なあ、お前は、なんで攻性植物に手を出したんだ」
着地したセラスは、剣を手に問いかける。
タツキには以前見かけた時の面影はない。完全に攻性植物と化していた。
あの日、あの廃ビルで、タツキのグループ『クリムゾン』の仲間であったレイジが、攻性植物になった事件で。
セラスは一度、タツキと邂逅していた。
「力が欲しかった、その理由があるはずだ!」
「……っ」
セラスの問いに、タツキは黙り込んだ。
更に七日のハウリングフィストが決まって、音速を超える拳が吹き飛ばした。
「その気になれば人を守れるほどの力を、なんで暴れたりするのに使うかね! せっかくだから、俺はケルベロスの仲間になるぜ! ……くらい言ってくれても良かったんじゃねーの!?」
七日が問い詰めると、タツキは答えに窮した。
「なあ、あのシャイターンとは、どういう関係だ?」
そこへ降下してきた吏緒が、頭上からルーンアックスで敵を叩き割る。
「ぐっ…… どういう?」
「知り合いだったのか? あのシャイターンから手に入れた『オーズの種』……」
吏緒の問いに、タツキの植物の蔓がびくりとした。
「何なのか、判ってるのかよ?」
「ふ、ふふふふ……」
巨大植物の全身を震わせて笑うタツキに、ソルがブレイズクラッシュを放つ。
「笑ってンじゃねぇチンピラが!」
ソルのルーンアックスを、タツキは鉄パイプで弾いた。
「俺は進化の為の淘汰を耐え抜き、攻性植物を超えアスガルド神に至ったのだ!」
タツキの声は、良くぞ聞いてくれたと言わんばかりの響きだった。
「俺は! 超究極進化によって神となり、このかすみがうぶっ!!」
台詞が途中で途切れたのは、ダブルジャンプで降下してきた龍彦のナイフの刃が、炎を纏って頭上から斬りかかって来たからに他ならない。
「You still alive?」
蔓の一部を破壊して、反動をつけて飛び退きながら龍彦が着地する。
「てめーには過ぎた力だぜ、それ」
「ゆ、ゆー……何だ?」
敵は巨体を揺らして、己を取り囲むケロベロス達を見下ろす。
「ふ……見たければ見せてやろう、このオーズの力ッ!」
●オーズの種
竜華は猟犬縛鎖で攻性植物を縛り上げる。
「強い殿方は好みですが、偽りの力で良い気になっている方は遠慮したいですね」
「なっ何だとぉ……俺は強い!」
タツキは蔓で掴んだ鉄パイプを、前方に思いっきり振り回した。
竜華、龍彦、ソルを狙って大きく振り抜かれた鈍器。
ケイとセラスは、仲間を守って庇う為に動く。
「以前闘ったドラゴンやアグリム軍団に比べると、大したことないですね……」
鉄パイプの一撃を受けたケイは、言葉で挑発する。
しかし見た目通り、かなり体力がありそうだ。
ケイの降魔真拳、魂を喰らう降魔の一撃が、レイジを打つ。
魂を奪い、喰らう。受けたダメージを補う己の力とする。
別の角度から、十至の居合い斬り。4番目の刀、四天は、抜刀と共に斬撃を与えた。
「いつの世も、はみ出し者から悪の喰い物にされてくってモンだな」
ぼやくような十至の声に、タツキは鉄パイプで地面を打った。
「何だと?!」
「自覚ねぇか? そりゃ、結構結構」
植物と化した敵の表情は判らない。けれど気配は剣呑になった気がする。
「とっておきをくれてやるぜ!」
セラスは、剣に力を注ぎ込んだ。地獄の炎が剣に絡みつき、手にした武器と己自身をオーバーロードさせて放つ一撃。
「デウスエクスは地球の敵! 俺の炎で焼き尽くしてやるぜ!」
屠竜灰燼剣。セラスが放つ紅蓮の炎は、植物を焼き尽くす巨大な炎となる。
「く……俺の、俺の身体が」
燃やされて焦りだすタツキ。炎が燻ぶり続ける敵へと向けて七日が照射するのは、絢爛豪華で超ド派手な黄金に輝くバーストビーム。
「照射用意! 燃え尽きなさいませぃ!!」
爆風すらも伴い、発射音もドバババとか、シュゴーとか色々と凄いことになっている。しかし敵を狙っているのは、中央の極太ビームのみ。後は飾り、なのだが。
「『クリムゾン』の『タツキくん』よぉ……」
そのお飾りの演出が悪目立ちするため、自らへの攻撃がより苛烈になることも稀に良くある。つまり、敵の怒りを買ってしまうのだった。
「『レイジ』の一件は聞いてんだぜぇ……」
怒りを更に煽ろうとして、七日は可能な限り全力で凄んで、迫真の悪人ヅラを浮かべた。
「ガチの殺り合いに『ブルって』逃げ出したんだろ?」
「――……ンだとォ……?」
タツキの声音が、一段と低くなった。
「ケルベロスのおにーさん、おねーさんの『お説教』は聞いてなかったのかなぁ?」
七日の煽り芝居は迫真の演技だった。
敵は怒りで、ブチ、と切れるような音が聞こえた。
いや、……実際に植物の蔓が幾つか、千切れていた。
「念願なんだろ、存分に力を振るえ」
龍彦の声。そして植物がパラパラと落ちてくるのは、達人の一撃によって斬撃を受けた蔓がちぎれ落ちてきたから。
