相模湾の黒い戦艦竜・第三戦

作者:林雪

●不機嫌な竜
 暦の上では春を迎えようとしているが、相模湾の海上では、まだまだ身を切る冷たい風が吹き荒れる。
 こんな日にこそ釣果があがるものだ、と、チャーターした船で沖釣りに出た一般人男性が、無線で叫んだ。
「大変だ! 例の化け物が出た!」
 これまでは水底から、邪魔者を排除するためだけに姿を見せていた戦艦竜。だが今は、波を割ってその姿を現し、獰猛な黒い塊はおぞましい声を上げながら、方向転換しようとする船に突っ込んでいく。
『ギャオォオオ……!』
 怒り、猛り、まさに化け物と呼ぶに相応しい様子で竜は船に体当たりし、まだ気に入らないのだとばかりに炎を吐き散らかした。

●決戦への予感
「相模湾の黒い戦艦竜、ひどく荒れているみたいです」
 ヘリオライダー、セリカ・リュミエールがケルベロスたちを見回して言った。
「この戦艦竜には既に2度、こちらから接敵を試みて一定のダメージを与えることに成功しています」
 そのダメージは、敵の体に蓄積している。強大な力を持つ戦艦竜だが、負ったダメージを回復出来ないというのが最大の弱点である。
「前回までの戦いで、この戦艦竜は背中のレーザー砲台を破壊されています。なので砲撃を受ける危険性はないのですが、これを失ったことでこれまで臆病だった性格が豹変、かなり獰猛になってしまったようです。確認されている攻撃方法は炎のブレスの他、尻尾による一撃です。砲台を失った今、どう動くかわからない部分もあります」
 これまでは深い海に潜み、ケルベロスたちを待ち伏せているような戦法をとっていた戦艦竜。しかし今では海上に頻繁に姿を現し、多少離れた船でも突撃して攻撃するようになっているという。海を愛する人々のためにも、この脅威を一刻も早く排除したいところではある。
「今回もこちらで用意したクルーザーで、相模湾沖に向かって下さい。勿論接敵用のゴムボートも積んでありますから、皆さんの戦い易い方法で距離を詰めて下さい」
 残存体力は未知であるものの、今回の戦いで敵を沈められる可能性も見えてきている。
 それでも、とセリカが不安げに眉を寄せる。
「敵は手負いの獣です。怒りに任せた一撃は、相当の威力であると言わざるを得ません。防御の対策と、決して無理をしないこと。もし今回で敵が落ちない、と判断すれば撤退して下さい」
 戦艦竜は戦闘が始まれば撤退はせず、また、どんなに獰猛になっていてもやはり敵を深追いはしない。ケルベロスが撤退すれば、しつこく追って来るようなことはしない。
「皆さんのこれまでの戦いのおかげで、確実に敵は追い込まれています。一般の皆さんのためにも、ご活躍をお祈りしてますね」


参加者
秋草・零斗(螺旋執事・e00439)
イピナ・ウィンテール(四代目ウィンテール家当主・e03513)
シャルロット・フレミス(蒼眼竜の竜姫・e05104)
鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)
イヴ・ノイシュヴァンシュ(嫉妬の超高速移動爆弾・e07799)
ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)
氷鏡・緋桜(矛盾抱えし緋き悪魔・e18103)
西院・織櫻(白刃演舞・e18663)

