
城ヶ島沖、紺碧の海に荒く波が打つ。
ぽかりと、小さな島が浮かんでいた。
珊瑚のような薄桃色のごつごつとした岩に覆われ、岩の尖塔が二つ、天に向かって突き出している。
海鳥たちがその島の周囲を飛び、あるいは岩の上で羽を休めていた。
海面に船の残骸と思しき木片や鉄片がぷかり浮かび、荒く速い潮に流されていく。
乗っていたであろう人間たちは今は海の藻屑と消えていた。
珊瑚色の岩場にこびりついた肉片を海鳥たちが嬉々と啄んでいたが、不意に小島がぐらぐらと揺れ始め、慌てて飛び立つ。
二つの尖塔が熱を帯び、轟音と共に砲弾を天空に向けていくつも撃ち放った。
海が割れて露わとなった長大な尾を振り回せば新たな海流を生まれ荒れ狂う。
小さな者たちに受けた傷の痛みと屈辱と新たな殺戮の歓喜に、珊瑚色の戦艦竜は、薄曇りの天をも揺るがす咆哮をあげた。
●
「先日、幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)さん達の活躍によって一度は退けられた戦艦竜が、また活動を始めたようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロスらを前に、厳しい面持ちで告げる。
「戦艦竜の海域は今は封鎖をお願いしているのですが……しばらく動きがなかったため、大丈夫だろうと漁を行おうとした漁船が餌食となります。
予知を阻止したために返って危機感が薄れ、別の犠牲を出してしまうのは、大変悲しいことです。
ドラゴンが前回の皆さんとの戦いで負った傷は回復していませんが、その強靭な肉体は、それほどのダメージでも支障なく活動しています。
……今回も、倒すことは出来ないでしょう。
ですが、更なるダメージを与えて弱らせることが出来れば、少なくと犠牲はなくなり、この次の戦いはさらに有利になるでしょう。
善戦してくださった皆さんのおかげで、攻撃方法や弱点などが判明しています。今説明しますね」
戦艦竜は、サンゴ礁に似た色と形の甲羅を持ち、それに岩の砲台が二基載って、遠くまで届く砲撃を放つ。
次いで、尻尾は近寄った者複数人を薙ぎ払う。
そして、長い首に鋸のように並んだ鋭い歯と大きな牙で、肉を食い千切り、骨をかみ砕くのだ。
甲羅と肉体では弱点が違い、甲羅には魔法が、肉体には斬撃が特に効くようだ。
ドラゴンは本体を攻撃されると甲羅に体を引っ込め、急旋回して渦を発生し近づけないようにする。この付近の海流は荒く、巻き込まれると近くの岩場に叩きつけられ余分にダメージを追う可能性がある。
そうして、態勢の崩れた所に強烈な砲撃を撃ち込むのだ。
回転が止まれば、本体での攻撃が来る。尾を出して薙ぎ払うか、頭を出して襲ってくるかの判別は事前には難しいだろう。
さらに、戦艦竜共通の特徴として、戦闘が始まれば撤退する事はない。
同時に、敵を深追いしないという行動も行うため、ケルベロス側が撤退すれば、追いかけてくる事も無い。
「重ねて言いますが、今回も撃破することは不可能でしょう。回復しないと言う弱点を狙い、確実に弱体化を図っていくのが肝要です。
戦艦竜は、長い首と尻尾、二基の砲台でもって体のバランスを取っています。
水中で自在に巨体を動かすために重要なこれらの内どれかに、破壊あるいは使用不能なくらいのダメージを与えられたなら、その攻撃力や機動力を大きく削ぎ、以後の戦いを有利にするでしょう。
ですので、皆さんには、二基の砲台の左右どちらか、もしくは尻尾を使用不可能にしていただきたいのです。
もちろん頭を狙えれば一番いいのですが、急所だけにその守りは一番堅く、大したダメージを与えないうちに撤退を余儀なくされる可能性が高いです。
尻尾と砲台を全て破壊と言うのも、残念ながら不可と言わざるを得ません。狙いと攻撃を集中し、一つ一つを確実に倒すべきです。