「どうせ、てめーが戦えるのは今日が最後だ」
龍彦が終わりを宣告する。
「ぐ、ぐああああぁぁ……ッ!」
タツキは鉄パイプを振り回した。ガン、ガンッと柱や地面を叩きつけ、周囲を囲う密林のような植物を薙ぎ払った。
「オーズの種よ、俺に力を!!!」
タツキは叫んだ。その瞬間、攻性植物が激しく蠢いた。
「なっ、何だ?!」
ケルベロス達は辺りを見渡した。
敵が周囲に張り巡らせた蔓が、どくりどくりと何かを吸い上げるように脈打っている。
蔓が絡み合っている植物、その植物を介して吸い上げているものは何だろう。
「何をしている! ……オーズの種が何か、知っているのか?」
吏緒はスターサンクチュアリで仲間達を癒しながら、敵を問い詰めた。
タツキのダメージは、みるみるうちに回復していく。
「てめえ……!」
ソルは回復した敵をギリリと睨み付けた。
「漲る……漲るぜェ……これが超究極覚醒・タツキ様だっ!」
揚々と佇む巨大植物を見上げて、ソルはフレイムグリードの炎弾を放つ。
地獄の炎が、敵の生命力を喰らう。
「燃やしちまえば、いいンだろうがよ……ぶち壊して、ぶちかますだけだ。何度でも」
●末路
敵のダメージは、ほぼ快癒していた。
オーズの種の力、未知数な効果のひとつ。脳裏にひっかかるのは、植物に捕らわれていた市民達だ。
だが今は、迅速に敵を撃破するしかない。
ケルベロス達は、更なる攻撃を重ねた。
敵の攻撃に受けた幾許かの負傷は、吏緒が順に癒しを施した。持久戦だった。
タツキの蔓触手は、執拗に七日を狙ってきた。
「俺を倒せない限り、後衛はやらせないぜ!」
セラスが確りとカバーする。そして深紅の瞳で見上げて、タツキへと告げる。
「お前を攻性植物にした奴らも許せないけど、無関係な市民を巻き込んだお前も同罪だ」
セラスは騒音刃で斬り付ける。七日はシャドウリッパーで視覚困難な斬撃を繰り出した。
戦いを続けるケロベロスも徐々に疲労してきた。
だがそれは、敵も同じく。
「私の力、炎の華……見せて差し上げます! 炎の華と散りなさい!!」
竜華の大蛇・灼華繚乱。
「全て燃えて砕け!」
真紅の炎を纏った八本の鎖が、それぞれ別方向から相手を串刺しに貫いて動きを封じた。そして最後に、オーラを纏った剣で敵を切り裂く。
タツキは悲鳴をあげて仰け反った。
引き裂かれる攻性植物を見遣る竜華のピンクの瞳は、どこか恍惚としていた。
「よぉく見とけ、その目に焼き付けろ」
ソルは、体から噴き出す地獄の炎を一点に集中させた。
限界を超えたスピードを、攻撃に乗せて放つ。
「見えるかよ、テメェの送り火だ」
火炎流星が的確に、植物の胴体を撃つ。流星の如き赤色の一撃。
ぐらりと巨大植物が傾いた。
敵は鉄パイプを振り回す。痛手を与えた竜華とソルへ叩きつけた。
「超究極覚醒したというのに、代わり映えしませんね」
ケイが軽く煽って、ナイフの刃でジグサグに斬り裂く。
「なんだとォ……」
更なる怒りに震えるタツキを、十至の凍結弾が可燃性の氷に閉じ込める。続いて、三日月の軌道を描く弧の斬撃で切り上げ、氷を散らした。
『雪』と『月』の連撃、それから、
「無駄に年食ってる訳じゃないのさ……多分な」
着火して爆発の花を散らすのは『華』。
十至の、我流「雪月華」で、巨大植物の身体は爆ぜた。
瓦礫と共に周囲で舞い上がる、千切れた蔓と茎、破れた葉のようなもの。
「おれは……強え……」
粉塵の中、辛うじて立っていた敵が、蔓触手を十至へと向ける。
龍彦は周囲の魔力を集めて引き寄せ、中指と親指の間で麻雀牌サイズに凝縮させた。
「挨拶代わりだ、食らっとけや!」
一発自摸。叩きつけられた魔力が、敵を完全に仕留めた。
「俺は……ッ、レ……ジの、仇ッ……」
撃破した、と同時に、植物は急速に干乾びて枯れてゆく。
そして枯れた植物の残骸から、勢い良く飛び出してきたのは『光り輝く種』。
「まさか、オーズの種か!」
撃破後に周囲を調べようと思っていた吏緒だが、出現した種はすぐに飛び去ってしまう。
予想外の出来事に、ケルベロス達はオーズの種が飛び去った方向を見遣った。
「回収し損ねましたね」
竜華がぽつりと呟いた。
現場に残ったのは、枯れた攻性植物の残骸だけ。
オーズの種は、何処へ?
「自業自得なのは間違いねえ。だが」
攻性植物の残骸を見下ろして、龍彦は呟く。
「一番許せねえのはシャイターン、てめーだよ……」
ぐい、と深く帽子を被りなおした。
「兎も角、弱っている人から優先的に救助しましょう」
そう言って市民の救助に向かうケイに、数名のケルベロスが後に続いた。
作者:藤宮忍 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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