■リプレイ

●第三戦
 クルーザーの中の空気に、ぴんと一本筋が通っていた。
 それは未知への恐怖というより、戦いに向けての集中するための、いい緊張感。
 とは言え、肩の力は出来るだけ抜いておきたい。秋草・零斗(螺旋執事・e00439)が船内の仲間の顔を見回した。
「さて、と……」
 すっかり使い込んだ風合いになってきた特殊忍装束『磯撫で』の装着を終え、にこやかに、まるで山登りにでも行くような調子で言う。
「ここで決してしまいたい所ではありますが……皆さん、ご無理はされないよう、お気をつけて」
「決着がつくのかどうか、分かりませんが……とうとう三度目ですからね。悔いのないようにしたいものです」
 応じたのはイピナ・ウィンテール(四代目ウィンテール家当主・e03513)。彼女の声も、常通り落ち着いている。
「そろそろご退場願いたいね」
 そして、鳴神・命(気弱な特服娘・e07144)。この三人は、実に三度目の黒い戦艦竜との対峙となる。
 その様子を見ていたシャルロット・フレミス(蒼眼竜の竜姫・e05104)は改めて思う。
 強大な敵は、決してひとりでは倒せない。大きな戦いや、この戦艦竜も。皆が力を合わせてここまできた。
 積み上げたものを、今までの戦いを、無駄にしたくない。
「……早く海を、安全な場所にしないと」
 サポートメンバーとして乗り込んだ相馬・泰地も気合い十分、冬の海でも当然いつものボクサースタイルだ。スクワットに勤しむ彼とは対照的に、フローネ・グラネットはただ静かに、戦いの時を待つ。エト・カウリスマキもメディックとして戦闘に加わる。
 全員がゴムボートに乗り換え、戦闘海域へ向かう。その途上で既に、戦艦竜の姿は確認出来た。
「なんつぅ~か、手負いでもあんだけ動けるとはやっぱ戦艦竜ってのは凄いもんだなぁ~」
 イヴ・ノイシュヴァンシュ(嫉妬の超高速移動爆弾・e07799)が、ボートから身を乗り出し気味にそう言うのも無理はない。戦艦竜は縄張りとする狭い海域内で、海面に首を出して右往左往しては時折苛立たしげに尾を振ってと、まるで落ち着きがない。
 バシャァン! 水の跳ねる音が風を割って響いた。
 前回までケルベロスが接近してもなお、海底で息を潜めているような戦法をとっていた個体とは思えない暴れぶりである。まるで、見えない敵と既に戦っているような。
「もしかして、リア充実と戦ってんのかぁ~?」
 いやそれは、と全員思ったが誰もツッコまなかった。
「うって変わって大暴れ、ですね……いや、案外こちらが素なのか?」
 零斗の呟きに、待ちかねた風に氷鏡・緋桜(矛盾抱えし緋き悪魔・e18103)が口角を持ち上げた。赤い髪が、燃え盛る炎のように風にたなびく。
「かつて世界を破滅させた最強種族か……面白い!」
 攻めきって勝ちたい今回の戦いで、最強の拳として布陣する緋桜はわかりやすく興奮していた。
「続けて戦艦竜と戦えるとは運が良い……しかもこんな、暴れ者と」
 対照的に、静かに青白く闘志を燃やすのは、西院・織櫻(白刃演舞・e18663)。刀の柄に手をかけ、既に戦闘態勢は整っている。
 それはどうやら、戦艦竜の方も同じだったようだ。
「え、嘘、その距離から?!」
 驚きに思わず叫ぶ命。そうだ! と答えるようにひと咆えし、黒い戦艦竜は大きく口を開ける。
『ギャオォオァ……!』
「散開ッ!」
 イピナの声を待つか待たぬかで、ケルベロスたちは全員ボートを蹴って海に散る。放たれた炎のブレスは、ゴムボートを一瞬で消滅させた。
 闇雲に放った攻撃でも威力は後衛にまで及び、ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)が避けきれずその熱を浴びてしまう。紅緋の瞳に黒い戦艦竜の姿を映し、言葉を失いかけるティスキィ。巨大で、恐ろしい敵。攻撃を体感してなお、彼女は同情を禁じえない。
 元々は臆病な性格だったのに、攻撃されて痛い思いをして……。
「恐いのかな。花を見ても落ち着けない……かな……」
「ティスキィさん! ご無事ですか」
 ドォン!
 イピナが開戦の合図だとばかりにブレイブマインを放った。その爆音が、ティスキィの意識を現実に引き戻す。そうだ、ここはもう戦場なのだ。
(「……かわいそうだけど、人を襲う以上そう言ってはいられないから……」)
「やれやれ……本当に攻撃が粗くなったね、アンタ」
 海面に顔を出し、戦艦竜に向かって命が呟く。初めてこの海域に向かった時の、得体の知れない恐怖は今の命にはもうない。ただの獣なら、見た目の怖さだけだ。
「さぁ、てめぇの意地を見せてみろ!」
 前衛に陣取る緋桜、防御を固めるのは零斗、イヴ、そしてイピナと、紫水晶の障壁をもってサポートに入るフローネ。
「……楽しい戦いになりそうだよ」
 中衛にはシャルロット、命、サポートに泰地。
「みんなを必ず癒します。だから全力で戦ってください…!」
 後衛から回復役のティスキィ、狙撃手の織櫻。
 敵は、怒りに猛る黒い戦艦竜。咆哮とともに、その体色が異様に深く暗い黒になっていく。それを爆煙の隙間から見据え、イピナが言い放った。
「かつては光届かぬ海底に潜み、レーザー砲台を失い、そして怒りにくすんだ今の色……どうにも光に縁遠い竜のようです。あなたのことは『無明』とでも呼んでみましょうか!」

