闇に浮かぶ不届き者

■リプレイ

●浮遊する闇
　兵庫県の市街地より少し離れた交差点。
　其処に深夜に現れる、死神の下級存在である怪魚と、それに甦えさせられたオークが暴れ回るという……。
　そんなセリカの話を聞いたケルベロス達は、既に避難済みのその交差点に到着していた。
「しかし……闇夜に紛れて、またまた下賎なものを甦らせたものだな……」
「そうね。ほんと死神って何でもサルベージするのね……節操ってもん、知った方がいいんじゃない？」
「全くだ。飽きもせずに死体拾いご苦労さん、と。しかしまァ、拾うならもっと良いモンもあるだろーに。部下や駒を選ばないってのは後々後悔するぜ？」
「そうだな。何を企んでそんなものを甦らせたのかなど、今は知る由も無いが……不届き者どもは、黄泉へと帰って貰うとしよう」
「そうね。まぁいいわ。出てきたことを公開する位に虐めてあげるとしましょう」
　セリス・セルディア（月華蒼焔・e18676）、ローズマリー・シュトラードニッツ（ブラッディサバス・e01626）、そしてダレン・カーティス（自堕落系刀剣士・e01435）の交す会話。
　……本当に、この死神がやっている事の意味は良く解らない。
　少なくとも死んだデウスエクスを甦らせている行為は、死者を冒涜する行為である事は間違い無い。
「しかしサルベージの阻止とは……やれやれですね。暗躍するのがよほどお好みのようで……深夜の郊外での戦闘という事ですし、避難も完了していますから、やりやすい所ですけれどね」
「ああ。強化されていても知性が無いのはやりやすい相手でもある。裏でコソコソやられるよりは、だがな」
　ビィ・アルストロメリア（レプリカントのメイド機兵・e19093）と久瀬・彰人（地球人のガンスリンガー・e04430）に、メイベル・メイヤー（ダーティーリード・e02726）が。
「……同じ事を二度やらされるのは、私は嫌いなんだ。だがこいつらは、ここで完全に潰す」
　と強い口調で告げると、アークトゥルス・ラクテア（コッコ村のプリンの騎士・e22802）も。
「ええ……死者をいい様に使う死神は、絶対に許せません。必ずやここで倒しましょう」
　と拳を握りしめる。
　……そして。
「それでは、準備してきたものの確認をしておくと致しましょう」
　と、リリーナ・モーガン（グリッター家令嬢お世話役・e08841）は、光源となるＬＥＤライトを取り出し、点灯確認。
　更にホームセンターから仕入れてきたガソリン式発電機、ハロゲンライト等々。
　……他の仲間達も、視界不良の対策に、様々な光源を用意。
　一通り用意完了し、そして時計も間もなく、その時間。
「それにしても……はぁ……魚と豚じゃ苦悶の表情が見れないじゃない……不完全燃焼で溜まっちゃいそうね」
　とぽつりローズマリーが呟くと、それにリリーナは。
（「……生きている時は勿論、死んでも迷惑だなんて……救いようのない豚。確実に倒してあげる」）
　と、内心に呟くのであった。