ですから、今回は『砲台二基のうち一基もしくは尻尾の破壊』を目指してください。
狙い撃たなくても攻撃が当たる可能性はありますし、ダメージを積み重ねることも大事ですから、全員で部位狙いをする必要はありません。
それに、戦艦竜は、狙い撃ちをするものを優先的に倒そうとするでしょう。
戦艦竜との戦いは危険です。何度も戦い、ダメージを積み重ねてくことが必要なのです。
目的を達成したなら、無理せず撤退なさってください。次に繋げられることが、一番大きな戦果なのです。
どうか、よろしくお願いします」
セリカはそう言って深く一礼すると、ケルベロスたちをヘリオンに誘うのだった。
参加者 | |
---|---|
![]() 幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
![]() アリエータ・イルオート(戦藤・e00199) |
![]() リノ・ツァイディン(旅の魔法蹴士・e00833) |
![]() ラーダ・ナーザ(煙竜・e00864) |
![]() 高原・結慰(四劫の翼・e04062) |
![]() マリィア・デッセル(オラトリオの辻ヒーラー・e05092) |
![]() ベリザリオ・ヴァルターハイム(愛執の炎・e15705) |
![]() 舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956) |
●
城ヶ島沖、荒ぶる波を割ってクルーザーが走る。
海鳥の群が、まるで惨劇を待ち望むように不吉に鳴きたてていた。
前回戦った場所近く来たところで、クルーザーを停めて周囲を見渡す。
「以前は、この辺りにいたのですが」
珊瑚色の戦艦竜と戦った経験を持つ幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)の先導で、クルーザーを降りて海に入り、その姿を探した。
「うゎわ……っ」
予想以上の激しい海流に、リノ・ツァイディン(旅の魔法蹴士・e00833)は体勢を崩し飲まれかける。
ボクスドラゴン『オロシ』が全身で支え、かろうじて踏ん張った。
「ふう、ありがとオロシ」
「気をつけて」
鳳琴は注意を促した。
強い海流に流されないよう慎重に探索する。城ヶ島の沖は波こそ荒いが、それ以外は今のところ静かなものだった。
「静かでいいところじゃない……邪魔者がいなければの話だけど」
舞阪・瑠奈(サキュバスのウィッチドクター・e17956)はそんな感想を述べた。平和になったら、マリンスポーツもいいかもしれないなどと考えてみる。
だが、その平穏は本当につかの間だった。
●
「来ます!」
鳳琴が叫ぶと同時、凄まじい熱と光を放つエネルギーの塊が、荒れる海流をも引裂いて真っ直ぐにケルベロスらに襲い掛かった。
直後、巨大な珊瑚礁が、いや。珊瑚礁のように巨大な甲羅を持つ戦艦竜が、雄たけびを上げて突進して来たのだ。
以前に受けた傷の痛みも屈辱も忘れてはいないと、憎悪に燃える眼が語っている。
だが、それを甘んじて受けるいわれはない。
「『幽冥より此方へ』」
アリエータ・イルオート(戦藤・e00199)の召喚した、霊的存在の波が戦艦竜にぶつかり砕けた。非実在の存在による攻撃が戦艦竜の不意を突き、刹那、足を止めさせる。
さらにラーダ・ナーザ(煙竜・e00864)の発生させた煙が纏わり、戦艦竜の視界を塞いだ。
竜が竜を攻撃するとは因果なものだと思いつつ、防御の要と言う役割を果たすために、女傑は自ら前へと陣取る。
「―さて、それじゃあ始めよっか?」
高原・結慰(四劫の翼・e04062)禁縄禁縛呪を放てば、浮かび上がった数式が呪となり戦艦竜を捕縛する。