●戦艦竜『無明』
 ケルベロスたちの集中砲火が始まる。
「無明、か。なるほどな」
 呟いて、シャルロットが一気に敵との距離を詰めた。竜紋の力を帯びた体ごとぶつかっていくような、魔砲の一撃。続けてイヴが拳を振るう、が。
「やべぇ~、超かてぇ~し! なんだコイツの体ぁ!」
 巌のような手ごたえは、相変わらずだ。
 そうでなくては歯ごたえがない、と雄雄しい声で自らを鼓舞しつつ、緋桜が出る。
「食らえ!」 
 抉り取るような超硬度のパンチに、無明が咆える。
 攻撃を畳み掛ける味方の布陣を頼もしく思い、自らも攻撃手となりながらも、零斗は敵の動きに警戒している。
(「……もはや、いつあれを仕掛けてきてもおかしくない」)
 零斗が最大に警戒しているのは、体当たり攻撃である。その威力は一度、身をもって思い知っている。ましてや、手負いの暴れ竜と化した今の無明のそれは、まともに食らえば間違いなく重傷は免れない。絶対に止めてみせる、と、ライドキャリバーのカタナにも意志を徹底させる。
 敵の攻撃力への警戒を怠らないのは、命も同じくだ。初手から前衛の盾にと、ドローンを飛ばす。
「今日はこれだけじゃないよ……楽しみにしてね」
「なかなかいい空気ですね、今日の戦場は」
 全員が戦いに集中し、敵を仕留める意志をひとつにしていく。織櫻が抜き放ったふた振りの刀から、黒い弾丸のごとき影が放たれ、無明の黒い体に吸い込まれていく。
 そんな仲間を支えるべく、ティスキィは己の傷を顧みずに前衛防御のためにと攻性植物を変形させ、黄金の果実を宿させる。心に戸惑いはあるが、今は戦いに集中しなくてはならない。
『ギョアァッ!』
 荒れ狂う竜の尾が、次の標的と定めたのは。
「命様っ、そちらに!」
 零斗が叫ぶ。中衛を狙って繰り出された、破壊の一撃。
「怖がらずに、目を開いていれば……避けられる!」
 命の声に視線で頷いたシャルロット。そこから一気に海中に潜ったふたりの頭上で、太い尾が空を切った。
「やるじゃねぇ~か!」
「いけるぜ、ガンガン攻めてくぞ!」
 強大な敵の一撃をかわしたことで、ケルベロスたちの士気は上がる。
(「あたしはもう、あんたが怖くない……!」)
 暗い海の中に、純白の特攻服がたなびく。咄嗟にシャルロットと二手に割れ、更にかく乱を狙う。命は潜り続け、シャルロットはすぐに海上へ飛び出し、すかさず次の攻撃へと転じる。広く距離を取り、狙いを正確に定めては黒い鱗の継ぎ目を狙う。
「こんなのは、どうよ!」
 オラッ、と声をあげて緋桜が達人の一撃を命中させた。拳の触れた箇所から冷気が広がり、ビキッと鈍い音をたてたかと思うと、戦艦竜の装甲の一部がボロリと剥落した。そこを足場に、織櫻が跳んだ。
「この隙、逃しはしない。一気に攻めさせてもらいましょう!」
「援護します! アメジスト・シールド、最大展開! 少しでも、威力を減衰させます!」
 サポートのフローネが、放った。
 だが、戦艦竜・無明はそう簡単な相手ではない。その巨体にグラビティを受けながらも、虎視眈々と反撃のタイミングをはかり、それは爆発した。ぐるりと、まるで水泳のターンのように頭を水中に潜らせ、そのまま体ごと突っ込む!
「……ぐゥッ!」
 バシャアアン! 激しい水音とともに突き上げられたのは、命の体だった。
「しまった……!」
 不覚に歯噛みする零斗、力を誇示するように無明が咆えた。しかし。
「……っ、おあいにくだね、まだ……やられてないんだよ……」
「鳴神さん、今行きます!」
 回復手は、一斉に命に注がれる。命の耐性と体力で、かろうじて戦線の瓦解は免れた。
 が、無明の攻撃は激しさを増す。
 次ターン、尾の強烈な一撃が遂に前衛を捉え、まとめて薙ぎ払う!
「ッ……一発一発が、おめぇ~なぁ~……気を抜いちまったら即人生からドロップアウトだぜ……いてぇ……」
 イヴがぼやく調子に言うが、ダメージは回復が追いつかなくなりつつある。
「くっ……やはり、大きさは、そのまま破壊力に……直結しますね。加えて、この見境の無さ……危険度が、跳ねあがって……います」
 したたか打ち据えられ肩で息をしながら、イピナが敵を睨む。回復を怠れば戦線は簡単に崩壊するだろう。だが、勝利に近付くには攻めきるしかない。それには前衛の攻撃の要である緋桜を、最後まで残さなくてはならない。
「言葉など既に意味を持たん……アブソリュートブレイクシュート! さぁ! 受けてみろ! 俺の拳を!」
 幸い、緋桜の戦意は衰えを知らない。エネルギー結晶体による爆発的推進力で、強大な相手を殴りつける。引いた位置からはシャルロット、織櫻が狙いすました技を降らせていた。
 流れを断ち切ろうと、恐らくまたあの体当たりが来る。
 ここさえ凌げば勝ちが見える、と、零斗の集中力は極限まで高まった。
『グオォォ……』
 自分かサーヴァント、どちらでもいい。盾になれさえすれば――その思いが届く、ということはつまり。
「カタナ!」
 使役している零斗の身に響くほどに、あまりにも激しく飛ばされ、かき消えるカタナの姿。見ていたティスキィが、思わず悲鳴をあげそうになったほどだ。
 だが作戦としては成功。ダメージ量は相当なものだが、ここまで他に誰ひとり倒れていないことになる。
「あんたの為に用意した特注品だよ、食らいな!」
 命の放った小型ミサイルは、無明の顔の近くで爆風を巻き起こす。追い討ち、とばかり刀を構えたままの織櫻の腕を伝ったブラックスライムが敵に絡みつく。
 苛立たしげな咆哮が海に響き渡り、いよいよ不沈空母だと思われた戦艦竜が沈む瞬間が近付いていた。
 その気配を否定する、とばかり、無明の口内に再びマグマのような熱が蟠った。
 恐らくこれが相模湾の黒い戦艦竜・無明の最後の攻撃となる。