●闇を劈く
　そして……真夜中。
　廻りの市民達も全て避難しており、ゴーストタウンの様な雰囲気が漂っている。
　そんな不気味な交差点に、息を潜め、姿を隠す。
　……時計が丑三つ時を指した、その瞬間。
　闇の中にふわり、ふわぁり……と、怪魚が姿を現す。
　３体の怪魚が、軌跡と共に夜空に浮かび上がり……そしてその軌跡の下に姿を現すオーク。
　太く盛り上がった腕は、明らかに彼の攻撃力が高いことを示している。
　その腕を目視し、メイベルが。
「こいつは見るからに……痛そうだな」
　とぽつり呟く。
　が……一端瞑目すると、更に目を開いて。
「……であれば、殴られるのは私の役目だな」
　と、覚悟を決める。
　そして、ケルベロス達は一斉に姿を現すと共に。
「動くな、止まれ」
　セリスの宣告。
　その宣告に対し、怪魚が何か反応を返すという事は無いが……オークは。
『ウ、グゥウウ……！！』
　と、呻き声と共に、先手の強力な拳の一撃を叩き込んでくる。
　そんなオークの一閃を、カバーリングするのはメイベル。
　その一閃、かなりのダメージを喰らう事になるが、直ぐにメイベルはヒールドローンを自分含め前衛陣に掛ける。
　そして彼女を補助するよう、ビィのライドキャリバーがガトリング連射で、リリーナのオルトロスのアーサーがパイロキネシスで反撃。
　そして、ディフェンダーに続けてジャマーに属する彰人、ビィが続けて。
「メディックが居ない事ですし、これくらいはしておきましょうか」
「そうだな。回復の方は任せるぜ」
　と言葉を交わしつつ、ビィが更にヒールドローンで前衛の盾アップを付与し、彰人は御霊殲滅砲で、先ずは怪魚へと攻撃。
　そしてスナイパーのリリーナが。
「魔術の真理を求道する者……生命を唄い、終焉を謳いなさい」
　と魂魄転写「浮声切響」を放ち、更にセリスがガトリング連射で攻撃。
　それらターゲットは全て、怪魚。
　三匹の怪魚達は、意思あるかないかは解らないが……ふわりふわりと浮かびながらも、その攻撃を受け流していく。
　そして、ダレン、ローズマリー、アークトゥルスのクラッシャー三人は。
「どーにも、オークってのは見てて不穏な気分になるぜ……まぁ、なンだ……俺個人からお前らには怨みはねーケド、こっちは仕事なんでな！」
「そうね……あんたらのツラの方がよっぽど悪夢よクソ豚野郎。鏡でも見てなさい！」
「使者を愚弄する手口は相変わらずですね。それがいかに下劣であるか、その身を以て思い知って貰おう！！」
　と強い口調で、紫電一閃、トラウマボール、フォートレスキャノンを連打。
　仲間の攻撃に続いて仕掛ける事で、怪魚三匹が居るエリアをターゲットに集中砲火を行い……怪魚一匹が、まずは崩れ墜ちる。
「良し、まずは一匹討伐完了ですね……後二匹ですか」
「そうだな。余り長引かせるのも何だから、まずは怪魚二匹、さっさと倒して行く事にしよう」
　とアークトゥルス、セリスの言葉に皆も頷き合い……そしてケルベロス達は、オークの攻撃をディフェンダー陣でカバーリングしながら、残る仲間達で怪魚らを一匹ずつ確実に仕留めていく。
　余り体力の無い怪魚が総て倒れる迄、３分程。
　そして怪魚を倒した後、残るはオークのみ。
『グウウアアア……！！』
　とは言え知能の無いオークは、咆哮を上げて、腕をぐるぐんぐるんと振り回して、取りあえず近づいてきた者全てに殴り掛かりの攻撃を次々と叩き込む。
　とは言え盾アップを多重に付与された前衛陣……おかげで、大きなダメージで瓦解する事も無くなる。
　そして。
「さて……ミサイルカーニバルとしゃれ込みましょうか」
　と、ビィがマルチプルミサイルでオークを集中砲火すると、彰人もスターサンクチュアリで迎撃し、バッドステータスを付与。
　更にセリス、リリーナが。
「あまり……騒音は立てたく無いのだがね？」
「そうでございますね……でもこのまま放置しておく方が更に迷惑でございます。オークは早急に潰す……それが最良の手段でございます」
　と言いながら、ガトリング連射にドラゴニックミラージュ。
　と、その攻撃を喰らった瞬間。
『グ、ガア……！？』
　片足に大きな傷を負い、そのまま耐性を崩す。
　そして余り上手く動けないオークに、ローズマリーが。
「イイ声で鳴いて喚いて絶望して、血反吐と内臓ぶちまけて死になさい！！」
　と、渾身の鎮魂歌。
　その鋭い剣突は、オークの身体中を蜂の巣に。
　大量の血飛沫がその場に飛び散り……そして。
「これで……終わりだ！」
　と、希望示すべき幻想の剣が具現化し……そして、オークの身体を真っ二つに斬り裂くのであった。

●闇から灯
「ふぅ……終わった様でございますね。皆様、お疲れ様でした」
　深々と一礼し、仲間の労を共に労うリリーナ。
　無事、怪魚とオークの両方を倒したケルベロス達……まずは安堵の一息、といった所だろう。
　そしてその怪魚とオークの死した痕跡部分をに、何か手がかりが無いか手を翳すビィ。
　しかし、その場にあった残り香は、ふわりと影のように消えていく。
「……まぁ、期待はしていませんでしたし……こんなものですかね」
　と、ビィは小さく肩を竦めつつも、手を元に戻す。
　そして、戦闘の痕跡などを一通りグラビティで回復し……避難していた人達を呼び戻すケルベロス達。
　一通り終わる頃には、もう空がほのかに朝焼けをし始める頃。
「……流石にもう朝か……」
　と、少し疲れた風に呟くセリスに軽く苦笑しながらダレンは。
「そうだね。まぁ死神が現れたのが深夜も深夜、ド深夜だしな。それにしても相変わらず手駒を増やすのに熱心なモンだね、死神は。その割に団体サマで何をするでもないから、連中は不気味なんだが」
「そうですね……睡魔は力を蓄えているとき、と言う事なのかもしれません。そうならば……その時が来ると厄介な事になりますね」
「ああ。まぁその時の為にも、こうやってせっせと一つずつ潰すのが大事な事なのかもな」
　ダレン、アークトゥルス、彰人の会話。
　そして町の人達も家に帰り、また静けさに包まれた交差点。
　必要の無くなった灯りや、持ち込んだ道具を仕舞うと共に。
「さて……姫路といえば、白鷺白と名高いお城が有名でいたわね。皆様、見学しに参りましょうか？」
　と、リリーナの提案。
「そうだなぁ……ま、このまま帰っても味気ないし、折角だから見て帰るとしようぜ」
　と彰人も頷き……そしてケルベロス達は、姫路城、またの名を白鷺城を見学に、その場を後にするのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年2月27日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 1
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