(「は、初めての戦艦竜との戦いですけど(中略)平常心です失敗しませんできません私は出来る子私は出来る子私は出来る子……」)
初めての敵に憶するまいと目いっぱい暗示をかけて、マリィア・デッセル(オラトリオの辻ヒーラー・e05092)はエレキブーストをベリザリオ・ヴァルターハイム(愛執の炎・e15705)に付与する。
「ダメージディーラーお願いしますっ」
その声に応えて、ベリザリオは空を飛んで背中から砲台を狙った。
「噂には聞いていたけど、これが戦艦竜か」
眼前で巨大な戦艦竜が吠え猛っている。心胆寒からしめると言うべき威容だが、リノはそんな強敵と闘うことに胸躍らせる。
「鳳琴、いくよ。これが友情パワーなんだよ!」
電光石火のスピードで戦艦竜に肉薄すると、身体をひねって勢いをつけた旋刃脚を叩き込む。竜はその攻撃を甲羅の岩で防いだ。
「ええ、いきましょう――双刃脚!」
しかし、反対方向、竜の死角から跳んだ鳳琴が、砲台を狙ってもう一撃の旋刃脚を見舞った。
弱点の攻撃を受けた砲台の表面に罅が入り砕ける。
攻撃をしてきた二人を狙いって砲台を傾けた戦艦竜へ、中空から降下したベリザリオの破鎧掌が炸裂し、甲羅に更なるダメージを与る。
「『四劫が巡り巡る1と0の法則。安住を告げる【住劫】此処に在り』」
結慰が詠唱すれば、天より安寧の光が降り注いだ。
ぐるりと戦艦竜の砲台が回転する。左右がそれぞれ鳳琴とベリザリオを狙ってエネルギー弾を放った。
しかし、それぞれの前にラーダとリノが立ち塞がり、攻撃をかわって受ける。そのダメージをマリィアのオラトリオベールが癒した。
「灯台下暗し……知ってる?」
砲撃が止んだ瞬間、いつの間にか瑠奈は戦艦竜の側面に回り込んでいた。そして、透明なガラス状のメスを生成する。
(「これを見切れるかしら?」)
放たれたメスは、その状態故に不可視。無数に降り注げば見えず躱せず、次々に砕けたその破片は甲羅に鋭く刺さっていく。
戦艦竜の身体が甲羅の内に引っ込み、ゆっくりと珊瑚礁が回りはじめる。その動き、そこから放たれる威力を、鳳琴は知っている。
「渦が来ます!」
逃れようとアリエータの伸ばした手を、ベリザリオが掴む。飛んで離脱を図ったが、彼らの予測を渦の加速は上回った。海上へ逃れる前に発生した渦潮に成すすべなく巻かれる。激しい海流の只中に投げ出され、岩場に叩きつけられそうになる。
リノのオロシが頑張って支え、瑠奈はケルベロスチェインでその体を絡めとって強引に引き寄せれば、岩場への直撃はかろうじて免れた。
回転したということは、本体が出てくるはずだ。
「……どっちが来る?」
渦が止み甲羅から出てくるのは尾か、頭か。巻きあげられた砂のせいで視界が開けない。
身構える鳳琴の眼前に、赤い光が二つ閃いたかと見えた。その次にはもう、怒涛の速さで戦艦竜の咢が迫っていた。
戦艦竜は、彼女を覚えていた。今度こそその歯牙にかけようと、巨大な虚の如き口を開いて迫る。
だが、そこにラーダが割って入った。自分の体ごと鳳琴にぶつかって転がり、咢を避ける。
刃のように鋭い歯と歯がガチリと食い合った時は、ラーダの肉の一部のみがその口内に残った。
「ニア、ラーダさんを回復してあげて!」
マリィアはウィングキャットに指示を出し、自らはベリザリオとアリエータをオラトリオベールで包む。
結慰の『四劫制御【住劫】』によって高められた治癒力で、傷のふさがるのが早い。
「噂通りの強さだね。だけど、今度は僕のターンなんだよっ!」
リノは戦艦竜にも負けないほどの咆哮を上げ、そこにありったけの魔力を籠めて叩きつけた。その魔力を浴びた甲羅は黒く変色し脆くなって剥がれていく。
情報をもとに対策をしているから、被害はそれなりに抑えられている。それでも、攻撃の一つ一つは脅威であった。
砲台を狙っていると勘付いてか、戦艦竜は尾での薙ぎ払い攻撃をも仕掛けてきた。