●撃沈
「させないッ……!」
 イピナが咄嗟に翼を大きく広げ、敵の前に飛び出した。
 叶うことなら、この身で全てを守りたい。だがドラゴンのブレスは容赦なく海水を蒸発させ、前衛全員を巻き込んで対流を作り出した。
「うわぁああーーー!」
 一瞬、ほんの一瞬だが海上に静寂が訪れる。
「皆さん……っ! ああ……!」
 ティスキィが泣きそうな顔で口元を押さえた。
「くっそ……、気、抜いてなかったのに……なぁ~……」
 身動きが取れなくなったのは、イヴ、そして緋桜をかばったイピナは意識を失っていた。零斗も水面に顔をうつ伏せたまま、揺蕩っている。
「生憎、俺には……」
 海に沈みかけるイピナの体を咄嗟に支え、緋桜は彼女をサポートメンバーに託す。
「くたばってる暇なんざぁねぇ!」
 託された希望を繋ぐのだと、緋桜が叫んだ。
「ここだ……!」
 シャルロットが翼を一度動かし、勢いを利用して水面を駆けた。そのまま敵の巨体を足場とし、急降下からこの日もっとも強力な破鎧衝で残る装甲も剥ぎ落としていく。
「うおぉお!」
 波打つ水面の装甲を蹴って緋桜が続く。渾身の降魔の蹴りが決まる。だが、期待した断末魔はまだ響かない。
「ちッ、まだ粘る気かよ……ッ?!」
 緋桜がファイティングポーズを取ったが、その視界に仲間の姿を捉え、一瞬固まってしまう。
「……さて、やっと……最後まで戦場に留まれました、ね……」
 炎を受け、大ダメージをこうむりながらも、最後の力を振り絞って構えたのは、零斗だった。いつものオールバックは乱れに乱れ、凄味を放ってギラリと敵を睨む。
「決めさせて頂きましょうか……!」
 零斗の拳が、真っ向から戦艦竜の眉間にめり込んだ。
 じっと冷静に戦況を見つめ、追撃の準備をしていた織櫻が事を確信し、刀を下ろす。
 全員の注視が、無明に集まる。存分に拳を振るった者、わが身を盾とした者、勇気を奮って癒し続けた者……、ここにはおらずともこの巨大な敵を打ち倒すべく向き合った全ての者の意識が見守る中、遂に相模湾を震撼させた戦艦竜は、海へと還っていったのだった。

●暁に消える
「……終わりですね、無明……」
 仲間に支えられ、意識を取り戻したイピナが、その姿を見送る。
 名を贈り、そして沈めた敵。強大だったその相手に一抹の奇妙な、友情にも似たものすら感じてイピナは目を閉じる。
「水底で眠りなさい、誰にも侵されることもなく……」
「……」
 戦いの最中にあれほど高揚していた緋桜と織櫻の二本桜も、今は口を閉ざしてその様子を見つめる。強いものと戦う喜びと、それを倒してしまったときの寂寥感のためだろうか。
「……っ……ごめんなさい……そう言う資格もないのだけど」
 ティスキィは、ずっと飲み込んでいた言葉を口にしてしまう。沈んでいく黒い影に向かって思わず手を伸ばし、せめて安らかに、と手向けた目に見えない花の色。それは彼女だけが知る、祈りの色をしていた。
 風が緩み、そして夜明けがやってくる。
 初めて戦艦竜が姿を見せた頃から考えると、随分日の出は早くなっていた。
 泰地とフローネが怪我人を率先して運び、クルーザーに戻る。戦闘不能者こそ二人で済んだが、皆ギリギリまで身を削って戦った。
 互いが互いのことを誇りに思う。共闘とは、そういうものだ。
「……! デカ乳滅ぶべし!」
「?!」
 フッと意識を取り戻したイヴが叫び、ビクゥと泰地がはねる。
「……じゃ、なかった……でも今は生きてることに感謝だぜ。まだまだやらなくちゃいけない事があるんだ、人生終わってる場合じゃねぇ~っつぅの!」
 陽射しが海面を照らす。自分が守った海を、シャルロットが穏やかに見つめる。
 暗かった海が光に覆われ始めるのを見つめながら、命が呟いた。
「まだ戦艦竜は残ってるけど、退治の報告も多いしもうちょっと頑張ればこの海も完全になる……よね」
「ええ。穏やかで豊かな海が戻って参りましょう」
 零斗が答え、イピナとも軽く視線をかわして微笑した。
 相模湾に安全が戻る日は、もうすぐそこに見えている。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年3月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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