前線に陣取り壁となる邪魔者を排除しようとしたのだ。
電信柱を叩きつけられると言ってもいいほどの衝撃で、リノとラーダは吹き飛ばされて大きなダメージを与える。
「倒させないわよ!」
結慰が守護の盾を呼び、2人の前に展開する。マリィアのオラトリオヴェールで包み込み、その傷を癒した。
「ああ、このデウスエクスは本当に素敵だ」
ベリザリオのどこか陶然とした言葉と共に、苛烈な炎が零れ落ちる。愛しい敵を見定め、地獄を強大な炎弾と化して放った。
戦艦竜はその炎弾を躱そうとするが、じわじわと身体を蝕み始めた痺れを振り切れない。何とか動こうともがいたところに、瑠奈の縛鎖猟犬が絡みつき、噛み付き締め上げて動きを封じてしまった。
あがく戦艦竜はうかつにもその背を晒し、炎弾は過たず左の砲台を直撃し、轟音とともに爆裂した。
「やったかー?」
思わずガッツポーズするリノ。もともとダメージが大きかった箇所だ。今の一撃は大きいはずだと、誰もが思った。
「まだだ」
老練の女傑は油断なく身構える。
爆破の煙が薄れると、確かに砲台はその先端を破壊され、砲身が短くなっている。しかし、ラーダの言う通り、まだ砲口には灼熱を宿し、所々に開いた穴からも炎が噴き出している。まだ撃てると言わんばかりだ。
慎重に守りを固めるべきと、ラーダは光の盾を具現化し、仲間を守護した。
「自壊するんじゃないかしら?」
結慰は、召喚した白い数式が砲台を取り囲み、幾重にも縛していく様子を見て、そんな風に言った。
かなり壊れているから、何発も撃てばそういう事もありえそうではある。
「攻撃を緩めはしませんよ!」
しかし、敵の火力を思えば、全力で短期決戦をすべきだろう。今は畳みかける時だと、アリエータは戦艦竜に向け、影の弾丸を撃ち込んだ。
影は砲台をさらに砕き、脆くした上で、ジワリと毒をしみこませる。
●
甲羅に痛覚があるのかはわからないが、砲台が砕ける度に戦艦竜は身体を捩ってはもがいた。
頭をひっこめると、多少よろめきながらも強引に体をひねりはじめる。
「! 渦が来る!」
バランスが悪くなっているためか、渦を巻く速度が些か緩い。それ故に、それぞれが、渦に巻き込まれない程度に距離を取ることに成功した。
「……これくらいっ」
それでも凄まじい水圧で身を千切られそうになりながら、鳳琴は耐える。
(「あなたにも屈辱はあるでしょうが、それはこちらにも」)
強く大きなデウスエクスである戦艦竜と、それに比べれば小さい存在である自分達。それでも、闘いに誇りを持って挑んでいる事に変わりはないはずだ。
だからこそ。
「確実にあなたの武器を奪っていきます――覚悟!」
渦が完全に止まるのを待ってなどいられない。幾ばくか緩くなり始めた流れの、隙間を狙って手にした惨殺ナイフを投げ込む。
砲台にこそ当たらなかったが、そのナイフは戦艦竜の身体のみならず心をも貫き、過去の痛みを呼び起こした。
渦が止まる。
姿を露わにした戦艦竜は、ゴォオ、オオと、唸り声とも吐き出す息ともつかぬ音を立て、怒りに燃えた赤い眼をこちらに向けている。
「貴方の方が強いですけど、それでもこのまま貴方に進ませるわけには行かないんです!」
自分を鼓舞するかのように叫びマリィアは駆ける。あらゆる恐れを振り捨て、戦艦竜に肉薄する。
「落ちて下さい……ううん、私たちが貴方の砲台、落としますっ!」
両手に握りしめたライトニングロッドを、渾身の力を振るって叩きつける。
目も眩むほどの電光が迸る。砲台へと流し込まれた凄まじい量の電流は、溜め込まれた熱と反応し更なる爆裂を呼んだ。
その衝撃はさしもの戦艦竜にも大きなダメージとなった。雄たけびを上げて暴れ狂い、マリィアを振り落とす。
バランスを崩して海流に呑まれかかる彼女を、ベリザリオが飛んで追いつき、支えた。
それでもなお、砲台を構えて戦艦竜は砲撃を行う。半ば闇雲に放たれたものは、アリエータと鳳琴へと飛ぶ。
「いかせないんだよッ!」
それでも小さな体を挺して、リノは割って入る。武器を振るって軌道を逸らそうと試みたが完全に躱すことが出来ずに食らってしまう。
身を削られる痛みに加えて、酷く痺れて苦しい。
「ぐぅッ! ……けど、これ位どうってことないんだよ」
「ああ、踏ん張りどころだよ」
リノを励ますラーダも、傷を受けている。
結慰がもう一度四劫制御【住劫】をかけた。治癒力を高めたところへ、瑠奈のサキュバスミストを重ねれば、かなりの傷を癒すことが出来た。
「さあて、お返しさせてもらおうかねえ!」
ラーダが放った光の戦輪は円を描いて疾り、戦艦竜の堅固な鱗や甲羅をも切り裂いた。
ベリザリオから零れ落ちる紫炎は勢いを増していく。どこか狂気めいた表情、まるで愛しいモノを見るような瞳のベリザリオは、地獄を収束した炎弾を撃ち放つ。二度目の獄炎が砲台を襲い、さらなる爆裂を呼び破壊する。砕けた甲羅の無数の破片が、海流に乗って降り注いだ。
珊瑚の礫から身を庇い海流に逆らって、鳳琴は戦艦竜へと向かう。
そうして改めて思い知る。これだけのダメージを与えても、まだ戦艦竜には生命力に溢れているのだと。
砲台を一つ壊したくらいではまだ倒せない……分かってはいたことだけれど。
「八極拳は一撃必殺。……ですが、デウスエクス、特にドラゴンは特別です」
そう、恐ろしく強い敵なのだ。――だから。
「何度も、何撃でも叩き込む! じわじわと弱っていく己に恐怖しろッ!」
鳳琴の持つグラビティが膨れ上がり、輝く龍の姿を取った。
「『輝け!私のグラビティ。我が敵を――砕け!』 」
鋭い蹴りと共にその力を叩き込む。光輝の龍は、砲台へぐるりと巻き付き、輝きに包む。圧倒的なその力に耐え切れず、ついに、砲台は根元から折れた。
甲羅から滑り落ちた岩の砲台はボロボロと崩れながら海底へと沈んでいった。
グォオオオオオオオオオ!!
装備の一つを失い、珊瑚色の戦艦竜が怒りに震えて叫ぶ。
もう一方の砲台で鳳琴に狙いをつけるが、アリエータの召喚した霊が纏わりついて砲撃を果たさせない。
その隙にリノが鳳琴を引っ張って後退させた。
砲台を一つ破壊する、その目的は達成した。
「撤退しましょう」
追い縋る戦艦竜へとラーダは牽制のスモーカーズフォレストを放つ。
翼を持たない者たちを持つ者たちが抱えて飛び、あるいは、マリィアが怪力でお姫様抱っこして距離を取る。
戦艦竜はしばらく吼え狂い、残った砲台から無暗な砲撃を繰り返した。
それでも、ある程度離れれば、追跡をやめて海底に沈んでいった。
習性に加えて、与えられたダメージのせいもあっただろうか。
クルーザーに戻って、海域を離脱する。
たった今まで戦場であった戦艦竜の潜む海域を、ケルベロスたちはただ見つめていた。
倒せぬまま撤退を繰り返すもどかしさに、焼けるような焦りを感じないと言えば嘘になる。
「滴り落ちる水滴もいずれ岩を貫くように、重ねていくしかなかろうよ。焦っても仕方ないね」
そう言って、ラーダは煙管に火を入れた。
「次で……仕留めます」
鳳琴は静かに息を吐き、手ごたえを確認する。
そう、手ごたえはあった確かにあった。
戦艦竜の傷は癒えない。与えた傷で弱っていることは確かなのだ。
今は、勝利への道を確実に繋いでいる事を喜ぶべきなのだろう。
海鳥がいつまでも、姦しく鳴きたてていた。
作者:黄秦 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年3月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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